M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年10月5日更新会社・事業を売る
割引現在価値とは?簿記に必要な計算方法や割引率、活用場面をわかりやすく解説
M&Aを検討するにあたって割引現在価値は非常に重要です。この記事では、割引現在価値の理解を深めるとともに、例題を含めた計算式にて解説します。企業価値を求める方法として、割引現在価値を換算しない方法も含め3種類の方法なども解説します。
目次
割引現在価値とは?
M&A・投資・契約・取引などを決定するにあたって割引現在価値について理解しておくことは非常に大切です。
特に不動産投資の場合は、譲受会社が将来もたらせる利益や将来入ってくる家賃の収入をもとにして、どれくらいの金額であれば投資できるのかを決める必要があります。
しかし、実際には将来の利益や家賃収入を正確に知ることは難しいため、現状の状態から予測します。その予測を行うにあたって経験など主観的な視点も重要ですが、ある程度の客観的な視点も重要です。
この客観的な視点として割引現在価値の考え方が使用されます。割引現在価値は、将来得られる利益が現時点でいくらになるのかを理論的に求める指標で、非常に重要な数字です。
割引現在価値について
割引現在価値は、将来的に得られる価値を現在受け取ると、どれくらいの価値になるのかを計算した数字です。
身近な例として、銀行に定期預金として100万円を預け、金利は年1.0%で複利とすると、1年後~3年後までの満期定期預金の残高は以下になります。
- 1年満期の預金残高:100万円×(1+1%)=101万円
- 2年満期の預金残高:100万円×(1+1%)×(1+1%)=102.01万円
- 3年満期の預金残高:100万円×(1+1%)×(1+1%)×(1+1%)=103.0301万円
現在価値とは
現在価値とはPresent Value(PV)ともいわれ、現在価値(割引現在価値)から投資額を引いた「正味現在価値」のことを現在価値と呼ぶ場合もありますが、基本的に割引現在価値と同じ意味で使用され、将来取得できるお金を現時点の価値として計算された金額のことです。
例えば金利が5.0%ある場合は1年後に取得できる105万円の現在価値は100万円になります。現在価値は割引現在価値と同じであるため、時間軸によって価値が変化するのです。
将来得られる利益のリスクの大きさによって、現時点における価値を調整したものが現在価値(割引現在価値)になります。
正味現在価値(NPV)とは
投資における判断においてとても大切な要素で、投資を行うことで将来どれくらいの利益が得られるのかを示す指標が、正味現在価値(NPV)です。
将来生じるであろう収益を現在価値に割り引いたトータルの額から投資額を引いた残額で表されます。NPV=0であれば、そのプロジェクトに投資しても利益は生じないことを意味し、NPVが0より上であれば利益が生じ、投資計画を行うべきと判断できるでしょう。
NPVを用いると、投資を判断するときの尺度として、現在価値を用いて比べられます。投資のタイミングや金額が違うときに、即比べて判断できる点ではわかりやすいです。
ただし、現在価値の元となる割引率は変化するので、割引率にかなり左右されるでしょう。
将来価値とは
割引現在価値(現在価値)の理解を深めるために重要な価値として「将来価値」があります。将来価値とはFuture Value(FV)ともいわれ、現在取得しているお金を将来のある時点での価値に計算し直した金額のことです。
先程の例と同じように考えると現在取得している100万円は、金利が年間で5.0%の場合、現在持っている100万円の将来価値に直すと105万円になります。
上記から、現時点で持っている金額は運用を行えば増加させられるため、将来の自分自身にとっての価値は少し高めに見積もる必要がある考えになります。
一方、現在価値・割引現在価値は少し低く見積もられるため両者は対の考え方です。
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割引現在価値の帳簿に必要な計算方法
ここでは実際に割引現在価値はどのように計算されるのかについて解説します。
計算式に関しての難易度は高くないため、数学が苦手な人でも十分計算できる難易度となっており、以下の計算式で求めることが可能です。
【割引現在価値】
- 割引現在価値=n年後の価値/(1+割引率)n年(期間)
- 2年後:(2年後の資産の価値)/(1+割引率)²
割引現在価値の割引率
割引率は、将来受け取る金銭を現在価値に考えたときの割合を、1年あたりの割合で示したもので、割引現在価値の計算を行ううえで非常に重要です。
割引率は、自社が保持している資産のリスクや確実性が低いものに応じて設定されています。その際、もし3%にしたい場合は0.03、10%にしたい場合は0.1などと設定しましょう。
割引率に関してはリスクが高くなればなるほど大きさ値に設定します。割引率の値が大きくなればなるほど、計算式の分母が大きくなるため、割引現在価値が下がり、逆に割引率の値が小さくなればなるほど計算式の分母が小さくなるため、割引現在価値が上がります。
実際の割引現在価値の計算例
上記にて割引現在価値を計算するための方法について、解説しました。ここでは、上記の割引現在価値の計算式を使用して割引現在価値を算出します。
例題1:1年後の2万円の割引現在価値を求めよ(割引率15%)
まず上記でも解説したとおり、割引現在価値の計算式は下記です。
- (n年後の資産の価値)/(1+割引率)ⁿ
- 2万円/(1+0.15)=2万円/1.15 ≒ 17,391円
例題2:1年後の2万円の割引現在価値を求めよ(割引率20%)
例題1と比較すると割引率が15%から20%に変わっています。計算式に各数字を入れると以下です。
- 2万円/(1+0.2)=2万円/1.2=16,666円
例題3:2年後の2万円の割引現在価値を求めよ(割引率15%)
例題1と比較すると経過年数が2年後となっています。計算式に各数字を入れると以下です。
- 2万円/(1+0.15)²=3万円/1.15²=2万円÷/1.32 ≒ 15,151円
例題4:2年後の2万円の割引現在価値を求めよ(割引率20%)
例題1と比較すると、割引率が15%から20%、1年後が2年後に変わっています。計算式に各数字を入れると以下です。
- 2万円/(1+0.2)²=2万円/1.2²=2万円/1.44 ≒ 13,888円
割引現在価値が活用される場面
この章では、割引現在価値が活用される場面について見ていきましょう。
まず、M&Aの際に、買収対象企業あるいは事業の収益力に合った投資額の計算で用いられます。将来におけるキャッシュ・フローは、対象企業あるいは事業が生じる営業利益がベースです。
不動産投資の判断にも、割引現在価値が活用されています。将来におけるキャッシュ・フローは、該当する物件がもたらす賃料収入や売却収入です。
また、減損会計、リース会計、退職給付会計などの会計基準の際、将来生じるキャッシュ・フローや債務額に対し、現在の価値へ割り引くプロセスが用いられています。
M&Aの際に割引現在価値は活用されるのか?
M&Aの際に買収を検討している会社がどれくらいの価値があるのかを計算するために、割引現在価値はよく使用されます。会社の価値を計算するためにその会社の資産から負債を引いたり、時価総額をその会社の価値と考えたりする場合があります。
しかし、簡単に計算して出された数字なので、その会社が将来どれくらい利益を出せるのかまでは考慮できません。将来どれくらい利益を出せるのかを割引現在価値で換算することにより詳細に見積もることが可能です。
会社の価値を求める代表的な方法
企業価値を求める方法にはさまざまな種類がありますが、大きく分けて下記の3つになります。
【主な企業価値の求め方】
- インカムアプローチ
- コストアプローチ
- マーケットアプローチ
インカムアプローチ
将来予想される収益を会社の価値とする評価方法をインカムアプローチといい、割引現在価値を換算します。
その中でも代表的な手法であるDCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)は、1年後・2年後と各年の割引現在価値を全て出し、合算した数字を会社の価値と考えるのです。
コストアプローチ
現在持っている会社の純資産を会社の価値と評価する方法をコストアプローチといいます。
将来の利益は考えないものの、将来の利益を予測しにくい会社などに対して現時点の会社の価値が重要になるため、コストアプローチが有効的な方法です。
マーケットアプローチ
マーケットアプローチはまず買収候補の会社とよく似た会社を探します。その際、主に上場している会社から探してくることが多いです。
買収候補の会社とよく似た会社を探したら、探し出した会社の状況を参考に会社の価値を計算します。この方法が、マーケットアプローチです。
マーケットアプローチも割引現在価値を使用しないため、将来の利益よりも現状の状態を重点的に評価する方法になります。
割引現在価値のメリット・デメリット
今まで割引現在価値について詳しく解説しましたが、割引現在価値を換算することはメリットだけでなくデメリットもあります。ここではそれらを整理するために、メリット・デメリットそれぞれの視点から見ていきましょう。
割引現在価値のメリット
今回はメリットの中でも主要な内容について解説します。
- 将来の利益を予測して評価できる
- 各会社に対して個別に調整して評価できる
将来の利益を予測して評価できる
企業価値算定の代表的な手法であるDCF法は、その会社が将来にもたらすと予測される利益を出すことが可能です。
買収を検討している会社にとっては現状の会社の状況に関しても重要ではあるものの、これから継続して会社の経営を行うにあたって将来の会社の状況も重要になり、多くの会社は現在の状況よりも将来の状況の方が重要になります。
こうした場合、DCF法で評価をすることにより、将来の利益を評価できるのです。
各会社に対して個別に調整して評価できる
DCF法などの評価方法は固定化された評価方法になっていないため、各会社に対して割引率を設けることによりリスクを反映できます。
DCF法などの評価方法は主観的な評価方法となるため、計算式が複雑です。しかし、その会社ごとに注目する点によって、計算結果が大きく変わってくるため、各会社に合わせて計算を行えます。
割引現在価値のデメリット
続いて主要なデメリットについて解説します。
- 将来生じる可能性があるリスクを割引率に反映することが難しい
- 主観による評価のため算定方法によって評価が変わってくる
将来生じる可能性があるリスクを割引率に反映することが難しい
割引現在価値を換算するためには過去の実績などを使用して評価を行うため、売却側の会社は少しでも自社を良くみせようとすることが多いです。
評価した結果、割引率が小さくなればなるほど現在価値は大きくなりますが、その採用した割引率と将来反映させることが難しい場合が多くみられます。
主観による評価のため算定方法によって評価が変わってくる
割引現在価値を換算する評価方法は主観的な方法です。そのため、換算された価値に関しては客観性が低くなってしまい、計算を行う人の視点次第では計算結果が大きく変わってしまうケースがあり、場合によっては交渉がまとまらなくなってしまう可能性すらあります。
割引現在価値を換算する評価方法は、M&Aなどの交渉時では譲受会社と譲渡会社が共に納得する評価を行わなければ成約することが難しいでしょう。
割引現在価値のまとめ
割引現在価値は、M&A・投資・契約・取引などを決定するために重要です。
割引現在価値は計算式で求められ、その計算式の難易度も高すぎないため自己にて計算することも可能です。しかし、今後の進め方なども含めて相談したい場合は、専門家に相談すると良いでしょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。