2024年4月23日更新業種別M&A

デイサービス業界の動向とM&Aのメリット!流れや注意点と売却・買収事例13選を解説【2024年最新】

超高齢社会を迎え、ますます需要が高まる介護事業のひとつに、デイサービスが挙げられます。デイサービス事業でも他業種同様にM&Aが積極的に行われているため、この記事ではデイサービス法人のM&A動向、相場、メリット・デメリットなどを解説します。

目次
  1. デイサービス業界とは?
  2. デイサービス業界の動向
  3. 社会福祉法人であるデーサービスのM&A手法
  4. デイサービス業界のM&Aの動向
  5. デイサービス業界のM&Aの注意点
  6. デイサービスのM&Aメリット・デメリット
  7. デイサービスのM&Aの流れ
  8. デイサービスのM&Aの相場と費用
  9. デイサービス業界のM&A事例
  10. デイサービス業界のM&Aまとめ
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デイサービス業界とは?

介護事業の1つであるデイサービスのM&Aを分析するにあたって、まずはデイサービスの概要を確認しておきましょう。

デイサービスの定義

デイサービスとは介護施設に入所せずに日帰りで通って受けるサービスのことです。通所介護とも呼ばれ、サービス内容は各利用者によって異なりますが、代表例は、食事や入浴など日常生活の行動に関する介護、各種レクリエーション、機能訓練やリハビリテーションなどです。

デイサービスの種類

デイサービスは都道府県・政令市・中核市または市区町村が管轄する施設です。利用者がデイサービスを受けるためには「要介護1~要介護5」の認定を受けていることが条件であり、サービス提供できる人数や事業内容によって以下のような類型に分類されています。
 

  類型または対象者 規模要件
一般型 地域密着型 利用者定員数が18人以下の施設
通常規模型 月間利用者(延べ人数)が300超~750人の施設
大規模型Ⅰ 月間利用者(延べ人数)が900人以内の施設
大規模型Ⅱ 月間利用者(延べ人数)が900人超の施設
認知症対応型通所介護 認知症高齢者が利用対象者
※要支援者も利用可能
利用定員が12名以下の施設
療養通所介護 要医療ケア高齢者が利用対象者
※要支援者も利用可能
利用定員が18名以下の施設


上記のうち、療養通所介護に分類される施設は非常に少なく、現在あるデイサービスの大半は「一般型」に該当します。

デイサービス業界の動向

高齢化の進む日本ではデイサービスの需要が年々増加しており、デイサービス業界はそれに伴う課題も抱えています。ここでは、デイサービス業界の市場規模や動向、今後の課題などをみていきましょう。

デイサービス業界の市場環境

厚生労働省が公表した「令和3年度介護保険事業状況報告(年報)」によると、2021年度の保険給付は介護給付金と予防給付金を合わせ11兆26億円であり、利用者負担分を差し引いても9兆8487億円となりました。

また、高額介護サービス費・特定入所者介護サービス費・高額医療合算介護サービス費を含むと費用額は11兆2838億円となり、国内における介護サービスの需要が非常に高いことがうかがえます。

この額は介護保険事業全体の合計であり、デイサービスは居宅介護サービスと地域密着型介護サービスの2つに含まれるため、デイサービス単体の額はわかりませんが、国内人口における高齢者の増加比率などを考えると今後さらに市場規模が大きくなるのは間違いないといえるでしょう。

出典:厚生労働省「令和3年度 介護保険事業状況報告(年報)」

要介護高齢者の増加

日本の高齢化は急激な速度で進行しており、同時に介護保険の対象となる要介護(要支援)の高齢者数も増加の一途を辿っている状況です。

厚生労働省が公表している資料によれば、介護保険制度が開始された2000年の介護サービスおよび介護予防サービスの年間受給者は約218万人でしたが、2020年は約622万人と20年間で約3倍に増加しました。

また、2021年は約638万人、2022年は約652万人とさらに年間受給者数が増えており、2025年には団塊世代の約800万人が後期高齢者となります。

そのような状況を考えると、要介護者あるいは要支援者の人数が今後さらに増加するのは間違いなく、介護給付費の上昇や介護を行う人材の不足など、デイサービスなど介護にかかわる業界の課題が多いのが実情です。

参考:厚生労働省「令和4年度 介護給付費等実態統計の概況」

介護給付費の急上昇

要介護高齢者数の増えるにつれ、介護給付費も増加し続けています。厚生労働省の資料によれば、2000年度の介護給付費は約3.6兆円でしたが、2020年度は11兆1912億円に昇り、20年間で4倍弱に増加しました。

2025年には介護給付費が21兆円にまで上昇すると見込まれており、近年では年金や医療など社会保障制度の持続可能性が問題視されています。少子化に歯止めがかからない現状では、今後どうやって介護人材を確保するかという問題に加え、介護給付費の抑制が喫緊の課題です。

参考:厚生労働省「令和4年度 介護給付費等実態統計の概況」

倒産状況

東京商工リサーチの調査によれば、2022年の「老人福祉・介護事業」における倒産件数は143件(前年比76.5%増)であり、介護保険制度が開始された2000年以降では最多となりました。

その要因として考えられるのはコロナ禍の影響が長引いていることや物価高が続いていることなどです。なかでもコロナ関連の倒産件数は63件と、前年比5.7倍と急増しています。

また、食材や光熱費などの高騰が続いていることも経営悪化要因のひとつです。老人福祉・介護事業は介護報酬によってサービス料金が固定されており、物価高騰分は転嫁できないため赤字が続いている事業所も少なからずみられます。

2024年には介護報酬と介護保険制度の改正が予定されていますが、その内容によってはさらに厳しい状況に置かれる事業者もでてくるでしょう。その結果、経営効率化が図れない事業者の倒産が増える可能性も考えられます。

参考:東京商工リサーチ「コロナ禍と物価高で急増 「介護事業者」倒産は過去最多の143件、前年比1.7倍増~ 2022年「老人福祉・介護事業」の倒産状況 ~」

デイサービス業界の課題

デイサービス業界の課題としては以下の2点が挙げられます。

人材不足

高齢化が進む日本ではデイサービスなど介護事業の需要は高まる一方ですが、デイサービス業界は慢性的な人材不足であり、離職率も全産業平均に比べるとやや高めです。

慢性的な人材不足の要因としては、他業種よりも労働条件がよくないことや人材獲得の競争が厳しいことなどが挙げられ、なかでも有資格者は新規採用が難しくなっています。また、離職率は小規模事業者ほど高くなっており、特に1年未満での離職率が他業種よりも高いのが現状です。

このような状況を打破するために国は人材確保促進政策を打ち出していますが、現時点では根本的な人材不足解消には至っておらず、高齢者の増加を考えると人材不足解消は多くのデイサービス事業者にとって大きな課題となっています。

IT化への遅れ

デイサービス業界にとって、介護報酬がどう改正されるかは経営に直結する大きな問題です。近年、介護報酬は切り詰められる方向であり、デイサービス業界の事業者にはいかに経営を効率化できるかが課題となっています。

経営効率向上にはIT導入が効果的ですが、デイサービス業界はIT化が遅れているのが現状です。デイサービス業界の事業者にとって、人材不足を補い、サービスの質向上や他社との差別化を図る意味でもIT化への対応が急務といえるでしょう。

現在、国は社会福祉政策の重点項目に「地域包括ケアシステムの推進」を掲げており、デイサービス業界には地域の医療福祉関係機関や専門家と切れ目のない連携の構築が求められています。

参考:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」

社会福祉法人であるデーサービスのM&A手法

デイサービス事業の売買方法は、企業の業態によって異なります。デイサービスを行っている法人が通常の株式会社であれば、M&Aの手法は他の株式会社と基本的に変わりません。

ただし、デイサービスを行っている施設が社会福祉法人である場合は、注意が必要です。社会福祉法人は株式会社ではないため、M&Aの手法が通常とは異なります。

社会福祉法人の経営権の獲得方法

株式会社が行う一般的なM&Aの手法は、株式譲渡による株式の取得(および、これに伴う経営権の獲得)が代表的ですが、社会福祉法人は株式を持たないため、経営する理事長や理事会のメンバーを3分の2以上入れ替えることで経営権を獲得します。そのため、株式の取得プロセスがなく、また対価を必要としません。

社会福祉法人の事業譲渡

社会福祉法人のM&A手法には事業譲渡合併もあり、これらの手法ではプロセスが異なります。事業譲渡は事業を売買する手法であるため、現金の対価が必要です。

また、事業譲渡に伴う資産や従業員との労働契約などの引継ぎを行う際にさまざまな手続きが必要となるため、煩雑なプロセスになりやすいです。

社会福祉法人の合併

合併は複数の社会福祉法人を1つに統合する手法ですが、所轄官庁が関与する中で行わなければならないなど、法的な拘束が非常に強いです。仮に定められた手続きを違反するようなことがあれば、合併自体が無効化されてしまうおそれがあるため、実行には細心の注意が必要です。

このように、M&Aには専門的な知識が欠かせませんが、デイサービスを有する社会福祉法人のM&Aの場合は通常のM&Aと異なる部分が多いため、社会福祉法人のM&Aの経験があるか、あるいは社会福祉法人のM&Aに特化した専門家の協力を得ることが重要です。

M&A総合研究所であれば、経験豊富なM&Aアドバイザーが在籍しており、M&Aを専任フルサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ、譲受企業様は中間金がかかります)。

随時、無料相談を受けつけておりますので、デイサービス事業のM&Aをお考えの際には、お気軽にお問い合わせください。

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デイサービス業界のM&Aの動向

訪問介護 デイサービスのM&A・事業承継
訪問介護 デイサービスのM&A・事業承継

ここでは、介護サービスの1つであるデイサービス事業に関して、実際、現実にはどのようなM&A動向が見られるのか確認します。

ゼロからの立ち上げに伴う負担の低減

デイサービスなどの介護事業は一定の利用者数を確保すれば安定的に収益を上げられますが、介護士や設備の確保・所轄官庁からの許認可などが必要とされるため、ゼロから立ち上げることは容易ではありません。

しかし、M&Aで既存の事業所や社会福祉法人を買収すれば、これらのプロセスを省けるため、負担を大きく減らせます。このメリットは社会福祉法人でも得られるもので、事業の拡大を図る際に他の社会福祉法人を買収することで介護士や設備を確保することが可能です。

人材不足によるM&A

デイサービスを含む介護事業では、慢性的な人材不足が課題です。デイサービスを行う施設には配置人員の基準が設けられており、規模や類型によって決められた人数の介護職員・看護師・生活相談員の常勤させることが定められています。

基準を満たしていない場合は介護サービスを提供することができませんが、事業者側が経験ある有資格者を一度に確保するのは難しいのが現状です。

このような人材不足を解消する手段としてM&Aが活用されるケースは多く、譲受側はM&Aによって譲渡側の経験ある介護職員や有資格者などを一度に確保することができます。

人材確保には新規採用という方法もありますが、採用コストがかかるうえ場合によっては教育にかける期間も必要です。M&Aを活用すれば効率的に人材を確保することができ、コスト・時間の削減にもつながります。

介護報酬の改定に伴う利益低下

介護事業でM&Aが増加している背景には、介護事業が抱えている問題も関係しています。まず、介護報酬がマイナス改定された場合、社会福祉法人が得られる利益は低下する点に問題があります。

そもそも介護事業は小規模の事業所が多く、こうした事業所では経営が不安定だったり、後継者が不在で存続が難しくなっていたりなど、さまざまな問題を抱えています。

しかし、デイサービスをはじめとした介護事業は公共性が高い事業であり、利用者や地域への影響を考えると廃業することが難しい事業です。とはいえ、介護報酬のマイナス改定があると経営者が事業を手離さざるを得ない状況に陥るケースもあり、M&A増加の要因になっています。

このように、デイサービスをはじめとする介護事業のM&Aの増加は、介護業界へのニーズに加え、買い手と売り手の立場、それぞれの意図がかみ合っているために発生しています。

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デイサービス業界のM&Aの注意点

デイサービス業界のM&Aを実施する際は、いくつか意識しておくべき点があります。ここでは、主な注意点をみていきましょう。

目的の明確化

自社あるいは事業を売却したり取得したりする理由にはさまざまなものがあります。その目的によって適したM&A手法や交渉先の絞り込み条件も変わるため、最初にM&Aを行う目的を明確化することが大切です。

M&Aプロセスを進めるうえでは、譲歩や優先順位付けなど判断が必要な場面が何度もでてきます。このような場面で間違った判断をしないためにも、M&Aを行う目的を意識して進めていくことが重要です。

建物などの老朽化確認

デイサービスの事業所(建物)や設備などがM&A対象に含まれる場合は、プロセスを進める前に状態を確認しておくことがポイントです。

譲受(買収)側は、デイサービスの事業所や設備に修理やメンテナンスが必要なのか、必要な場合は概算費用を把握し、M&Aという投資を行う判断材料のひとつにします。

メンテナンスがしっかり行われているほうが高い評価を得やすくなるので、譲渡(売却)側はM&Aの検討段階で建物や設備の状態をチェックし、必要箇所は可能な限り対応しておきましょう。

従業員の流出防止

デイサービスのM&Aでは、譲受(買収)側が人材確保を目的とするケースは多いです。もしM&Aを行うタイミングでキャリアやノウハウのある従業員・有資格者が離職してしまうと、譲受(買収)側は想定していた効果が得られない可能性もでてきます。

譲渡(売却)側は従業員の流出が起こらないよう対策をとるとともに、M&A実施については適切な時期に説明することが大切です。

専門家への相談

デイサービスのM&Aは運営主体が株式会社か社会福祉法人かによって変わりますが、どちらにおいても専門的な知識が不可欠です。また、事業所運営をしながらM&Aプロセスを進めていくため、通常業務に支障をきたせばサービス利用者へも影響が及びかねません。

自社の負担を最小限にとどめ、かつM&Aを効率的に進めていくためにも、M&Aの検討段階から専門家へサポートを依頼することをおすすめします。

デイサービスのM&Aメリット・デメリット

デイサービス事業を対象とするM&Aの場合、実際にどのようなメリット・デメリットがあるのか、譲受企業(買収側企業)、譲渡企業(売却側企業)に分けて紹介します。

譲受(買収側)企業のメリット

デイサービス事業を買収する場合のメリットには、以下のようなものが挙げられます。

新規エリアへの事業進出

譲受(買収)側が事業エリアを拡大したい場合、自社の力だけで進めていくとすれば事業所を開く場所を探して認可申請をし、必要な設備の工事なども行わなければなりません。

M&Aによって当該エリアでデイサービス事業を展開している譲渡(売却)側を取得すれば、サービス利用者も引き継ぐことができるため効率的かつ短期間でエリア拡大ができます。

スケールメリット

デイサービスでは利用者のおやつ・介護用品・消耗品などを購入しますが、事業規模が拡大すれば消耗品を大量購入できるので、単価を下げることでコスト削減につながる点がメリットです。

また、デイサービス業界ではIT化による業務効率向上が急務ですが、設備投資は導入規模が大きくなるほどコストメリットが得られます

人材獲得

デイサービス事業を安定して行うためには、十分な人材を確保していなければなりません。人材不足が慢性的となっているデイサービス業界では、人材確保を目的とするM&Aも多くみられます。

譲受(買収)側にとって、譲渡側(売却)側の従業員を一度に獲得でき、新規採用だけでは確保が難しい有資格者も獲得できる点は非常に大きなメリットです。

また、譲渡側(売却)側の従業員は現場で経験を積んでいるため、利用者へのサービスの質を保ったまま事業を行なえる点もメリットとして挙げられます。

新規事業への参入

今後、デイサービスなどの介護事業は需要が高まることが確実であるため、近年では異業種からの新規参入するケースもみられます。新規事業の立ち上げは時間・コストがかかるうえ、どのくらい収益が見込めるのかは不確実なので当然リスクもあるものです。

M&Aでデイサービス事業を手がけている譲渡(売却)側企業を取得すれば、新規参入のリスクを抑えることができ、時間・コストも削減することができます。

また、譲渡(売却)側の人材やノウハウ、サービス利用者も引き継ぐことができるので、参入後の事業を効率的に進められる点も大きなメリットです。

譲受(買収側)企業のデメリット

デイサービス事業を買収する場合のデメリットには、以下のようなものが挙げられます。

多額の資金が必要

M&Aで企業あるいは事業を買収するためには、多額の資金を用意しなければなりません。買収資金は事業のみを取得するよりも企業そのものを取得するほうが高くなり、譲渡(売却)側が優良企業であるほど高額となるのが一般的です。

ですが、多額の買収資金をかけてM&Aを実行しても、想定していた結果が得られないなどのリスクも伴います。譲受側(買収)側にとって、多額の買収資金が必要となる点やM&A後に成功するかは不確実である点はデメリットのひとつです。

従業員同士の摩擦

M&A後はこれまで違った企業風土で働いていた従業員がひとつの組織下で業務を行います。そのため、なかには従業員同士の意識の違いから摩擦が生じることもあるでしょう。

意識面を融合させるためにM&A後はPMIと呼ばれる統合作業を行いますが、それでも従業員同士がうまくいかないケースも考えられます。

従業員同士の摩擦は業務に支障をきたす可能性もあり、そのリスクを完全に排除するのは難しい点は譲受側(買収)側にとってデメリットといえるでしょう。

売り手が見つからない

自社の希望条件に合った譲渡(売却)企業は、必ずみつかるというものではありません。地域や市場動向によっては、M&Aの実施タイミングに譲渡(売却)企業がみつからない可能性もある点は、譲受側(買収)側のデメリットのひとつです。

譲受側(買収)側はよい相手先をみつかったタイミングを逃さないよう、買収を検討したら早めに準備をしておき専門家に相談しておくとよいでしょう。

譲渡(売却側)企業のメリット

デイサービス事業を売却する側には、主に以下のようなメリットがあります。

後継者問題の解決

後継者候補がいないために廃業を検討している場合、M&Aを活用することで事業承継を行うことができます。企業が将来的に発展していくためには事業承継を適切な時期に行うことが重要ですが、近年は後継者がいない事業者も多く、後継者問題の解決は国にとっても大きな課題です。

団塊世代の経営者の多くが引退を迎えるタイミングに来ていますが、事業承継を考えていても後継者候補がいない企業も増えています。

M&Aによる事業承継は第三者の企業を引継ぎ先(後継者)とするため、株式などの取得費用を心配する必要はなく幅広い範囲から引継ぎ先を探せる点も大きなメリットです。

従業員や利用者の不安解消

後継者不在だけでなく、なんらかの理由で現経営者が廃業という選択をした場合、従業員は雇用を失うこととなり、デイサービス利用者はほかの事業所を探さなければなりません。

デイサービス事業からの撤退や廃業は従業員や利用者にとって大きな不安となりますが、M&Aを活用すれば従業員の雇用や利用者も他社へ引き継ぐことができます。

従業員の雇用は株式譲渡を用いた場合は包括的に引き継がれますが、事業譲渡によって一部事業を売却する場合は譲受(買収)側と従業員が個別に雇用契約の巻きなおしが必要です。

売却益の獲得

中小規模事業者の場合、経営者が自身の退職金を確保していることは少ないため、引退後の生活に不安があるというケースもあるでしょう。

M&Aの場合、株式譲渡であれば株主(オーナー経営者)、事業譲渡であれば企業(法人)が対価を受けとります。事業譲渡を用いた場合は、会社(法人)が得た売却益を現経営者は退職金として得ることが可能です。

売却益の獲得はM&Aの大きなメリットであり、自社あるいは事業が譲受(買収)側から高く評価されれば得られる額も高くなります。

大手の傘下で経営強化

企業が発展・成長していくためには事業規模を拡大したり設備投資を行ったりなどの資金が必要です。ですが、中規模事業者の場合は自社のリソースだけでは難しいケースも多いです。

M&Aは一般的に譲受(買収)側のほうが譲渡(売却)側よりも規模が大きいため、その傘下となることで経営基盤の強化を図ることができます。経営基盤が強化されれば事業の成長により期待できることもM&Aの大きなメリットです。

譲渡(売却側)企業のデメリット

デイサービス事業を売却する側にも、主に以下のようなデメリットが存在します

買い手が見つからない可能性

譲受(買収)側と同様、M&Aのタイミングや市場動向などによっては希望条件に合った相手先がみつからない可能性もあります。

どれだけ魅力のある企業であっても、相手先がみつかるまでに時間がかかるケースもあるため、実施を検討している場合は早めに専門家へ相談して準備しておくことがポイントです。

希望条件で売却できない可能性

M&Aの最終的な条件や価額は、相手先との交渉によって決まります。交渉で自社の希望条件すべてが叶うというケースは非常に少なく、なにかしら譲歩しなければならないのが普通です。

売却価額は企業価値を交渉ベースとするため、高値での売却を実現するためにはM&A前に「磨き上げ」を行っておく必要があります。

磨き上げには財務状況の改善・技術力の強化などいくつかの方法があり、すぐに改善できない要素もありますが、可能な要素は対応しておくことがポイントです。

経営権限が小さくなる

M&Aによって自社を売却した場合、M&A後は譲受(買収)側の経営方針に従い事業運営を進めます。中小規模事業者は経営者の意向で事業運営を行っているケースが多いですが、M&Aで売却した場合は経営権限が小さくなるため物足りなさを感じることもでてくるかもしれません。

経営基盤の安定やシナジー発揮など大きなメリットが得られる一方で、経営権限の小ささをデメリットと感じるケースもなかにはあるでしょう。

競業避止義務

競業避止義務とは、売却(譲渡)対象と同一業種の事業を一定期間行わないことを取り決めるものであり、譲受(買収)側が不利益を被ることを防止することが目的です。

M&Aにおいて譲渡(売却)側が売却したのと同じ事業を立ち上げれば、ノウハウなどを把握しているため譲受(買収)側にとって新たな競合相手になってしまいます。

このような事態を避けるために定めるのが競業避止義務であり、最長で20年間までの期間を定めることが可能です。この期間は交渉で決めることができるので、実際には数年間とするケースが多くみられます。

ただし、事業譲渡を用いたケースは、最終契約に記載がなくとも競業避止義務があるため注意が必要です。

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デイサービスのM&Aの流れ

デイサービスのM&Aを実施する際は、全体の流れをあらかじめ頭にいれとくと準備がしやすくなります。なお、M&Aの流れは使用する手法によって多少変わる部分はあるものの、基本的な部分は同じです。ここではデイサービスのM&Aの流れを譲渡(売却)側の視点から解説します。

M&Aの専門家へ相談

M&Aによる売却を決めたら交渉先を探したり使用するM&A手法を決定する必要がありますが、その際はM&A仲介会社などの線もカニ相談することが一般的です。M&Aの専門家へ相談することで、自社に合った交渉先を探しやすくなりM&Aの成功率も高めることができます

M&A支援を手掛ける専門家によって得意とする案件規模や業種があり、手数料体系もさまざまです。自社の目的に合った信頼できる専門家を探すことが重要なので、支援実績や得意とする案件規模、手数料体系、アドバイザーとの相性などの複数要素から総合的に判断するとよいでしょう。

買収候補の選定・交渉の打診

支援を依頼する専門家が決まったら、次は交渉を行う買収候補を探します。自社の希望条件をアドバイザーへ伝えると複数社の買収候補をリストアップしてもらえるので、そこから絞り込むかたちが一般的です。

次に交渉したい買収候補が決まったら、アドバイザーを通じてM&A交渉を打診します。交渉相手の選定段階で使用するのは「ノンネーム」と呼ばれるものであり、社名や詳細な事業内容などは伏せた資料です。

具体的な内容の開示は、双方にM&A交渉の意思があると確認でき、秘密保持契約を締結してから行います。M&Aにおける秘密保持契約は、互いに知り得た情報をM&A以外で使用しないこと及び第三者へ漏洩しないことを約束し、万一違反した場合の責任について取り決めるものです。

秘密保持契約の締結後、譲受(買収)側・譲渡(売却)側は詳細情報を開示し、具体的なM&A交渉へ進みます。

トップ面談・条件交渉

トップ面談では譲受(買収)側・譲渡(売却)側の経営者が直接会い、事前に開示された資料での不明点を質問したり、経営理念やM&A後のビジョンなど書面では伝わりにくい部分や互いの人間性などを確認します。また、トップ面談の主な目的は信頼関係の構築であるため、一般的に価額やM&A条件などの交渉は行われません。

トップ面談によって譲受(買収)側・譲渡(売却)側の双方がM&A成立に前向きであれば、価額・条件・スケジュールなど細かな内容について具体的な交渉を進めていきます。

基本合意の締結

トップ面談に具体的な交渉を進め、譲受(買収)側・譲渡(売却)側とがM&A内容に大筋合意したら、基本合意を締結します。基本合意書は売却価額・使用するM&A手法・諸条件など、その時点までに交渉し合意した内容を記載したものです。

基本合意書の締結は、その時点までに取り決めた内容について認識のずれが生じないように行うものであり、この時点ではまだM&A成立が確約されているわけではないため、デューディリジェンスに関する内容や独占交渉権など一部事項を除き、法的な拘束力はありません。

デューデリジェンス

M&Aのデューデリジェンスとは、譲受(買収)側が譲渡(売却)側に対して行う買収前調査のことです。譲受(買収)側は譲渡(売却)側から事前開示された情報が事実と合っているか、買収によるリスクの有無はあるかなどを調査します。

デューデリジェンスは財務・人事・法務などの各方面を専門家が調査し、その結果は譲受(買収)側がM&A実行を判断する材料となるものです。

譲渡(売却)側に費用負担は一般的に生じませんが、追加資料の提出などを求められた場合は誠実な対応が求められます。

なお、デューデリジェンスの結果は最終交渉に反映されるため、大きなリスクや問題が発覚した場合は条件や価額の変更だけでなく、M&A交渉自体が白紙になる可能性もあることは理解しておきましょう。

最終交渉・最終契約の締結

譲受(買収)側がM&Aを実行すると判断したら、最終的なM&A条件や価額を決めるための最終交渉へ進みます。最終交渉にはデューデリジェンスの結果が反映されるため、基本合意締結時とほぼ同じ内容になるケースもあれば、価額が引き下げられたり条件が変更されたりするケースもあることを理解しておきましょう。

最終交渉を行い、譲受(買収)側が譲渡(売却)側とが取り決めたすべての内容に合意したら、最終契約書を締結してM&Aは成立となります。

なお、最終契約書は記載されたすべての内容に法的な拘束力があり、締結後は特別な理由がない限りM&Aの撤回は認められません

クロージング

クロージングとは、M&A対象企業(事業)の経営に関する権利を譲受(買収)側へ移転させ、対価の支払い手続きを行うことです。

クロージングを行うためには、最終契約書で定めた前提条件(クロージング条項)を譲渡(売却)側が満たしている必要があります。

使用したM&A手法によってクロージングで行う手続きが違うため、アドバイザーと確認しながら間違いないよう進めることが重要です。そしてクロージングが済んだらM&Aの一連の流れは完了となります。

デイサービスのM&Aの相場と費用

デイサービスのM&Aを行う当事者にとって相場価額や費用は関心の高い事項ですが、M&Aには「企業規模がこのくらいであれば売却価額はいくら」といった明確な相場はありません。

実際の価額交渉は企業価値の評価額をベースに行われますが、デイサービスの運営主体によって異なる部分もあるため注意が必要です。ここでは、デイサービスのM&Aの目安価額を簡易的に計算する方法や、運営主体による違いを紹介します。

簡易的な計算方法

実際のM&Aにおいて価額交渉ベースとなるのは、譲渡(売却)側の企業価値評価です。ですが、中小規模デイサービス事業者の場合、時価総額に営業利益の数年分を加算した額を大まかな目安と考えることができます。

計算式は「時価純資産+営業利益×2〜5年」で求めることができ、営業利益の年数は任意設定することが可能です。あくまでも目安であり実際の最終価額とは異なる場合もありますが、事前に目安を知っておけば実際の価値より安値で売却してしまうリスクを下げることができます。

デイサービスの運営主体による違い

デイサービスの運営主体には、株式会社と社会福祉法人の大きく2つがあります。運営主体がどちらかによって、M&A価額の考え方が変わるため注意が必要です。

株式会社の場合

デイサービスの運営主体が株式会社の場合、株式譲渡によって会社そのものを売却するか、事業譲渡によって一部事業のみを売却するかによってM&Aの売却相場と費用が変わります。

もちろん企業価値評価額も関係しますが、会社そのものを売却するほうが一部事業を売却するより額が大きくなり、費用も高くなるのが一般的です。

中小規模デイサービスのM&Aでは純資産価値にのれん代を加算して価額を算定することが多いですが、価額にはM&A後に想定されるシナジーやリスク、譲渡(売却)側の財務状況なども考慮されます。

社会福祉法人の場合

デイサービスの運営主体が社会福祉法人の場合、法人そのものを取得(合併)するか一部事業のみを事業譲渡で取得するかによって対価の考え方が大きく変わるたえ注意が必要です。

社会福祉法人には株式や持分がないため、経営権を取得する際は理事長と理事会メンバーを譲受(買収)側の人員と入れ替える方法で行います。そのため、取得対価は発生せず、代わりに理事長や理事会のメンバーに支払う退職金が必要です。

一方で事業譲渡によって一部事業のみを取得する場合は、株式会社と同様、デイサービス事業の価値を評価してその額をもとに交渉を進め譲渡価額を決定します。事業の価値には将来の収益性も加味されるため、DCF法によって価値を算出するケースが一般的です。

ですが、デイサービスの運営主体が小規模の社会福祉法人であれば、直近利益をベースに将来の収益性を算出する方法を採るケースもあります。

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デイサービス業界のM&A事例

デイサービス事業関連のM&A事例の中から13件ピックアップして紹介します。

①エフビー介護サービスがスマートケアタウンを子会社化

2023年7月、エフビー介護サービスは長野県のスマートケアタウンを完全子会社化すると発表しました。譲渡側のスマートケアタウンは、通所介護事業所と小規模多機能型居宅介護の2つを長野県岡谷市で運営しています。

エフビー介護サービスは、デイサービス・有料老人ホームなど介護事業所の運営や、介護用品の販売・レンタル事業を手掛ける企業です。

エフビー介護サービスは、関東・信越エリアに118カ所の介護事業所を持っており、スマートケアタウンの子会社化によって事業エリアを拡大するとともに人員配置効率化や介護サービスの充実、業務効率の向上を図ることで収益性の拡大を目指すとしています。

参考:エフビー介護サービス株式会社「スマートケアタウン株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」

②SOMPOケアがエネルギア介護サービスを子会社化

2023年7月、SOMPOケアは広島県のエネルギア介護サービスを完全子会社化したと発表しました。譲渡側のエネルギア介護サービスは、デイサービス・訪問介護・居宅介護などの事業や老人ホームの運営などを行う企業であり、最終株主は中国電力です。

SOMPOケアは介護事業を専門とし、有料老人ホームやグループホームの運営、居宅サービス事業などを展開しています。本M&Aにより、SOMPOケアは中国電力と協力し、中国エリアでの高齢者向け施設の開発などを進めていくとしています。

参考:SOMPOケア株式会社「株式会社エネルギア介護サービスの株式取得(子会社化)に関するお知らせ 」

③出光興産がQLCプロデュースを完全子会社化

2021年4月、出光興産は介護事業を手掛けるQLCプロデュースを完全子会社化したと発表しました。QLCプロデュースは、直営・フランチャイズの両形態による自立支援デイサービスを全国163事業所で運営しています。

出光興産の主軸はエネルギー開発・供給事業や高機能素材の製造販売事業などですが、近年の国内における石油需要減少をうけ、全国の自社既存販売店を活用した新規事業の展開を考えていました。

QLCプロデュースを子会社化は介護事業への新規参入が目的です。今後は全国にある既存販売店を活かしたサービスの提供など、事業多角化に取り組むとしています。

参考:出光興産株式会社「QLCプロデュース株式会社の株式譲渡契約を締結」

④ユニマット リタイアメント・コミュニティがアメニティーライフを子会社化

2020(令和2)年10月、ユニマット リタイアメント・コミュニティが、三井住友建設の子会社アメニティーライフの株式を取得する契約を締結しました。全株式を取得し完全子会社化する契約で、株式譲渡の実行予定日は2021(令和3)年2月です。

ユニマット リタイアメント・コミュニティは飲食事業とともに介護事業も行っている会社です。一方、アメニティーライフは、介護付き有料老人ホーム「アメニティーライフ八王子」(東京都八王子市)の運営事業を行っています。

ユニマット リタイアメント・コミュニティとしては、同地域で行っている既存の介護事業とのシナジー効果をもくろみ、このM&Aを実施しました。

参考:株式会社ユニマットリタイアメント・コミュニティ「株式の取得(子会社化)に関するお知らせ 」

⑤広域社会福祉会がケアサービスに事業譲渡

2020年11月、広域社会福祉会は、これまで行ってきた訪問介護事業をケアサービスに事業譲渡しました。譲渡価額は、500万円です。

東京都大田区にある広域社会福祉会は、同地区で2事業所を持ち、デイサービスその他の介護事業を行ってきました。一方、ケアサービスは、居宅介護支援・デイサービスなどの訪問介護や福祉用具貸与・販売、シニア向け施設紹介、クリーンサービスなどを行っている会社です。

ケアサービスとしては、広域社会福祉会の訪問介護事業を譲受することで、同エリアのシェア拡大やシナジー効果が得られると判断しました。

参考:株式会社ケアサービス「事業譲受に関するお知らせ」

⑥ソラストが日本エルダリーケアサービスを子会社化

2020年10月、ソラストが、日本エルダリーケアサービスの全株式を取得し、完全子会社化しました。株式の取得価額は23億円です。

ソラストは、医療事務受託事業、保育事業、介護事業などを行っています。一方、日本エルダリーケアサービスは、首都圏を中心に122事業所で訪問介護・居宅介護支援・デイサービスを運営している会社です。

ソラストとしては、日本エルダリーケアサービスが子会社に加わり、グループ全体で600事業所を超えました。まさにスケールメリットを得られ、事業の強化・拡大が図れるものとしてM&Aを実施しました。

参考:株式会社ソラスト「株式会社日本エルダリーケアサービスの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

⑦パナソニック エイジフリーがユニマット リタイアメント・コミュニティに事業譲渡

2020年5月と6月、パナソニック エイジフリーが、介護サービス施設のうちの7施設について、ユニマット リタイアメント・コミュニティに事業譲渡しました。いずれの施設でもデイサービスが行われています。事業譲渡された施設の所在地は、山口県・鳥取県・香川県・徳島県・愛媛県・千葉県・埼玉県です。

ユニマット リタイアメント・コミュニティとしては、「そよ風」のブランド名で全国展開している高齢者介護事業を強化する目的で事業譲受しています。各施設は、譲渡と同時に「そよ風」が付いた施設名に変更されました。

参考:株式会社ユニマットリタイアメント・コミュニティ「パナソニック エイジフリー株式会社から 6 施設を事業譲受 4 月 1 日より「そよ風」ブランドで新たに運営開始」

⑧アサヒサンクリーンがツクイに事業譲渡

2020年4月、アサヒサンクリーンは、訪問介護事業をツクイに事業譲渡しました。譲渡価額は公表されていません。アサヒサンクリーンは、静岡県で訪問介護・デイサービス・ショートステイ・グループホーム事業を行ってきました。

1983(昭和58)年から介護事業を行ってきたツクイは、全国で各種介護事業を展開しています。この事業譲渡により、アサヒサンクリーンが持つ静岡県内の10カ所の事業所を譲受し、同エリアにける事業拡大を果たすと発表しています。

参考:株式会社ツクイ「事業譲受に関するお知らせ」

⑨ソラストが恵の会を子会社化

2020年3月、ソラストが、2社の「恵の会」の全株式をそれぞれ取得し、両社とも完全子会社化しました。2社の恵みの会とは、「株式会社恵みの会」と「有限会社恵みの会」の2社であり、同じ代表者および同じ株主の会社です。取得価額は、2社分の合計で33億7,300万円でした。

恵みの会は2社とも大分県大分市に所在し、同エリアでデイサービスその他の介護事業を26カ所の事業所で行っています。介護事業を全国展開しているソラストにとって、大分県は未進出のエリアでした。このM&Aによって、大分県への進出が実現しています。

参考:株式会社ソラスト「恵の会の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

⑩クレアバーグがケアサービスに事業譲渡

2020年2月、クレアバーグが、訪問看護事業をケアサービスに事業譲渡しました。なお、譲渡価額は公表されていません。

クレアバーグは、東京都の江戸川区と墨田区にそれぞれ事業所を1カ所ずつ設け、デイサービスなどの訪問看護事業を行ってきました。一方、ケアサービスは、東京23区を中心としたデイサービスなどの介護事業を行う会社です。

ケアサービスとしては、介護事業と訪問看護事業の親和性が高いという判断のもと、東京23区内の事業基盤強化につながると判断し、事業を譲受しています。

参考:株式会社ケアサービス「事業譲受に関するお知らせ」

⑪ケアサービスがひだまりを子会社化

2019(令和元)年7月、東京都内で在宅ケアサービスを展開するケアサービスは、東京都江東区で居宅介護支援事業と訪問介護事業を展開するひだまりの全株式を取得し、完全子会社化しました。なお、取得価額は公表されていません。

ケアサービスは、在宅介護事業にて東京23区を中心としたドミナント戦略を展開しています。本件M&Aにより、ひだまりと近隣の自社デイサービスとの相互活性化を図るとしています。また、江東区とその隣接地域における深耕拡大の足掛かりとして、在宅介護事業の強化をもくろんでいます。

参考:株式会社ケアサービス「株式会社ひだまりの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

⑫幸和製作所がパムックとあっぷるを子会社化

介護用品や福祉用具の製造や販売を行っている幸和製作所は、2019年3月にデイサービス事業や福祉用具のレンタル・販売を行っているパムックとあっぷるを買収し子会社化しました。取得価額は、パムックが5,900万円、あっぷるが0円です。

これにより、幸和製作所はデイサービス事業への進出を円滑に達成しただけでなく、パムックとあっぷるそれぞれのノウハウを取り入れることで、より良い介護用品や福祉用具の開発が可能となりました。

さらに、テリトリーが近い両社を買収することで、効率的な経営の実現にも成功しており、合理的な事業の拡大を図っています。

参考:株式会社幸和製作所「株式の取得(子会社化)に関するお知らせ 」

⑬ツクイがヒューマンライフ・マネジメントの株式取得

2018(平成30)年8月、ツクイは、デイサービスを含めた介護事業や人材派遣などを行っているヒューマンライフ・マネジメントの22.9%の株式取得を行い、提携を強化しました。

ツクイは、デイサービスや人材派遣のみならず、介護用品のインターネット通販、福祉車両や福祉機器のリースなどといった幅広いサービスを行っています。

そこで、在宅医療支援や訪問介護を行っているヒューマンライフ・マネジメントとの連携を強化することで、サービスのさらなる拡大と医療機関との連携を実現し、デイサービス事業のさらなる発展につなげたのです。

本件は、デイサービス事業を行っている会社が、事業の拡大・発展のために他の事業を取り込んだ好例です。デイサービス事業は他の介護事業や医療事業と連携できるものであり、ツクイの取り組みは介護事業のさらなる発展を目指すうえで参考となります。

参考:株式会社ツクイ「株式会社ヒューマンライフ・マネジメントの株式取得に関するお知らせ」

【関連】【2020年最新版】グループホームのM&A事例10選!相談先のおすすめは?| M&A・事業承継の理解を深める

デイサービス業界のM&Aまとめ

デイサービスをはじめとした介護事業は、市場拡大が確実であるものの、さまざまな要因により倒産件数が増加している業界です。そのような環境下で事業を継続するうえで、経営戦略の1つとしてM&Aが有効的な手段となります。

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