倉庫会社の事業承継とは？承継方法や流れ・成功のポイントを徹底解説！

倉庫業界では、大手企業と中小企業の間でM&Aが盛んに行われています。全国には約6,000社の倉庫会社が存在し、市場は大手4社が約10％のシェアを占める断片的な状況です。このため、大手企業は輸送網の拡大や物流ビジネスの最適化を目指し、一方で中小企業は機械化を活用して業務の効率化を図ることを模索しています。

業界再編が加速する中、倉庫業に関連したSaaS開発企業との事業承継を行うケースも見られます。さらに、大手倉庫会社は海外の倉庫や運輸会社を買収し、国際的なネットワークの拡充に積極的に取り組んでいます。
 

倉庫会社の事業承継はなぜ重要なのでしょう。重要な理由は以下の3つが挙げられます。

倉庫会社の事業承継が重要な理由で大きなものが、後継者不足の解決策となる点です。倉庫業界の大半の中小企業にて後継者不足が深刻な課題となっています。実際に後継者不足を理由とした黒字廃業も少なくありません。

一方で事業承継を行えば、親族や社内に後継者がいなくても、事業を継続できます。幅広い選択肢のなかから後継者候補を探せるので、後継者不在問題に悩む企業にとっては非常に有効な手段なのです。
 

経営者の高齢化や経営状況が悪化した場合は廃業を余儀なくされる場合もありますが、その際は従業員を解雇しなければなりません。

このような事態を避けるために、事業承継による会社売却を行えば、従業員の雇用は維持されます。一般的に売却先の多くは現在の会社より事業規模が大きいので従業員の待遇がよくなると期待されます。

ただし、株式譲渡であれば自動的に雇用が引き継がれますが、事業譲渡の場合は従業員が買収先の企業と新規に雇用契約を結ぶ形になります。
 

後継者がいないことや、経営悪化などの理由から廃業の選択を考える方も少なくありません。しかし廃業には多くの費用がかかります。

また、業務用の倉庫は事業用以外には需要は多くはありません。そのため一般の不動産として売却しても、十分な資金を回収できる可能性は低いです、

しかし、事業承継により会社を売却すれば、倉庫の価格に加えて、将来の収入を考慮した金額を獲得できますので、投資分の資金回収が可能になる確率も上がるでしょう。

経営者はM&Aにより事業承継を行うと創業者利益
として、所有する株式を第三者に売却した際の利益を獲得できます。

ここでは倉庫会社の事業承継の方法およびそれぞれの流れについて解説します。

直系の親族や家族内のメンバー、従業員が経営を引き継ぐ方法です。一般的には、経営者が後継者にビジネスを譲渡し、会社の所有権や経営権を移行します。

法的な手続きや資産の評価、税務などの複雑な問題がありますが、家族の間での円満な合意が重要となります。

1. 経営者が後継者を決定し、計画を立てます。
2. 関係者間で譲渡条件や資産の評価などについて合意します。
3. 法的な手続きを完了し、経営権や所有権が後継者に移行します。

企業外の個人や他の企業、投資家が事業を引き継ぐ方法です。M&A（合併および買収）や株式譲渡などの手法が用いられます。

潜在的な買い手の探索、交渉、デューディリジェンス（事業の評価）など、複雑なプロセスが含まれます。

• 買い手を探し、交渉を行います。
• 買収や合併に関する契約書や条件を合意します。
• デューディリジェンス（事業の評価）を実施し、合意に基づいて事業の移行を準備します。
• 最終的な契約を締結し、事業の所有権が移行します。

事業承継は失敗すると損失が多大になってしまう可能性があるので注意深く進めることが大切です。
ここでは事業承継を成功させるコツについて解説します。
 

デューデリジェンスとは、売却側が提出した情報に間違いがないか細かく調査を行ったり、買収後にリスクになり得るものを注意深く洗い出すことを指します。

簿外債務を承継しないためのデューデリジェンスでは、まず債務の特定と性質を明確に把握し、文書化された適合性を確認します。次に、債務が会社の責任と財務状況に与える影響を評価し、リスクを考慮します。解決策を検討し、専門家の助言を得て、法的および財務的な側面を適切に評価します。
 

事業承継で成功を収めるには、計画を立てて準備を進めるのが大切です。

準備不足のままで事業承継を進めると失敗する確率が高くなるので、後継者の選定や後継者の教育、企業理念や事業運営のノウハウ承継等を計画的に行っておきましょう。

事業承継には時間が必要です。後継者探しから始まりやらなければならない項目がさまざまあり、時間がかかります。

後継者が第三者から探す場合は時間がかかるのはもちろんですが、社内にいる場合でも後継者の育成には時間がかかります。
 

良い条件で売却や譲渡を行うには、事業承継を行う前に自社の強みを分析し、まとめておきましょう。

たとえ自社に優れた技術や顧客などの経営資源を保有していても、自社がそれを認識していなかったり、買収側企業に価値を認めてもらえないと、満足できる条件での事業承継は難しいでしょう

買収側企業にとって、売却側企業が持っている技術やノウハウ、事業エリア、販路などは事業承継を行う決め手となります。

今までの実績や主要取引先、社内の有資格者などを分析しまとめておいて、自社の強みを買収側企業へアピ―ルができるように整えておきましょう。
 

事業承継を成功させるには、自社に適した相手を見つけるのが必要ですが、自身で相手先を探すのは非常に難しいです。そのため、事業承継を検討するとなったら、M&A仲介会社をはじめとする専門家に依頼して相手先を探してもらいましょう。

具体的には、まずは匿名で簡単な会社情報を提供し、そこで手を挙げた企業の中から候補を絞る形となります。
 

事業承継を進める際、完了前に従業員や取引先に報告を行うと、余計な不安や混乱を煽りかねません。

また、事業承継を行う上では、関係者に報告するタイミングについて、情報が漏れることがないよう十分な注意が必要です。

混乱を防ぐためにも、従業員や取引先への事業承継への報告は、事業承継完了後に行いましょう。
 

事業承継を成功するには、倉庫業界の現状や動向を把握し、その上で戦略を立てるのが重要です。また、事業承継に関する多くの知識や高い交渉力が必要となるので、事業承継・M&Aの専門家に相談しながら進めるのが成功に向かってのポイントといえます。

専門家に相談し、納得をした上で契約を行います。
 

倉庫業界で事業譲渡を適切に行うには、各業界に精通した専門家によるサポートを受けるのがおすすめです。
M&A総合研究所では、M&Aの支援経験豊富なM&Aアドバイザーが専任につき、事業譲渡を丁寧にフルサポートいたします。
また、料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。（※譲渡企業様のみ）
無料相談も随時受け付けておりますので、こちらの業界で事業譲渡をご検討の際はM&A総合研究所までお気軽にご相談ください。

事業承継を行う前に実際にどのような事例があるのか確認しておくのも大切です。
ここからは事業承継の事例を5つ紹介します。
 

2024年1月31日、株式会社J-MAXは、中国の孫会社で物流・倉庫サービスを提供している広州恒邦儲有限公司の全株式を、現地の投資会社である広州市盛鴻置業投資有限公司に譲渡することを決定しました。

中国の自動車市場では、新エネルギー車が急速に増加しており、主要取引先の生産が減少しているため、広州恒邦儲の親会社である広州丸順汽車配件有限公司の収益が悪化しています。

J-MAXは、構造改革の一環として、広州丸順汽車配件の一部の生産拠点の土地および建物を広州恒邦儲に提供し、株式の譲渡を決定しました。譲渡予定日は2024年6月30日です。

参考：中国の物流孫会社を株式譲渡
 

2024年1月26日、株式会社KeyHolderは、株式会社トポスエンタープライズに民事再生支援を行う意向を決めました。

KeyHolderは、総合エンターテインメント事業をはじめ、映像制作事業、広告代理店事業などを展開する総合エンターテインメント企業グループです。

一方のトポスエンタープライズは、設立当初はパチンコホール向けの遊技台の保管や輸送が主力事業でした。近年は一般物流やパチンコホール向けの景品などの卸売事業、ホテル、コンビニ事業などを展開しています。なお、2023年10月末に事実上倒産したパチンコホールガイアのグループ企業です。

参考：トポスエンタープライズを民事再生支援
 

2023年12月22日、安田倉庫株式会社は株式会社HIROMIカンパニーの全株式を取得し、子会社化することを決議しました。

安田倉庫は、倉庫業、運送事業、通関業、港湾運送事業などをはじめ幅広い事業を展開しています。一方のHIROMIカンパニーは、一般貨物自動車運送業のオリエント・サービスの親会社です。今回の買収はオリエント・サービスのグループ化を目的としています。

倉庫・輸配送ネットワーク全国拡大の一環で、中京エリアでの初の倉庫拠点となります。
株式譲渡の実行日は2024年3月下旬です。

参考：HIROMIカンパニーを事業承継
 

2024年1月1日、株式会社五健堂は株式会社ナワショウが保有する神奈川拠点と愛知拠点を子会社の株式会社六ツ星運送が譲り受けました。

ナワショウは大阪府東大阪市を拠点に、一般貨物自動車運送業や倉庫業を行っています。
一方の六ツ星運送は徳島県板野郡にて陸上運送業を展開しています。

五健堂はこの事業譲受は2024年問題への対応の一環としています。

参考：運送・倉庫拠点を事業承継
 

2023年10月3日、トナミホールディングス株式会社は、山一運輸倉庫株式会社の全株式を取得しました。

トナミホールディングスは、物流事業を主力とするグループの純粋持株会社です。一方の山一運輸倉庫は、地元静岡県富士市の主要産業の製紙関連の物流を主力事業としています。

トナミホールディングスは、東名阪の中心地の静岡県での新たなグループ拠点として同社を経営に融合して、総合的なロジスティックス提案力を高め業容の拡大を目指すとしています。

参考：山一運輸倉庫を事業承継
 

倉庫業界は、EC化が進展しており需要が拡大しています。
そのため、今後も堅調に推移していくと思われますが、激しい競争に勝ち抜くには、事業の総合化をはじめ、オペレーションの自動化、物流システム全体を視野にいれたDXなどの課題に対応していかなければなりません。また、少子高齢化に伴う後継者問題などへの対応も注意が必要です。

現在では倉庫に求められる役割は保管だけではなく、在庫管理や受発注データの管理など多種多様です。

そのような課題へ向けて、事業承継は非常に有効な手段で、倉庫業界の事業承継・M&Aは今後ますます活発になっていくでしょう。