M&Aとは?手法ごとの特徴、目的・メリット、手続きの方法・流れも解説【図解】
2022年7月31日更新業種別M&A
金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継事例13選!業界動向、相場価格、相談先のおすすめは?
近年、金属加工・金属製品製造業界では、在アジア企業の成長やニーズの多様化、産業構造の変化などによりM&Aが増加しています。本記事では、金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継事例や業界の動向、相場価格などを紹介します。
目次
金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継・譲渡・売却
金属加工・金属製品製造とは
金属加工・金属製品製造とは、自動車や家電などの製品に用いる金属部品を加工して製造したり、部品を成型するための金型を製造したりする技術のことです。また、金属加工で用いられる素材は、主に鉄鋼材料と非鉄鋼材料に分類されます。
金属加工・金属製品製造と鉄鋼の関係
金属加工・金属製品製造に用いられる金属材料は、鉄鋼材料と非鉄鋼材料に大別されます。鉄鋼材料には、軟鋼板・表面処理版・合金などがあり、非鉄鋼材料は、アルミニウム材料・銅材料などです。
鉄鋼材料は、ほかの金属材料よりも種類が多く、金属加工・金属製品製造では、鉄鋼材料が最も多く用いられています。
金属加工・金属製品製造業界の特徴
金属加工・金属製品製造業界の特徴としては、まず「ものづくり産業」として優れた技術力を持った企業が多いことが挙げられます。また、特定の製品ラインアップに絞った製造体制を敷く中小零細企業が多いことも特徴のひとつです。
業界のビジネスモデルは基本的に受注生産型であり、完成品メーカーを頂点とするピラミッド型の構造となっています。
製造業はコスト削減のため海外生産している業種もありますが、金属加工・金属製品製造業界は発注企業からの細かい注文にフレキシブルな対応が必要なため、ほかの製造業に比べると海外生産にシフトしていない企業が多いです。
金属加工・金属製品製造業界の市場規模
経済産業省の「工業統計調査2020年確報 産業別統計表」によると、2019(平成31・令和元)年の金属製品製造業は、以下のような統計になっています(従業員4人以上の事業所の統計)。
- 製造品出荷額:15兆9,652億9,300万円
- 事業所数:2万5,213所
- 従業者数:61万2,442人
統計では製造業は24種類に分類されています。金属製品製造業の出荷額は、製造業全体の4.9%を占めており、24種中7番目でした(製造業全体の製造品出荷額は322兆5,334億1,800万円)。
また、事業所数は13.6%で製造業の中で最も多いものの、従業者数は7.9%で全体の4番目です。金属製品製造業界の企業は、1社あたりの従業員数が少ないことの表れといえるでしょう。
金属加工・金属製品製造業界の課題・展望
金属加工・金属製品製造業界の課題としては、以下のようなものが挙げられます。
- 職人(技術者)個人が持つ技術力の継承
- IT化への対応
- 海外進出(大手・中堅企業の場合)
金属加工・金属製品製造業界も他の産業と同様に人手不足の状況です。特に若年層の就業人口が高くないために高齢のベテラン職人の技術の後継者作りが課題となっています。
また、海外企業との競争に打ち勝つためには、製造機械を制御するソフトウェアやAIなどを導入し、IT化による生産性向上の努力も必要です。
海外向け製品を製造する大手・中堅企業の場合は、地産地消を推進するため、今後はより一層、海外への進出が必須となるでしょう。
M&Aとは
M&Aとは、「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の略称であり、事業・会社そのものの売買取引や企業間の組織再編行為の総称です。
M&Aはさまざまな目的で行われますが、近年、金属加工・金属製品製造業界では、アジア各国との競争激化やユーザーニーズの多様化、産業構造の変化などに対応するためのM&Aが増加しています。
事業譲渡・売却とは
事業譲渡・事業売却とは、事業部門や事業用資産の一部または全部を個別に譲渡・売却するM&A取引のことです。譲渡・売却対象を選別できるメリットがある反面、買い手側が行わなければならない手続きが多く、税負担も大きくなりがちな点がデメリットになります。
事業承継とは
事業承継とは、会社の経営権を後継者に引継ぐことです。後継者の立場の違いによって、事業承継は3種類に分類されます。
親族内事業承継
親族内事業承継とは、経営者の実子や兄弟姉妹などの親族が後継者となる事業承継です。その中でも代表的な後継者は経営者の実子ですが、昨今では少子化で子どもがいなかったり、価値観の多様化で親の後を継がない子どもが増えたりなどで減少傾向にあります。
親族外事業承継
親族外事業承継とは、自社の従業員・役員、取引先関係者、経営者の知人などが後継者となる事業承継です。その中でも多いのは社内の従業員・役員が後継者となるケースであり、この場合は特に社内事業承継とも言います。
会社の経営権=株式ですが、いずれの後継者も親族ではないため、相続で会社の株式を取得できません。したがって、現経営者から株式を買取る必要があるのです。そのためには高額の資金が必要であり、その資金が用意できないため、後継者を辞退するケースもあります。
M&Aによる事業承継
以前は、親族や社内に後継者がいない場合、廃業する中小企業も多くありました。しかし昨今では、M&Aによって第三者へ事業承継が行われるようになってきています。M&Aで会社を売却すれば、その買い手が後継者(新たな経営者)となって事業承継が実現するのです。
金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継事例13選
ここでは、金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継事例を紹介します。
- アロイ金属工業からアロイテクノロジーへの事業譲渡
- ヤマシナによる中国山科サービスの買収
- アルコニックスによるジュピター工業の買収
- 富士紡ホールディングスによる藤岡モールドの買収
- UACJによるUACJ銅管の売却
- 不二精機による秋元精機工業の買収
- ムロコーポレーションによるイガリホールディングスの買収
- アサヒホールディングスによるRepublic Metals社の買収
- 白銅による高瀬アルミの買収
- 長野計器による中村金型製作所の買収
- 富士紡ホールディングスによる東京金型の買収
- リョービによる旭テックアルミニウムの買収
- 中田金商から泉メタルへの事業譲渡
①アロイ金属工業からアロイテクノロジーへの事業譲渡
2022(令和4)年3月、アロイ金属工業は、アロイテクノロジーへ各種ポンプ部材を主としたステンレス鋼・高クロム鋳鉄の製造・販売事業を譲渡しました。譲渡価額は公表されていません。
アロイ金属工業は、各種ステンレス鋼および高クロム鋳鉄製品の製造加工・販売を手掛けています。買い手となった鶴見製作所の孫会社であるアロイテクノロジーは、各種ポンプ部品などの各種ステンレス鋼・高クロム鋳鉄製品の製造・販売を行う企業です。
アロイテクノロジーは、ステンレス鋼・高クロム鋳鉄の調達納期短縮やコストダウン、品質向上や安定化を狙いとして本M&Aを実施しています。
②ヤマシナによる中国山科サービスの買収
2022年3月、ヤマシナは、中国山科サービスの全株式を取得し完全子会社化しました。取得価額は1億9,300万円です。京都市のヤマシナは、金属製品の企画・製造・販売を行っています。
広島県福山市の中国山科サービスは、締結部品(ネジ)、プレス品、樹脂成形品の仕入・販売を行っている企業です。ヤマシナは、事業体制の補強と販売エリア拡張を目的として子会社化を行いました。
③アルコニックスによるジュピター工業の買収
2021(令和3)年12月、アルコニックスは、ジュピター工業の全株式を取得して完全子会社化することを発表しました。取得予定時期は2020年4月、取得価額は公表されていません。
アルコニックスは、非鉄金属、レアメタル、レアアースなどの製品と原材料などの輸出・輸入・国内販売を行っています。ジュピター工業は、精密コネクタ金属端子部品のプレス加工、プレス金型の設計・製作、一体成形によるコネクタ製造などを行っている企業です。
商社機能と製造業の融合企業グループを標榜しているアルコニックスとしては、ジュピター工業の高い生産力や中国にも工場を持っている点などを評価して子会社化を決めています。
④富士紡ホールディングスによる藤岡モールドの買収
2020(令和2)年1月、富士紡ホールディングスは、子会社の東京金型を通じて、プラスチック金型の設計・製造・販売事業を営む藤岡モールドの株式を取得し孫会社としました。
富士紡ホールディングスは、藤岡モールドを買収することでプラスチック金型技術を獲得し、新たな事業の柱として育成している化成品事業の強化を進めています。
⑤UACJによるUACJ銅管の譲渡
2019年9月、UACJは、連結子会社であるUACJ銅管の全株式を投資会社に譲渡しました。UACJ銅管は銅や銅合金の鋳塊・管・棒などの製造・販売事業を営んでいる企業です。
UACJは、UACJ銅管を売却することでさらなる成長につながると判断し、また、コア事業であるアルミニウム事業へ経営資源を集中させています。
⑥不二精機による秋元精機工業の買収
2019年9月、不二精機は、秋元精機工業の株式を取得し子会社としました。秋元精機工業は精密プレス加工や異型絞り、冷間鍛造複合加工事業を営んでいる企業です。
不二精機は、秋元精機工業の精密プレス加工ノウハウと自社の技術・ネットワークを融合させることで、精密成型品事業の拡大を図っています。
⑦ムロコーポレーションによるイガリホールディングスの買収
2019年4月、ムロコーポレーションは、プラスチック加工業を営むイガリホールディングスの株式を取得し子会社としました。ムロコーポレーションは輸送用機器向けの金属製部品を製造・販売している精密プレス部品メーカーです。
ムロコーポレーションは、自社の金属プレス部品にイガリホールディングスの精密樹脂部品を製品ラインナップとして加えることで、厳しい競争環境にある部品メーカー間での生き残りを図っています。
⑧アサヒホールディングスによるRepublic Metals社の買収
2019年2月、アサヒホールディングスは、米国で破産し会社更生手続き中であったRepublic Metals Corporationと、その子会社のRepublic Carbon Company, LLCの資産買収を行いました。
Republic Metals社は金銀の精錬と製品加工事業を行っており、アサヒアサヒホールディングスは本買収により、金銀精錬と製品加工事業において、世界でもトップクラスの位置まで成長しています。
⑨白銅による高瀬アルミの買収
2019年2月、白銅は、アルミニウムやその他非鉄金属の販売事業を営む高瀬アルミの株式を取得し連結子会社としました。
アルミニウムや伸銅、特殊鋼などの加工・販売を行っている白銅は、高瀬アルミを子会社化することで、高瀬アルミの持つ優良な顧客基盤に対して自社商品の販売を進めています。
⑩長野計器による中村金型製作所の買収
2019年1月、長野計器は、ダイカスト・マグネシウム金型の設計・製作事業を営む中村金型製作所の株式を取得し、子会社としました。
長野計器は、計測計器製品の開発過程で金型成形技術の活用することにより、ダイカスト製品の販売を行っており、中村金型製作所を子会社化することで、ダイカスト事業の強化を図っています。
⑪富士紡ホールディングスによる東京金型の買収
2018(平成)年10月、富士紡ホールディングスは、金型の設計・製造・販売事業を営む東京金型の株式を取得し子会社としました。
化成品事業の拡大を進めている富士紡ホールディングスは、東京金型を子会社化することで、富士紡ホールディングスの射出成形品の品質向上を図っています。
⑫リョービによる旭テックアルミニウムの買収
2018年4月、リョービは、アルミ関連製品の製造・販売事業を営む旭テックアルミニウムの株式を取得し子会社としました。
また、同時に豊栄工業も子会社化しており、リョービは本買収により、主力事業であるダイカスト事業の生産能力を増強しています。
⑬中田金商から泉メタルへの事業譲渡
2017(平成29)年10月、非鉄金属の売買や金属建材の加工・販売事業を営む中田金商は、UACJの連結子会社である泉メタルへ事業の一部を譲渡しました。
泉メタルは、アルミニウムや銅素材の加工品、その他材料や製品の加工・販売を行っており、中田金商から事業を譲受することで事業分野を拡大し、収益力の向上を図っています。
金属加工・金属製品製造業界の動向
近年の金属加工・金属製品製造業界には、以下3つの動向がみられます。
- 業界全体で減産しつつある
- 設備・施設などの投資コストが大きい
- 中国を中心としたアジア市場に注目
①業界全体で減産しつつある
金属加工・金属製品製造業界は、リーマンショックなどの景気悪化により大きく市場が落ち込みました。近年は、アベノミクスや東京オリンピック景気、災害復興需要によって回復基調にありますが、中長期で見ると減産傾向が進んでいます。
②設備・施設などの投資コストが大きい
日本国内の金属加工・金属製品製造会社は、競争力を維持するため、IT化や設備投資に投資せざるを得ない状況です。また、製品の短命化も進んでいることから、設備・施設への投資コストが膨らんでいます。
③中国を中心としたアジア市場に注目
金属加工・金属製品製造業界の主な顧客である自動車業界や建設業界は、コストの安いアジアから製品を調達するケースが増加傾向です。
そのため、日本国内の金属加工・金属製品製造は厳しい環境に置かれていますが、逆にアジア市場へ参入することによって勝機を見出す企業も存在します。
金属加工・金属製品製造がM&A・事業承継を行う理由
金属加工・金属製品製造会社がM&A・事業承継を行う理由には、以下のようなケースがあります。
- 後継者問題を解決したいため
- 将来性の不安を解消するため
- 新規事業を始めるため
- 従業員の雇用を守るため
- M&Aによる譲渡・売却益の獲得
①後継者問題を解決したいため
金属加工・金属製品製造会社は、経営者が高齢となった小規模の会社が多く、後継者不在問題の解決は喫緊の課題です。M&A・事業承継による後継者問題の解決は会社と従業員だけでなく、地域を守ることにもつながります。
②将来性の不安を解消するため
中国をはじめとしたアジアの金属加工・金属製品製造業界の急成長や、東京オリンピック後の景気減退不安など、中小の金属加工・金属製品製造会社にとって将来が見えにくい環境が続いています。M&A・事業承継は、将来の不安解消にもつながるのです。
③新規事業を始めるため
単一事業で生き残っていくことが難しい現在のビジネス環境では、より収益性の高い事業を求める会社が増えています。M&Aによって、リスクヘッジを行うことも可能です。
④従業員の雇用を守るため
経営者が会社の今後を考えるうえで、従業員に対する経営者としての責任をどう果たすかは大きな課題となります。M&A・事業承継によって従業員を守れるのであればと、会社の譲渡を決断するケースも少なくありません。
⑤M&Aによる譲渡・売却益の獲得
譲渡・売却益の獲得もM&Aを行う大きな目的の1つです。廃業の場合は、費用面で何かと困ることも多いですが、M&Aによって譲渡・売却益を得ることで、さまざまな支出に備えられます。
金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継の手順・流れ
ここでは、金属加工・金属製品製造業において、M&A・事業承継を実施する際の大まかな手順を説明します。
M&A仲介会社への相談・依頼
M&A・事業承継の検討を始めた段階で、M&A仲介会社などM&Aの専門家に相談するのがおすすめです。ほとんどのM&A仲介会社では無料相談を実施しているので、それを活用するとよいでしょう。
M&Aの交渉や手続きなどの各プロセスは、専門的な知識や経験が必要です。したがって、自社単独で進めるのは現実的ではありません。複数のM&A仲介会社と話をしたうえで、納得できる会社を選びサポート業務を依頼しましょう。
マッチング
M&A仲介会社に業務を依頼した段階で、会社の内情や自身の考えを説明します。そのうえで、M&A仲介会社のアドバイスを聞きつつ、M&Aの戦略や目的を決定しましょう。M&Aの目的が定まれば、必然的にどのような相手企業が望ましいか、はっきりするはずです。
それを受け、M&A仲介会社がM&Aの交渉相手候補探しを始めます。多くの候補が挙げられるはずですので、その中から希望に沿った会社かどうか吟味しましょう。
相手候補が定まったら、M&A仲介会社が交渉の打診をし、先方も同意であれば、秘密保持契約を締結して交渉開始となります。
条件交渉・契約締結
M&Aの交渉は基本的に仲介会社が行いますが、その過程で実施されるのがトップ面談では、売り手・買い手双方の経営トップが直接会談します。トップ面談は、経営方針や企業風土などを説明し合いながら、人物像や相性などを見極めるのが主な目的です。
条件が大筋で合意できたら、基本合意書を締結します。これは、現時点での合意内容確認書という位置付けのもので、法的拘束力はありません。
基本合意書締結後、買い手側が売り手側企業の精密な調査(デューデリジェンス)を実施します。デューデリジェンスの結果を踏まえて最終交渉が行われ、合意に至ればM&Aの最終契約書を締結し、M&Aの成約が確定となります。
金属加工・金属製品製造をM&A・事業承継する際の相談先
金属加工・金属製品製造業界のM&A・事業承継を検討する場合、以下の会社や機関が相談先の候補です。
- M&A仲介会社
- 地元の金融機関
- 地元の公的機関
- 地元の弁護士・税理士・会計士など
- マッチングサイト
①M&A仲介会社
M&A仲介会社は、M&Aの専門業者です。M&Aをあらゆる面からトータルサポートします。
②地元の金融機関
地方銀行や信用金庫は、地元の中小企業を中心に支援を行っています。近年は、他の金融機関やM&A仲介会社、マッチングプラットフォーム運営企業などと提携することにより、事業承継支援を強化する地方金融機関が増えてきました。
しかし、地方金融機関は単独でM&Aのトータルサポートができないので、最終的にはM&A仲介会社などの専門家に依頼することになります。
③地元の公的機関
公的機関による事業承継支援が整備されはじめてからまだ日は浅いですが、年々、認知度が向上し、相談実績も着実に増えています。公的機関も金融機関と同じく、単独でM&Aのトータルサポートができないので、M&A仲介会社などの専門家によるサポートが必要です。
④地元の弁護士・税理士・会計士など
近年は、M&A・事業承継の相談を受けつけたり、アドバイス業務を行ったりする士業の専門家も増えています。しかし、士業の専門家がカバーできる範囲は限られるため、M&A仲介会社と提携して相手先を探したり、M&A手続きを進めたりするケースが一般的です。
⑤マッチングサイト
マッチングサイトの質は近年、急速に向上し、マッチングサイト運営会社と提携する金融機関や地方自治体も多くなりました。また、相手先探しまでをマッチングサイトで行い、M&A手続きを仲介会社に依頼するなど、うまく活用する企業も増えています。
金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継の相場価格
M&Aでの取引価格は、売り手企業の状況が各社異なるうえに、最終的には売り手・買い手の交渉で決するため、客観的な相場はありません。金属加工・金属製品製造の中小企業であれば、持っている技術や設備次第で、他の業種よりも高額取引になる可能性は高いでしょう。
自社の企業価値評価を簡易的に行う計算方法としては、以下の計算式があります。
- 時価純資産額+営業利益×2~5年分
時価純資産額とは、貸借対照表の資産と負債を時価に換算し資産額から負債額を引いた値です。営業利益については、業種や各社の個別状況に合わせて加算額を上下させる計算となります。
ただし、この計算結果は簡易的な目安であるため、正確な企業価値評価については、M&A仲介会社に相談してみるとよいでしょう。
金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継を成功させるコツ
金属加工・金属製品製造において、M&A、あるいは事業承継を成功させるには、おさえておくべきポイントがあります。それは以下の6点です。
- 自社の魅力の把握
- 戦略の策定
- 適切な手法の選択
- 後継者の教育(事業承継の場合)
- 従業員・取引先などへの報告
- 専門家への相談
自社の魅力の把握
M&A・事業承継を実施しようとする場合は、まず行うべきは自社の分析です。自社の強みを把握できると同時に、補うべきこと・目指すべきことなどが判明するので、M&Aの目的が定まります。
後継者がいる場合であれば、長所の磨き上げや弱点の克服など、事業承継するまでの間に行うべき経営課題も明確にしておきましょう。
戦略の策定
自社の分析後に定めたM&Aの目的実現のため、それにふさわしいM&A戦略を策定します。自社だけで戦略を定めるのは難しいので、専門家に相談しながら決めるとよいでしょう。
事業承継の後継者が決まっている場合は、事業承継計画を策定します。事業承継計画とは、後継者にバトンを渡すまでのロードマップです。
適切な手法の選択
M&Aには、以下のようなさまざまな手法があります。
各社の状況や目的の違いによって、適するM&A手法は異なります。手法の選択には、専門家のアドバイスが欠かせません。
後継者の教育(事業承継の場合)
先述した事業承継計画では、後継者教育が最重要テーマです。事業内容の把握、会計知識の習得などを学ばせるだけでなく、リーダーシップの取り方、経営戦略や事業計画の策定方法なども学ばせ、また自身の経営ビジョンも伝えなければなりません。
後継者教育は、一説には5~10年かかるともいわれており、安心して後を託せるよう、入念な計画をもってあたることが必要です。
従業員・取引先などへの報告
M&Aを実施する場合、従業員や取引先は最も影響を受ける立場の関係者です。未確定の段階で中途半端に情報を伝えてしまうと、不安・心配などの動揺を与えてしまうでしょう。
また、M&Aは秘密保持契約のもとで進めるので、従業員や取引先から外部に情報が洩れてしまうことも懸念されます。したがって、従業員や取引先への報告は、M&Aが成約してから行うべきでしょう。
専門家への相談
M&Aの各プロセスでは、専門的な知識・経験が必須です。不慣れな会社が自分たちだけで行うと、失敗・破談してしまうかもしれません。
M&Aは会社にとって重要な経営戦略です。手数料を惜しむよりも、M&Aの成功確度を高めることに意識を向けましょう。
金属加工・金属製品製造をM&A・事業承継する際の注意点
金属加工・金属製品製造会社のM&A・事業承継では、「環境・安全」への配慮が行き届いているかが重要です。買い手側は、買収先企業で有害物質による土壌汚染や大気汚染が発生していないか、発生するリスクはあるかなどを入念に調査しなければなりません。
売り手側は、事故や災害などトラブルへの備えを徹底しておく必要があるのです。また、売り手側は、工作機械の質・量が充実していることや、金型技術を持っていることなどが高評価につながります。
金属加工・金属製品製造をM&A・事業承継・事業譲渡・売却する際におすすめの仲介会社
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金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継まとめ
金属加工・金属製品製造のM&A・事業承継を円滑に進めるには、M&A仲介会社など専門家を起用するのが得策です。専門家の起用により、M&Aの成功確度も高まります。本記事の概要は以下のとおりです。
・近年の金属加工・金属製品製造業界の動向
→業界全体で減産しつつある
→設備・施設などの投資コストが大きい
→中国を中心としたアジア市場に注目
・金属加工・金属製品製造業界のM&A・事業承継の相談先
→M&A仲介会社、地元の金融機関、地元の公的機関、地元の弁護士・税理士・会計士など、マッチングサイト
・金属加工・金属製品製造会社がM&A・事業承継を行う理由
→後継者問題を解決したいため
→将来性の不安を解消するため
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