2025年12月17日更新会社・事業を売る

M&Aの株式譲渡で確定申告は必要?所得税の計算方法から不要なケースまで徹底解説

M&Aの株式譲渡で利益が出た場合、原則として確定申告が必要です。しかし、特定口座の利用など、申告が不要になる例外もあります。この記事では、株式譲渡所得の確定申告が必要な対象者や所得税の計算方法、注意点をわかりやすく解説します。

目次
  1. M&Aの株式譲渡でも確定申告は必要?
  2. 株式譲渡所得の確定申告|押さえておきたい3つの基礎知識
  3. 株式譲渡所得と所得税の計算方法
  4. 株式譲渡所得の確定申告|具体的な手続きと流れ
  5. M&Aの株式譲渡で特に注意すべき確定申告のポイント
  6. 株式譲渡所得の確定申告が不要な場合
  7. M&Aの株式譲渡における確定申告のポイントまとめ
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M&Aの株式譲渡でも確定申告は必要?

M&Aの手法として株式譲渡を選択した場合、株主(売り手)は譲渡益に対して所得税の確定申告が必要になる可能性があります。会社員の方は年末調整で納税が完了しますが、株式譲渡による所得は対象外です。個人事業主はもちろん、会社員であっても申告が必要なケースを正しく理解し、申告漏れによるペナルティを避けましょう。

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株式譲渡とは?メリット・デメリット、M&A後の社員や税務を解説

株式譲渡所得の確定申告|押さえておきたい3つの基礎知識

まずは、確定申告と株式譲渡所得について基本的な知識を確認しておきましょう。

確定申告の対象者

確定申告の対象者は個人事業主やフリーランスだけではありません。会社員などの給与所得者であっても、給与所得や退職所得以外の所得が年間20万円を超えた場合は確定申告が必要です。M&Aの株式譲渡によってオーナー経営者が得た譲渡益もこれに該当するため、忘れずに申告手続きを行いましょう。
 

確定申告の期日

確定申告の期限は例年2月16日から3月15日までの1ヶ月間で、この期間に手続きを行わなければなりません。ただし、休日の関係などによって年ごとに日付は多少の変動がありますので、事前に確認して余裕を持って手続きを行いましょう。

この期限を過ぎたら確定申告ができないわけではありませんが、「期限後申告」の扱いとなります。申告はできるものの、期限後申告の場合は無申告課税や延滞税が発生する場合もありますので、できる限り期限内に申告することをおすすめします。

株式譲渡所得とは

株式譲渡所得とは、自身が保持している株式を第三者に売却した際に得られる収入です。税務的な観点からみると、所得税の計算カテゴリーの1つです。株式譲渡の損益は、「株式をいくらで購入し、いくらで売却したか」によって決定します。  

購入金額を売却金額が上回れば利益が出ます。それに対して購入金額より安い金額で売却すれば、マイナスの利益が発生します。このとき、プラスの利益は当然課税対象です。一方で、利益がマイナスとなった場合は、課税の対象とはなりません。  

譲渡所得というくくりで見ても、具体的な税額の算出方法や、課税費用についてはそれぞれに若干違ってきます。したがって、確定申告する際には、自分がどの区分に当てはまるのかを確認しましょう。

M&Aスキームとして株式譲渡を用いた場合、売り手である株主個人の税務手続きは非常に重要です。特に非上場株式の譲渡価額の算定や取得費の確認は複雑になりがちです。手続きに不安がある場合は、税理士やM&A仲介会社といった専門家に相談し、正確な申告を行うことをおすすめします。

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株式譲渡と確定申告

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株式譲渡所得と所得税の計算方法

株式譲渡による所得は、給与所得など他の所得と合算せず、分離して税額を計算する「申告分離課税」の対象です。

税率は所得税15%、復興特別所得税0.315%(所得税額の2.1%)、住民税5%を合わせた合計20.315%です。

譲渡所得の金額は以下の計算式で算出します。

株式譲渡所得=総収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費+譲渡費用)
 

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株式譲渡と所得税

株式譲渡所得の確定申告|具体的な手続きと流れ

それでは、実際に株式譲渡所得の確定申告を行う方法を説明していきます。通常の確定申告とは異なる必要書類などもあるので、事前に確認しておきましょう。

①必要な書類

株式譲渡所得の確定申告では、以下の書類を用意する必要があります。

  • 確定申告書B 
  • 分離課税用の申告書(第三表)
  • 株式譲渡所得金額の計算明細書 
  • 年間取引報告書 

上から3つ目までは自身で用意します。年間取引報告書については、証券会社から郵送されてきますので、そのまま提出します。

②確定申告の手順

株式譲渡所得の確定申告は、以下の手順で実施します。

収入金額の記入

上場していない未公開株式と公開している上場株式の分を分けて、それぞれの収入金額を記入します。株式譲渡所得金額の計算明細書に書いてある金額を、分離課税用の申告書(第三表)にそのまま記載します。

所得金額の記入

収入金額の記入と同様に、株式譲渡所得金額の計算明細書に書いてある金額を、分離課税用の申告書(第三表)にそのまま記載します。

この際、収入金額と間違えないよう注意が必要です。所得とは、収入金額から必要経費などを差し引いた額です。この手続きも、同様に未公開株式と上場株式で分けて記入します。

税額の記入

「総合課税合計金額」と「所得から差し引かれる金額」を記入します。また、過去に購入経験のある同一銘柄の株式については、株式の総平均に準じた方法で計算します。そのときに算出された1株単位の金額を用いて金額を算出します。

M&Aの株式譲渡で特に注意すべき確定申告のポイント

M&Aにおける株式譲渡では、上場株式の売買とは異なる特有の注意点が存在します。申告漏れや計算ミスを防ぐために、以下のポイントを押さえておきましょう。

非上場株式の取得費の確認方法

M&Aの対象となることが多い非上場株式は、取得費の証明が難しい場合があります。創業者株主であれば、会社設立時の資本金の払込金額が取得費の基礎となります。しかし、その後の増資や相続・贈与によって株式を取得した場合は、その経緯に応じた評価が必要です。
もし契約書などの資料がなく取得費が不明な場合は、売却代金の5%を「概算取得費」として経費計上することが認められています。
 

株式譲渡にかかる費用(譲渡費用)の範囲

株式譲渡所得の計算上、譲渡価額から差し引ける譲渡費用には、株式を売却するために直接要した費用が含まれます。

M&Aにおいては、M&A仲介会社やファイナンシャルアドバイザー(FA)に支払う成功報酬や手数料、デューデリジェンス(DD)で必要となった弁護士・税理士費用などが該当します。これらの費用は節税につながるため、領収書などを必ず保管しておきましょう。

みなし譲渡と税務上の取り扱い

個人が法人に対して時価の2分の1未満の著しく低い価額で資産を譲渡した場合、「みなし譲渡」と判断され、時価で譲渡したものとして所得税が課される可能性があります。

例えば、親族が経営する法人に株式を低額で譲渡するようなケースでは注意が必要です。意図しない課税を避けるためにも、株式の譲渡価額は客観的な時価に基づいて算定することが重要です。

株式譲渡所得の確定申告が不要な場合

通常、20万円以上の株式譲渡所得が発生した場合には、確定申告が必要です。しかし、収入額や口座の選択によっては、確定申告が不要になるケースもあります。

確定申告が不要になるのは、以下のケースです。

  1. 年間を通じて株式譲渡で利益が発生しなかったケース
  2. 特定口座(源泉徴収あり)を選択したケース
  3. NISA(少額投資取引課税)口座で取引して譲渡益が発生しているケース

それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。

①年間を通じて株式譲渡で利益が発生しなかったケース

前述の通り、株式譲渡所得の確定申告は、未公開株式と上場株式の各グループに分けて考えます。そのどちらでも利益が発生しないケースでは当然、確定申告は不要です。

また、いずれかの株式のみで赤字が出た場合にも、他の株式と利益を相殺できません。給与とも相殺できないので、「株式譲渡では赤字だけど、給与があるから大丈夫」といった考えは通用しません。

基本的に、株式の赤字は切り捨てられます。したがって、株式譲渡所得が損失となっている際は、確定申告は不要です。 

②特定口座(源泉徴収あり)を選択したケース

基本的に株式投資を開始する際には、下記3つの口座からいずれかを選択します。

  • 源泉徴収あり特定口座 
  • 源泉徴収なし特定口座
  • 一般口座  

「特定口座(源泉徴収あり)」を選択した場合は、自動的に各税金が引かれる仕組みになっています。したがって、株式譲渡所得の有無に関係なく、確定申告は不要です。

さらに「特定口座(源泉徴収あり)」には、特定口座内の上場株式を損益通算してくれるメリットもあります。よって、一般口座で投資を実施するよりも手続きが簡素になります。  

一方で、株式譲渡所得が20万円以下の場合でも、問答無用に税金が引かれてしまうというデメリットもあるので注意が必要です。

特定口座(源泉徴収あり)でも確定申告したほうがいいケース

ただし、「特定口座(源泉徴収あり)」でも確定申告を行ったほうがメリットがある場合もあります。複数の口座で株取引をしており、利益が出ている口座と出ていない口座が混在する場合です。この場合は損益が通算されるため、源泉徴収された金額が返金される可能性があります。

株の配当金などと損益を通算して過払い分がある場合も、確定申告をすることによって還付を受けられるケースがあります。

また、毎年確定申告を行うことによって、年間の損益がマイナスとなってしまった場合に損失を翌年以降3年間繰り越すことができるというメリットもあります。ただし、そのためには利益がわずかであった年や取引を行わなかった年も申告を行わなければいけません。

③NISA(少額投資取引課税)口座で取引して譲渡益が発生しているケース

2024年から始まった新しいNISA(少額投資非課税制度)では、年間投資枠(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)の範囲内で得た譲渡益や配当金が非課税になります。生涯にわたる非課税保有限度額は1,800万円です。

NISA口座内の取引で得た利益は非課税のため、確定申告は不要です。ただし、NISA口座で発生した損失は、他の課税口座(特定口座や一般口座)の利益と損益通算したり、損失を翌年以降に繰り越す(繰越控除)ことはできない点に注意が必要です。

M&Aの株式譲渡における確定申告のポイントまとめ

M&Aによる株式譲渡で一定額以上の所得を得た場合、原則として確定申告が必要です。特に非上場株式の譲渡は手続きが複雑になるため、申告の要否や所得の計算方法を正しく理解しておくことが重要です。

申告が不要なケースもありますが、節税の観点からはあえて申告した方が有利になる場合もあります。ご自身の状況に合わせて最適な判断ができるよう、本記事で解説したポイントをぜひお役立てください。
 

要点をまとめると、下記のようになります。

・株式譲渡所得とは
→株式を第三者に売却した際に得られる収入

・株式譲渡所得の確定申告をする必要がある場合
→20万円を超える所得があった場合

・株式譲渡所得がマイナスの場合
→課税対象とならないため、確定申告の必要はない

・株式譲渡所得の確定申告の方法 
→所定の書類に、収入や所得金額、税額をそれぞれ記入して提出する

・株式譲渡所得の確定申告が不要となるケース
→株式譲渡で利益が発生しない、特定口座(源泉徴収あり)を使用、NISA口座で取引

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