M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年1月31日更新会社・事業を売る
ベトナムのM&A事情!特徴や注意点と成功のポイント・事例を紹介!
ベトナムは経済的な発展が目覚ましく、日本企業だけでなく、海外の企業も今後の事業拡大や販路の拡大などを目的として、新規参入を検討しています。その反面法律の整備などが未だ整っておらず、M&Aを実施するには、国際的なM&Aの実績を持つ専門家が必要になるでしょう。
目次
ベトナムとのM&Aとは
ベトナムは人口の増加や経済成長により、市場が大きく伸びている国の一つです。政治も安定しており、M&A相手として魅力的に感じる企業も少なくありません。
ベトナムのM&A動向
ベトナムの特徴
在ベトナム日本大使館経済班「2022年上半期ベトナム経済統計」
ベトナムの経済発展は急速に進んでおり、ベトナム統計総局(GSO)によると2022年の国内総生産(GDP)の実質成長率は8.02%でした。また名目GDPは約4,138億ドルとなっています。
ベトナムの経済発展には、1986年12月のベトナム共産党第6回大会の社会主義に市場経済システムの導入を行おうとする「ドイモイ政策」によるものが大きく、現在では2020年までに工業国入りをしようという政策が進められています。
ベトナムのM&Aの現状
JICAの発表では1993年の貧困率は58.2%を記録していましたが、2010年には14.2%まで改善し2018年には9.8%に低下しています。ベトナム企業のM&Aの市場動向については、2017年の全体の取引金額は102億ドルとなっています。
これは前年のM&A取引総額の2.8倍であり、案件数も500件を超えています。しかし、このような数値は世界的に見ても平均的な数値で、特別多いというものではありません。またM&Aの規模を見ても、64.16%が規模の小さい案件となっています。
ベトナムのM&Aは、国内企業同士で行われるものもありますが、海外の企業とのM&Aも進んでおり、東南アジアに進出しようしている海外の企業がベトナムの企業を傘下にしようという動きも多くみられます。
これまでは日本の企業による、中国の企業との合弁や提携が目立っていましたが、人件費の高騰などを理由に新しい投資先として、ベトナムの企業が注目を集めるようになりました。
日本からの新規、追加、株式投資の投資額は総額でおよそ86.0億ドルで推移しています。これは世界で第1位であり、以下韓国、シンガポールが続いています。世界的に見ても、ベトナムの企業を買収しようとする動きは大きく、今後も増えていく見通しのようです。
また、ベトナムは1995年にASEANにも加盟しており、自由貿易地域にも参加しています。さらに、2007年1月には世界貿易機関にも正式加盟しており、アメリカやヨーロッパ諸国からの投資や買収が多く行われるようになり、今後もM&A市場の成長率は高くなっていくでしょう。
M&A案件の変化
ベトナムは以前まで安価な労働力の生産拠点として、M&A案件の主軸は製造業でした。
しかし現在は中間所得層の増加により小売や金融業などといったBtoCの案件が増加しています。その他各地で都市開発などが進んでおり、大手の不動産会社による買収なども見られます。
参照元 :在ベトナム日本大使館経済班 「2018年ベトナム経済事情」
JICA 「日本とベトナムのパートナーシップ これまで、そしてこれから」(2019年1月)
ジェトロ 「はじめてのベトナム進出(第2版)」(2015年3月)
ベトナムでのM&Aメリット
ベトナム市場の拡大
ベトナムは人口が増加しており、ベトナムの国勢調査によると2019年時点で人口は9,620万人とされています。個人所得も年々高くなってきており、今後も市場の拡大が見込まれます。
まだまだ発展の余地があるベトナムでは、商品やサービスの質や種類などへの期待も高く、さまざまな需要が高まっています。また、国内の人口の中で富裕層と言われるのはごく少数になりますが、中間層の増加が期待できます。
中間層が求める小売りや金融サービスなどのマーケットは、今後も成長する可能性があるでしょう。
インフラの改善
日本もインフラ整備への協力を行っており、ベトナム国内の空港や高速道路、鉄道などのインフラが整いつつある状態です。インフラの改善が進み、立地のよい場所に工場などを持つようになればベトナム国内をシェアできるほどのビジネスが可能になるでしょう。
インフラの改善は、ベトナムのGDPの7%となっており、国を挙げての事業だといえます。ハノイやホーチミンなど主要な都市に企業の拠点が集まりがちですが、今後は地方でも経済の拠点ができてくるでしょう。
友好的な関係
政府が経済的な発展を望んでいることがM&Aをしやすいメリットだといえます。日本とベトナムは2003年に、日越投資協定を結び、ともに投資活動を推進していこうという考え方を基づき締結が行われました。
そのため、ベトナムは日本に対して友好的な印象を持っており、M&Aの交渉においてもとても魅力的なものになるでしょう。
ベトナムでのM&Aデメリット
為替レートの影響
デメリットとして考えられるのは、取引レートの問題です。ベトナムの会社とM&Aを実施しようとすると円でのレートではなく、米ドルでの取引となることが多くあります。
そのため、M&Aを実施する時に米ドルのレートによって取引金額が変わり、予定していた金額よりも高くなってしまうケースがあります。
また、ベトナムの企業は自社の会社の評価を高く見積もっていることが多いため、適切な価格でM&Aを実施するにはしっかりとしたバリュエーションが必要になります。
構造改革が進んでいない
国有企業の民営化と構造改革の進捗が進んでいない点もデメリットとして考えることができます。ベトナムの正式な名称はベトナム社会主義共和国となります。この国名が示す通り、社会主義の部分が残っており、国有企業が多く存在しています。
国有企業が民営化を実施して、構造改革を進めれば期待通りのM&Aを実施することも可能ですが、民営化がうまく進んでいないケースも多く、M&Aを実施するうえでの障害となっていることがあります。
会計基準・財務報告が不明瞭
会計基準があいまいな点と財務報告の不明瞭な点もM&Aを実施するうえで、リスクを背負う可能性があり、これもデメリットと言えます。ベトナムの経済は現在、成長過程にあり企業のあり方もこれから法整備が行われていくことと考えられます。
そのため、会計基準があいまいで財務報告も不明瞭な点があるので正確な企業の評価ができないために、M&Aが実現できないという場合もあるでしょう。
ベトナムでのM&Aスキーム
株式取得
ベトナムでは土地や定着物といった特定の資産を外資企業に売却することができないため、M&Aでは株式譲渡が一般的です。既存の株式譲渡や第三者割当増資などが株式取得にあたります。
資産譲渡
日本の事業譲渡と似ており、譲り渡す事業や資産を選択することができます。一方で、手続きが煩雑になるのがデメリットです。
組織再編
組織再編には消滅分割、存続分割、新設合併、吸収合併の4種類があります。会社に大きな影響を与えるために特別決議を必要としてます。また、債権者や従業員といった利害関係者に周知する必要があります。
中間持株会社の利用
中間持株会社の利用とは、日本企業がベトナム企業を直接買収するのではなく、別法人が間に入り株式・持分の主体となる方法です。税制のメリットがあるシンガポールに中間持株会社を設立するケースは少なくありません。
ベトナムでM&Aする際の流れ
ベトナムではM&Aの対象企業が公開会社か非公開会社かで、M&Aの進め方が異なります。そのため対象企業の会社形態を理解し、M&Aを進める必要があります。
公開会社の基準
公開会社は証券法に定められており、
・株式の公募を行った会社
・株式を証券取引所に上場している会社
・資本金100億ドン以上かつ、100名以上の株主がいる会社
上記の条件に1つでも該当する会社は公開会社となります。
公開企業のM&A
公開企業のM&Aを行う場合は、日越投資協定にて外資出資割合の規制対象の事業かどうかの確認を行います。対象企業の場合は、協定の規制が適用となります。
協定の規制対象事業でない場合は、投資法や関連する法律で外資出資割合が規制されている事業かの確認を行います。
こちらにも該当しない場合は条件付き投資分野の事業であるかを確認し、これに該当する際は外資出資割合49%が上限となります。そのため経営権を握れないことに注意が必要です。
条件付き投資分野の事業でない場合は、対象企業の定款に外資出資割合の記載があるかの確認を行います。定款に定めがない場合は、完全子会社化することが可能です。
非公開企業のM&A
非公開会社に対してM&Aを行う際、株式を51%以上取得する場合は事前に計画投資局に対し、M&A登録手続きを行います。15日程度で通知されます。インフラ建設業といった国の重大なプロジェクトである場合は首相、国会、省級人民委員会という地方自治体の事前承認を必要とします。
M&A実施後、企業登記局で社員または株主変更通知を行います。これは、3営業日ほどで完了する手続きです。
ベトナムでM&Aを行う際の注意点
日本の企業とベトナムの企業がM&Aを行う際には、株主に対する条件や設置機関、総会の条件などに留意しなければなりません。株式会社としている場合は3名以上が株主であることを指しており、普通株式のほかに別の種類の株式の発行もできるのです。
そのほかにも、社債の発行も可能になっているので注意しなければなりません。設置機関や総会の条件についても、会社の会長や出資総額の25%以上を出している社員、定款に記載されている出資額の比率以上を出している社員は、必要だと思われる時に社員総会を開くことができます。
また出席社員の人数によって、定数が満たない場合は総会予定日から15日以内に再招集することができ、出資総額の50%以上の出資者の出席が必要になります。M&Aを実施する時にはデューデリジェンスが重要になります。
日本国内とは法律が異なるのでベトナム国内の会社に対しては、贈収賄や二重帳簿、法律違反、脱税、外資規制に抵触する事業目的など様々な点において、デューデリジェンスが必要になってきます。
M&Aを実施するためにデューデリジェンスを行った際に、日本では考えられないようなことが起きるケースもあります。ベトナムは国有企業が民営化した企業もあり、そのような中で贈収賄が習慣化している場合もあります。
また、経済活動が発展している途中ともいえるベトナムでは、税務がしっかりと守られておらず、脱税をしている経営者も多くいます。
国をまたいだM&Aは、どのようなことが起きるか分からないので、専門家のアドバイスを受けるのがおすすめです。
M&A総合研究所には専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが多数在籍しており、これまで培ったノウハウを活かしM&Aをサポートいたします。
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ベトナムにおけるM&Aの法律や規制
統一企業法
ベトナムでは会社法務において重要な統一企業法があります。これは日本での会社法にあたり、会社の設立や運営、決議方法などに関して定めています。
統一企業法では会社の種類や種類に応じて義務付けられる機関の設置、株主の権利や義務などを定めています。
以前は外資企業は有限会社の形態しかできませんでしたが、統一企業法の適用により外資企業も株式会社を設立することができるようになりました。
外資規制
外資規制とは外国企業によるベトナムに対しての投資に関しての規制事項のことです。
ベトナムでは、麻薬物質や各種化学物質や鉱物に関してなどに対して投資が禁止されています。
また、銀行業や保険業、航空サービスなどに関しては法定資本金が定められています。その他制限が禁止されている分野や規制に関しては、M&A仲介会社を通して確認するのがおすすめです。
ベトナム企業のM&A・買収事例5選
ベトナム企業のM&Aや買収事例を紹介していきます。
エランによるベトナムの病院向けランドリーサービス会社のM&A
2024年1月、エランはGREEN LAUNDRY JOINT STOCK COMPANY(GREEN社)を子会社化することを発表しました。
エランは衣類・タオルの交換サービス付きレンタルと日常生活用品の提供を組み合わせた複合サービス「CSセット」を主力としています。全国各地の病院や介護施設などに、「CSセット」を提供し、患者さまやご利用者さまの入院生活や日常生活をサポートしている企業です。
GREEN社は、ベトナム国内で最大の人口を擁するホーチミン市を中心に、大手病院向けにランドリーサービスを提供している主要企業です。
今回のM&Aにより、ベトナム国内の大手病院向けランドリーサービスを拡大し、リネンレンタルサービスと主力サービスである「CSセット」をベトナム市場に普及させる取り組みを進めていくとしています。
参考:ベトナムにおける株式取得(子会社化)
双日によるベトナムの製紙大手のサイゴンペーパーのM&A
2018年にベトナムの製紙大手のサイゴンペーパーを総合商社の双日が買収しました。買収価格はおよそ100億円としており、株式を95.24%を取得してM&A取引が行われました。今後のベトナムの経済成長や、東南アジア全域における段ボールやティッシュペーパーのニーズが急増することを見込んでの買収でした。
サイゴンペーパーは、2011年に大王製紙がおよそ10億円の出資金を出して買収しましたが、サイゴンペーパーに株式を売却するなどして事実上、事業から撤退していました。
双日は、財務改善や設備投資を行い、2022年までにはベトナムの製紙事業の売上高を、今の40%増となる約180億円を目標に事業計画を立てています。
参考:ベトナムの最大手家庭紙および段ボール原紙製造会社を買収
江崎グリコとベトナムのKinh Do Corporationの資本・業務提携
2012年1月にベトナムのKinh Do Corporationを江崎グリコが買収しています。M&Aの手法は、資本・業務提携による契約で、第三者割当増資による新株式の1,400万株を江崎グリコが取得しました。これによってKinh Do Corporationの議決権所有割合は10%となっています。
Kinh Do Corporationは、ベトナム内でのビスケットカテゴリーのシェアで第1位のお菓子メーカーであり、小売店や強力な流通ネットワークを活用して、江崎グリコの製品の販売拡大を目的としています。今後の経済成長も大きくなる可能性が高く、個人消費も伸びていく可能性があります。
参考:キンド社との資本・業務提携に関するお知らせ
キリンホールディングスによるベトナムのインターフード社のM&A
2011年にベトナムのインターフード社に対してキリンホールディングスが買収を行っています。インターフード社は、ベトナムの飲料製造・販売を行っている会社で、清涼飲料市場が拡大しているベトナムでの基盤強化と成長を目的にM&Aを実施したとされています。
買収価格については非公開となっていますが、キリンホールディングスはインターフード社の株式を57.25%保有し、親会社であるトレード・オーシャン・ホールディングスの全株式を取得しています。
加えて、インターフード社の製品にかかわる知的財産権を保有するワンダーファーム社の全株式を取得しています。インターフード社はベトナム国内のシェアは数%ですが、小売店やスーパーマーケットなど11万店以上の販売ネットワークを持っています。
キリンホールディングスは、今後も成長が見込まれる清涼飲料市場への事業拡大を見込んでいます。
参考:ベトナム飲料会社グループの株式取得
SBI証券によるベトナムの大手証券会社FPTのM&A
2010年にベトナムの大手証券会社FPT Securities Joint Stock CompanyをSBIホールディングスの子会社であるSBI証券が買収を行っています。M&Aの手法は、発行済株式の20%をSBI証券が取得することで合意しています。
FPT Securities Joint Stock Companyは、ベトナム最大のIT企業でもあり、ベトナムの投資ファンドの設立や運営も実施するFPTグループの傘下にある証券会社です。ベトナムのホーチミン証券取引所における売買金額のシェアは第5位、ハノイ証券取引所においては第2位のシェアを誇っています。
ベトナムでは、個人で証券口座を持っている人は全国民のおよそ1%前後とされており、まだまだ未発達な部分もあります。今後証券業界の成長率は高くなるものと考え、日本におけるベトナム株式の取り扱いを視野に入れての買収となっています。
参考:ベトナム大手証券会社「FPT証券」への出資に関するお知らせ
ベトナムでのM&Aのまとめ
ベトナムは、現在経済的な発展が目覚ましく、日本企業だけでなく、海外の企業も今後の事業拡大や販路の拡大などを目的として、新規参入を検討する必要がある国として捉えられています。
しかし、その反面法律の整備などが未だ整っていないところもあり、M&Aを実施するには、国際的なM&Aの実績を持つ専門家が必要になるでしょう。
M&A自体は、大規模なものよりも小さい規模のものが現在目立っています。今後どのようなM&A取引が行われるていくかは、ベトナムに本拠地を置く企業によって様変わりしていくでしょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。