M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年6月6日更新業種別M&A
保育園における事業売却とは?メリット・デメリットなどを解説
保育園業界は、世の中のニーズが高まると同時に、事業売却(M&A)も増加しています。その背景には、保育士不足などの課題があります。この記事では、保育園業界のM&Aの現状や傾向、事業売却のメリット・デメリットなどを含め、網羅的に解説します。
目次
保育園における事業売却
M&Aは、今や一般的な経営手法であり、業界・業種を問わずに行われています。さらに通常の株式会社だけでなく、学校法人や医療法人、社会福祉法人などさまざまなジャンルの事業もM&Aを行うようになっています。
この記事では、社会福祉法人が運営することの多い保育園にスポットライトを当て、そこで行われる事業売却についてお伝えしていきます。具体的には、保育園業界のM&Aの現状や傾向、メリット・デメリットなどを含め、網羅的に解説します。
保育園とは
はじめに、保育園についてお伝えします。保育園と聞くと、混同しやすいのが幼稚園ですが、両者には明確な違いがあります。保育園は、0歳~学齢期前の児童の保育を請け負う施設であり、厚生労働省が管轄しています。
これに対して、幼稚園は満3歳以上の児童を請け負っており、小学校低学年の教育の準備を行う、言うなれば教育機関というニュアンスが強いです。加えて、幼稚園は文部科学省が管轄しているなど、管轄省庁も異なります。
さらに、保育園、幼稚園だけでなく、認定こども園という施設が存在し、小学校就学前の児童の保育・教育や、子育て支援を総合的に提供しています。保育園と幼稚園のハイブリットというイメージで、認定こども園は、文部科学省・厚生労働省の各々が管轄しています。
保育園業界の現状
ここでは、保育園業界の現状についてお伝えします。
①許認可が多い
保育園事業の特徴としては、許認可が多いという点が挙げられます。保育園は保育を行う機関であるため、許認可が多いことは当然ですが、開業する際には、それなりに手間がかかることを認識したほうがよいでしょう。
保育園を開業する際には、まず開業する地域の都道府県知事から許可を得るだけでなく、厚生労働省の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」を踏まえて、都道府県などが条例で規定している最低基準を満たす必要があります。
さらに、都道府県知事の認可を得ない認可外保育所を開業する際も、都道府県知事への届け出をしなければなりません。厚生労働省が設定した「認可外保育施設指導監督基準」も満たす必要があり、保育園は許認可が非常に多く、開業の際には注意しておく必要があります。
②ニーズが増加中
保育園へのニーズは非常に増加しています。昨今は、女性の社会進出が顕著であり、共働き家庭が急増しています。幼稚園であると4時間しか預けられないため、子育てを保育園へ委託することは当たり前になっています。
増加するニーズに従い、保育園も増加の一途をたどっています。とりわけ人口密度が高く、住んでいる人口も多い首都圏では保育園の増加が顕著であり、待機児童の削減を目指す政府の方針もあり、今後もこの傾向は続くと見られています。
また、政府や自治体だけでなく、一般企業も保育園を開業するケースも増加傾向にあります。
③保育士不足
保育園業界において、現在1番の課題になっているのが保育士不足です。保育士は資格が必要な職業ですが、資格を持っている人自体は、日本全国で140万人を超えるといわれています。しかし、実際に保育園で働いている保育士は60万人程度であり、実質的に半数以上が保育士として働いていないことになります。
労働環境の厳しさ
このような状況が発生している根本的な原因は、保育園の労働環境にあります。往々にして、保育園は労働環境が過酷であることが多く、その現状を知っているからこそ資格を持っていても保育園で働かない人が多いです。
保育園は年間休日が平均で100日~105日程度と、一般企業の平均より少なく、有給休暇も取得取得しづらくなっています。時間的な拘束が多い理由は、業務量が非常に多いからです。
日々の児童の世話はもちろん、保護者への対応や運動会などのイベント運営もこなさなければならないなど、保育士の業務は多岐にわたっています。さらに、勤務している保育士が少ないため、保育士1人にかかる業務量も増えてしまい、ますます仕事が大変になります。
何より「人の児童を預かる」という仕事それ自体が責任重大で非常に難しいことです。1つ失敗するだけでもクレームにつながりますし、事故や事件が起こってしまえばニュースにも取り上げることもあり得るでしょう。それだけのプレッシャーがかかる仕事と知れば、避けたくなることもあるでしょう。
賃金の低さ
これだけハードな仕事をこなしているにもかかわらず、保育士は賃金が低いのも人手不足につながっています。保育士の賃金は平均的に低い傾向があり、ひどいケースであると手取りが10万円程度になってしまうこともあります。
当然、一般的な企業と比べると圧倒的に低い賃金であり、多大な業務と決して釣り合わないものです。そのような労働環境であれば、保育士資格を持っていても保育士になる気持ちが薄れてしまうこともあるでしょう。
このような状況に対し、政府や自治体は、保育士の労働環境の改善や転職支援に積極的に取り組んでおり、保育士の増加を目指す動きが加速しています。
また、保育園の中には、事業売却などのM&Aを行い、大手の企業の傘下に入ることで不足している保育士を補うだけでなく、経営基盤の強化を行って労働環境の改善を図るなど、さまざまな取り組みが実施されています。
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保育園の事業売却におけるメリット・デメリット
保育園の事業売却には、どのようなメリット・デメリットがあるのかについてご紹介します。
①保育園の事業売却のメリット
保育園の事業売却のメリットは、買い手・売り手によって異なります。
買い手のメリット
買い手にとっての最大のメリットは、やはり不足している保育士を獲得できるという点でしょう。保育士は資格が必要な職業であり、また新たに雇うとなれば研修も行わなければならないので、コストも時間もかかります。
しかし、事業売却を検討している保育園をそのまま買収してしまえば、そこで働いている保育士を即戦力で取り入れることができます。また、保育園は保育料が主な収益であるため、経営する保育園を増やすことができればそのまま増益を見込むことも可能です。
売り手のメリット
売り手の事業売却のメリットは、大きく分けて2つあります。
- 経営状況の改善
- 事業承継の実現
まずは、経営状況の改善について解説します。保育園の中には資金が不足しているために労働環境や経営状態が悪化しているケースは少なくありません。そのような保育園は人手不足に陥りやすく、そのまま経営が悪化し続けるという悪循環に陥りがちです。
しかし、事業売却を行い、大手の企業に買収されることができれば大規模な資本の傘下に入ることができます。そうなれば経営基盤を強化し、労働環境や経営状態の改善を実現できるようになるでしょう。労働条件を改善することができれば、良い条件で保育士を雇うこともできるようになり、人手不足の改善もできるかもしれません。
次に、事業承継の実現についてです。保育園に限らず、昨今は中小企業を中心に経営者の高齢化が進んでいます。後継者不在に陥っている保育園や中小企業も多く、後継者がいないために事業承継ができなくなるケースが増加しています。
保育園は非常に公共性が高い事業であり、廃園するようなことになれば児童や保護者への影響はかなり大きくなります。ただ、そのような状況でも事業売却を行い、買収されることができれば第三者に保育園を託すことができます。
事業売却を行えば売却益も手に入るため、そのまま経営者が引退する場合でも老後の生活の資金を作ることができるようになります。
②保育園の事業売却のデメリット
保育園の事業売却のデメリットは、保育士や保護者に不安を与えてしまう懸念がある点です。事業売却のようなM&Aはその事業を大きく変えうる経営手法であり、当然失敗するリスクもあります。
成功すればそれに越したことはありませんが、万が一失敗すれば無用なコストや時間を抱えてしまうことになりかねません。M&Aに失敗した会社の中には、それがきっかけで経営が傾いたケースもあります。
そのため、事業売却を行うことが決定した際、その情報が漏れてしまうようなことになれば、保育士や保護者が不安を感じてしまうことがあります。とりわけ保護者は生活の都合上、保育園に依存しがちであり、保育園の経営状態や環境の変化に非常に敏感です。
そのような中で事業売却を行うことが知れ渡るようになれば、保護者が不安がり、いらぬトラブルを招いてしまうことになりかねません。事業売却に限らず、M&Aは成功する目途が立つまで極秘裏に行うようにするものです。
しっかりと交渉が実を結ぶまで、事業売却を行うことは秘匿し、情報が外に漏れないように配慮するようにしておきましょう。
保育園の事業売却における注意点
保育園の事業売却における注意点は、「時間をかけすぎない」ことです。保育園は入園式、卒園式などさまざまな年間行事があり、どれもが児童や保護者にとって大切なセレモニーです。
事業売却に限らずM&Aは時間がかかるものであり、場合によっては1年以上も期間を要することになります。しかし、事業売却の交渉などに時間をかけすぎると保育園の業務や行事の運営に支障をきたす恐れがあります。
もし業務や行事に影響するようになれば、保育士や保護者に不安を与えることになりますし、そこから事業売却を行うことが露呈する恐れがあります。そのため、事業売却を行う際にはなるべくスピーディーに交渉を進めるようにしましょう。
詳しくは後述しますが、スピーディーな事業売却の実現には専門家の協力が不可欠です。専門家のアドバイスを得ながら、交渉を進めるようにしましょう。
保育園の事業売却の事例
保育園が事業売却を行うケースは増加しており、保育園を経営する多種多様な会社が実践しています。代表的な事例としては、JPホールディングスが挙げられます。
JPホールディングスは、事業売却を行っているさまざまな保育園を買収し、それによって事業展開しているエリアを拡大したり、スケールメリットを享受することでさらなる収益の増加に成功しています。
例えば、JPホールディングスは資生堂と合弁会社を設立したこともありました。このように、保育園業界への新たなノウハウやビジネスモデルの導入に努めています。他の業界の会社とM&Aを通じ、新たな事業に取り組むケースも増えています。
保育園の事業売却はM&A仲介会社の専門家に相談
先ほどもお伝えしましたが、実際に保育園の事業売却を行うのであれば、M&A仲介会社の専門家に相談するようにしましょう。
事業売却は、事業譲渡と呼ばれる手法を使うものですが、事業譲渡は許認可や契約を新たに取り直したり、不動産移転の際に新たな手続きや税金が発生するなど、手間もコストもかかるものです。
そもそも事業譲渡に限らずM&Aは税務、財務、法務などといった専門的な知識が必要な経営手法です。また、事業売却を行うのであれば、条件の合う買い手を見つける必要があります。
これも決して簡単なものではなく、結局買い手を見つけられないまま事業売却が失敗に終わってしまうケースも少なくありません。しかし、M&Aの専門家のサポートを得られれば、M&Aを順調に進められる可能性が高まります。
M&Aの専門家というとM&A仲介会社や経営コンサルティング会社などが挙げられますが、いずれもM&Aに関する知識や経験が豊富であり、アドバイザーとしてはうってつけです。
また、最近は特定の業界や業種に特化しているM&Aの専門家も多く、保育園のM&Aを専門的に扱っている仲介会社もいます。そういった会社であれば、保育園業界の事情にも精通しているため、よりニーズにマッチしたサポートを受けられるようになります。
保育園のM&Aをご検討の際は、ぜひ一度M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所には専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが多数在籍しており、培ったノウハウを生かしM&Aをフルサポートいたします。
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まとめ
保育園業界はニーズが高まっている一方で、保育士の不足が目立っており、その解決が課題になっています。保育士の不足は保育園の経営それ自体に重大な影響を及ぼすものですが、事業売却はその課題を解決し得る手段になるものです。
もし事業売却が成功すれば、保育園の経営状態や労働環境を改善できる可能性が高まります。しかし、事業売却は決して簡単な手法ではないため、実際に行う際には専門家のサポートを受けるようにしましょう。
今回の記事をまとめると、以下のようになります。
・保育園とは?
→0歳~学齢期前の児童の保育を請け負う施設(厚生労働省の管轄)
・保育園業界の現状
→許認可が多い、ニーズが増加中、保育士不足
・保育園の事業売却におけるメリット
→買い手:不足している保育士の獲得、売り手:経営状況の改善、事業承継の実現
・保育園の事業売却におけるデメリット
→保育士や保護者に不安を与えてしまう懸念
・保育園の事業売却における注意点
→時間をかけすぎない
・保育園の事業売却の事例
→JPホールディングス:事業売却を行っているさまざまな保育園の買収、事業展開しているエリアの拡大、スケールメリットの享受、保育園業界への新たなノウハウやビジネスモデルの導入
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。