M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2023年11月7日更新会社・事業を売る
会社分割における登記方法は?手順・必要書類・費用も解説
会社分割は株式譲渡などと並び、組織再編やM&Aでよく使われる手法です。この会社分割では、実施後に登記が必要となり、その方法は会社分割の種類によって異なります。この記事では、会社分割の手法をおさらいしたうえで、登記や必要書類などについて解説していきます。
会社分割における登記
会社分割は株式譲渡などと並び、組織再編やM&Aでよく使用されるM&Aの手法です。会社分割は大企業、中小企業を問わずに使用される手法ではありますが、登記などの手続きが煩雑であることが難点です。
経営者の方の中には、会社分割はどのようなプロセスを踏んで行うのか、登記に際してどれだけの書類が必要かについて悩ませている方もいるかと思います。今回は、会社分割の手法の概要や会社分割に必要な登記の進め方についてお伝えしていきます。
会社分割とは
まずは、会社分割という手法についておさらいしていきましょう。会社分割は組織再編やM&Aに使用される手法であり、会社が所有する事業、正確にはその事業に関係する一切の権利義務のすべて、あるいは一部を切り離し、他の会社に承継させるというものです。
この手法を活用することにより、会社の不採算事業を切り離したり、本来の事業により集中できるよう組織再編を行うことが可能となります。会社分割は事業譲渡や合併といった手法と似ている一面がありますが、手法のプロセスや対価が異なります。
後述しますが、会社分割は2つの手法があり、いずれも合併のように会社を消滅させる必要はなく、会社分割の種類によっては会社単体で完結させられることが会社分割の特徴だといえます。
会社分割のメリットとデメリット
会社分割では、事業譲渡のように現金で事業の売買を行うだけでなく、株式を対価にすることも可能です。そのため、会社分割では多くの現金を用意しておく必要がないため、資金に苦しい状態でも行えます。また、事業譲渡のように取引先や従業員との契約を白紙に戻して再度締結する手間もかかりません。
こうしたメリットを考えると、会社分割は非常に使いやすい手法のように見えますが、当然のようにデメリットもあります。それは、承継するすべての事業の要素を取り込むことになるため、不要な資産などを引き継いでしまう可能性があるということです。
これにより、不要な資産などを受け継いだ影響が経営戦略に現れることも考えられます。
一部の例外を除き株主総会の決議が必要
会社分割は、株主総会の決議を得たうえで実行が可能になるものであるため、株主への通知や招集の手間を考えるとスピーディーに行えるものとはいえません。
一部、例外的に株主総会を行わないケースもありますが、基本的には株主総会の決議は必要なため、ある程度の期間を要することは念頭においておきましょう。
会社分割でをスムーズに進めていくためには、専門家のサポートがおすすめです。M&A総合研究所では、M&Aに豊富な知識と経験を持つアドバイザーがM&Aをフルサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
会社分割の種類
会社分割は大きく分けて「吸収分割」と「新設分割」の2種類があり、それぞれプロセスが異なります。ここでは、これら2種類の会社分割の特徴についてお伝えしていきます。
吸収分割
吸収分割は、他の会社に事業を承継させる手法です。イメージとしては、事業譲渡が近いでしょう。吸収分割の形式として多いのは、単純に「A社がB社に事業を承継させる」というパターンと、「B社が子会社のC社を設立し、そこにA社の事業を承継させる」というパターンがあります。
吸収分割は、後述する新設分割と比べると手間がかからないものであり、比較的メジャーな手法といえるものです。それこそ、事業譲渡のように他の会社に不採算事業を承継させて会社の経営を安定させたり、会社の経営が難しくなった際に重要な事業を他の会社に承継させることで存続を図ることができます。
吸収分割はM&Aのニュアンスが強い
吸収分割を行う際に気を付けておきたいのは、この手法はM&Aのニュアンスが強く、他の会社に事業を承継させることでシナジー効果に期待できます。しかし、当然ながらシナジー効果が得られないという事態も想定されます。
会社はそれぞれ異なる企業文化を持っており、吸収分割で分割した事業が、承継された会社と協調できないことがあります。
それどころか、承継した会社の企業文化が合わない、そもそも吸収分割に反対という理由で、従業員が流出する可能性もあります。
吸収分割は、承継する会社との相性や協議の確度によって、結果が変わる傾向がありますので、慎重に相手を選ぶ必要があります。
新設分割
新設分割は、新たに会社を設立して、その会社に事業を承継させる手法です。他の会社に事業を承継させる吸収分割と違い、新設分割は会社単体でも完結させることができる手法です。言い換えれば、会社内の事業を独立させるような手法だといえます。
新設分割は組織再編で使用されることが多く、会社の事業が成長した際に独立させることでより事業に集中できるような体制にしたり、逆に不採算事業から有益な事業を切り離すことで採算を確保するという目的で使われます。
吸収分割と違い、会社単体で完結できる手法であるため、従業員の反発もあまり起きないでしょう。ただし、会社を新たに設立させる以上、吸収分割とは手続きも登記の種類も異なるため注意が必要です。
会社分割の登記
会社分割には吸収分割・新設分割という2種類の手法があり、吸収分割は「既存の会社に事業を承継させる」手法であり、新設分割は「新しく会社を設立して事業を承継させる」手法であることから、同じ会社分割でも内実が異なります。
そのため、吸収分割と新設分割は、登記の際の手続きも違うことを留意しておかなければなりません。また、会社分割の効力が発生する日も、吸収分割と新設分割では異なるので気を付けておきましょう。
吸収分割の登記
吸収分割の登記は、分割会社と吸収分割承継会社それぞれの変更登記を行います。吸収分割は新設分割と違い、吸収分割契約書が定めている効力発生日になってから効力が発生し、効力発生日から2週間以内に行い、さらに分割会社と吸収分割承継会社の登記を同時に行わなければなりません。
新設分割の登記と違い、吸収分割は効力発生日を吸収分割契約書で決めることができるため、法務局が休日になっている日に効力発生日を設置し、それから好きなタイミングで登記ができます。
新設分割の登記
新設分割の場合は会社を新設するため、吸収分割とは違う登記を行います。新設分割の登記は、分割会社と分割設立会社(新設分割設立会社)で異なっており、分割会社は変更登記、分割設立会社の設立登記をそれぞれ同時に行わなければなりません。
さらに、新設分割の登記は2種類の申請方法があり、分割会社と分割設立会社が同じ登記所の管轄区域内にあるかどうかで使う手法が変わります。なお、新設分割は登記が完了した段階から効力発生日となるため、法務局が開いていない休日や祝日は効力発生日になりません。
そのため、スケジュールは考慮して設定した方がいいでしょう。
分割会社と分割設立会社が同じ登記所の管轄区域内にある場合
まず1つめの申請方法は同時申請です。分割会社と分割設立会社が同じ登記所の管轄区域内になる場合は同時申請が可能であり、分割会社と分割設立会社が、それぞれ分割設立会社の本店所在地がある登記所で同時に登記申請を出すことができます。
分割会社と分割設立会社が同じ登記所の管轄区域内にない場合
2つ目の申請方法は経由申請です。分割会社と分割設立会社が同じ登記所の管轄区域にない場合は、同時申請ができませんので経由申請を行うことになり、分割設立会社の本店所在地がある登記所を経由することで申請することができます。
会社分割の登記の流れ
会社分割における登記の流れは、以下のとおりです。
- 株主総会で会社分割の決議
- 官報公告
- 必要書類の作成
- 登記申請
①株主総会で会社分割の決議
まず、会社分割を行うことを定めた会社分割計画書を策定し、それを株主総会で決議します。
②官報公告
会社分割が株主総会で承認されたら、今度は会社分割の実施を官報公告に記載する必要があります。官報公告を行う際は、官報の取扱代理店へ申し込みをします。しかし、実際に官報広告が出るのは申し込んでから3週間~4週間後となります。
また、官報公告は記載から1ヶ月以上の期間を設けなければならず、この期間中に登記申請を行うことはできません。なお、官報公告を出す際にも費用が発生します。一般的に、会社分割の内容のみであれば7万円~8万円かかり、決算公告も同時に行う場合は15万円~17万円が相場となっています。
③必要書類の作成
後述しますが、会社分割の登記には多くの書類が必要であり、その書類を作成しなくてはなりませんが、これは官報公告を出している1ヶ月の間に行うことでスピーディーに登記申請へ進めることができます。
④登記申請
1ヶ月の官報公告期間が終わると、法務局へ登記申請を出すことができるようになります。ここで、官報公告期間の間に作成した書類を、同時申請または経由申請のいずれかの方法で提出します。申請後、法務局で審査を行い、問題なければ登記処理がなされて手続きが完了となります。
会社分割の登記に必要な書類一覧
さきほどもお伝えしましたが、会社分割の登記には必要な書類が多く、すべてを揃えて提出しなければなりません。また、吸収分割と新設分割ではそれぞれの登記の種類も違うため、用意しなければならない書類が一部変わりますので気を付けなければなりません。
ここでは、会社分割の登記に必要な書類を、吸収分割と新設分割とでそれぞれご紹介していきます。ただし、お伝えする必要書類はあくまで一例であり、会社分割の内情によっては変わる場合があるので注意してください。
吸収分割の登記に必要な書類一覧
吸収分割の登記では、分割承継会社と分割会社でそれぞれ以下の書類が必要となります。
吸収分割における吸収分割承継会社の登記申請添付書類
吸収分割における吸収分割承継会社の場合、以下の書類を添付する必要があります。
- 吸収分割契約書
- 吸収分割契約を承認した分割会社、分割承継会社それぞれの株主総会の議事録
- 債権者保護手続きに関係する書面
- 資本金の計上証明書
- 分割会社、分割承継会社それぞれの株主リスト
- 司法書士に登記を依頼している場合は委任状
- 必要があれば新株予約権証券提供公告をしたことを証明する書面、あるいは株主名簿など株式をまだ発券していないことを証明する書面
- 分割会社の登記事項証明書
分割会社の登記事項証明書は経由申請を行った場合に必要となり、同時申請を行い、会社法人番号を記載した場合は不要となります。
吸収分割における分割会社の登記申請添付書類
吸収分割における分割会社の場合、登記の際に添付する書類は印鑑証明書のみです。ただし、司法書士に登記を依頼する場合は委任状も必要となります。
新設分割の登記に必要な書類一覧
新設分割の登記では、分割設立会社と分割会社でそれぞれ以下の書類が必要となります。
新設分割における分割設立会社の登記申請添付書類
新設分割における分割設立会社では、以下の書類が必要となります。
- 新設分割計画書
- 新設分割設立会社の定款
- 新設分割設立会社の役員の就任承諾書
- 新設分割設立会社の役員の印鑑証明書
- 新設分割設立会社の役員の本人確認証明書
- 必要がある場合は代表取締役の選定書
- 債権者保護手続きに関係する書面
- 新設分割計画を承認した分割会社の株主総会の議事録
- 資本金の計上証明書
- 分割会社の株主リスト
- 司法書士に登記を依頼している場合は委任状
- 必要があれば新株予約権証券提供公告をしたことを証明する書面、あるいは株主名簿など株式をまだ発券していないことを証明する書面
- 分割会社の登記事項証明書
なお、こちらについても分割会社の登記事項証明書は経由申請を行った場合に必要となり、同時申請で会社法人番号を記載した場合は不要となります。
新設分割における分割会社の登記申請添付書類
新設分割においても、分割会社は基本的に必要となるのは印鑑証明書のみであり、司法書士に登記を依頼する場合に委任状も必要となります。
会社分割の登録免許税
会社分割は登記を伴うため、司法書士に支払う費用のほかにも登録免許税が発生します。登録免許税はそこまで極端に高いわけではありませんが、それなりの金額にはなりますので留意しておくようにしましょう。
当然、会社分割には吸収分割と新設分割という2種類の手法がある以上、登録免許税の税額が決まる基準もそれぞれ異なります。吸収分割承継会社、分割会社、新設分割設立会社の登記の際に発生する登録免許税は、それぞれ以下のとおりです。
吸収分割承継会社の登録免許税
吸収分割承継会社の登録免許税は、事業の承継を実行した際に資本の額が増加するかどうかで税額が変わります。まず、吸収分割を行っても吸収分割承継会社の資本金の総額が増加しない場合、登録免許税は一律で30,000円となります。
一方で、資本金の総額が増加した場合は、増加した分の資本金に0.7%をかけて算出した金額が登録免許税となります。ただし、増加分の資本金に0.7%をかけて算出した金額が30,000円に満たなかった場合は、一律ので30,000円となります。
分割会社の登録免許税
分割会社の登録免許税は一番簡単であり、計算をする必要がありません。分割会社の登録免許税は一律30,000円と決まっています。
新設分割設立会社の登録免許税
新設分割設立会社の登録免許税は、新設分割設立会社の資本金の額によって決定されます。この際の計算方法は、新設分割設立会社の資本金緒額に、吸収分割承継会社と同様に0.7%をかけることで算出されます。
また、算出された金額が30,000円に満たない場合は、こちらも吸収分割承継会社と同様に一律30,000円となります。
会社分割では専門家の助けを借りよう
会社分割を行う際には、専門家の助けを借りることをおすすめします。中小企業であれば、株主総会や吸収分割契約を締結する際の交渉などを自分達だけで行うこともできるかもしれません。しかし、登記の手続きは手間や必要書類が多いため、どこかしらでミスをしてしまう可能性は低くありません。
また、官報公告や契約書、議事録の作成などといった必要書類の作成や手続きも、それぞれの書式やプロセスを把握しておく必要があるため、経営者の方だけで対応するのは難しく、そういった点を鑑みると専門家の助けは借りておいた方がいいでしょう。
登記の依頼は主に司法書士
登記などの手続きを踏まえて依頼する場合、依頼する専門家は主に司法書士となります。司法書士は公的な書類のプロフェッショナルであり、会社分割のみならず各種登記の知識に長けているため、協力を得られれば会社分割全体のスケジュールがスムーズに進行するでしょう。
ただ、司法書士に依頼する場合は当然報酬が発生します。どれだけの報酬が必要になるかは司法書士事務所によって異なり、依頼する手続きや作成する書類の内容によっても報酬額は変わります。当然、依頼する手続きが増えれば増えるほど、報酬額は大きくなりますが、一般的には20万円~30万円といわれています。
会社分割の相談先としてのM&A仲介会社
吸収分割の場合、他の会社に事業を承継することになるため、相手となる会社の経営者との交渉が必要となります。中小企業の場合、経営者は従業員とともに現場で活躍していることが多く、通常の業務に加えて交渉も進めていくのは難しいです。
そこで助けを借りたいのが、M&Aの専門家であるM&A仲介会社であり、各分野に精通しているアドバイザーがスムーズに会社分割を進めてくれます。
M&A仲介会社も依頼をすれば費用が発生しますが、最近では完全成功報酬により手続きが完了するまで費用が発生しないところも少なくありません。
M&A総合研究所には知識と経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、これまで培ってきたノウハウを活かしてM&Aをフルサポートいたします。
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会社分割における登記まとめ
会社分割は、組織再編やM&Aでよく使われている手法です。しかし、会社分割では株主総会の決議を得なければならず、登記を行わなければならないなど、株式譲渡のような手法と比べて手間がかかるのが難点です。
そのため、会社分割には登記や登記に際して必要な書類の書式・内容に関する知識が問われ、経営者は余計な労力や時間を費やしてしまう可能性があるでしょう。もし、登記などに関する知識に自信がない場合は、司法書士の協力を得たうえで会社分割を行った方がいいでしょう。
また、M&A仲介会社に依頼することで会社分割全体のサポートもしてくれますので、会社分割を最短のスケジュールで行うことも可能になります。
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