2019年12月17日更新事業承継

新設分割と資本金の引継ぎ

新設分割は会社分割の手法の一つであり、新しく設立した会社に分割会社の事業の権利義務の一部、あるいは全てを承継させるものです。新設分割の手法や吸収分割の違い、純資産の引継ぎなどについて解説していきます。

目次
  1. 新設分割における新設会社への資本金の引継ぎ方法
  2. 新設分割とは
  3. 新設分割を行った際の純資産の引継ぎ
  4. 新設分割後の設立会社の株主資本
  5. 新設分割における適格分割と非適格分割
  6. 新設分割の登記
  7. まとめ
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新設分割における新設会社への資本金の引継ぎ方法

新設分割は会社分割の手法の一つであり、組織再編の場面でよく使われるものです。ただ、新設分割は新たに会社を設立してから事業を分割する手法であるため、少し煩雑なスキームとなります。また、会社を分割する形式によって資本金をどうやって引き継がせるかが変わってきます。

この点がややこしく、実際に行うとなると経営者の方の頭を悩ませることになるでしょう。今回は新設分割の様々な手法ごとの資本金の引継ぎについてお伝えしていきます。

新設分割とは

ここではまず新設分割という手法の概要についてお伝えしていきます。

①新設分割の手法

新設分割はどういった手法なのでしょうか。新設分割とは、会社分割の手法の一つであり、新しく設立した会社に分割会社の事業の権利義務の一部、あるいは全てを承継させるというもので、いうなれば分割会社の中にある事業を独立させて会社化するような手法であるといえ、新設分割は分割会社一社で完結させることが可能です。

新設分割は組織再編の性格が強く、経営の縮小を目的として行われることがある一方で、事業を事業会社として独立させることで、分割した事業をより集中して取り組むようにできる良い点もあります。

また、新設分割は株主総会の決議を得るプロセスがありますが、簡易新設分割という手法があり、交付する対価である財産が帳簿価額の5分の1(それを下回る割合なら定款に従った割合)以下だと株主総会をスキップすることができます。

ただ、新設分割は手続きが煩雑なものですので、実際に行う際にはM&A総合研究所にご相談ください。
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②新設分割と吸収分割の違い

新設分割と同じく、会社分割の手法に類するものに吸収分割というものがありますが、これらの違いはなんでしょうか。ます吸収分割とは、既存の会社に事業の権利義務を承継させるという手法であり、いうなれば事業譲渡に近いものです。

つまり、新設分割との違いは、事業の権利義務を承継させる対象が既存の会社か新しく設立した会社であるかという点です。

ただ、新設分割と吸収分割の手続き自体の違いはあまりなく、分割の内容を定めるものが分割会社一社で完結することもある新設分割だと分割計画、既存の会社に承継させる吸収分割であれば分割契約となります。

効力発生日が新設分割だと登記が終わったタイミングに、吸収分割であれば分割契約で定めたタイミングになる、そして新設分割には会社新設の登記を行う必要があるという点にも違いがあります。

また、新設分割は吸収分割と違って会社単体で実行できるのも特徴で、吸収分割により分割する側はいい意味で経営の縮小を図ることができ、承継される側は新規事業の進出などで事業を拡大させることができます。

ただ、もしグループ外の他の会社と新設分割を行う際には、条件の合う売り手を見つける必要があります。 その際にはM&A総合研究所のM&Aプラットフォームをお役立てください。M&A総合研究所のM&Aプラットフォームは独自のAIを用いており、買収ニーズを登録するだけで条件の合う売り手をマッチングします。
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③会社分割する際の注意点

新設分割に限りませんが、会社分割をすると分割承継会社の資本金は増加することになります。この際、資本金が1億円を超えてしまうと、税法上の扱いが中小企業から大企業へと変わってしまい、これまで受けていた税法上の優遇が受けられなくなってしまいます

また、業種によっては資本金が変わることで下請法により下請事業者の定義から外れてしまうこともありますし、信用金庫法では常時使用する従業員数が300人で且つ、資本金が9億円を超えると信用金庫の会員になることができないとしています。

このように、会社分割をして資本金が増えてしまった結果、思わぬ落とし穴に落ちてしまう可能性もありますので注意が必要です。

新設分割を行った際の純資産の引継ぎ

新設分割を行った際、資本金を含めた純資産の引継ぎはどのように行われるのでしょうか。新設分割には分社型と分割型があり、それぞれによって純資産の引継ぎのプロセスが異なります。ここでは分社型の新設分割、分割型の新設分割それぞれの純資産の引継ぎのプロセスをお伝えしていきます。

①分社型の新設分割の純資産の引継ぎ

分社型の新設分割とは会社内にある事業を新設分割の際に設立した分割承継会社に承継させ、その対価として分割承継会社の株式を分割会社に交付するというものです。分社型の新設分割の場合、新しく設立された分割承継会社は分割会社の株式を交付した場合、完全子会社となります。

そして、分割会社の純資産は分割事業にかかる株主資本相当額の範囲内において資本金、資本準備金、その他資本剰余金に振り分けていきます。ただし、この際は利益剰余金に振り分けることはありません。

ちなみに債務超過の新設分割の場合、マイナスとなっている株主資本変動額全てを利益剰余金のマイナスとして振り分け、資本金・資本準備金・その他資本剰余金には振り分けません。また、分割会社の方では分割事業が資本超過・債務超過であるかによって計上の仕方が変わります。

資本超過の場合は分割事業を子会社株式として計上しますが、債務超過の場合であれば負債として組織再編によって生じた株式の特別勘定として計上します。

②分割型の新設分割の純資産の引継ぎ

分割型の新設分割とは分社型の新設分割同様、分割会社の事業を分割承継会社に引き継がせますが、その際に分割承継会社の株式を分割会社の株主に交付するという点で異なっています。分割型の新設分割は分社型の新設分割を行った後に分割承継会社の株式を受け取り、その株式を株主に全て分配する構成になっている点が特徴です。

分割型の新設分割において、分割承継会社の純資産の引き継ぎ方法は2種類あります。資本金・資本準備金・その他資本剰余金に振り分けるという方法と分割会社で減少すると決められている資本金・資本準備金・その他資本剰余金・利益準備金・その他利益剰余金を分割承継会社が引き継ぐという方法です。

この際、税務での手続きにおいて新設分割が適格要件を満たしているか満たしていないかによって異なる部分が発生します。資産や負債を簿価で移転した場合は適格要件を満たした適格分割となり、移転する純資産と移転する前の純資産の比率で分割承継会社に引き継がせる資本金などとし、残りを利益積立金として引き継がせます。

対して資産や負債を時価で移転した場合は非適格要件となる非適格分割となり、分割承継会社の株式の時価を資本金の増加額として計上します。

新設分割後の設立会社の株主資本

新設分割後の設立会社の株主資本に関しては新設分割の形式によって定め方が異なっています。ここでは分社型の新設分割、分類型の新設分割、共同新設分割のそれぞれの株主資本の定め方をお伝えしていきます。

①分社型の新設分割の株主資本の場合

分社型の新設分割の場合、資本金・資本準備金・その他資本剰余金の合計額が設立時株主払込資本変動額に合致するようになっています。

そして、増加資本金・増加資本準備金は設立時株主払込資本額の範囲の中で、分割会社が新設分割計画であらかじめ定めている内容に従った額になり、残った増加資本金・増加資本準備金はその他資本剰余金として扱われます。

②分割型の新設分割の株主資本の場合

分割型の新設分割の場合、対価の全てが設立会社の株式であるのなら、分割承継会社において設立した際の株主資本の各項目について適当に定めることができるようになっています。分社型の新設分割の株主資本の定め方と比べると自由度が高くなっている点が特徴的だといえます。

③共同新設分割の場合

共同新設分割とは別々の分割会社がそれぞれ会社分割を行い、新しく設立した分割承継会社にそれぞれの会社の事業を承継させるため、組織再編のニュアンスが強く新設分割の中でもM&Aやアライアンスの性格が強いパターンだといえるでしょう。この共同新設分割の場合、株主資本の定め方が少し特殊になります。

まず、新設分割を行ったそれぞれの分割会社が単独新設分割をしたケースを仮定し、その仮定で設立した仮会社(分割承継会社)の計算を行った後、それぞれの仮会社が新設合併をすることとして計算してきます。このようなプロセスを経ることで株主資本の会計処理を行っていきます。

新設分割における適格分割と非適格分割

さきほど軽く触れましたが、新設分割、吸収分割といった会社分割には適格要件を満たしているかどうかで適格分割と非適格分割に分けられます。さきほどは資産や負債の引継ぎを簿価で行っているか、それとも時価で行っているかで適格分割・非適格分割を分けていました。

実は、適格要件はそれだけではなく、その他にも会社の支配関係によってさらに細かい要件が定められています。適格要件のイメージとしては「組織再編を行った後でも支配関係が変わっていないかどうか」を見定める基準だと思ってください。

支配関係ごとの適格要件は以下の通りです。

①完全支配関係の適格要件

会社分割を行う会社が完全支配関係の場合、適格要件は以下の通りです。

金銭等不交付要件 会社分割を行った際、分割対価として「分割承継会社の株式または分割承継会社の直接完全親会社の株式のいずれか一方の株式」以外の資産が交付されていないかどうか。
按分型要件 会社分割の際の対価が分割会社の株主が保有している株式の数の割合に応じて交付されているものであるかどうか。
継続保有要件 会社分割前に会社同士の関係が完全支配関係であり、会社分割の後に分割承継会社との完全支配関係が継続しているかどうか。
金銭等不交付要件は、基本的に分割承継会社の株式のみが対価として使われているかどうかを見られます。また、単独で新設分割を行った場合の継続保有要件は、分割前の要件はクリアしていると見做されるため、分割後の完全支配関係継続のみが要件となります。

②支配関係の適格要件

支配関係の場合、適格要件は完全支配関係の場合の適格要件に、いくつかの要件がプラスされている形になります。実際の適格要件は以下の通りです。

金銭等不交付要件 会社分割を行った際、分割対価として「分割承継会社の株式または分割承継会社の直接完全親会社の株式のいずれか一方の株式」以外の資産が交付されていないかどうか。
按分型要件 会社分割の際の対価が分割会社の株主が保有している株式の数の割合に応じて交付されているものであるかどうか。
継続保有要件 会社分割前に会社同士の関係が完全支配関係であり、会社分割の後に分割承継会社との完全支配関係が継続しているかどうか。
事業移転要件 会社分割の際、分割事業の主要な資産・負債が移転されており、なおかつ分割事業の従業員の約8割以上が会社分割後に分割承継会社、あるいは完全支配会社の業務に従事することが見込まれているかどうか。
事業継続要件 分割事業が、分割分割の後に分割承継法人、あるいは完全支配会社において継続して営業されることが見込まれているかどうか。

③共同事業再編の場合の適格要件

会社分割を、支配関係のない会社同士でやった際の適格要件は、完全支配関係・支配関係の適格要件にさらに要件が追加される形になります。共同事業再編の場合の適格要件は以下の通りです。

金銭等不交付要件 会社分割を行った際、分割対価として「分割承継会社の株式または分割承継会社の直接完全親会社の株式のいずれか一方の株式」以外の資産が交付されていないかどうか。
按分型要件 会社分割の際の対価が分割会社の株主が保有している株式の数の割合に応じて交付されているものであるかどうか。
継続保有要件 会社分割前に会社同士の関係が完全支配関係であり、会社分割の後に分割承継会社との完全支配関係が継続しているかどうか。
事業移転要件 会社分割の際、分割事業の主要な資産・負債が移転されており、なおかつ分割事業の従業員の約8割以上が会社分割後に分割承継会社、あるいは完全支配会社の業務に従事することが見込まれているかどうか。
事業継続要件 分割事業が、分割分割の後に分割承継法人、あるいは完全支配会社において継続して営業されることが見込まれているかどうか。
事業関連性要件 分割事業と分割承継会社のうち、いずれかの事業が相互に関連しているものであるかどうか。
選択要件 同等規模要件、あるいは双方経営参画要件のいずれか一方を満たしているかどうか。
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新設分割の登記

新設分割の登記は吸収分割と異なり、分割会社の変更登記と新しく設立した分割承継会社の登記を同時に行う必要があります。そして、登記の際には特定の書類を用意しておきます。書類の種類は新設分割のパターンによって異なりますが、基本的には以下の書類を用意します。

  • 新設分割計画書
  • 定款
  • 役員の就任承諾書
  • 役員の印鑑証明書
  • 役員の本人確認証明書
  • 分割会社の新設分割計画書を承認した株式総会議事録
  • 債権者保護手続関係書面
  • 資本金の計上証明書
  • 分割会社の株主リスト
  • 会社の印鑑証明書
  • 代表取締役の選定書(必要がある場合)

上記に記載した以外にも必要な書類が発生することがありますので、事前にしっかりチェックしておくことがおすすめです。

また、登記は分割会社と分割承継会社が同じ法務局の管轄区域にあるかないかで、登記のやり方が変わることがあります。同じ管轄区域にある場合は同時申請、同じ管轄区域にない場合は経由申請が使われます。

まとめ

新設分割の資本金の引継ぎに関しては、新設分割をどのような形式で実施したかによって変わってくるものであり、場合によってはかなり細かく会計処理をしておく必要があります。

新設分割の資本金の引継ぎは経営者だけではわかりづらい点が多いので、会計士など専門家と協議しながら進めておくことをおすすめします。

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