M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2025年9月26日更新業種別M&A
名古屋のM&A動向と成功のポイント|調剤薬局の事例も解説
名古屋では、後継者問題などを背景にM&Aが活発化しています。特に調剤薬局業界でその動きは顕著です。本記事では、名古屋のM&A動向や成功のポイントを、具体的な事例を交えながら専門家が分かりやすく解説します。
目次
名古屋における調剤薬局のM&A動向
全国的に調剤薬局のM&Aの成約件数は増加しており、名古屋の調剤薬局についても例外ではありません。この記事では、名古屋エリアでの調剤薬局のM&Aの成功事例などを紹介します。
調剤薬局とは
調剤薬局とは、薬剤師が調剤を行って販売又は授与する場所と定義されています。調剤薬局の正式名称は「薬局」ですが、主に調剤を行うことから「調剤薬局」という呼び名が一般的に使用されています。
調剤薬局を新設するためには開設許可を受ける必要があります。無許可で調剤薬局をオープンすることはできません。
また、調剤業務は薬剤師の独占業務であるため、調剤薬局には薬剤師を常駐させなければなりません。
名古屋の調剤薬局が抱える課題
東海エリアには薬学部のある大学が複数存在し、薬剤師の供給源は比較的豊富です。
しかし、名古屋市内では医療機関の多様化に伴い、門前薬局だけでなく、医療モール型や在宅医療特化型など、様々な形態の調剤薬局が増加しています。
その結果、薬局数に対して薬剤師の確保が追いつかず、特に経験豊富な管理薬剤師や在宅対応可能な薬剤師の不足が深刻な課題となっています。
このように、名古屋の調剤薬局業界は、薬剤師の供給はあるものの、需要の増加と多様化によって、都市部特有の人材不足という問題に直面しています。
名古屋で調剤薬局のM&Aが増加する背景
名古屋の調剤薬局でM&Aが増えている背景には、主に「人材確保」と「経営戦略」の2つの側面があります。
慢性的な薬剤師不足を解消し、安定した店舗運営体制を構築するために、人材ごと薬局を譲り受けるM&Aは有効な手段です。
また、大手調剤薬局グループは、名古屋エリアでのドミナント戦略(地域集中出店)を加速させるため、M&Aを積極的に活用し、スケールメリットを追求しています。
一方で、中小規模の薬局経営者にとっては、診療報酬改定による収益性の低下や後継者不在といった課題から、企業価値が比較的高いうちにM&Aによる事業承継を選択するケースが増えています。
名古屋の調剤薬局のM&A成功事例
この章では、名古屋の調剤薬局のM&A成功事例を3つ紹介します。
1.ツルハHDによるB&D HDの完全子会社化
1つ目の事例は、ツルハHDによるドラッグストアB&D HDの完全子会社化です。B&D HDは愛知県内に65店舗のドラッグストアと調剤薬局を展開している企業で、2017年の売上高は約265億円でした。
今回の案件では、B&D HDの子会社である株式会社B&Dも連結子会社化しています。ツルハHDは、B&Dグループの買収により、中部地区におけるドミナント強化およびスケールメリットによるコスト削減が実現できるとしています。
買収企業 | ツルハHD |
売却企業 | B&D HD(春日井市)、株式会社B&D(名古屋市) |
買収目的 | ・中部地区におけるドミナント強化 ・スケールメリットによるコスト削減 |
2.シップ東日本によるなごみ薬局の子会社化
2つ目の事例はシップヘルスケアファーマシー東日本株式会社による有限会社なごみ薬局の子会社化です。
なごみ薬局は、名古屋市で3店舗の調剤薬局を運営する会社です。本案件により経営の効率化が期待されています。
買収企業 | シップヘルスケアファーマシー東日本株式会社 |
売却企業 | 有限会社なごみ薬局(名古屋市) |
買収目的 | ・シナジー効果の獲得 ・経営の効率化 |
3.ファーマHDによるミマツ薬品株式会社の完全子会社化
3つ目の事例は、メディカルシステムネットワークの子会社ファーマHDによる、ミマツ薬品株式会社の完全子会社化です。
ミマツ薬品株式会社は、名古屋地区で調剤薬局を10店舗運営している企業です。本案件でファーマHDは中部地区での事業規模を拡大しています。
買収企業 | ファーマHD |
売却企業 | ミマツ薬品株式会社(名古屋市) |
買収目的 | 中部地区における事業規模の拡大、コスト削減 |
調剤薬局がM&Aを決断する5つの主な理由
次は調剤薬局業界がM&Aを行う目的について紹介します。M&Aを行う目的はいくつかありますが、この記事では以下の5つについて解説します。
- 後継者問題の解決のため
- 薬剤師の人材不足の解決のため
- 廃業し地域医療に影響を与えないため
- 競争激化への対策のため
- 売却・譲渡益の獲得のため
1.後継者問題の解決
1つ目の目的は後継者問題の解決です。調剤薬局の経営者は、多くの中小企業と同様に高齢化しており、引退の年齢に差し掛かっています。
事業承継の方法には、親族内事業承継・親族外事業承継・M&Aによる事業承継での3つがあります。
調剤薬局の売り上げのほとんどは調剤報酬です。しかし、医療費抑制のために調剤報酬の点数は年々減少しています。
度重なる調剤報酬の改定により、今後の収益性を見通しにくいことから、親族や従業員が事業承継に難色を示すケースは少なくありません。
そのため、地域医療の継続と従業員の雇用を守る現実的な選択肢として、第三者へのM&Aによる事業承継を決断する経営者が増えています。
2.薬剤師の人材不足の解決
2つ目の目的は薬剤師の人材不足の解決です。先ほど紹介したように全国的に薬剤師の数は不足しています。
名古屋のような都市部では、調剤薬局と薬剤師の比率が合わないという都市部特有の薬剤師不足問題を抱えています。
採用で薬剤師を確保することができないため、M&Aにより調剤薬局を買収して薬剤師を確保しようとするケースが増加しています。
そのため、調剤薬局の売却案件のなかでも、薬剤師も引き継げる案件は取引金額が高くなる傾向があります。
3.廃業し地域医療に影響を与えない
3つ目の目的は廃業する必要がなくなり、地域医療に影響を与えなくて済むことです。
医薬分業が進んでいるため、調剤薬局は地域医療の中で重要な施設となってきています。地方のような調剤薬局が少ない地域では、調剤薬局の経営が赤字であったとしても、簡単に廃業することはできません。
これを解決する手段としてM&Aがあり、株式譲渡によって売却すれば患者や医師に影響を与えず、経営者だけ変えることができ、廃業という最悪の選択を回避することができます。
4.競争激化への対策
そのため、調剤薬局が将来的に生き残るためには、かかりつけ機能の強化や在宅医療への対応など、付加価値を高めて患者から選ばれる存在になる必要があります。
特に2024年度の診療報酬改定では、地域支援体制加算の要件がより厳格化されたため、中小薬局が単独で対応するのは困難になりつつあります。
こうした背景から、大手チェーンの傘下に入り経営基盤を安定させ、生き残りを図るためのM&Aが加速しています。
5.売却・譲渡益の獲得
5つ目の目的は売却・譲渡益の獲得です。M&Aによる取引価格は企業価値をもとに算出されます。
企業価値が高いと判断される要素には、事業規模が大きい・収益性がある・常駐している薬剤師の数が多いなどがあり、これらのうち1つでも低下すると売却益は減少します。
調剤薬局は将来的に収益性が低下すると見込まれているため、今のうちに売却して、多額の売却・譲渡益を獲得しておこうという経営者は増加してます。
名古屋で調剤薬局のM&Aを検討する際の注意点
名古屋で調剤薬局のM&Aを成功させるためには、いくつか押さえておくべき注意点があります。ここでは特に重要な3つのポイントを解説します。
適切なM&Aアドバイザーの選定
調剤薬局のM&Aは、薬機法や医療制度に関する専門知識が不可欠です。そのため、一般的なM&A仲介会社ではなく、調剤薬局業界に精通したアドバイザーを選ぶことが重要です。名古屋の地域事情や医療機関との関係性を理解している専門家であれば、よりスムーズなマッチングが期待できます。
企業価値評価(バリュエーション)の重要性
自社の薬局がどれくらいの価値で売却できるのか、あるいは買収したい薬局の価格が適正なのかを正しく把握することは、交渉の第一歩です。企業価値は、収益性だけでなく、立地、門前医療機関との関係、在籍する薬剤師のスキル、在宅医療の実績など、様々な要因で決まります。客観的な企業価値評価に基づき、交渉に臨むことが不可欠です。
従業員や取引先への情報開示タイミング
M&Aの情報管理は非常に繊細な問題です。情報が早期に漏れると、従業員の不安を煽り離職につながったり、取引先との関係が悪化したりするリスクがあります。どのタイミングで誰に伝えるべきか、事前にM&Aアドバイザーと綿密に計画を立て、慎重に進める必要があります。
名古屋でM&Aを成功に導く3つのポイント
最後に調剤薬局のM&Aをスムーズに行うための手段について紹介します。スムーズに行うための手段はいくつかありますが、ここでは以下の3つについて紹介します。
- 医療関係・顧客の理解を得る
- M&A成立後のことを考える
- M&Aの専門家に相談する
1.医療関係・顧客の理解を得る
1つ目の方法は医療関係・顧客の理解を得ることです。先ほども紹介したように調剤薬局は地域医療で欠かせない施設となっています。
そのため、調剤薬局の経営者や担当薬剤師が変わる前は、医療関係者や患者に事前に告知する必要があります。
医療関係者や患者にはM&Aを行う1か月前には告知しておきましょう。取引実績のある医師については1か月よりも前に告知しておき、そのほかの医療関係者や患者の理解が得られるように協力してもらいましょう。
2.M&A成立後のことを考える
2つ目の方法はM&A成立後のことを考えることです。売却する調剤薬局の場合、M&Aが成立し、クロージングが行われると取引先や従業員にとって状況が大きく変化するため、取引先の業者や従業員からの理解を得る必要があります。
また、調剤薬局を買収する企業の場合、M&Aを行う目的を明確にし、M&A成立後のことを考える必要があります。一般的にM&Aには多額の資金がかかるため、M&Aに簡単に失敗することはできません。
買収後、どのようなシナジー効果を得たいのか、どのような調剤薬局を目指すのかを明確にしておくことでM&Aの成功確率を高めることができます。
3.M&Aの専門家に相談する
3つ目のポイントはM&Aの専門家に相談することです。M&Aを行うためには会社法や財務など幅広い知識が必要になります。
また、取引金額の交渉で両社が納得する条件を提示するためには、交渉の実績が必要になります。
M&Aの経験がない経営者が独力で進めると、交渉が不利になったり、思わぬトラブルに発展したりするリスクが高まります。
特に名古屋のような都市部では、買い手・売り手ともに選択肢が多いため、最適な相手を見つけるためにも専門家のネットワークは不可欠です。M&A仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)など、実績豊富な専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
本記事では、名古屋における調剤薬局のM&A動向や、成功のためのポイントについて解説しました。
後継者問題や人材不足、診療報酬改定への対応など、多くの課題を解決する手段としてM&Aは有効な選択肢です。しかし、そのプロセスは複雑で専門的な知識を要します。
名古屋でM&Aを検討されている経営者の方は、まずは調剤薬局業界に精通した専門家へ相談することから始めましょう。自社の価値を正しく把握し、最適なパートナーと出会うことが、成功への第一歩です。
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