2022年12月1日更新会社・事業を売る

地位承継とは?読み方と事業譲渡で知っておくべき契約上の地位の承継

事業譲渡でM&Aを行う時や不動産の引き継ぎなどの際は、地位承継を行う必要があります。本記事では、地位承継とは何か、地位承継と地位継承ではどちらが正しい読み方なのかなど、事業譲渡の地位承継で知っておくべきことを解説します。

目次
  1. 地位承継とは?
  2. 地位承継のメリット・デメリット
  3. 地位承継と地位継承はどっちの読み方が正しい?
  4. 事業譲渡で知っておくべき契約上の地位の承継の決まりとは
  5. 地位承継を行う際の注意点
  6. 事業譲渡と地位承継の相談先
  7. 地位承継のまとめ
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地位承継とは?

事業譲渡によってM&Aを行う場合、交渉で取り決めた不動産や営業許可などの権利義務関係を譲り渡さなければなりません。このような権利義務関係の主体を変更する手続きは地位承継と呼ばれており、事業譲渡以外にも相続で事業承継した場合などは地位承継を行うことになります。

例えば、不動産の賃貸借などで一般的に使われる言葉です。家主から家賃をお支払いして物件を借りている人を賃借人といいますが、その地位を承継(名義変更)することを地位承継と呼ぶのです。

地位承継の手続きには、書類の提出や契約している相手との合意などが必要です。この章では、地位承継とは何か、行われる状況などの基本事項を解説します。

地位承継について

地位承継とは、不動産や債券・債務といったさまざまな資産・負債・権利・義務を別な人に引き継ぐことです。例えば、不動産の場合、不動産の持ち主である賃貸人の地位承継と、借りる側である賃借人の地位承継があります。

地位承継を行うとその権利義務を所有する人が変わるので、トラブルが起こらないように手続きを進めることが重要です。特に、金融機関からの債務を地位承継する場合などは、金融機関からの同意を得て慎重に手続きを進める必要があります。

地位承継が行われる状況

地位承継が行われる状況の一例としては、M&Aの事業譲渡を行う場合が挙げられます。事業譲渡は、株式譲渡と違って包括承継ではないため、事業に関する権利・義務・資産・負債を個別に地位承継しなければなりません。

例えば、飲食店を事業譲渡する場合は、店舗や土地などの不動産を地位承継します。許認可や営業許可を地位承継する場合は、それらの承継も併せて行います。

地位承継のメリット・デメリット

地位承継は権利義務関係の主体が変わる重要な手続きであるため、そのメリットとデメリットを把握しておくことが大切です。メリット・デメリットを理解しておくことは、地位承継を行うべきか判断する時に役立つだけでなく、地位承継の手続き時のトラブル回避にも有効です。この章では、事業譲渡と不動産の地位承継を例にとり、そのメリットとデメリットを解説します。

地位承継のメリット

例えば、不動産における地位承継の場合、借りる側(賃借人)と貸す側(賃貸人)それぞれにメリットがあります。賃借人の場合、地位承継して別な人を賃借人にすると、新しい賃借人が保証金を納めて地位承継するため、保証金が償却されずに戻ってくるケースがあります。

新しい賃借人にとっては、新規で賃貸契約を結ぶ場合に比べて、地位承継をすると安い家賃をそのまま引き継げたり、敷金や仲介手数料を節約できたりする場合もあるのです。

事業譲渡の地位承継の場合、個別に地位承継を行うことで譲受する資産を選択できるメリットがあります。譲渡する側としても、不要な事業を地位承継で譲渡してコア事業に集中するといった戦略が可能です。

地位承継のデメリット

事業譲渡では、事業に関する資産・負債を全て個別に譲渡し、必要な地位承継を行う必要があります。これは非常に手間がかかる作業であり、株式を譲渡するだけの株式譲渡と比べるとデメリットです。

不動産の地位承継では、保証金の償却や仲介手数料が得られない場合がある点が賃貸人や仲介会社にとってはデメリットとなります。

地位承継と地位継承はどっちの読み方が正しい?

地位承継(ちいしょうけい)と似た言葉に地位継承(ちいけいしょう)があり、これらの違いがわかりにくく混乱することが多いと考えられます。承継と継承には意味の違いがあり、どちらの読み方が正しいのでしょうか。この章では、地位承継と地位継承の違いや、地位を継ぐことを意味する場合の正しい読み方を解説します。

承継と継承の違い

承継と継承の意味に明確な違いはありませんが、大辞林によると「承継は地位・事業・精神などを受け継ぐこと継承は身分・権利・義務・財産などを受け継ぐこと」と記載されており、異なる意味として定義されています。

一般的に「承継」は事業承継や資産承継といった、主に法律が絡む資産や権利の引き継ぎに対して使われる言葉です。対して「継承」は、王位継承や伝統芸能の継承といった法律の絡まない地位や伝統の引き継ぎに使われます。承継と継承の違いは下表のとおりです。

  承継(しょうけい) 継承(けいしょう)
意味 地位・事業・精神などを受け継ぐこと 身分・権利・義務・財産などを受け継ぐこと
使用例 事業承継・資産承継など 王位継承・伝統芸能の継承など

地位を継ぐ上で正しい読み方は?

辞書によると承継と継承は違う意味になってはいますが、その違いは非常に微妙であり、地位を引き継ぐうえでの正しい読み方がどちらなのかわかりづらい部分もあります。例えば、事業譲渡では、辞書の定義では承継にあたる地位・事業の引き継ぎだけでなく、継承にあたる権利・義務・財産の引き継ぎも行います。

しかし、事業譲渡の資産・負債の引き継ぎや不動産の引き継ぎなどでは、「地位承継」のほうが正しい読み方です。実際、地位を引き継ぐ際に市町村に提出する書類の名前は「地位承継届」となっており、継承ではなく承継が使われています。

一般的に、法律関係の手続きが絡む引き継ぎに関しては「承継」を使うと覚えておきましょう。

事業譲渡で知っておくべき契約上の地位の承継の決まりとは

M&Aで地位承継が重要になるのは、事業譲渡を行う場合です。事業譲渡は株式譲渡と違って経営権の譲渡はせず、事業資産を地位承継によって譲渡します。事業譲渡を行う際は、地位承継における契約上の注意点などを押さえておくことが大切です。

この章では、事業譲渡とは何かを簡単に述べた後に、事業譲渡における地位承継の注意点や地位承継の例を解説します。

事業譲渡とは

事業譲渡とは、会社や個人事業などを売買するM&Aの一種であり、事業資産を譲り渡す代わりに対価として現金を受け取ります。事業資産とは、事業を営むのに必要な不動産や設備、権利関係や負債などのことです。M&Aは株式を売買して経営権を譲渡する手法が多いですが、事業譲渡では株式の売買は行わないのが特徴です。

事業譲渡は事業資産を個別に譲渡するので、それぞれの資産や権利・義務について地位承継を行います。

事業譲渡を行う上で契約上の地位の承継には同意が必要

事業譲渡で譲渡する事業資産は業種などによってさまざまですが、例えば不動産や営業許可、債券・債務などがあります。これらの資産を譲渡するために地位承継するには、その資産に関して契約している相手との同意を得る必要があります。

例えば、店舗やオフィスを借りていてそれらを地位承継する場合、その不動産所有主の同意が必要です。同様に債権・債務を地位承継する場合は、その取引先や金融機関の同意を得なければなりません。

事業譲渡の際の地位の承継例

例えば、飲食店を事業譲渡する場合、店舗に使っている不動産の賃貸契約の地位承継を行います。ただし、営業許可など必要な許認可は譲受側が新たに取得する必要があります。相続で飲食店を受け継ぐ場合は、営業許可も地位承継で引き継ぐことが可能です。

建設業の事業譲渡の場合は、まずオフィスとして借りている不動産の地位承継を行います。建設機械をリースしている場合は、リース契約の地位承継も併せて行います。

ただし、建設業も飲食店の場合と同様、事業譲渡では建設業許可を地位承継できません。事業を譲受する側は、営業を始める前の段階で建設業許可を新規取得しておく必要があります。

【関連】事業譲渡・売却の手続き・流れは?全体のスケジュール・期間、注意点、法務の届出を解説!| M&A・事業承継の理解を深める

地位承継を行う際の注意点

事業譲渡であれ不動産の引継ぎであれ、地位承継を行う際は相手との合意を得ることが重要です。例えば、不動産の地位承継の場合、不動産の所有者から同意を得なければ地位承継を行えません。貸す側からすれば、借りる側が家賃をきちんと支払う能力があるかが重要なので、同意を得るのは当然といえます。

債務や営業許可などの地位承継に関しても、ほとんどの場合で相手の同意が必要です。ただし、不動産を貸す側(賃貸人)の地位承継では賃借人の同意を得る必要はないなど、一部例外もあります。

事業譲渡と地位承継の相談先

事業譲渡は一般的なM&A手法である株式譲渡よりも手続きが複雑であり、地位承継など株式譲渡にはない手続きも必要です。M&A総合研究所では、事業譲渡など多くのM&A支援実績があるアドバイザーがクロージングまで丁寧にサポートいたします。当社には弁護士も在籍しておりますので、地位承継に関する法律面でも安全なM&Aが可能です。

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M&A・事業承継ならM&A総合研究所

地位承継のまとめ

地位承継は事業譲渡でM&Aを行う時などに必要な手続きで、契約の主体を別な人に引き継ぎます。承継と似た言葉に継承がありますが、地位の引き継ぎの時は地位承継を用いるのが一般的です。

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