2021年6月1日更新会社・事業を売る

会計の「のれん」とは?意味や計算方法、会計基準(日本・IFRS)ごとの会計処理

買収額と純資産の差額である無形の固定資産が会計の「のれん」です。当記事では、会計の「のれん」の意味をはじめ、会計の「のれん」計算法・計算例や、会計基準ごとの処理、のれんの償却・減損、のれんが大きい企業を取り上げています。

目次
  1. 会計の「のれん」とは?
  2. 会計の「のれん」の意味
  3. 会計の「のれん」の計算方法
  4. 会計の「のれん」の会計基準(日本・IFRS)ごとの会計処理
  5. のれんの償却とは
  6. のれんの減損とは
  7. のれんが大きい企業まとめ
  8. まとめ
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会計の「のれん」とは?

会計の「のれん」とは?

会計の「のれん」とは?

会計の「のれん」はM&Aの買収における勘定科目のことで、無形固定資産に区分されます。帳簿に現れない価値ともいわれ、店先に下げるのれんにお店の屋号を記していたことが由来です。

会計の「のれん」は、計上区分・償却法・償却期間を決めてから、のれんの償却を行います。

なお、会計の「のれん」は旧商法において有償での譲受や吸収分割・合併のケースにのみ、資産への計上が認められていましたが、2005年の会社法改正に伴い、事業の譲受と会社の再編に加えて、負債への計上も認められています。

以降の章では、企業買収で使う会計の「のれん」の意味をはじめ、計算方法、会計基準、のれんの償却・減損、のれんの大きい企業を取り上げます。

会計の「のれん」の意味

会計の「のれん」の意味

会計の「のれん」の意味

会計の「のれん」に軽く触れましたが、この章では会計の「のれん」を詳細に解説します。会計の「のれん」は、買収先の純資産額と支払う対価との差を示し、対象企業の収益・ブランド力と言い換えられます。

買収する企業の純資産額と実際に買収する価格の差額

買収の支払総額と買収先から譲り受けた資産の差を、会計の「のれん」とよびます。対象企業の資産は、預金・売掛金などの有形資産だけとは限りません。

帳簿には現れないブランド・ノウハウなどの無形資産を保有する例も見られます。それゆえ、買収の支払総額と譲り受ける純資産額との間に差が生じます。生じた差は計上するうえでの処理が必要なため、「のれん」に仕分けられます。

さらに、会計の「のれん」には、2つのケースが考えられます。買収の支払総額が譲り受ける純資産額を超えるケースと、買収の支払総額が譲り受ける純資産額を下回るケースです。

支払総額の方が大きいと「のれん」、支払総額の方が小さいと「負ののれん」とよばれます。

【関連】負ののれんとは?のれんとの違いや発生原因、事例をご紹介

仮定の将来的な収益力・ブランド力

のれんとは、売り手の会社が有する収益・ブランド力と解釈されます。買収側は、買収後に上げる収益とブランド力を見込んで、譲り受ける資産額を超える買収額を支払います。

買収側は、自社の資本力を買収される企業に注げば収益力を上げられたり、買収で自社では構築できないブランド力を得られれば信用度を高められたりします。それゆえ、のれん分の対価を支払ってでも、買収を実行します。

また、自社のみで収益を上げられそうな事業を立ち上げる・良いイメージを持つブランドの構築には時間を要する点からも、買収側はのれん代を含めた買収額を提示して、自社の将来を担う事業を手に入れています。

会計の「のれん」の計算方法

会計の「のれん」の計算方法

会計の「のれん」の計算方法

「のれん」を計算法では、初めにのれんの額をはじき出し、のれんの償却期間を決めます。得られた値と償却期間を使って、下記の計算式に当てはめると、会計の「のれん」がはじき出されます。

【会計の「のれん」の計算法】

  • のれん=買収の支払金額-買収先の純資産額

【のれんの償却の計算法】
  • のれんの償却=のれん÷のれんの償却期間

会計の「のれん」の計算例

計算式だけはイメージしにくい方に向けて、会計の「のれん」の計算例を紹介します。会計の「のれん」を計算するうえで定める条件は、下記の通りです。

【会計の「のれん」の条件】

  • 買収の支払金額は5,000万円
  • 買収先の純資産額は2,000万円
  • のれんの償却期間は5年

のれんは、買収の支払金額5,000万円から買収先の純資産額2,000万円を引いて、3,000万円と求められます。償却期間を終えるまでの毎年ののれんは、3,000万円を5年で割った600万円と導き出されます。

【会計の「のれん」の計算例】

  • 5,000万円-2,000万円=3,000万円(のれん)
  • 3,000万円÷5年=600万円(償却期間終了までの毎年ののれん)

会計の「のれん」の会計基準(日本・IFRS)ごとの会計処理

会計の「のれん」の会計基準(日本・IFRS)ごとの会計処理

会計の「のれん」の会計基準(日本・IFRS)ごとの会計処理

「のれん」の会計は、基準によって違いが見られます。日本の会計基準においては、のれんを規則的に償却する一方で、国際基準のIFRSにおいてはのれんの償却を不実行とします。

日本の会計基準

日本の会計基準においては、のれんを無形固定資産に定め、規則的に償却します。償却期間は20年以内で、範囲内に収まる期間を各社が定めます。

費用処理をせず規則的な償却が採られるのは、将来の価値は現在とは異なるためです。有形の固定資産と同じく、ブランドなどの無形の固定資産も、年を経るごとに価値は下がっていくと捉えられています。それゆえ、定めた償却期間で規則的に償却されます。

日本の会計基準を採用する利点

日本の会計基準で処理を行うと、減損テストの手間を省けます。のれんを減価償却により、価値が下がっていくと見なして処理するため、一挙に損失が増える事態の回避が可能です。

当然、大幅にのれんの価値が下がると減損処理を実施しますが、減価償却を選んでいるので、減損処理を実行する見込みを減らせるといえます。

IFRSの会計基準

国際会計基準審議会が定める会計基準をIFRSとよびます。EUの会計基準に定めたことでEU以外の国々でもIFRSが採用され、現在では世界的な会計基準です。

2つの会計基準は大きくは違わないものの、ある1点に限っては基準が大きく異なります。日本の会計基準と相違点は、のれんの償却です。

IFRSの会計基準においては、のれんの償却を実行しません。それゆえ、計上されたのれんは、貸借対照表に残されます。とはいえ、のれんの価値が極端に下がっていると見なされれば、減損処理が認められます。

つまり、投資した分の回収が望めないと判断されるごとに、資産の価値を下げる減損処理が求められます。

IFRSの会計基準を採用する利点

IFRSの会計基準を採用して処理すれば、営業利益への圧迫を避けられます。営業利益とは、売上総利益から販売費並びに一般管理費を引いた値です。

のれんの償却費用は販売費並びに一般管理費に区分されるので、のれんの償却を不実行とするIFRSの会計基準に則れば、営業利益の減少を避けられます。

のれんの償却とは

のれんの償却とは

のれんの償却とは

のれんの償却とは、のれんを減価償却することです。買収の支払総額と買収先から譲り受けた資産の差であるのれんは、会社計算規則の第74条で、無形固定資産に定められます。

また、特許権・リース資産などの無形固定資産は将来の価値が下がるため、減価償却します。それゆえ、歳を経るごとに価値が下がるのれんも、20年以内の償却期間で、会計に計上します。

また、企業結合会計基準によれば、のれんの償却は定額法かそのほかの合理的な方法で処理すると定められていますが、企業は定額法での処理を選びます。

定額法を採用する理由は、投資の回収を営業損益として示すためです。買収後に得られる収益を営業収益に計上することに合わせて、営業費用にのれんの償却を含めると、営業損益を見れば投資分をどの程度回収できたかを表示できます。

【関連】のれん償却とは?会計処理や期間、メリット・デメリットを解説

IFRSによるのれんの償却

IFRSの会計基準においては、のれんの償却は行いません。しかし、期末ごとに減損テストの実行が求められます。

減損テストとは、貸借対照表に計上した資産の価値を判断するテストです。減損テストを実行した結果、資産価値が買収を行ったときよりも下がっていると判断されると、資産価値の差を減損処理します。

つまり、IFRSの基準においては減算テストの負担は避けられないものの、のれんの償却を不実行とするため、営業利益への影響は抑えられるといえます。
 

のれんの償却の仕分け

のれんの償却を行う際の仕分けは、下記の条件で行います。

【買収される会社の資産】

  • 現金=2,000万円
  • 貸付金=600万円

【買収される会社の負債】
  • 買掛金=200万円

【買収の支払額】
  • 4,000万円

【のれんの償却期間】
  • 10年

初めに、買収先の純資産額を調べます。買収先の資産は2,600万円(現金+貸付金)で、負債が200万円(買掛金)のため、純資産額は2,400万円とはじき出せます。

買収で支払った金額は4,000万円なので、この値から純資産額の2,400万円を引くと、1,600万円ののれんがはじき出せます。仕訳は下記のように処理されます。
 
借方 金額 貸方 金額
現金 2,000万円 買掛金 200万円
貸付金 600万円 当座預金 4,000万円
のれん 1,600万円    

さらに、のれんの償却では、はじき出したのれんの額を償却期間で割ります。償却期間は15年ですから、1,600万円÷10年で160万円です。毎期ごとに償却する160万円ののれんは、下記のように処理されます。
 

借方 金額 貸方 金額
のれんの償却 160万円 のれん 160万円

のれんの減損とは

のれんの減損とは

のれんの減損とは

のれんの減損は、投資の回収が難しいと判断された際の、貸借対照表における資産価値の引き下げです。買収した際に1,000万円の価値があると判断していても、現在では100万円の価値しかないと見なされれば、生じた差額は損失として計上されます。

ちなみに、のれんの減損は、大型のM&Aや、IFRSの会計基準を採用する際に発生しやいすいといえます。大型のM&Aは買収の支払金額が大きいことから、その分のれんの額も大きくなるため、減損のリスクを高めます。

また、IFRSの会計基準を採用すると、年に一度の減損テストの実施が伴う点と、のれんの償却を不実行とする点から、減損処理が実施されやすいと判断されます。

【関連】のれんの減損とは?減損する理由や事例、兆候を解説【コロナへの対応も】

のれんの計算は専門家へ

買収では表に現れない価値を含めて、買収される企業を手に入れるため、のれんの計算は必須といえます。しかし、形のない価値を評価するには、業界・事業の理解をはじめ、将来性、収益力などを踏まえることが重要です。

自社のみでのれんを算出してしまうと、買収後に営業利益の引き下げ・株価の下落などを引き起こしかねないので、買収の際は専門家へ算出依頼することをお薦めします。

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のれんが大きい企業まとめ

のれんが大きい企業まとめ

のれんが大きい企業まとめ

東洋経済オンラインが掲載する「のれん額ランキング」では、のれんに対する株主資本の割合をまとめています。上位10社の企業は下記の通りです。
 

順位 会社 対株主資本比率(%) のれん(億円) 会計基準
1 ソフトバンクグループ 68.4 16,098 IFRS
2 JT 55.2 14,293 IFRS
3 NTT 13.8 12,292 アメリカ
4 武田薬品工業 48.1 7,793 IFRS
5 電通 81.4 6,569 IFRS
6 ソニー 19.5 6,063 アメリカ
7 日立製作所 19.9 5,286 IFRS
8 富士フイルムホールディングス 24.3 5,069 アメリカ
9 KDDI 15 4,937 IFRS
10 キヤノン 16 4,789 アメリカ

出典:東洋経済オンライン/「のれん額のランキング」(2016/07/12日掲載)

上位の2社は買収の実施が影響して大きな額ののれんを計上しています。また、大きなのれんに加えて、のれんに対する株主資本比率の割合が高い点と、IFRSの会計基準を採用する点も特徴です。

のれんの減損が生じて資産が減少すると、負債とのバランスを取るために、株主の配当金が当てられます。それゆえ、上位の2社は現時点で株主への負担を強いていながら、さらなる減損のリスクを抱えていると捉えられます。

まとめ

まとめ

まとめ

買収で使われる勘定科目が会計の「のれん」だと紹介しました。買収の支払総額と買収先から譲り受けた資産の差を表し、買収先のブランド力などを支払う対価に反映させています。

「のれん」を処理する会計には、日本と国際的な基準があるため、償却の仕方・償却の有無などの考慮が必須です。

【のれんの会計基準】

  • 日本の会計基準ではのれんを無形固定資産とし規則的に償却する
  • IFRSの会計基準ではのれんの償却を不実行とする

買収を行ってのれんが増えると、減損処理のリスクを高めたり、営業利益を減らしたりする可能性があるため、M&Aの実施では専門家に協力を仰いで、適切な買収額を計算してもらうことが肝要といえます。

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