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2019年7月11日公開
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建築資材卸売業の売却額とは?売却の注意点や価額のあげ方を解説

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

建築資材卸売業界はこれまで成長軌道に乗っていたものの、今後はオリンピック後の需要不透明化、金利や消費税等の政策マターに左右される他、競争環境は激化する環境にあり、今後は企業再編が起きると予想されます。

目次
  1. 建築資材卸売業とは
  2. 建築資材卸売業の市場動向
  3. 建築資材卸売業の売却額相場
  4. 建築資材卸売業の売却金額を上げるには?
  5. 建築資材卸売業の売却注意点
  6. 建築資材卸売業の売却はM&A仲介会社に相談
  7. まとめ

建築資材卸売業とは

建築資材卸売業は、建築用途の木材、プラスチック材、金属、ガラスといった基礎商材の他、例えば住宅用途では水廻り設備・浴槽設備・空調設備等の住宅設備機器(以下「住設機器」という)の卸売を主として行う事業を主に指します。当該業界は、住宅に関わるあらゆる種類の商品を取り扱う業界の集合体であり、商品を構成する部品点数も多岐に渡ります。

商品構成が多岐に渡ることから住設機器の商流は多くのプレイヤーが関わり、複雑化しているように見えますが、一般的な流通形態としては、製造先も幅広くある上、需要先も多様である事から、卸売業者を介してサプライチェーンの下位工程に受け渡していく事になります。これらを総称して建築資材業者と呼びます。

建築資材卸売業の市場動向

我が国の不動産投資市場は2008年のリーマンショックにより一時的に悪化したものの、その後の2011年以降の東日本大震災後の復興需要や、その後のオフィス・商業・ホテル市場への開発需要増加を受けて2017年頃まで急激に成長、その後も横ばいを続けております。インバウンド需要増加に伴うホテル開発需要が増加している点もポイントです。住宅市場についても2016年頃まで伸長し、その後はやや下落したものの、同水準で推移している状況です。

住宅施設用途の建築資材

主軸である新築住宅の建設動向は、消費税増税後の反動減はあるものの、リーマンショック以降ゆるやかな回復を見せています。一方で、人口は2008年をピークに減少傾向にシフトしました。市場の縮小が懸念される中で、住設業界各社はリフォーム・リノベーション市場を新たな成長の軸に据えようとする動きを見せています。

加えて、我が国としても「中古住宅・リフォームトータルプラン(国土交通省)」を公表、2020年までに中古住宅流通・リフォーム市場を20兆円に引き上げる目標を掲げ、リフォーム減税・リフォームローンの拡充等の各種施策を行い、市場の成熟を後押ししている状況にあります。こうした施策もあり、住宅リフォーム市場は拡大傾向にあります。

また、新築住宅の購入やリフォーム・リノベーションには高額な資金を要するため、一般消費者のコスト意識が高く、上述の施策や住宅エコポイント制度の導入等の政府の施策が消費行動に大きく左右される他、住宅購入等の消費者の多くは借入を伴うため、金利情勢も消費動向に大きな影響を与える特徴があります。ここ数年で実施された金融緩和、マイナス金利の導入等の緩和策により、借入金利の指標である新発10年国債利回りは史上初のマイナスで推移した事もあり、借入金利の低水準推移が予想されます。

上記のような減税策や借入金利の低下により、購買意欲の上振れが期待される一方で、不安定な市場環境や、今年10月に到来する消費税増税等のネガティブ要因もあり、その如何により消費動向が大きく変動する可能性もあると考えられます。

住設機器の商流と業界再編

上述の通り卸売業者を介するものが主流となっています。建築資材卸は地域に密着した経営を行う小規模事業者を中心とした分散型構造となっているケースが多く(中には全国展開している事業者もいます)、その多くは大手総合商社の流通ルートを活用し、総合商社と資本関係がある事業者が多数存在する事が特徴です。

また、住設卸業の仕入先である住設機器メーカー市場では、これまで専門住設機器メーカーによる分業が行われてきました。しかし、リーマンショック直後には新築住宅向け市場等の縮小が危惧されたため、生き残りをかけスケールメリットを求めた統合・提携が相次ぎ、巨大な総合住設機器メーカーに集約するような業界の再編が起こりました。

・例1:YKKAP/TOTO/大建工業→TDYグループ(2012年に業務提携、グループ売上高 約1兆円)
・例2:INAX/東洋エクステリア/新日軽/トステム/サンウェーブ→LIXIL(2011年に経営統合、グループ売上高 約1.5兆円)
・例3:パナソニック電工/松下電工→パナソニックエコソリューション事業(2012年にセグメント再編、グループ売上高 約1.7兆円)

その結果、住設機器メーカーの価格交渉力が強まり、住設卸業者が住設機器メーカーに依存する業界構造となりつつある。加えて、この再編により各住設機器メーカー系列の卸業者における販売エリアの重複が生じる事となり営業拠点の統廃合を目的とした卸業者の再編へとつながっています。

競合の可能性

住設機器メーカーによる直販の拡大

大手住設機器メーカーは、リフォーム需要の囲い込みを狙い店舗型の建材卸店やオンラインショップによる直販を拡大させています。住設機器メーカーによる直販は価格面で有利なだけでなく、大企業故にCM等消費者に直接触れる機会を増やす事で着実に市場での存在感を増加させています。このように自前で顧客基盤の拡充を行う住設機器メーカーは中小住設卸においても非常に脅威となります。

オンラインリフォームサービスビシネスの台頭

近年では、Amazon等のEC事業者のガリバーや、グリー等のネットビジネス業者がオンラインリフォームサービスへ進出、間接コストが削減されている分、価格競争力が高く、今後の脅威になりうる存在です。

・例1:2015年6月に総合オンラインストアAmazon.co.jpが、積水ハウスグループ、大和ハウスリフォーム、ダスキンのリフォーム関連商品を扱う「リフォームストア」を開設。
・例2:2014年7月に携帯ゲーム大手のグリー(株)が、オンラインリフォームサービスを開始。同年12月には住設ECサイト運営会社セカイエ(株)を子会社化。

また、上記の動きにより、消費者がインターネット経由でリフォームサービスに流れるという直接的なマイナス要因だけでなく、今まで把握しづらかった住設機器の価格についても消費者が簡単に取得できるようになり、値下げ圧力等の間接的なマイナス要因も想定されます。

家電量販店による住設機器事業の参入

家電量販店のヤマダ電機は、2011年10月にエス・バイ・エルを子会社化、スマートハウス事業に参入し、2012年6月には住宅設備機器メーカーのハウステックHDを子会社化し、住設機器事業に参入しています。家電量販店は実店舗に多くの消費者が日々訪れるため、直接エンドユーザーに接する機会を得る事ができ、加えて販売拠点も全国にあり、知名度も高いため、顧客への訴求がし易い点が特徴です。

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建築資材卸売業の売却額相場

建築資材卸売業は一般的には不動産業界の景気に左右されがちですが、競合環境の激化進出や金利状況にも影響を受けるため、2019年では、営業利益の5~7倍が企業価値評価として標準的な相場だと考えられます。また、2020年のオリンピック需要後は更に下落するリスクもあり、買手側のニーズに沿った売却戦略を立てる事が要です。

建築資材卸売業の売却金額を上げるには?

買手側の買収インセンティブとは

同業間または周辺領域とのM&Aを想定した時、買手側のメリットは以下に集約する事が出来ます。

・販路の獲得(自社商品の販売拡大、地域に強い営業基盤の拡大)
・スケールメリットの追求(企業間交渉における発言力の強化、原材料等の共同購買による調達原価の低減)
・重複部門の共通化によるコスト削減
・新たな事業ノウハウ等の獲得

買収側が把握したいポイント(DDで確認したい事項)

従って、買収候補がDD等で確認したいポイントは以下になります。

事業特性

・商業施設向け、住宅向けの別
・住宅向けは、新築販売向け、リフォーム事業向けの別
・買い手がメーカーの場合、自社製品への切替余地
・主要事業以外の事業に関しての将来可能性はあるか
・その他買い手事業とのシナジー効果(事業カルチャー含む)はどの程度あるか

事業地域におけるプレゼンス

・売手側の展開地域における知名度
・売手側の展開地域におけるシェア

取扱商材

・取扱商材数(SKU)、種類
・買手が保有する商材との重複
・商材の価格帯

価格の算出方法

価値評価の方法は、簡単に分類するとインカムアプローチ(例:DCF法)、コストアプローチ(例:簿価純資産法、時価純資産法)、マーケットアプローチ(類似会社比較法(マルチプル法))に分けられます。これらを駆使して、場合によっては複数方法を用いて、妥当な価格範囲を試算してM&Aにおける金額面での意思決定を助けます。

中小企業のM&Aの現場で用いられる「マルチプル法」とは

上記の算出方法にマーケットアプローチという概念がありました。マーケットアプローチとは、市場において成立する価格をもとに企業価値を算定する手法です。代表的なものとして、評価対象企業と類似する上場企業の市場株価や、類似する買収・売却の取引において成立した価格をベースにした一定の倍率(マルチプル)を評価対象企業のPL指標(例:営業利益等)に乗じることによって価値を試算する「類似会社比較法」があります。

マーケットアプローチは比較対象が上場している企業群になるため、組織や企業規模が相応に整っている企業の価値評価では効力を発揮しますが、業歴の浅いベンチャー企業や、少人数でビジネスを回している企業、盲点になりがちですが設備投資等のPLに出てこない財務アクションの割合が大きい企業は算定結果にムラが生じやすい弱点があります。

但し、この方法はM&Aの実務の現場では頻繁に使われるため、売手として戦略的に価格交渉を進めるためには、”仮に「類似会社比較法」で見られた場合”を想定して準備を進める必要があります。

「類似会社比較法」の一、「EV/EBIT法」とは

建築資材卸事業のM&Aの現場で頻繁に使用される指標の一つとして、EV/EBIT法があります。

EV / EBIT法
・EV = Enterprise Value = 企業価値 = 株式価値(オーナーの売却額) + 有利子負債 (+ 有利子負債に準じるもの) – 現金預金 (- 換金性が高く換金して事業運営に支障をきたさないもの)
・EBIT = 営業利益

と2つの指標から成り立つ指標で、分かり易く言うと、企業を買収したとき、その買収資金を買収先企業の営業利益でまかなう場合、何年で回収できるかを示す指標になります。

先述の通り、建材資材卸売会社のM&Aの現場では5~7倍が一般的です。即ち、買収した建築資材卸売会社を5~7年で回収できる事を意味します。例えば、営業利益が2億円の企業であれば、企業価値ベースでは10~14億円で取引されるケースが多い事を指します。

尚、企業価値は「株式価値(オーナーの売却額) + 有利子負債 (+ 有利子負債に準じるもの) – 現金預金 (- 換金性が高く換金して事業運営に支障をきたさないもの)」に分解されるため、上記の例において、例えば借入が3億円、手許現預金が1億円あった場合は、実際オーナーに入る金額は8~12億円(税金支払前)になる事を意味します。

マルチプル法、EV / EBITマルチプル法で高い評価を得るために

日本の株式市場に実際に上場している企業の株価をベースに試算している「EV / EBIT法」は、その特徴として、売上高や営業利益等の成長性が高い会社の方が株価も高く、EV / EBITが上昇する傾向があります。

建築資材卸事業のM&Aにおいては、まず業績が過去から成長している事、売上だけでなく利益指標も併せて成長していると高いEV / EBIT倍率がつく事が想定されます。建築需要の成長に加えて、売手の将来計画が成長軌道を描く絵姿(将来期間の営業利益)が買手に信じてもらえるよう、インタビューで大いにアピールする点も基本的ですが非常に重要です。

また、上記によって導かれた企業価値が一定の前提において、オーナーの株式売却額(株式価値)を最大化する論点に絞って考えると、企業価値の公式、”企業価値 = 株式価値(株主の手取) + 有利子負債 – 現金預金 (- 換金性が高く換金して事業運営に支障をきたさないもの)”から、換金価値がある企業資産を予め換金しておく事も一考です。

ビジネス面で高い評価を得るためには

他のM&Aと変わらず基本的な部分になりますが、事業基盤、展開地域、役員や従業員の能力、商品ラインナップと良い仕入先と顧客先等があればアピールしましょう。

建築資材卸売業の売却注意点

売却プロセスの注意点

売手にとってM&Aの意思決定を行い、プロセスを開始するまでには、オーナー・役員・従業員に相応の負担が掛かっている事が考えられますので、仮にプロセスが途中で頓挫してしまうような事があった場合、全社の士気が落ちるリスクが非常に高いです。また、一度売却の交渉を外部と行った場合、秘密保持契約を当事者間で結んでいたとしても「あのオーナーは会社を売却しようとしている」という噂が立ってしまい、プロセスが進まなくなるリスクがあります。

建築資材卸売業の売却はM&A仲介会社に相談

M&Aはオークションと同じ

プロセスを確実に進めるためには、M&A仲介会社に相談することをお勧めします。スケジュールや社内でのプロジェクトメンバーの決定、買手候補先に配布する売手側に関する事業概要資料の作成について相談する事は、M&Aを成功させるために重要な事になります。

また、M&A仲介会社活用の最大の利点は、彼らのネットワークを使って買手候補に幅広く声掛けしてくれるため、複数社が関心を寄せ、結果的にオークションのように価格が釣り上っていく事が期待される点にあります。

まとめ

建築資材卸売業界はこれまで成長軌道に乗っていたものの、今後はオリンピック後の需要不透明化、金利や消費税等の政策マターに左右される他、競争環境は激化する環境にあり、今後は企業再編が起きると予想されます。

企業価値評価には複数手法があり、これらの選択により価格幅が決まるが、その中でも「EV / EBIT (営業利益)法」は建築資材卸売業界のM&Aでも良く使われる指標。同業界において、5~7倍程度が一般的と考えられます。

「EV/EBIT法」で高く評価されるには、過去の成長実績を買手候補に訴求すること、計画期間中の営業利益がいかにもっともらしく聞かせられるかは極めて重要です。加えて、上記が企業価値を評価する指標である点を鑑みて、現金化できる余剰資産は予め現金化しておくことも一考です。M&Aには大きな負担を伴うため、また、より高く売却する事を期待して、M&A仲介会社に相談する事が望ましいです。

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