M&Aとは?手法ごとの特徴、目的・メリット、手続きの方法・流れも解説【図解】
2023年5月19日更新業種別M&A
訪問介護のM&A・事業承継!動向・流れ・ポイント・動向を解説【事例付き】
近年、訪問介護は、国が推し進める地域包括ケアシステム実現のための重要な業種で、今後M&Aが活発化すると予想されます。訪問介護のM&A・事業承継に関して、業界動向・M&A手続きの流れ・売却相場・M&A成功のポイントを事例から解説します。
目次
訪問介護のM&A・事業承継
訪問介護とは
訪問介護とは、ホームヘルパーが介護者の自宅に訪問して、身体介護や生活援助を行うことです。訪問介護で自宅に訪れるホームヘルパーは、介護福祉士や介護員養成研修などを取得しており、介護や援助の専門的な知識と経験を有しています。
例えば、身体介護には食事・入浴・排泄の援助など、生活援助には掃除や洗濯などがそれぞれ含まれます。ホームヘルパーは医療行為を行えないため、インスリン注射や床ずれ処置などは行えません。
M&A・事業承継とは
M&Aとは「合併と買収(Mergers and Acquisitions)」の頭文字を取った言葉であり、会社や個人事業を買収・売却したり、合併・分割したりする取引を意味します。近年、訪問介護事業者を対象とするM&Aも活発化しており、高齢者の増加に伴い、今後はさらに活発化する見込みです。
また、事業承継とは、後継者へ会社や個人事業を引き継ぐことです、近年は、親族や社員への事業承継に代わって、M&Aを利用した事業承継が増えています。
訪問介護業界の現状
訪問介護業界のM&A・事業承継を行うには、業界の現状を把握したうえで、適切な手法や売買先を選ぶ必要があります。訪問介護業界の現状としては、要介護の高齢者数が年々増加・介護給付費も膨張と抑制の必要性など、以下の5つが挙げられます。この章では、これら5つのポイントを解説します。
- 要介護の高齢者数は年々増加
- 介護給付費も膨張と抑制の必要性
- 介護報酬のマイナス改定による影響
- 報酬に見合わない業務の影響で人材不足
- 倒産件数の年々増加
要介護の高齢者数は年々増加
要介護の高齢者数は年々増加しており、この傾向は当分の間続くと考えられます。厚生労働省が公表している「介護保険事業状況報告」によると、65歳以上の第1号被保険者の要介護認定者数は、2003年が約370万人であるのに対して、2015年は約607万人です。
また、2019年度末時点ではで669万人にまで増加しており、この増加傾向にいかに対応していくかが、訪問介護業界の大きな課題とされています。
介護給付費も膨張と抑制の必要性
訪問介護の報酬はほとんどが介護給付費から支払われるため、介護給付費の制度が十分に維持されることが重要です。しかし、近年は高齢化によって介護給付費が膨張しており、2000年の3.6兆円に対して2016年は10.4兆円まで増加しています。
2025年には21兆円になる試算もあり、介護給付費をいかに抑制していくかが重要な政策課題です。
介護報酬のマイナス改定による影響
介護報酬は定期的に改正されており、プラス改定の年とマイナス改定の年があります。訪問介護は介護報酬の改定の影響を大きく受ける業種であるため、マイナス改定による影響の考慮は重要です。
近年の介護報酬では「地域包括ケアシステム」を推進しており、訪問介護などの在宅介護サービスを充実すべきとの考えで進められています。この傾向は訪問介護業界にとってプラス要因ですが、改正は業界動向や物価などを総合的に勘案して決めるため、仮にマイナス改定になった場合の対策を考えておくことも重要です。
報酬に見合わない業務の影響で人材不足
訪問介護などの介護職は低賃金かつ重労働な業種とされており、離職率が高く常に人材不足の状態に陥っています。訪問介護の売上は介護報酬頼みであり、今後とも従業員の賃金が大幅に改善される可能性は低く、人材不足の問題を根本的に解決するのは難しい状況です。
人材不足による事業者間での従業員の奪い合いも深刻な問題で、人員不足がさらなる労働環境の悪化を招く悪循環が見られます。
人材不足の要因
訪問介護など介護職の人材不足の主な要因としては、以下の2点が挙げられます。
- 有資格者でないと従事が不可能
- 介護報酬が算定されない時間が多く存在する
公益財団法人 介護労働安定センターの調査(2021年実施)によると、訪問介護を含めた介護職の一般労働者の所定内賃金(無期雇用職員、月給制)の平均額は、243,135円で、前年度より8,696円増加しました。
しかし、介護業界の賃金は決して高いとはいえず、その要因のひとつに「介護報酬が算定されない時間が多い」点が挙げられます。
介護報酬は介護サービスの提供時間をもとに算定されるため、訪問介護のように算定時間に含まれない移動時間が多い介護職の場合、賃金を上げることが難しいのが実情です。
また、同調査によると、調査対象の介護労働者のうち40%程度は「今の勤務先で働き続けたい」以外の回答をしており(「わからない」「無回答」含む)、異動・転職に対するニーズの高さも人材不足を加速させているといえます。
倒産件数の年々増加
報酬の安さ・人材不足などの問題により、倒産してしまう訪問介護事業者も増えています。東京商工リサーチのデータによると、老人福祉・介護事業の倒産件数は2010年の27件に対して2019年は111件と報告されており、2020年は118件まで増加しています。
なお、支援策や報酬改定の効果により、2021年の「老人福祉・介護事業」倒産は81件(前年比31.3%減)で、過去最多だった2020年の118件から大幅に減少している状況です。
とはいえ、訪問介護事業者の倒産は他の介護事業者に比べて多い傾向があり、介護事業の倒産のうち毎年大体半分程度が訪問介護事業者とされています。
参考:東京商工リサーチ「介護事業の倒産 最多から一転、支援策や報酬改定の効果で3割減 【2021年 老人福祉・介護事業の倒産状況】」
訪問介護のM&A・事業承継動向
訪問介護業界の競争は激しいですが、高齢化により今後も需要は増えると推測されるため、異業種からの参入を含めたM&Aが活発に行われているのが現状です。異業種からの参入以外では、新規エリアへの進出・人材の確保などを目的に、訪問介護事業者をM&Aで買収する事例が多く見られます。
今後、中小零細の訪問介護事業者は厳しい状況が続くものと見られ、経営難からM&Aにより大手へ売却する事例も増えると考えられます。また、経営者の高齢化を受けて、訪問介護事業者のM&Aによる事業承継も今後増える見込みです。
①有資格者しか従事できない
訪問介護は、利用者の自宅に訪問し1対1でサービスを提供する必要があります。
サービスを提供できる人は介護の基礎知識が身についていることや一定の有資格者であり、他の介護事務所のように無資格者が働ける業界ではありません。
②介護報酬が算定できない時間が多い
訪問介護の介護報酬は、介護サービスを提供している時間に応じて算定されます。
そのため、一回の訪問あたりのサービス提供時間が短くなればなるほど算定額は少なくなる傾向にあります。介護報酬は時間に大きく左右されてしまうため、安定した事業展開が難しい点があります。
③雇用体系
訪問介護ではサービスの提供時間に合わせて報酬の計算を行う「登録ヘルパー」という雇用体系があります。
多くのヘルパーさんが「登録ヘルパー」の雇用体系で働いていますが、正社員になる場合は「登録ヘルパー」として働くことができません。異動もしくは転職するのが一般的ですので人材確保が困難となっています。
訪問介護のM&A・事業承継の流れ
本章では、訪問介護をM&A・事業承継する際の、手続きの流れを解説します。クロージングの具体的な手続きなどは、手法により異なりますが、ほとんどの部分はM&A手法に関わらず共通しています。
- M&Aの専門家の選定・相談
- M&A先の選定・交渉
- M&A先のトップと面談
- 基本合意書の締結
- 買収側によるデューデリジェンスの実施
- 最終契約書の締結
- クロージング
①M&Aの専門家の選定・相談
M&Aを行うには、まずM&A仲介会社などM&Aの専門家に相談する必要があります。M&A仲介会社の中には、介護事業に強みを持っていたり、介護・医療・薬局に特化していたりする仲介会社も存在するため、こうした機関に相談すると良いでしょう。
ただしM&A仲介会社を選ぶ際は、サービス内容を総合的に判断すると良く、たとえ介護に特化していないM&A仲介会社であっても、自社に相応しいと感じた機関に相談することをおすすめします。
②M&A先の選定・交渉
M&A仲介会社は、まず訪問介護の経営者から経営状況や希望する条件などを聞き、希望に合うM&A先の候補を洗い出します。その中にM&A先候補として相応しい会社があれば、その会社の経営者に連絡して交渉を持ちかける流れです。
③M&A先のトップと面談
面談するM&A先候補が固まったら、相手企業の経営者と実際に会ってトップ面談を行います。この時点では、まだ複数候補との同時交渉が可能であるため、複数の会社と面談し最も相応しい会社を相手先に選定することも可能です。
④基本合意書の締結
トップ面談が円滑に進み、大まかな合意内容が固まったら、基本合意書を締結して合意内容を書面にします。この時点で、買い手には独占交渉権が発生し、売り手は複数の買い手候補と同時に交渉できなくなる決まりです。
⑤買収側によるデューデリジェンスの実施
基本合意書を締結したら、買い手は売り手企業を買収に関する問題点を確認するために、デューデリジェンス(買収監査)を行います。一般的に、デューデリジェンスは、財務・税務・法務に関して行う場合が多いです。
訪問介護は労働条件が厳しい組織が多いため、上記に加えて、労務デューデリジェンスを実施する場合もあります。
⑥最終契約書の締結
デューデリジェンスの結果を加味して、基本合意書の内容をベースに最終的な契約内容を詰めます。もしもデューデリジェンスで、簿外債務や法務・労務上の問題が発覚した場合は譲渡価格の引き下げ交渉を行ったり、致命的な問題が見つかった場合は交渉を破談にしたりするケースもあります。
最終契約書の締結をもって、法的効力が発生しM&Aが確定します。
⑦クロージング
クロージングとは、最終契約書の内容にもとづいて具体的にM&Aを実行することです。例えば、株式譲渡では株主名簿の書き換え・対価の支払い、事業譲渡では事業資産の譲渡などを行います。
訪問介護のクロージングで注意したい点は、訪問介護事業者の許認可の引き継ぎについてです。事業譲渡でM&Aを行った場合は許認可の引き継ぎを行えないため、譲受企業が新規取得する必要があります。
訪問介護のM&A・事業承継の売却相場
M&Aの譲渡価格は、大手の案件でなければほとんどの場合で非公開ですが、マッチングサイトでは売り案件の譲渡希望額が公開されているため、これを見て大まかな相場観の推測は行えます。
これらを見ると、訪問介護の譲渡希望額は老人ホームより安い傾向があり、売上高の1倍を下回っている案件が多いです。訪問介護のM&A・事業承継の相場は一概に断定できないものの、老人ホームに比べると介護施設が必要ないため、それだけ譲渡価格が安くなっている可能性があります。
訪問介護のM&A売り案件の例は、以下のとおりです。
売上高 | 譲渡希望額 | 譲渡希望額÷売上高 | |
事例1 | 1,000万円~3,000万円 | 300万円~500万円 | 0.1~0.5 |
事例2 | 5,000万円~1億円 | 7,500万円~1億円 | 0.75~2 |
事例3 | 6,000万円 | 2,000万円~ | 0.33~ |
事例4 | 6,500万円 | 1,000万円~ | 0.15~ |
事例5 | 1,200万円 | 300万円~ | 0.25~ |
また、老人ホームのM&A売り案件の例は、以下のとおりです。
売上高 | 譲渡希望額 | 譲渡希望額÷売上高 | |
事例1 | 3,000万円~5,000万円 | 1億円~2.5億円 | 2~8.3 |
事例2 | 1億円~2億円 | 7,500万円~1億円 | 0.38~1 |
事例3 | 1億円~2億円 | 3,000万円~5,000万円 | 0.15~0.5 |
事例4 | 1億8,000万円 | 3億2,000万円~ | 1.8~ |
事例5 | 7,000万円 | 2億5,000万円 | 3.6~ |
訪問介護のM&A・事業承継事例
本章では、訪問介護のM&A・事業承継事例の中から、最近行われた以下の10例を紹介します。
- ソラストによる日本エルダリーケアサービスのM&A
- ケアサービスが広域社会福祉会の訪問介護事業を譲受
- ヒノキヤグループ子会社が介護事業の一部をソラストへ譲渡
- ツクイがアサヒサンクリーンの訪問介護事業を譲受
- ソラストによる恵の会のM&A
- ケアサービスがクレアバーグの訪問介護事業を譲受
- ケアサービスによるひだまりのM&A
- 揚工舎による光風苑のM&A
- ソラストによるなごやかケアリンクのM&A
- センコーグループホールディングスによるビーナスのM&A
①ソラストによる日本エルダリーケアサービスのM&A
2020年10月、ソラストは、日本エルダリーケアサービスの全株式を取得し、完全子会社化しました。ソラストは医療・介護・保育などをトータルに提供している会社で、日本エルダリーケアサービスは訪問介護・通所介護などを運営している会社です。
身体機能の維持向上を重視したサービスの充実、および高齢化社会へのニーズ対応が、本件M&Aの目的とされています。
②ケアサービスが広域社会福祉会の訪問介護事業を譲受
2020年9月、ケアサービスは、広域社会福祉会の訪問介護事業を譲受する契約を締結しました。譲渡予定日は2020年11月1日とされています。
ケアサービスは訪問介護や福祉用具レンタルなどを手がける会社で、広域社会福祉会は訪問介護事業を営む会社です。事業エリアの拡大やサービスの充実などが、本件M&Aの目的とされています。
③ヒノキヤグループ子会社が介護事業の一部をソラストへ譲渡
2020年8月、ヒノキヤグループの子会社であるライフサポートは、ソラストへ介護事業の一部を譲渡することを決定しました。譲渡実行日は、2020年12月1日とされています。
ライフサポートは、訪問介護・有料老人ホーム・保育所運営などを行う会社です。成長が期待できる事業へ資源を集中することで、ヒノキヤグループの成長を目指すことが、本件M&Aの目的とされています。
④ツクイがアサヒサンクリーンの訪問介護事業を譲受
2020年4月、ツクイは、アサヒサンクリーンの訪問介護事業を譲受しました。
ツクイは訪問介護や老人ホームなどを運営する会社で、アサヒサンクリーンは訪問介護やグループホームなどを展開している会社です。訪問介護事業の拡大と地域戦略の推進が、本件M&Aの目的とされています。
⑤ソラストによる恵の会のM&A
2020年3月、ソラストは、恵の会の株式を取得して子会社化しました。恵の会は、大分県を中心に訪問介護や有料老人ホームなどを運営する会社です。ソラストは日本の全エリアで事業所を運営することを目指しており、本件M&Aにより事業所のなかった大分県での事業展開を果たしています。
⑥ケアサービスがクレアバーグの訪問介護事業を譲受
2019年12月、ケアサービスは、クレアバーグの訪問看護事業を譲受する契約を締結しました。クレアバーグは訪問看護事業と不動産事業を手がける会社です。
本件M&Aにより、ケアサービスが運営する訪問介護やデイサービスと親和性の高い訪問看護事業を譲受することで、在宅介護事業の強化を図ります。
⑦ケアサービスによるひだまりのM&A
2019年7月、ケアサービスは、ひだまりの全株式を取得して完全子会社化しました。ひだまりは東京都江東区で訪問介護事業や居宅介護支援事業を手がける会社です。ケアサービスは東京23区内での事業強化を目指しており、江東区の事業所を買収することで訪問介護事業を強化します。
⑧揚工舎による光風苑のM&A
2019年5月、揚工舎は、光風苑(現「ヨウコーフォレスト館山」)の全株式を取得し、完全子会社化しました。
揚工舎は東京都板橋区で訪問介護や有料老人ホームを営む会社で、光風苑は介護付有料老人ホームを運営する会社です。有料老人ホーム事業の拡大が、本件M&Aの目的とされています。
⑨ソラストによるなごやかケアリンクのM&A
2019年4月、ソラストは、なごやかケアリンクの全株式を取得し、完全子会社化しました。なごやかケアリンクは、東京都を中心に通所介護施設「デイサービスセンターなごやか」を運営しています。東京都での事業所数の拡大が、本件M&Aの目的です。
⑩センコーグループホールディングスによるビーナスのM&A
2017年10月、センコーグループホールディングスは、ビーナスの全株式を取得し完全子会社化しました。
センコーグループホールディングスは、主に物流事業の会社を抱える持株会社ですが、近年は訪問介護などのライフサポート事業に力を入れています。そして、ビーナスは大阪府でデイサービスや訪問看護を運営する会社です。訪問介護を含む介護事業の拡大が、本件M&Aの目的とされています。
訪問介護のM&A・事業承継のメリット
訪問介護のM&Aでは、M&Aによりどのようなメリットを得たいのか明確にしておくことが重要です。主なメリットとしては、後継者問題の解決や従業員の雇用確保など、以下の5つが挙げられます。
- 後継者問題の解決
- 従業員の雇用を確保
- 大手グループの傘下に入り経営を安定
- 個人保証や担保の解消
- 売却・譲渡益の獲得
①後継者問題の解決
経営者が高齢になっても親族や社員に適切な後継者がおらず、経営は順調なのに廃業してしまうケースがよくあります。しかし、たとえ親族や社員に後継者がいなくても、M&Aであれば幅広く後継者候補を探すことが可能です。
②従業員の雇用を確保
訪問介護事業所を廃業すると、そこで働いていた従業員は解雇されてしまいますが、M&Aで売却すれば従業員の雇用を確保できます。
廃業を検討している訪問介護事業所は買い手を見つけにくい点に問題があるものの、例えば、新規エリアに進出したい買い手であれば、経営状態が悪くてもそのエリアの事業所を買収する可能性が想定されます。
③大手グループの傘下に入り経営を安定
訪問介護業界は異業種の大企業が参入するケースが多く、例えば、不動産会社の三菱レジデンスや化学メーカーの旭化成などが介護事業に参入しています。以前は、外食産業のワタミが介護事業に参入した事例も話題になりました。
中小の訪問介護事業者が大手グループの傘下に入れば、安定した経営基盤を得られます。
④個人保証や担保の解消
中小の訪問介護事業所では経営者が個人保証や担保を提供しているケースが多いですが、個人保証は会社の倒産が経営者個人の破産に結びつくため、経営者にとって大きなプレッシャーです。個人保証や担保のプレッシャーから解放される点も、訪問介護のM&Aのメリットのひとつです。
⑤売却・譲渡益の獲得
訪問介護事業所をM&Aで売却すれば、売却益・譲渡益が手に入ります。譲渡益を手に入れるためにM&Aを行うというのも有力な選択肢です。ここで獲得した譲渡益は、新たな事業への投資や、経営者の引退後の生活費に充てられます。ただし、事業譲渡の場合は、譲渡益が経営者個人に入らない点に要注意です。
訪問介護のM&A・事業承継を成功させるポイント
ここでは、訪問介護のM&A・事業承継を成功させるポイントを、それぞれの立場に分けて紹介します。
譲渡側のポイント
訪問介護のM&A・事業承継により譲渡を行う際は、以下のようなポイントを押さえておくと、成功率を高められます。
- 資産価値の確認
- 経営状況の確認
- 従業員の流出を防ぐ
- 顧客離れを防ぐ
- M&Aの専門家に相談する
資産価値の確認
M&Aの譲渡価格にはのれんなどの無形資産も大きく影響を与えますが、基本となる要素は純資産額です。そのため、訪問介護のM&Aを行う際は、時価純資産がどれほどなのか、事前に見積もっておくことが大切だといえます。
特に、訪問介護と並行して老人ホームなどの施設介護を運営している場合は、設備や不動産価値を確認しておくことが重要です。
経営状況の確認
経営状態の良し悪しは、いかなる業種のM&Aでも成否に大きな影響を及ぼします。訪問介護事業者の経営状況をあらかじめ確認することで、経営状況に合ったM&A戦略を練ることが可能です。
従業員の流出を防ぐ
訪問介護事業は人材不足が深刻であり、買い手は人材の獲得を目的にしているケースが多くみられます。
そのため、売り手側としては、従業員の流出を防いで人材を確保しておくことが、M&Aの成功率の向上につながります。
顧客離れを防ぐ
M&Aの買い手は、売り手側が持っている顧客を獲得したいと思っているケースが多く見られます。そのため、売り手としては、顧客離れを防ぐことで、買い手にとって魅力的なM&A候補になれる可能性があります。
M&Aの専門家に相談する
M&Aは適切な専門家に相談して、サポートを受けながら進めていく必要があります。M&A仲介会社などの専門家に相談することが、訪問介護のM&Aの成功率を高めるために大切です。
譲受側のポイント
譲受側の主なポイントは、以下のとおりです。
- 行政関係の手続きおよび折衝
- 市場を把握した上で事業計画を立てる
- 買収後の将来価値を予想する
特に大切なのは、行政関係の手続きおよび折衝です。訪問介護事業を手掛けるには介護保険の給付が必要不可欠であり、給付を受けるには行政から介護サービス事業者として指定を受けなければなりません。
もしもM&Aを行った結果として、行政からの指定が取り消されてしまえば、M&Aによる譲受のメリットが無くなってしまいます。そのため、M&Aを行う際は、基本合意契約書の締結後、行政に今後の手続きなどの相談を持ちかけると良いでしょう。
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訪問介護のM&A・事業承継まとめ
本記事では、訪問介護のM&A・事業承継に関する情報を取り上げました。介護業界は高齢者の増加や大手の参入などの影響により、今後もM&Aが活発化すると見込まれています。M&Aを行う際は、その手法や流れを理解しておくことが大切です。
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