M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2025年9月26日更新業種別M&A
保険代理店のM&A・事業売却を徹底解説!最新動向や成功事例、メリット・デメリットまで
保険代理店業界では、後継者不足や事業拡大を背景にM&Aが活発化しています。本記事では、保険代理店のM&A・事業売却の最新動向やメリット・デメリット、成功のポイントを解説します。売却を検討中の経営者様はぜひご一読ください。
目次
なぜ今、保険代理店のM&A・事業売却が活発化しているのか
近年の保険代理店業界では、後継者不足や市場環境の変化を背景に、事業売却を含むM&Aが活発化しています。特に、経営者の高齢化に伴う事業承継問題は深刻で、第三者への売却を選択するケースが増加傾向です。また、大手代理店や異業種企業が事業拡大や新規参入を目的として買収に動くケースも見られます。保険代理店のM&Aを成功させるには、専門知識や交渉力が不可欠です。そのため、多くの経営者がM&A仲介会社などの専門家の支援を活用しています。
もしも会社売却やM&Aを行いたい場合は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A仲介会社であるM&A総合研究所には、知識と経験が豊富なアドバイザーが多数在籍しており、これまで培ったノウハウを活かしてM&Aをフルサポートいたします。
保険代理店業界の特徴・動向
保険代理店は、保険会社の代理として顧客に保険の提案や契約締結など各種サービスを提供する会社・人(募集人)をさします。近年は少子高齢化の影響を受けて市場が減少傾向にあり、それに伴って保険代理店の数も少なくなっています。
生命保険協会「2023年度版 生命保険の動向」によると、2022年度末の個人代理店数は54,586店となり、減少傾向が続いています。また、日本損害保険協会「日本の損害保険ファクトブック2023」によれば、2022年度末の損害保険代理店の実在数は164,611店と、前年度比で2.6%減少しました。このように、生命保険・損害保険ともに代理店の数は減少しており、業界再編の動きが加速しています。
保険ショップは増加傾向にある
保険代理店の数は減少傾向にありますが、保険ショップは増加傾向です。保険ショップは「乗合代理店」ともいわれ、一つの代理店が複数の保険会社と代理店契約を結ぶ形態をさします。一つの店舗で複数の保険商品を選べる点が大きな特徴です。
保険ショップはショッピングモール内に店舗を構えていることも多く、休日に買い物に来たついでに保険の相談ができることで、近年ではとくに若年層を中心に支持されています。
保険代理店でM&A・事業売却が行われる主な理由
ここまでご紹介した保険代理店業界の特徴や動向を踏まえ、事業売却やM&Aとの関係を見ていきましょう。
事業の選択を進めるための事業売却
保険代理店のほかに別事業も行っている場合、事業の選択と経営資源の集中を図るために保険代理店事業を売却するケースもあります。このケースは自動車整備事業を行っている傍ら、主に自賠責保険や自動車保険を扱うために保険代理店をしている会社に多いです。
保険代理店からは撤退しますが、他の事業を効率的に進め、会社全体としての業績を伸ばしていくためには、このような選択もときには必要になります。
事業承継のための事業売却
保険代理店においても、かつては親族内での事業承継が一般的でした。しかし近年は、経営者の高齢化と親族内に後継者がいない「後継者不在問題」が深刻化しています。貴重な顧客基盤や従業員を守るため、廃業ではなく第三者へのM&Aによる事業承継を選択するケースが増えています。M&Aは、後継者問題の解決だけでなく、経営者が創業者利益を獲得し、安心して引退後の生活設計を立てられるというメリットもあります。
事業拡大のためのM&A
小規模だけでなく中堅クラスの保険代理店であっても、減少傾向にある市場においてシェアの拡大は難しいです。保険代理店はそれぞれが特定の地域で基盤を持っており、M&Aを行うことで比較的簡単にシェアを拡大させることが可能になります。
また、保険代理店によって得意な対象(個人・法人)や商品・種目が違うことも多く、M&Aでその強みや苦手分野を強化できるためシナジー効果が得られます。
新規事業への参入を図るM&A
他業種の企業が新規事業へ参入する際にM&Aを活用するケースは多く、これは保険代理店業界も例外ではありません。
M&Aによって新規事業に参入する場合、その事業に強みを持つ会社を買収し、グループ事業として展開すれば自社で一から事業を開始するよりも比較的短期間で新規参入が可能になります。
また、保険は専門的な知識と募集をするための資格が必要です。その人材を育てるには多くの時間と費用が必要なので、M&Aによって新規参入するほうが費用を抑えられる可能性があります。それに加えて顧客や契約を引き継げるため、最初からある程度の基盤を持つことが可能になります。
保険代理店のM&A・事業売却におけるメリット・デメリット
ここで、保険代理店の事業売却のメリット・デメリットをご紹介しますが、まずは事業売却とはどのようなものかについて解説します。
事業売却とは
事業売却とは、基本的には会社の事業の全部または一部を他の会社に売却(譲渡)することであり、M&Aのスキームでは事業譲渡や株式譲渡が用いられることが多いです。また、事業譲渡では商権譲渡が用いられることもあります。
商権譲渡は営業権を売却することであり、主に保険代理店のほかに別の事業を行っている会社が活用します。買収した会社と共同で契約を管理する形式(代理店分担)で、売却した会社は売却後も手数料の一部をもらえます。
メリットとデメリット
事業売却には、売り手側にとって「後継者問題の解決」「創業者利益の獲得」「ノンコア事業の整理による経営資源の集中」といったメリットがあります。買い手側にも「事業規模の拡大」「新規エリアへの進出」「優秀な人材の確保」など多くの利点があります。一方で、希望する条件での売却が難しいケースや、M&A後の統合プロセス(PMI)がうまくいかず、従業員の離職や顧客離れを招くリスクも存在します。
保険代理店のM&Aで用いられる手法と価格相場
保険代理店のM&Aを検討する上で、代表的な手法と企業価値評価(バリュエーション)の考え方を理解しておくことが重要です。
主なM&Aスキーム(株式譲渡・事業譲渡)
保険代理店のM&Aでは、主に「株式譲渡」と「事業譲渡」の2つのスキームが用いられます。
株式譲渡は、会社の経営権そのものを包括的に譲渡する方法です。手続きが比較的簡便で、従業員の雇用や顧客との契約もそのまま引き継がれるのが一般的です。
一方、事業譲渡は、会社の事業の一部または全部を個別に売買する方法です。買い手は必要な資産や契約のみを選択して引き継げるため、偶発債務などのリスクを遮断しやすいメリットがあります。
保険代理店の売却価格の算出方法
保険代理店の売却価格は、保有契約の年間手数料収入をベースに算出されるのが一般的です。具体的には、「年間手数料収入 × 年倍率(マルチプル)」で大まかな相場が決まります。
この年倍率は、代理店の規模、取扱保険商品の種類(損保・生保)、収益性、従業員の定着率、顧客基盤の安定性など、多くの要素を考慮して1~3倍程度の範囲で決定されます。損害保険メインの代理店は比較的高い倍率がつく傾向にあります。
企業価値を高めるためのポイント
より高い価格で売却するためには、企業価値を高める取り組みが欠かせません。具体的には、「優良な顧客基盤の構築」「特定の保険商品に偏らないバランスの取れたポートフォリオ」「優秀な募集人の育成と定着」「コンプライアンス体制の強化」などが挙げられます。日頃からこれらの点を意識した経営を行うことが、M&A成功の鍵となります。
保険代理店の事業売却における注意点
保険代理店のM&Aを成功させるには、相手企業の選定が極めて重要です。特に、経営方針や企業文化が大きく異なる相手と統合すると、従業員のモチベーション低下や大量離職につながる恐れがあります。保険代理店事業の根幹は「人」であるため、従業員への丁寧な説明とケアは不可欠です。また、M&A後も顧客が安心して契約を継続できるよう、担当者の変更などに関する情報提供を慎重に行い、顧客離れを防ぐ必要があります。
買収側はリスクの引き継ぎに注意
株式譲渡を行った場合、買収側は売却側の債務や保証債務などのリスクについても引き継ぐことになります。株式譲渡は比較的簡単な手続きでスピーディーに行われるのがメリットですが、資産や従業員などのプラス要素だけでなく、負債などのマイナス要素も承継の対象です。
保険代理店事業にかかわらず、実際に簿外債務が表面化してM&Aが破断するケースもあります。買収をする際は専門家に依頼し、しっかりデューデリジェンスを行ったうえで進めるようにしましょう。
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【事例】保険代理店のM&A・事業売却事例3選
ここでは、実際に行われた保険代理店に関する事業売却やM&Aの事例についてご紹介します。
新生銀行がファイナンシャル・ジャパンを連結子会社化
2019年4月、新生銀行はファイナンシャル・ジャパンのすべての株式を取得して連結子会社化すると発表しました。ファイナンシャル・ジャパンは乗合代理店であり、在籍する専門家が複数の保険商品から顧客のライフプランに合った商品を提案するなど、コンサルティングに強みがある会社です。
新生銀行でも窓口で保険商品を販売しているが、コンサルティングという点では強みがあるとはいえず、ファイナンシャル・ジャパンを買収することでノウハウを共有し、販売チャネルの拡大や強化を図るとしています。
幸楽苑ホールディングスが子会社の保険代理店事業をヒューリック保険サービスに譲渡
2018年7月、ラーメン店「幸楽苑」の展開などを行う幸楽苑ホールディングスが、子会社の保険代理店事業をヒューリック保険サービスに譲渡することを発表しました。
これは、幸楽苑ホールディングスの連結子会社であるデン・ホケンの保険代理店事業をヒューリック保険サービスに譲渡したうえで、幸楽苑ホールディングスがデン・ホケンを吸収合併するという流れになっています。
デン・ホケンとしては、保険代理店事業をヒューリック保険サービスに引き継いでもらう形となり、デン・ホケン自体は最終的に幸楽苑ホールディングスに合併されて従業員の引き継ぎなどが行われ、解散することになりました。
この保険代理店事業の譲渡は、幸楽苑ホールディングスがグループ事業の選択と経営資源の集中の一環として行ったものであり、ラーメン店をはじめとした外食分野に集中した形です。
日本生命保険がほけんの110番を買収
2017年3月、生命保険大手の日本生命保険は、保険ショップの展開を行う「ほけんの110番」を買収することを発表し、同年4月に日本生命保険が「ほけんの110番」の株式の100%を取得しています。
日本生命保険は豊富な実績を誇り、生命保険業と付随業務・その他の業務を幅広く手がけ、海外展開も積極的に行っています。一方で「ほけんの110番」は、複数の保険会社と代理店契約を結ぶ店舗型乗合代理店で、九州地方を中心に全国で90を超える保険ショップを展開しています。
近年、複数の保険商品を比較検討できる保険ショップが若年層を中心に支持されており、日本生命保険もこのような利用者との接点を拡大するため、乗合代理店マーケットでの取り組みを進めていました。今回の買収もその一環として行われています。
「ほけんの110番」の買収によって日本生命保険は、自社の経営資源やネットワークを活かして「ほけんの110番」の事業を拡大し、そして利用者との接点拡大につなげるとしています。
保険代理店のM&A・事業売却は専門家への相談が成功の鍵
事業売却やM&Aの手法はさまざまあり、事業譲渡や株式譲渡があるほか、合併や会社分割などもあります。このような手法から自社の目的に合ったものを選び、さらに手続きの際には法務や税務、財務など、さまざまな分野で高度に専門的な知識が求められます。
そのため、自社だけで事業売却やM&Aを進めることは難しくなります。手続き上のトラブルを防ぐためにも、実際に行う際にはM&A仲介会社・M&Aアドバイザリーなどの専門家に依頼し、サポートを受けるのがおすすめです。
保険代理店の事業売却をお考えの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所にはM&Aの知識と経験が豊富なアドバイザーが多数在籍しております。
さまざまな業種のM&Aに携わってきた実績で培ったノウハウを活かしてM&Aをフルサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)無料相談をお受けしておりますのでお気軽にお問い合わせください。
まとめ
保険代理店業界では、少子高齢化などの影響により市場や保険代理店が減少傾向にありますが、保険ショップは需要が増加傾向です。このような中で各社はさまざまな事業戦略を策定していますが、後継者問題の解消や本業への集中などで事業売却するケースも少なくありません。
一方で、M&Aによって事業の強化や拡大を狙い、同じ分野で活躍する会社同士がM&Aを行って双方のノウハウやサービス体制などを活かし、シェアの拡大や競争力の強化を図るケースもあります。また、保険代理店事業へ新規参入するためにM&Aを行うケースもあり、今後もM&Aは活発化すると予想されます。
しかし、事業売却にしろM&Aにしろ、高度な専門知識や交渉力が必要となることから、実施の際はM&Aの専門家に相談して交渉からその後の手続きまでサポートを受けることをおすすめします。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。