M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2021年5月4日更新会社・事業を売る
相対取引とは?メリット・デメリットや市場取引の違いを解説
株式やFX取引で用いられる「相対取引」には、自由に取引価格を決定できるなどのメリットがあります。ただし、通常の市場取引とは異なる点やデメリットもあります。本記事では、相対取引について、メリット・デメリットや市場取引との相違点などを中心に紹介します。
相対取引とは?
株式・外貨・仮想通貨などの取引シーンでは、相対取引という用語が用いられています。上場株式を取引する場合には、取引所を通じて売買を行うのが基本的です。その一方で、非上場の株式を売買する場合には、取引所をとおさずに取引を行います。
上記のように、市場を介さずに当事者同士で売買する方法を「相対取引(あいたいとりひき)」と呼びます。人によっては「相対売買」や「OTC(Over The Counter)」と呼ぶこともある手法です。相対取引は取引相手と1対1で取引する点が特徴的で、以下のような取引内容を当事者同士で決定します。
- 価格
- 数量
- 決算方法
例えば、銀行と顧客との間の取引や不動産業者と顧客との間の取引などが、相対取引に該当します。一見すると取引所を介する取引形態が主流に思えますが、実際の売買取引シーンではむしろ相対取引が基本的な手法です。
相対取引と市場取引の違い
相対取引と対になる概念に、市場取引があります。ここでは、相対取引と市場取引の違いを見ていきましょう。
市場取引とは
市場取引とは、市場において不特定多数で取引する方法です。例えば、株式であれば、証券取引所を介して買いたい人と売りたい人が多数集まったうえで、市場取引が実行されます。
一般の投資家は証券取引所には参加できないため、証券会社に「売り」や「買い」の注文を行うことで、証券会社が代わりに取引を実行しています。
相対取引と市場取引の違い
相対取引と市場取引の間には、いくつかの違いがあります。主な相違点は以下の2つです。
- 価格決定の仕組み
- 各取引方法が取り扱う資産
それでは具体的にどのように違うのか、順番に見ていきましょう。
違い①価格決定の仕組み
最も大きな違いは、「価格決定の仕組み」です。具体的には、以下のような相違点が見られます。
- 相対取引:当事者同士で価格を決定する
- 市場取引:需要と供給のバランスにより価格が自動的に決定される
市場取引では、買いたい人が多くなるほど価格が上昇し、売りたい人が多いほど価格は下落するという仕組みです。株式市場においても、基本的にはこの仕組みによって価格が決定されます。
違い②各取引方法が取り扱う資産
価格決定の仕組みだけでなく、「各取引方法が取り扱う資産」にも違いが見られます。具体的な相違点は、以下の2つです。
- 市場取引:「同種の商品が数多く存在する」ケースに適した取引
- 相対取引:「同種の商品数が少ない」、「稀少性の高い資産を売買する」ケースに適した取引
もともと上場株式や通貨などは、同種の資産が数多く存在するため、市場取引が適しています。その一方で、土地や不動産には、まったく同じ姿・形をしている資産はないため、相対取引が適しているのです。
M&Aと相対取引
株式公開買い付け(TOB)以外でM&Aを行う場合には、相対取引に該当します。そのため、中小企業間のM&Aにおいて、相対取引は非常にメジャーな手法です。しかし、M&Aを成功させるには、高度の専門知識や実務能力が求められます。
M&Aをご検討の経営者様は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aに関する豊富な知識と経験を持つアドバイザーによる専任フルサポートを行っています。
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相対取引のメリットとデメリット
取引できる市場が存在するにも関わらず、相対取引のメリットを生かすためにあえて相対取引を選ぶケースもあります。ここでは、相対取引のメリットとデメリットをまとめました。
相対取引のメリット
相対取引には、主に2つのメリットがあります。
- 価格や決済方法を自由に決定できる
- 取引額が市場による価格変動の影響を受けない
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
①価格や決済方法を自由に決定できる
相対取引にある最大のメリットは、当事者同士が価格や決済方法などを自由に決定できる点です。これは、特に株式譲渡によるM&Aにおいて大きなメリットとなります。M&Aの取引価格を決める主な評価対象は、以下のとおりです。
- 現時点の業績や資産価値
- 将来性や株価に含まれていない無形固定資産の価値
上記を踏まえると、相対取引を用いれば、売り手ごとに変動する「将来性や無形固定資産の価値」を買収価格に反映させることが可能です。
②取引額が市場による価格変動の影響を受けない
市場価格の影響を受けずに取引できる点も、相対取引の持つ大きなメリットです。
例えば、市場を通じて大量の株式を買い集めようとする場合、買い集める過程で株価が上昇してしまいます。株価の上昇に伴い、当初の予算では買い集めることができなくなるおそれがあるのです。その一方、市場外で相対取引を行うと、一定価格により欲しい量のみを売買できます。
相対取引のデメリット
相対取引には、以下2つのデメリットもあります。
- 不公正な取引が成立するリスクがある
- 取引に時間がかかる
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①不公正な取引が成立するリスクがある
市場取引では、需要供給のバランスにもとづき合理的な価格で取引できます。その一方、相対取引では当事者の合意価格によって売買されるのです。そのため、相対取引において売り手と買い手の間に情報の非対称性がある場合、不当に高い(あるいは安い)価格で取引が成立するおそれがあります。
また、相対取引では取引の形式も自由に決定できるため、例えば「売り手側が現物を先に渡し、後日買い手側が現金を支払う」といった契約も可能です。つまり、契約の内容次第では、対価を受け取れないなど詐欺に遭うリスクもあります。
②取引に時間がかかる
相対取引では、当事者同士が交渉を積み重ねたうえで取引を行います。そのため、市場取引よりも時間がかかりやすいというデメリットもあるのです。基本的に市場取引では1回のクリックで取引が完了しますが、相対取引では数ヶ月もの時間がかかる場合もあります。
株式の相対取引を行う方法
株式の相対取引を行うには、主に2種類の方法があります。
- 純粋な相対取引
- OTC取引
ここでは、株式の相対取引を実行する方法を解説します。
①純粋な相対取引
これは、当事者同士が場所・時間を自由に設定したうえで、仲介業者を一切関与させずに実施する相対取引です。取引に必要な手続きは、すべて売り手と買い手が行います。
- 現物の引き渡し
- 代金の振り込み
- 契約の締結
仲介会社への手数料がまったくかからないメリットがある一方で、思わぬトラブルを招くリスクもある手法です。一般的に相対取引といった場合には、この形式をさします。
②OTC取引
OTC(Over The Counter)取引とは、証券市場外で実施する取引ではあるものの、証券会社を介入させたうえで行う相対取引です。取引自体は当事者同士で行うため、価格などは自由に決定できます。
とはいえ、証券会社を介入させるため、一定の手数料が発生します。OTC取引は、市場取引と相対取引の中間的な方法という位置づけです。
株式の相対取引における価格
ここでは、株式の相対取引における価格について、以下2点に分けて解説します。
- 相対取引における価格とは?
- 相対取引における株式価格の決定方法
それぞれの項目について、順番に見ていきましょう。
相対取引における価格とは?
株式の相対取引では、当事者同士で自由に価格を決定できます。とはいえ、根拠なく価格を決定すれば、当事者のどちらかが損をするおそれがあるのです。そのため、相対取引における価格は、根拠を持って決定することが非常に重要です。
なお、M&Aシーンでは、ファイナンスの理論にもとづく方法を用いて株価を決定します。取引目的や企業の性質などの要因によって、相対取引における株式価格の決定方法は異なる仕組みです。
相対取引における株式価格の決定方法
相対取引における価格決定方法にはさまざまありますが、今回は代表的な3つの価格算定方法を紹介します。
- 市場株価法
- DCF法
- 簿価純資産法
それぞれの方法について、詳しく解説します。
①市場株価法
市場株価法とは、直近1ヶ月〜3ヶ月ほどの平均株価を取引価格とする方法です。市場株価法には、以下2つのメリットがあります。
- 需給のバランスを考慮した、客観性の高い価格を算定できる
- 数ヶ月分の平均を取るため、短期的な市場変動の影響を抑えられる
このようにメリットの多い価格算定方法ですが、上場企業の株式のみが採用できる方法です。つまり、非上場企業の株式には市場株価法を採用できないため注意しましょう。
②DCF法
DCF(Discounted Cash Flow)法とは、将来的に生み出すフリーキャッシュフロー(FCF)を基準に、株式の価格を算出する方法です。具体的にいうと、フリーキャッシュフローをWACC(Weighted Average Cost of Capital)と呼ばれる割引率を用いて現在価値に割り引いたうえで、株価を算出します。
WACCとは、企業の加重平均資金調達コストのことです。DCF法を用いるには、ファイナンスの専門知識が必要となるため、純粋な株式売買ではほとんど用いられません。とはいえ、M&Aや事業投資の場面では、非常に役立つ方法です。
③簿価純資産法
簿価純資産法とは、貸借対照表の純資産を用いて株式の価格を算出する方法です。簿価純資産法には、以下のメリットとデメリットがあります。
- メリット:純資産を発行済株式総数で割れば簡単に価格を算出できる
- デメリット:将来性を考慮できない
そのため、将来性の高い企業には適さない価格算定方法といえます。
株式の相対取引における税金
ここでは、株式の相対取引で生じる税金について、2つのポイントを解説します。
相対取引により株式を売買した場合、通常どおり税金が発生します。たとえ「市場を介さないから税金の不払いは発覚しない」と思ったとしても、いずれ必ずこの事実が税務署にわたって脱税として扱われるのです。
脱税が発覚すれば、非常に重いペナルティが課されるうえに、逮捕される可能性もあります。相対取引において利益が発生したら、必ず税金を納税しましょう。
株式の相対取引では、売り手側の譲渡所得に対して20.315%の所得税などが発生します。譲渡所得は、以下の式で算出可能です。
- 譲渡所得=取引価格ー(取得費用+譲渡費用)
上記の取得費用とは、購入費や購入手数料など株式の取得に要した費用のことです。また、譲渡費用は、株式の売却に要した費用であり、M&Aの場合にはアドバイザリー手数料などが該当します。以上を踏まえると、株式の相対取引で発生する税金は、下記の計算式で算出可能です。
- 税金の合計=譲渡所得×20.315%
- 内訳①)所得税=譲渡所得×15.315%
- 内訳②)住民税=譲渡所得×5%
なお、所得税と住民税の納税タイミングは異なるため、納税資金を十分に確保しておく必要があります。
相対取引とFX
基本的に、FXも相対取引に該当します。FXとは「Foreign Exchange」の略称であり、本来は「外国為替取引」の意味を持つ言葉です。とはいえ最近では、「外国為替証拠金取引」をさす言葉として一般的に用いられています。
FXでは、店頭のFX業者を相手に取引を行います。このとき、相手とする店頭FX業者によってスプレッド・取引手数料・スワップポイントの金利などの有無・金額が異なっているのは、相対取引であることが理由となっているのです。
スプレッドとは、FX取引を行う際の買値と売値の差(取引にかかるコスト)のことです。また、スワップポイントとは、2つの通貨国の国債の間で生じる金利差をさします。
現在は店頭FX会社との取引が主流となっており、相対取引はFXを行ううえで必要不可欠の取引形態です。相対取引ではスプレッドの幅・スワップポイント・取引通貨単位などの諸条件が業者によって異なっているため、利益を得るには取引条件を十分に吟味して自身にとって最適な業者を選択しましょう。
まとめ
今回は、相対取引について解説しました。株式やFX取引で用いられる相対取引には、自由に価格を決定できるといったメリットがあります。自由度の高い相対取引を有効活用すれば、市場取引よりも大きな利益の獲得を期待可能です。本記事の要点をまとめると、下記になります。
・相対取引とは?
→市場を介さずに当事者同士で売買する取引方法
・相対取引と市場取引の違い
→価格決定の仕組み、各取引方法が取り扱う資産
・相対取引のメリット
→価格や決済方法を自由に決定できる、取引額が市場による価格変動の影響を受けない
・相対取引のデメリット
→不公正な取引が成立するリスクがある、取引に時間がかかる
・株式の相対取引を行う方法
→純粋な相対取引、OTC取引
・相対取引における株式価格の決定方法
→市場株価法、DCF法、簿価純資産法
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。