M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2025年11月20日公開会社・事業を売る
事業デューデリジェンスの目的は?ビジネスDDの調査・分析の流れやメリットを解説!
M&Aを実施するときには、必ず事業デューデリジェンス(ビジネスDD)を実施します。事業デューデリジェンスはどうして必要なのでしょうか。この記事では、事業デューデリジェンスの目的や分析手法、実際の調査の流れなどについて詳しく解説します。
目次
事業デューデリジェンス(ビジネスDD)について
M&Aを行うときには、買収側が売却側の会社について調査するデューデリジェンスを必ず実施します。デューデリジェンスにはいくつか種類があるのですが、この記事では事業デューデリジェンス(ビジネスDD)について詳しくみていきましょう。
デューデリジェンスとは?
デューデリジェンス(Due Diligence略してDD)は日本語にすると「当然の努力」といった意味です。
M&Aや投資を行うに当たって、買収側や投資家が、買収対象、投資対象のリスクについて徹底的に調べた上でリスク調査を行うことは当然行うべき義務である、といった意味があります。
デューデリジェンスには、税務・財務、事業、法務、人事、IT、環境、不動産など、領域に分かれて実施します。
この中の事業デューデリジェンス(ビジネスDD)は、買収する会社の事業内容について、価値の評価や買収後の自社の事業とのシナジー効果について検証するものです。
事業デューデリジェンスのメリットについて
事業デューデリジェンスのメリットとは、買収対象となっている会社の事業について、収益性や成長性について検証することができるという点です。
今後の事業の成長と、自社の既存の事業とのシナジー効果の発揮による収益性の向上が見込めるかどうかという点を、ビジネスDDでは検証します。
事業デューデリジェンスでの分析手法
事業デューデリジェンスを実施する上では、複数の分析手法を用います。事業デューデリジェンスで用いられる分析手法についてみていきましょう。
ビジネスモデル分析
ビジネスモデル分析では、買収対象会社の事業のビジネスモデルの理解を深めます。調査手法は、買収対象会社の経営者や事業責任者にビジネスモデルの説明をしてもらう方法が主なものです。
このインタビューでは同時に経営者などの資質も評価します。この調査でビジネスモデルについて理解したら、他の分析手法の結果と合わせて総合的にビジネスモデルを分析します。
競合他社分析
競合他社分析では、買収対象会社の業界内での位置づけを調査します。業界内での強み、弱みを把握して、今後の改善点を明確化することが目的です。調査する上では、財務諸表の調査に加えて市場におけるKPI(重要業績評価指標)の比較を行います。
SWOT分析
SWOT分析では、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)を分析します。
この4項目を分析することで、対象会社のビジネスチャンスや外部による脅威といった外部環境分析だけでなく、社内の組織体制の内部要因分析ができて、経営課題と今後の方向性を明確化することが可能です。
収益性分析
収益性分析では、買収対象会社の事業の収益性を分析します。分析手法は、ビジネスモデル分析、競合他社分析、SWOT分析の結果と、財務デューデリジェンスの結果を総合的に勘案して分析を行います。
マーケット分析
マーケット分析では、買収対象会社の事業の市場競争力について分析します。各事業の分野のマーケットの状況の分析と、マーケット内での自社の商品力の分析です。
分析手法は、それぞれの業界についてのアナリストレポートや行政機関の統計情報の分析、各マーケットについて詳しい専門家へのインタビューなどから、マーケットの現況と将来性を分析します。
事業ポートフォリオ
最後に事業ポートフォリオを作成します。市場成長率と市場占有率でポートフォリオを作成し、市場での現在の位置などを分析し、今後の戦略を立てます。
事業デューデリジェンスの平均的なコストについて
デューデリジェンスにかかるコストは、買収の規模と調査内容によって大きく異なります。買収規模が大きく、調査内容が多く複雑になるに従って必要なコストも増加します。
中小企業のM&Aであれば、数十万円から数百万円が相場です。大企業や海外企業の買収案件では数千万円規模も珍しくありません。
中小企業の国内でのM&Aの場合、事業デューデリジェンスだけであれば、多くても100万円程度で実施できるでしょう。
事業デューデリジェンスの流れ
事業デューデリジェンスを実施する流れを解説します。
実施メンバーを集める
まずは調査に当たるメンバーを集めて調査チームを結成します。デューデリジェンスのメンバーは、M&Aについての専門性の高い弁護士、税理士、会計士が中心となり、ITや不動産についての調査も行う場合には、それぞれの分野の専門家にも入ってもらいます。
M&Aのデューデリジェンスは、M&Aについての高い知見が必要なので、自社の顧問弁護士などではなく、外部のM&A専門家に依頼することが多いようです。
秘密保持契約の締結
デューデリジェンスを実施するためには、買収対象会社の財務資料やノウハウなどの機密情報の提出が不可欠です。万が一、機密情報が漏洩すると大きな問題となるので、事前に必ず秘密保持契約を締結します。
方針決定などの事前の準備と分析
事業デューデリジェンスだけでも分析手法には6種類もあり、全ての分析や調査を行っていたらコストが掛かりすぎてしまいます。
そこで、事前に重点的に調査をする項目を決めて、優先順位をリスト化する準備を行います。また、現時点で入手できる資料を分析して、内容を調査チームで共有しておきましょう。
請求資料リストの作成と資料請求
デューデリジェンスを実施するために必要な機密情報の提出を売却側へ求めましょう。調査項目の優先順位に従って必要となる資料の請求リストを作成し、売却側へ請求します。
対象事業の調査・分析
売却側から必要な資料が提出されたら実際の調査、分析を始めます。
聞き取り調査
最初に経営者への聞き取り調査を行います。提出された資料だけではわからない点などについて、各分野の専門家が聞き取ります。
事業性評価
事業デューデリジェンスでは、売却側の会社の事業性の評価を行います。事業について、市場動向と、売却側企業の事業の強み、将来性、課題について分析を行い、今後の価値向上やコスト削減が可能か判断します。
今後想定されるシナジーの抽出
事業性評価の次にシナジーの抽出です。買収側企業の既存事業との想定されるシナジーを抽出して定量化していきます。
シナジーの抽出で注意するべき点は、プラス方向の効果だけでなく、取引先の重複などのマイナスのシナジーも抑えることです。
事業計画の作成
事業性評価とシナジー抽出の結果に基づいて事業計画を作成します。事前に、売却側の会社から事業計画が提出されているはずですが、希望的観測に基づいていることが多いので注意が必要です。
事業性評価とシナジー抽出の結果から、主観を排して客観的な視点に基づいた事業計画を作成しましょう。
事業デューデリジェンスを実施する上での注意点
事業デューデリジェンスを実施する上での注意点です。
情報漏洩に注意する
通常、デューデリジェンスを実施する上で、事業デューデリジェンスだけを行うことはありません。複数の種類のデューデリジェンスを組み合わせることが多く、M&Aのチーム以外にも、ITや不動産など分野の専門家にも必要に応じて入ってもらいます。
デューデリジェンスのメンバーは複数人で、外部メンバーにも入ってもらう必要があります。メンバー間で売却側から提供された機密情報を共有しますが、情報漏洩を起こさない事が重要です。
M&Aは売却側との信頼関係で進む場面が多く、外部メンバーであっても情報漏洩が起きてしまうと、M&Aの破談の可能性も出てきます。情報漏洩は起こさないように注意しましょう。
コストを抑え過ぎない
デューデリジェンスをどのような規模で実施するのかは、買収側のさじ加減で決めることができます。もしもコストを抑えるために調査範囲を限定してしまうと、M&Aの完了後に重大な問題が発覚する恐れが高まります。
必要なデューデリジェンスの種類や規模、調査内容は、M&Aの規模などで大きく異なります。それぞれの案件にふさわしい規模でのデューデリジェンスを実施しましょう。
調査項目に優先順位をつけて調査に当たる
デューデリジェンスの種類はいくつもあり、事業デューデリジェンスだけでも分析手法は6種類もあります。
全ての調査や分析を行うことはコスト的に不可能なので、事前に調査するべき項目の優先順位をつけることが重要です。
協力的な姿勢で臨む
M&Aで会社を売却する側への注意点ですが、デューデリジェンスへは協力的な姿勢で臨むようにしましょう。
事業デューデリジェンスを含むデューデリジェンスは、売却側にとっては会社の粗探しや欠点を徹底的に調べ上げられるようなもので、気分のいいものではありません。しかし、適正価格で会社を売却するためには必ず通らなければいけないのがデューデリジェンスです。
過去には、買収側からの聞き取り調査に対して売却側が誠実に対応しない、提供を求められた資料を期限までに提出しないといった不誠実な態度を取ってしまい、M&Aが破談になった例もあります。
デューデリジェンスまでこぎつけたM&Aが破談になってしまうと、売却先探しから始めなければいけません。M&Aはお互いの信頼関係で進めていくものです。
簿外債務や二重帳簿などの不都合な事実があれば、デューデリジェンスに入る前に開示して、誠実で協力的な態度で臨むことが重要です。
M&Aの専門家へサポートを依頼する
事業デューデリジェンスを社内のメンバーだけで実施する会社もあるようですが、M&Aについての知識や経験が少ないと、買収後に致命的な問題が発覚することも少なくありません。
事業デューデリジェンスを実施するための調査チームには、M&Aについての専門性の高いメンバーが必要です。M&Aのデューデリジェンスの実施に不安があるときには、M&Aの専門家に相談するとデューデリジェンスのサポートもしてもらえるでしょう。
事業デューデリジェンスについては、M&Aの専門家への相談をおすすめします。
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事業デューデリジェンスまとめ
買収側がM&Aを実施する最大の目的は、売却側の会社の事業とのシナジー効果による業績向上ですから、売却側の会社の事業性評価やシナジー抽出を行う事業デューデリジェンスは、デューデリジェンスの中でももっとも重要なものとなります。
買収側の事業デューデリジェンスの進め方や、売却側の事業デューデリジェンスへの対応について不安がある場合には、M&Aの専門家がサポートします。まずは、M&Aの専門家へ相談してみましょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。