M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年6月26日更新業種別M&A
歯科業界のM&Aの動向は?事例10選やM&Aの成功ポイントを解説!
本記事では、歯科業界で実際に行われたM&Aの売却・買収の動向や事例から、M&Aの成功ポイントについて解説します。歯科業界のM&Aでは、医療機器メーカーにおけるM&Aのほか、歯科医院がM&Aを行うケースもあります。歯科のM&Aを検討中の方は必見です。
目次
歯科業界のM&Aとは
歯科業界とは、歯科医院を中心とした業界のことで、歯科医院のほかにも歯科器材を扱うメーカーや流通業者も同じ業界に含まれます。
歯科医院には、歯科や矯正歯科、小児歯科、歯科口腔外科、審美歯科といったさまざまな診療科目があり、近年は患者のニーズに応えるため、セカンドオピニオンを受け付けている歯科医院や、治療方針を詳細まで話し合う歯科医院、治療経過を画面で見られる歯科医院なども増えています。
歯科業界では、近年M&Aが増加傾向です。M&Aには事業規模の拡大や強化などのメリットがありますが、歯科業界でもこうしたメリットを享受するため、M&Aを実施する経営者が増加しています。
また、M&Aは後継者不足といった経営上の問題も解決できるので、歯科医院の廃業を防ぐ手法としても注目されています。身近に歯科医院を引き継いでくれる後継者がいなくても、M&Aを行えば事業承継が可能です。
こういった歯科業界のM&Aを考えるにあたり、まずは歯科業界の特徴や動向について紹介します。
歯科業界の主体
次は、歯科業界の主体とはどのようなものかみていきましょう。人が食事をする際、歯の健康は欠かせないものですが、 歯の健康を維持するには、むし歯の治療といった歯科医療を受ける環境が整っていなくてはなりません。
そのためには、専門知識や技術を持つ歯科医はもちろんのこと、歯科用の器材や装置、診療台など機器や設備も必要です。つまり、歯科医が活躍する歯科医院のほか、機器や設備関連のサービスを提供する医療機器メーカー、流通業者も歯科業界の主体となります。
歯科業界の動向や特徴を把握するには、業界の主体ごとに分析しなければなりません。例えば、歯科医院をM&Aする場合でも、医療機器メーカーや流通業者について詳しく知っておけば、成功確率も高まるでしょう。
歯科医院をめぐる動向
近年は患者の減少傾向が見られ、歯科医院の経営は厳しさを増しています。患者が減少する原因の一つとして考えられるのは、歯科医院の増加による競争の激化です。
競争が激化すれば、そのぶん各歯科医院を利用する患者が減る可能性があり、経営が厳しくなれば廃業に追い込まれてしまうケースもあるでしょう。
また、歯科医院が廃業するのは経営難だけではありません。歯科医院における経営者の高齢化などによって、実質的に事業継続が難しいケースも増えています。事業継続が困難になれば、やむを得ず廃業を選択することになりかねません。
歯科医療機器メーカー・流通業者をめぐる動向
近年は高齢化といった要因もあり、医療機器の需要が増加しています。歯科医療機器も例外とはいえず、需要の増加・多様化に対応した歯科医療機器の開発が求められている現状です。
需要の増加により技術は高度化・多様化しているため、歯科医療機器メーカーは、常に最新のニーズや技術動向を視野に入れ、製品の開発・製造などを進める必要があります。したがって、各歯科医療機器メーカーは、技術力やサービス体制をさらに強化する必要に迫られている状況です。
流通業者は、歯科医療機器メーカーの高度で多様化した製品を歯科医院へ卸しますが、歯科医院の数が減少傾向にあることから競争が激化しています。生き残るためには、顧客を拡大して売上・収益を増加させることが急務といえるでしょう。
しかし、人材の確保やコスト増加などの問題も抱えており、中小規模の会社が多く存在する流通業者も、歯科医療機器メーカーや歯科医院が求めるニーズに答えられるサービス体制を強化する必要に迫られています。
歯科のM&Aの動向
歯科医院と歯科医療機器メーカー・物流業者とでは、同じ歯科業界の中でも状況や求められるものが異なります。それがM&Aの動向にも反映され、M&Aを実施する主な理由は、ぞれぞれの問題を解決するためです。では、M&A動向をみていきましょう。
歯科医院は経営難や後継者問題でのM&Aが増加傾向
歯科医院がM&Aを行う場合、経営上の問題解決を目的とするケースが多いです。もし資金力のある主体に買収されれば安定した財務基盤のもとで事業を継続でき、後継者不在である場合は事業承継が叶います。
こういった事例は事業を継続させることが目的となるので、廃業を救うための手法としてM&Aは非常に有用です。M&Aはさまざまな業界で廃業の回避や後継者問題の解決、事業拡大の目的などで活用されていますが、歯科医院も例外ではなく、経営難や後継者問題を解決できるなど多くのメリットがあります。
歯科医療機器メーカーは競争力強化などでのM&Aが増加傾向
近年は、競争力強化や事業強化などを目的に歯科医療機器メーカーがM&Aを活用するケースも増えています。同業者同士のM&Aによって双方のノウハウを活用し、事業領域の拡大やサービス体制の強化につなげる事例も多いです。
海外企業を含めたM&Aも見られるので、今後は歯科医療機器メーカーのM&Aが多様化する可能性もあります。こういったM&Aでは、特定の事業を強化する場合のほか、新規事業に参入するケースも少なくありません。
いずれの場合も、それぞれの歯科医療機器メーカーが持つサービス体制や顧客基盤などが生かされ、いろいろなシナジー効果が創出されます。自社だけでは簡単に行えない事業拡大や基盤強化もM&Aにおけるメリットです。
シナジー効果とは相乗効果のことで、歯科医院と買い手の良さが組み合わさって、単に足し合わせただけではない強い結果が生まれます。
M&Aをお考えの際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所では、支援実績の豊富なアドバイザーが、専門的な知識やこれまでのノウハウを生かして案件をフルサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります。)無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。
居抜き物件の案件も多い
廃業した歯科医院の施設・医療機器などがそのまま残されている物件を、居抜き物件といいます。居抜き物件を活用すれば、ゼロから開業するより、開業資金を安く抑えることが可能です。
居抜き物件を求める医師も少なくないため、医療分野に特化した不動産会社や医療系コンサルタント会社などに依頼すると、居抜き物件の購入を勧められるケースがよくありますが、従業員や顧客を引き継げない点に気を付けましょう。
歯科業界のM&A・売却・買収については、下記の記事でも詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
歯科業界の開業資金におけるM&Aと居抜きの比較
歯科医院の開業資金は、一般的に3,000万円~5,000万円くらいですが、近年は、内装にこだわったり最新機器を有したりしなければ、顧客がつきにくいことが多いです。そのため、特に都市部は、より高額な開業資金をかける歯科医院も少なくありません。
一方、居抜きは物件にもよりますが、ゼロから開業するより初期投資がかなり抑えられます。しかし、内装リフォームや医療機器の買い替えが必要なケースもあるので、事前にしっかり検討することが大切です。
M&Aにより歯科医院を買収する際は、歯科医院の規模や依頼するM&A専門家で費用は変わりますが、施設や設備、従業員や顧客も譲渡してもらえるといったM&Aのメリットは、ほとんどのケースで享受できます。
また、前医院長やスタッフなどから顧客情報や経営ノウハウなども得られるので、M&Aを行った後の初年度から十分な収益が計上できるでしょう。
歯科のM&Aの事例10選の事例10選
この章では、歯科業界におけるM&Aの事例をみていきましょう。事例を知ることは、自社のM&A戦略を立てることにも役立ちます。
- デンタスによるアイオニックの買収
- ナカニシによるIntegration Diagnostics Sweden社の子会社化
- メディカルネットによるオカムラの子会社化
- AccelmedによるKeystone Dentalの完全子会社化
- CLSAキャピタルパートナーズがノーザへ資本参加
- メディカルネットによるサクセス・サウンドの子会社化
- CBCによるabc dentalの買収
- 山本貴金属地金がパナソニックヘルスケアから歯科材料事業を買収
- 日本ピストンリングによる石福金属興業の買収
- 三井化学によるヘレウスの歯科材料事業の譲受
①デンタスによるアイオニックの買収
2021年6月、デンタスは、シケンとの共同出資によるDSソリューションをつうじて、アイオニックを子会社とすることに決め、株式譲渡契約を結びました。
デンタスは、歯科医療材料の研究開発などを行い、シケンは、歯科材料の販売などを手掛けています。DSソリューションは、アイオニックの買収における投資目的会社で、アイオニックは、オーラルケア製品の製造・販売を手掛ける会社です。
これにより、デンタスは、企業価値のさらなる向上を狙います。
②ナカニシによるIntegration Diagnostics Sweden社の子会社化
2018年12月、歯科医療器具の製造などを行うナカニシは、スウェーデンのIntegration Diagnostics Sweden社(以下、IDSAB)を子会社化することを発表しました。
ナカニシは栃木県鹿沼市に本社を構え、歯科医療器具の製造・販売を手掛けています。近年は、主力事業となる歯科製品関連事業で、インプラント治療分野の強化を進めていました。こうした取り組みのなか、IDSABの子会社化が行われています。
IDSABは、インプラントの定着度を計測する振動テスターの開発・製造・販売を行うスウェーデンの会社です。IDSABの子会社化で、ナカニシはインプラント治療分野の事業強化を進める形になり、各会社が持つテクノロジーの融合などを進め、インプラント治療の進展への貢献を目的としています。
③メディカルネットによるオカムラの子会社化
2018年11月、歯科医療情報ポータルサイトの運営などを手掛けるメディカルネットは、歯科医院に関する器材の販売などを展開するオカムラの子会社化を発表しました。取得価額は非公表です。
オカムラの全株式をメディカルネットが取得し、オカムラはメディカルネットのグループ会社となっています。
メディカルネットは、「インプラントネット」「矯正歯科ネット」「審美歯科ネット」「歯医者さんネット」「入れ歯生活」といったポータルサイト運営をはじめ、インターネットによる医療・生活関連情報サービスの提供を行っています。
歯科医療情報ポータルサイトにおける運営のほか、歯科クリニック経営支援、歯科関連企業マーケティング支援など、歯科医療に関する幅広いプラットフォームビジネスを行っていることも特徴です。
オカムラは、東京都福生市に本社を構える歯科ディーラーです。関東を中心に多くの歯科医院と取引実績があり、歯科医院に対する器材、器具・薬品一式の販売を行っています。この買収により、事業の拡大とグループの結束力・提携力を強めました。
④AccelmedによるKeystone Dentalの完全子会社化
2018年6月、医療機器開発を行うAccelmed(イスラエル)は、Keystone Dental(アメリカ)を子会社としました。売却側は、歯科インプラント製造を手掛けています。
これにより、買収側は、アメリカ市場で伸び悩む売却側のインプラントをアメリカ以外の市場(ヨーロッパやアジアなど)で売り、シェアを得ることを狙います。売却側は、これからも自社製品を販売する見込みです。
⑤CLSAキャピタルパートナーズがノーザへ資本参加
海外企業が関係したM&A事例です。2018年4月、香港系の投資ファンドであるCLSAキャピタルパートナーズは、歯科医療情報システムのパイオニア企業でもあるノーザへの資本参加を発表しました。
この資本参加は、CLSAキャピタルパートナーズがアドバイザーを務める日本の中堅・中小企業に対する投資に特化したファンドであるサンライズ・キャピタルが、ノーザと資本業務提携を行う形です。
CLSAキャピタルパートナーズは、アジア有数の総合金融機関であるCLSA傘下の資産運用部門で、それぞれに特化型ファンドを組成し、さまざまなアジア企業の支援を行っています。
また、ノーザは歯科医院向けの総合コンピュータシステムの開発・販売・保守を行い、業界トップシェアの販売実績があります。今回の資本参加により、CLSAグループのネットワークなどを生かし、事業成長の支援につなげています。
⑥メディカルネットによるサクセス・サウンドの子会社化
メディカルネットは、2017年8月、タイで歯科医院の運営を行うSuccess Sound Co.,Ltd(以下、サクセス・サウンド)を子会社化することを発表しました。取得価額は3,000万円とされ、同年9月にサクセス・サウンドの子会社化が完了しています。
メディカルネットはサクセス・サウンドを子会社化したことで、タイやバンコクでの歯科医院運営事業にも参入する形になりました。
これを皮切りに、海外諸国で日本の先進歯科医療における普及や事業化、新たなマーケットの拡大につなげ、歯科医療環境の健全な発展に貢献します。
⑦CBCによるabc dentalの買収
2017年2月、CBCはabc dental(スイス)を買収することを決めました。CBCは総合商社で、abc dentalは、、歯科材料・歯科機器販売などを手掛けています。
これにより、CBCは、abc dentalの技術と融合して、スイスやヨーロッパで、歯科業界を成長させることを狙っています。
⑧山本貴金属地金がパナソニックヘルスケアから歯科材料事業を買収
2016年7月、歯科材料の開発・製造・販売を行う山本貴金属地金は、医療ITや体外診断機器などの事業を手掛けるパナソニックヘルスケア(現PHC)から、歯科材料事業を譲り受けることを発表しました。
譲り受けたのは、パナソニックヘルスケアとその子会社であるパナソニックデンタルが行っていた、ナノジルコニア製品に関する事業です。ナノジルコニアなどの歯科用セラミックス材料は新素材として注目され、インプラント治療などでニーズが高まっています。
特に、パナソニックヘルスケアなどが展開する「C-Pro ナノジルコニア」は高い性能を持ち、海外でも評価が高い製品で、山本貴金属地金は、製造販売体制整備のほか、ナノジルコニア加工におけるサポートの引継ぎ、CAD/CAM普及に向けた体制の充実を図ります。
⑨日本ピストンリングによる石福金属興業の買収
2014年6月、日本ピストンリングは、石福金属興業から歯科インプラント事業を得ることを決めました。日本ピストンリングは、自動車エンジン部品の製造販売を手掛けています。
日本ピストンリングは、主力事業における自動車エンジン部品の製造販売事業から築いた金属材料開発技術・精密加工技術などのノウハウを生かし、医療機器分野へ事業を展開するチャンスを検討していたので、これにより医療機器分野における事業の拡大を狙います。
⑩三井化学によるヘレウスの歯科材料事業の譲受
2013年4月、ヘルスケア事業を行う三井化学は、ヘレウス(ドイツ)から、事業譲渡の手法で歯科材料事業を得ることを決めました。
もともと三井化学は、子会社のサンメディカルで歯科材料事業を行い、国内において一定のシェアがあり、へレウスは、歯科関連事業を手掛けています。
これにより、三井化学は、グローバル化を実施して今後の成長を見込みます。
歯科のM&Aを行う手順と流れ
この章では、歯科のM&Aを行う手順・流れについて見ていきましょう。
相談・戦略策定
まず、売却側は、M&A仲介会社など専門家へ売却の相談を行い、おおよその売却戦略における策定を立てます。ここでは、より良い条件で売却するためには、どのような準備が必要でどういった手法を使うか、などを話し合うのです。
委託契約・本格的な戦略策定
次の手順は、委託契約・本格的な戦略策定です。M&Aをサポートしてもらう専門家が決まれば、委託契約を結び、本格的な戦略策定に移ります。M&A完了までのスケジュール、M&Aの費用・手数料、手法などにおいて、細かい戦略を詰める流れです。
各種契約書の締結
次の手順は、各種契約書の締結です。売却先が決定していれば、契約締結などの手続きに移ります。しかし、売却先が未決定であれば、売却先を選定します。
デューデリジェンス・条件交渉
次の手順は、デューデリジェンス・条件交渉です。売却先と基本的な契約を結ぶと、買収側がデューデリジェンスを行います。売却側企業に対する監査を買収側が実施するのです。
買収側は、デューデリジェンスで買収後のリスクなどをしっかりと洗い出し、その結果をもとに最終交渉を行います。そして、合意すれば最終契約書の締結です。
クロージング
最終契約書に記した各種手続きの履行が、クロージングです。最後の手順として、売却側は、歯科医院の引き渡しなどを行い、買収側は対価の支払いなどを実施します。
歯科業界におけるM&Aのメリット
この章では、歯科業界におけるM&Aのメリットについて、売却側と買収側に分けて見ていきましょう。
売却側のメリット
売却側の主なメリットから紹介します。まず、売却側は事務員や医師の雇用を確保できる点がメリットです。廃業となれば、スタッフの処遇は経営者にとって大きな悩みですが、M&Aで売却すれば、相手企業へ事務員や医師をそのまま引き渡せるでしょう。
次に、後継者問題の解決ができるメリットです。M&Aによる売却を行うと、多くの候補から最適な後継者を探せます。
また、売却・譲渡益を得られる点もメリットです。廃業すれば、資金を得られず出費が伴いますが、M&Aで売却・譲渡益を獲得すると、経営者はまとまった金額を引退後の生活などに使えます。
買収側のメリット
次に、買収側のメリットを見ていきましょう。
買収側は、医師・事務員などを確保できるメリットがあります。一から開業すると、スタッフの募集を行わなければなりませんが、近年は人材不足で地域によっては募集してもなかなか集まらない現状です。M&Aで買収すれば、医師や事務員などをそのまま引き継げます。
買収側は、低コストで歯科医院を得られる点もメリットです。歯科医院の開業資金は、一般的に3,000万円~5,000万円、内装や機器にこだわるとそれ以上必要です。M&Aで買収すれば、案件や交渉にもよりますが、低コストで歯科医院を引き継げます。
一から開業すると、施設・設備の費用も大きな負担ですが、M&Aで買収すると、立地も含めて最適な施設・設備を割安で手に入れられるでしょう。顧客や取引先・経営ノウハウの獲得もできるので、M&Aを行ってすぐに事業を軌道に乗せられます。
グループや事業エリアの拡大にも、M&Aによる買収は有効です。M&Aで買収すると、新規に開院するよりも、効率良くグループや事業エリアの拡大を実施できます。
歯科のM&Aを成功させるためのポイント
M&Aには歯科医院や歯科医療機器メーカー・物流業者それぞれの問題を解決できる大きな効果があります。
しかし、単にM&Aを行うだけでは必ず成功するわけではありません。そこで、歯科業界のM&Aで成功するためのポイントを、売却を行うケースと買収を行うケースに分けて紹介します。
歯科の売却を成功させるためのポイント
歯科医院、歯科医療機器メーカー・流通業者いずれの場合も、売却する以上は自社(自院)の魅力を相手に伝えなくてはなりません。
具体的には、自社(自院)が得意とする分野はどこか、どのような技術に特化しているか、強みのあるエリアはどこかなど、魅力・強みを事前に整理することが大切です。
これらの点が買い手のニーズにマッチしていれば、買い手が魅力を感じ、買収に名乗り出す可能性が高まります。また、売り手の魅力が買い手のニーズにマッチすればするほど、そのM&Aは売り手にとってもシナジー効果が期待できるのです。
こういったM&Aを実現し、成功に導くためにも、まずは自社(自院)の魅力・強みをきちんと整理し、相手にわかりやすく伝える必要があります。歯科医院の強みがすぐに出ない場合は、現状を整理することから始めましょう。
立地や使用している医療機器の新しさなど、さまざまな情報をリストアップすることで強みが見えます。
買収を成功させるためのポイント
次に歯科医院などの買収を行うケースを見ていきましょう。シナジー効果の高い買収を実現するには、自社(自院)が強化したい事業は何か、どのエリアを強化すべきか、新しく開始したい事業はあるかなど、目的を整理したうえで買収対象を検討します。
大規模な買収を行っても、目的もなく行ったM&Aでは良い効果を得にくいです。例えば、歯科医療機器メーカー同士のM&Aであれば、双方のノウハウや技術、顧客基盤やサービス体制を生かすことで、高いシナジー効果を期待できます。
こうしたM&Aを成功させるには、自社(自院)が買収によって何を成し遂げたいのか、あらかじめ整理しなければなりません。自社の目的・ニーズを明確にすればするほど、適切な相手が見つかりやすく、買収を成功に導けるのです。
目的やニーズを見つけるためには、現在抱えている経営課題をリストアップすることから始めましょう。
歯科のM&Aにおける注意点4選
歯科業界のM&Aで注意すべきポイントとして、以下の4つが挙げられます。
- 目的を明確にする
- M&Aの対象は丁寧に選ぶ
- アプローチはできるだけ早く行う
- 専門家の協力を得る
目的を明確にする
売却側、買収側にかかわらず、M&Aの目的が明確であれば、どのような相手を探せばいいかがわかり、より具体的なM&A戦略を策定でき、最適なM&Aのスキームを検討できます。
目的がはっきりしていなければ「M&Aをしたが思った効果が現れなかった」などといった事態が発生してしまうのです。
売却側も買収側も、M&Aは今後を左右する大きな出来事で、失敗してしまうのは極力避けたいものです。こうした事態を防ぐためにも、M&Aの目的は事前にはっきりさせておく必要があります。
M&Aの対象を丁寧に選ぶ
目的がはっきりしていても、実際にM&Aを行う相手がその目的に合致しなければ意味がありません。M&Aによって売却・買収を行う以上は、対象となる相手を丁寧に選んでください。
自社(自院)にとって最適な相手を選べば、M&A後も事業がますます成長するでしょう。
アプローチはできるだけ早く行う
ふさわしい相手が見つかったら、アプローチは早めに行うことが重要となります。アプローチが早ければ、他の企業に先を越されるなどの事態を防げるからです。
歯科業界のM&Aは増加傾向にあるため、自社だけがその相手とのM&Aを検討しているとは限りません。そのため、できるだけ早くアプローチすることが望ましいです。M&Aでは、基本的な合意をしても最終的な合意・契約をしなければM&Aが実施されません。
アプローチ後に何度も交渉を重ねてはじめてM&Aが実施となるので、最初の段階であるアプローチは早いに越したことはないのです。
専門家の協力を得る
M&Aの手続きでは、法務、税務、財務などの専門知識が求められるほか、相手との交渉力も必要です。この手続きを自社(自院)だけで進めることは難しいため、M&A仲介会社・M&Aアドバイザリーなど専門家のサポートを受けるのが良いでしょう。
ただし、M&Aの専門家には向き不向きがあり、何も考えずに決めてしまうのは危険です。歯科業界に詳しいM&A専門家に相談し、成功の確率を高めましょう。
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歯科のM&Aの費用相場
歯科業界のM&Aにおける譲渡価格が気になる方は多いです。しかし、譲渡価格は一概にいくらとはいえません。歯科業界のM&Aといっても、事例によって対象事業や規模は異なります。
特に歯科業界の場合、歯科医療機器メーカーのM&Aと歯科医院のM&Aで事例が大きく異なるので、一概に相場や費用を判断することは難しいといえるのです。
ただし、ある程度の相場・費用の目安をつけなければ、M&Aの実行にあたって想定外の費用が発生することにもなりかねません。
そのため、自社(自院)に似た事例を詳細に分析し、相場・費用の目安を把握することが重要です。具体的には、各事例におけるM&Aの目的、M&Aにおける企業の規模や業績、対象事業の規模、従業員の数、M&Aのスキームなどを確認したうえで、徹底的に分析します。
しかし、専門家でなければ詳細な分析は難しいです。無料相談でおおよその価格を試算する専門家もいるので、まずは相談してみるのが良いでしょう。
会社を買いたい人必見!個人M&Aの流れや相場、メリット・リスク、成功のコツについては、下記の記事でも詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
歯科業界のM&Aのまとめ
歯科業界のM&Aでは、歯科医療機器メーカーにおけるM&A事例のほか、歯科医院がM&Aを行うケースもあります。歯科医療機器メーカーのM&Aでは、同業者同士のM&Aなどによって双方のノウハウを生かし、事業の強化・拡大につなげる事例が多いです。
こうした事例には、海外企業とのM&Aも含まれています。また、歯科医院の場合、後継者不足などの問題を解決するためにM&Aを活用するケースも少なくありません。こうした事例では、廃業など経営上の危機を救う手法としてM&Aが注目されています。
歯科業界のM&Aといっても事例ごとに特徴は大きく異なるので、歯科業界のM&Aを考える際は、業界内のさまざまな事例をチェックし、専門家の協力を得ながら自社(自院)の状況と似たものは徹底的に分析して検討しましょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。