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2023年12月5日更新節税
株式譲渡にかかる所得税とは?税率・計算方法・取得費を徹底解説
株式譲渡をして利益が出た場合、その利益に対して譲渡所得税が課税されます。譲渡所得への課税は、株式市場での取引であれ、M&Aにおける自社株式の売却であれ変わりはありません。本記事では、株式譲渡時の所得税について計算方法など基本事項を説明します。
株式譲渡とは
株式譲渡とは、広義では株式を有償または無償で譲渡することです(無償譲渡=贈与)。一般に、有償による株式譲渡とは、株式市場における売買取引のうちの売却行為をさします。
狭義の株式譲渡とは、M&Aスキーム(手法)名の1つです。売り手側企業の株式を有償で譲渡し、その買い手は当該企業の経営権を取得します。ただし、経営権取得のためには、50%超の株式を買収しなければなりません。
非上場の中小企業が売り手となる株式譲渡では、オーナー経営者が所有する自社株式を、買い手側に売却する形式で行われます。
株式譲渡の所得税
本記事では、個人が行う株式譲渡に焦点を当て、その際に生じる所得税について解説していきます。株式市場での株式譲渡もM&Aにおける株式譲渡も、課税される所得税(譲渡所得税)の仕組みは同じです。ただし、両者の損益を通算して確定申告はできません。
株式譲渡所得に課せられる所得税は、総合課税とは別の分離課税です。日本の所得税の総合課税は累進課税制度になっており、金額帯ごとに税率が上がります。最高税率は45%で、それに合わせて住民税10%も課税されるので合計55%の税率です。
一方、分離課税である株式譲渡所得の所得税は固定税率で、2022(令和4)年7月現在、以下のようになっています。
- 所得税15%
- 復興特別所得税0.315%
- 住民税5%
- 合計20.315%
なお、復興特別所得税は2037(令和19)年までの時限税です。
株式譲渡における所得税の計算方法
株式譲渡時の所得税を計算するには、まず、譲渡所得(売却益)を算出しなければなりません。株式市場での売却取引における譲渡所得は、以下のように計算します。
- 譲渡所得=株式売却額-株式購入費-委託手数料(消費税含む)など
M&Aでの株式譲渡の場合も、用語は変わりますが譲渡所得算出の考え方は上記と同じです。株式取得費用とは、創業者であれば会社の資本金額が該当します。
- 譲渡所得=譲渡価額-株式取得費用-M&A仲介手数料(消費税含む)など
この譲渡所得に対して、税率20.315%が掛け合わされて所得税額が算出できます。特に複雑な点はないので、シンプルに譲渡所得税が把握できるはずです。それよりも、自社の株式譲渡の場合、気になるのは譲渡価額がいくらとなるかでしょう。
M&Aの現場では、非上場企業の株価算定にあたっては、いくつもの算出法が用意され、そこから複数のものを組み合わせて譲渡価額を導き出します。その会社の現在の価値と将来での期待値が混ざったものになるので、その過程は複雑です。
しかし、オーナー経営者であれば、少しでも高く株式を譲渡したいと思うのが常でしょう。そのようなときに重要なのが、自分に代わって交渉をするM&A仲介会社の存在です。
株式譲渡をご検討の際は、ぜひ一度、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aに豊富な知識と経験を持つアドバイザーがM&Aをフルサポートいたします。
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株式譲渡における取得費用とは
一般的な株取引における株式取得費と言えば、株式を購入した際の費用のことです。株式そのものの購入代金はもちろんのこと、購入手数料や名義書換料など株式を購入する際に出費した金額全てを含みます。
これをオーナー経営者の自社株のケースで考えてみましょう。オーナー経営者の取得費として該当するのは、会社への出資金です。つまり、会社の資本金額が取得費となります。また、M&Aでは、M&A仲介会社に仲介手数料やM&A成功報酬などを支払うことになるでしょう。
それらは、一般の株取引における購入手数料と同等に扱います。しかし、オーナー経営者が初代ではなく、2代目などの後継者であった場合はどうなるのでしょう。身内から相続や贈与によって自社株を取得したのであれば、後継者本人は直接出資はしていないことになります。
仮に取得費が0円だと、譲渡所得が高額となり所得税も高くなるのは必至です。このようなケースの取得費については、実は法令にて定めがあります。相続人や受贈者は、被相続人や贈与者の取得費を引継ぐと定められているのです。
なお、法令では、相続や贈与以外かつ購入ではない方法で取得した株式の取得費についても規定があります。以下にそれらを列記しますので、参考までご覧ください。
- 発行法人の権利行使による取得株式
- 株式引き換えと株式取得権利
- 新株予約券
- 上記以外の条件による取得株式
- 取得費が不明
①発行法人の権利行使による取得株式
以下のどれかに当てはまる場合、その権利行使の日における価額が取得費となります。
- 2001(平成13)年法律第79号による改正前の商法に規定する株式譲渡請求権
- 2001年法律第128号による改正前の商法に規定する新株の引受権
- 2005(平成17)年法律第87号による改正前の商法に規定する新株予約権
- 会社法第238条第2項の決議等に基づき交付された新株予約権
②株式引き換えと株式取得権利
条件付き株式を所有していた場合は、その権利に基づく払込み、または給付の期日における価額が取得費となります。
③新株予約券
新株予約権においては、その取得費は0円と見なされることになっています。
④上記以外の条件による取得株式
株式を取得した時点で、その株式を取得する際に要する通常の価額が取得費とされます。
⑤取得費が不明
株式を取得したときの資料が残っていないなど、所得費用が不明である場合には、株式譲渡実施時の売却代金の5%相当を取得費にすると規定されています。これでは、税負担が重くなってしまうかもしれません。
取得費用がわからなくなってしまうような事態だけは避けたいものです。なお、実際に取得したときに要した費用が、譲渡価額の5%を下回っていた場合、取得費は繰り上がって、売却代金の5%とすることになっています。
付随費用との違い
「付随費用」という用語は、株式(有価証券)取得に関連する費用のことです。この言葉はしばしば「取得関連費用」という用語と混同されることがありますが、基本的には同じ意味です。株式を取得する際に発生する付随的な費用や関連する経費のことを指し、この用語が使われた場合は、株式の取得に伴う追加の費用と理解して問題ありません。
取得費用が求められるケース
株式(有価証券)を取得する際には、さまざまな費用が発生します。株式を購入する際には、取引手数料や消費税が必要です。また、取得する前には、株式の状態を調査するデューデリジェンス費用や、M&A取引をサポートするアドバイザリーの報酬がかかることがあります。
株式を取得した後は名義の変更に関する手数料が発生し、非上場株式の場合はには紹介者への紹介料や謝礼金を支払う場合もあります。
株式譲渡における取得費用の調整
以下のような事態のいずれかが生じた場合は、取得費の計算において、1単位(株式)あたりの価額が調整されることになっています。
株式譲渡時の注意点~株式集約
M&Aで株式譲渡を実施する際、状況により注意すべきことがあります。それは、株式が分散してしまっているケースです。オーナー経営者が株式を100%所有している状態であれば何の問題もありません。しかし、株式の一部を親類や役員が所持していることがあります。
M&Aにおいて株式譲渡を受けようとする相手側は、大抵の場合、それら少数株主との個別交渉は望みません。つまり、オーナー経営者にて株式を集約することが求められます。M&Aでの会社売却を検討する段階では、いち早く株式を集約しておくとよいでしょう。
株式を集約する際に、それをいくらで買い取るのかも検討が必要です。おそらくは、株式の「相続税評価額」か「額面価額」のどちらかでの買い取りになるでしょう。相続税評価額とは、時価に近いものです。つまり、買い取り金額は高額になります。
一方、額面価額で買い取った場合は、相続税評価額よりはるかに安価です。しかし、その場合は、額面と時価の差額が贈与とみなされてしまうため、贈与税が課されます。
最終的に、どちらの価額で買い取った方が安上がりとなるかは、それぞれの状況によって異なるため、ここでは断言できません。やはり、望ましいのは、その段階からM&A仲介会社に相談し、株式集約での具体的な買い取り方法のアドバイスを受けることです。
株式譲渡にかかる所得税まとめ
M&Aで会社を売却することになる株式譲渡では、さまざまな思いも去来するでしょう。しかし、株式を譲渡し会社を手放すことをマイナス思考でとらえずに、転機としてポジティブに考えれば、新たな構想も浮かんでくるはずです。
その構想をよりよく実現するためにも、株式譲渡時の所得税も理解し、M&A仲介会社と積極的にコミュニケーションを取って、これまでの苦労に見合った株式譲渡を実現させてください。
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