2020年5月26日更新会社・事業を売る

減損処理とは?メリット・デメリットや計算方法をわかりやすく解説

M&Aや事業投資において、減損処理と呼ばれる会計処理が必要となるケースがあります。投資の成果が芳しく無い場合、減損処理を行い資産価値を減額しなくてはいけません。減損処理の対象となる固定資産、メリット・デメリット、減損処理のタイミングや影響について解説します。

目次
  1. 減損処理とは?減損処理の意味
  2. 減損処理はとても重要です!
  3. 減損処理の対象となる固定資産は3種類
  4. 減損処理のメリットとデメリット
  5. 減損処理のタイミング
  6. 減損処理の計算方法
  7. 減損処理と減価償却の違い
  8. 減損処理の影響
  9. まとめ
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減損処理とは?減損処理の意味

減損処理の意味

減損処理とは、固定資産に関する会計処理の一つです。投資が回収できない見込みがでてきた場合に、その見込みを財務諸表に反映させるための会計処理です。

新規設備への投資に積極的な会社様や、M&Aを活用する企業様にとっては馴染みのある言葉かもしれません。

まず最初に、減損処理の概要をお伝えします。減損処理とは、投資金額の回収ができないと判断された時点で、回収が見込める金額まで固定資産の価値を下げる会計処理です。

事業の成長にとって、固定資産に対する投資は不可欠です。そのため、将来の収益アップを見込んで固定資産を購入する訳ですが、期待通りの結果が出るとは限りません。

会社を成長させることは非常に難しいことであり、失敗するリスクが伴います。当初の計画を達成できないと判断したタイミングで、購入した固定資産の価値を回収可能価額まで減額する必要があります。

この時固定資産の価値を減額する会計処理を、減損処理(または減損会計)と言います。減損処理に関しては厳格な会計基準が設けられており、その会計基準に基づいて減損処理を行います。

【関連】M&Aの課題とは?中小企業における人材流出・システム統合における課題

減損処理はとても重要です!

減損処理はとても重要です!

減損処理は、少し複雑ですが、必ず行うようにしましょう。固定資産の実質的な価値が帳簿に記載されたものよりも下回っているにも関わらず、その実態が財務諸表に反映されていないのは危険です。

投資する側への信頼を失いかねません。しっかりと適切な情報を財務諸表に反映して、正確な情報を提供しましょう。

商法上の大企業や上場企業では、2006年3月決算期以降、減損会計の導入が義務づけられています。これに付随して不動産業・鉄道業、さらには小売業など、事業用有形固定資産を多く保有する業種も実質強制的に減損処理の義務が発生しています。

短期的にはマイナスの計上となりますが、結果的には経営状況の大きな改善に繋がりますので、あまり悲観せずに淡々と行っていきましょう。

減損処理の対象となる固定資産は3種類

減損処理の対象となる固定資産

減損処理の対象となる固定資産は下記の3種類です。

  1. 有形固定資産
  2. 無形固定資産
  3. 投資その他の資産

それぞれ順を追って詳しく解説していきます。また、併せて減損処理の対象にならないものもご紹介します。

⑴有形固定資産

有形固定資産とは文字通り形のある資産を指しており、たとえば機械や建物等はこれに該当します。大規模な事業投資を行う場合、新しい設備を導入したり、土地・建物を取得するケースが多いですよね。

しかし、この新たな事業投資の雲行きが残念ながら芳しくない時は、財務諸表上で固定資産を減損処理する必要性が生じます。

⑵無形固定資産

ソフトウェアや特許権、のれん(=営業権)等の無形固定資産も減損処理の対象になります。特にのれんの減損処理は、M&Aの場面で頻繁に見られます。

M&Aでは将来性を見据えて、買収価格に「のれん代」を上乗せします。のれん代の金額は予測に基づいて算出する為、実際の収益性とは乖離した金額である場合が多いです。

M&Aの効果が想定よりも得られない結果、買収価格に上乗せしたのれん代を回収出来なくなるケースがあります。のれん代が回収できないと判明したタイミングで「のれん」を減損処理し、多額の特別損失を計上します。

しかし、のれんの減損処理を行うこと、それは実質上M&Aの失敗を意味します。

このような事態を避けるには、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aに豊富な知識と経験を持つプロがM&Aをフルサポートいたします。

相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

⑶投資その他の資産

「投資その他の資産」とは投資有価証券等を指しており、こちらも減損処理の対象に含まれます。

購入時よりも時価が著しく減少し、回復する見込みが無いと判断したタイミングで、有価証券も減損処理しなくてはいけません。

【関連】のれん償却期間とは?会計基準と税務

⑷減損処理の対象にならないもの


ここまで、減損処理の対象になるものをご紹介しましたが、以下のようなものは減損処理の対象にはなりません。

  • 「金融商品に関する会計基準」(金融会計基準第10号)における金融資産
  • 「税効果会計に係る会計基準」における繰延税金資産
  • 「退職給付に関する会計基準」がある資産

以上に挙げたものは、それぞれ個別の減損会計に関する指針が定められているため、この記事で解説している「減損処理」の対象からは外れます。

 また、以下のような場合も一般の減損処理とは別のものになります。

  • 100円で販売することを見込んで仕入れた商品の価値が50円に下落した

これも有する資産の価値が下落して損失が発生していますが、その場合は「評価損」として処理するため減損処理の処理対象ではありません。

減損処理のメリットとデメリット

減損処理のメリットデメリット

減損処理にはネガティブな印象ばかり持たれていますが、減損処理の実行により得られるメリットも存在します。

この項では、減損処理のメリットとデメリットをそれぞれお伝えします。

⑴減損処理のメリット

買った固定資産は、減価償却と呼ばれる処理により、一定期間に渡り資産価値を減額していきます。固定資産を買った後は、減価償却分だけ一定期間の利益が圧縮されます。

減損処理では固定資産の価値が減るため、本来生まれる減価償却費が少なくなるのです。

その後の減価償却費が減少することから、次年度以降の利益が相対的に増加します。

単純な利益増加だけでなく、ROE(自己資本利益率)やROA(総資本事業利益率)といった利益率の指標が向上するメリットもあります。

減損処理により貸借対照表上の資産が目減りする為、相対的にROEやROAが向上します。

⑵減損処理のデメリット

減損処理には上記のメリットがあるものの、やはりデメリットも大きいです。

減損処理は多くの費用が計上されるため、資金繰りにも影響が出てしまうことから、減損処理の大きなデメリットと言えます。

減損処理の実行により、M&A等の投資が失敗したと外部に知られる点もデメリットです。

対外的に失敗した企業という印象を抱かれる為、やはり減損処理は極力避けた方が良いでしょう。

減損処理のタイミング

減損処理のタイミング

投資資金を回収出来ないと判明したタイミングで、減損処理を実行します。

決算の度に投資資金の回収可能性を調べていては手間がかかる為、下記の兆候が現れた場合に本格的な調査を行います。

つまり下記の兆候が見られたタイミングで、減損処理が必要となる可能性が高いです。

  1. 赤字が続いている
  2. 資産価値が大幅に下落する
  3. 経営環境が著しく悪化する

それぞれ解説していきます。

⑴赤字が続いている

対象の固定資産を使用している事業で赤字が続いている場合は、減損処理のタイミングが訪れていると判断してよいでしょう。

赤字が継続しているのであれば、今後投資資金を回収できる見込みが低いからです。

⑵資産価値が大幅に下落する

対象固定資産の市場価値(資産価値)が大幅に下落したタイミングでも、減損処理の必要性を調査しましょう。

たとえば、景気後退により土地の価格が著しく下落したとき、などは典型的な例です。

⑶経営環境が著しく悪化する

景気後退等の理由により売上数量や売上高が著しく減少した時点で、減損処理のタイミングかどうか調査する必要があります。

自社の固定資産や営業状態に問題がなくても、外部環境の変化により減損処理が必要となるケースがあるので注意しましょう。

【関連】M&A失敗例から学ぶ成功のポイント

このようなケースを避けるには、どうすればよいのでしょうか。それは、条件の合う売り手をしっかりと選定することです。

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減損処理の計算方法

減損処理の計算方法

必要なタイミングが訪れた時点で減損処理を実行します。減損処理のプロセスは「認識」と「測定」の二段階に分かれます。

この項では減損処理の計算方法について、「認識」と「測定」の二段階に分けて解説します。

⑴資産の把握とグルーピング

減損会計は他の資産または資産グループのキャッシュ・フローとは別個のものとして考えます。

ほぼ独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位で処理を行うのが一般的。ですので、ほかの資産グループの範囲は企業や組織の事情によって異なるため、現状を踏まえてグルーピング方法を決めます。

⑵減損損失の認識

減損処理が必要なタイミングであっても、必ず減損処理を実行する訳ではありません。減損処理を実行するかの判定(認識)を行い、その結果次第で減損処理を実行します。

減損損失を認識するかどうかの判定は、「割引前将来キャッシュフローの総額」と「固定資産の帳簿価額」を比較する事で行います。

割引前将来CFの総額が帳簿価格を下回る場合には、今後の回収見込みがないので減損損失を認識します。割引前将来CFの総額が帳簿価格を上回る際には、投資資金の回収見込みがあるので減損損失を認識しません。

キャッシュフローに関しては、「経済的残存使用年数」と「20年」のどちらか短い年数の合計を用います。

以上のような手順で減損損失を認識します。

⑶減損損失の測定

減損損失をしていると認識すべきだと判断された固定資産に関しては、帳簿価額を回収可能価額まで減額します。

減額した金額分は減損損失として、特別損失に計上します。

回収可能価額とは、「正味売却価額」と「使用価値」のどちらか高い方の金額になります。正味売却価額は、固定資産の時価から見込み処分費用を差し引く事で計算します。

使用価値は、今後固定資産を使用して得られるCFと処分時に得られるCFの現在価値となります。

減損処理と減価償却の違い

減損処理と減価償却の違い

減損処理とよく似た言葉の会計処理に「減価償却」というものがあります。字面はよく似ていますが、また違ったものです。

それぞれの違いについて解説していきます。

⑴減損処理と減価償却の違い

減損処理と減価償却は互いに固定資産の価値を減額する点では同じですが、価値を減額する理由に違いがあります。

減損処理では、将来得られるキャッシュの減少を理由に固定資産の価値を減額します。回収可能な金額に簿価を合わせる目的なので、一度に多額の損失を計上します。

一方で減価償却では、固定資産の経年劣化を理由に固定資産の価値を減額します。

固定資産は年々使用するうちに徐々に劣化する為、毎年少しずつ固定資産の価値を減額し、その分だけ費用を計上します。

⑵減損処理後の減価償却とは

減損処理した固定資産に関しても、減価償却の処理が必要です。減損処理後は、減損損失を差し引いた帳簿価額を基準に減価償却します。

減損価額には耐用年数の到達時点に予想される固定資産の正味売却価額を用い、残存耐用年数には減損処理後の経済的残存耐用年数を使用します。

減損処理の影響

減損処理の影響

最後に、減損処理による影響を解説します。減損処理により、主に下記2つの影響が生じると言われています。

  1. 短期的な株価下落
  2. 業績の改善

1つずつ、見ていきましょう。

⑴短期的な株価下落

減損処理は「投資の失敗」を意味するため、投資家からはマイナス印象を持たれます。企業自体に将来性や収益性が無いと判断され、短期的に株価が下落する可能性があります。

ケースバイケースなので一概には言えないものの、投資する際には十分注意しましょう。

しかし、あくまでもこれは業務書評上の数値での判断です。一次的に株価が下落するとしても、この先の経営のビジョン・方策がしっかりと練られているのであれば問題ないでしょう。必要以上に焦る必要はありません。

「減損処理を行えば、短期的に株価が下落する」ということが知識としてあらかじめ頭に入っていればそれで問題ありません。

⑵業績の改善

残念ながら減損処理を行った年度の経営成績は以前のものに比べると悪化することでしょう。しかし、その後の利益額や利益率は良くなる傾向があります。

企業にとっての「足かせ」が解消される為、長期的な目で見ると業績が改善される可能性が非常に高いです。

こちらもケースバイケースですので、必ず業績が改善されるとは限りませんが、多くの会社が減損処理が功を奏して経営業績の回復をとげています。

以上が減損処理による一般的な影響です。

まとめ

今回は、減損処理に関して解説しました。投資の成果が芳しく無い場合、減損処理を行い資産価値を減額しなくてはいけません。

マイナスイメージを持たれやすいものの、その後の経営状態を改善するきっかけにもなり得ます。

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