M&Aとは?手法ごとの特徴、目的・メリット、手続きの方法・流れも解説【図解】
2022年8月15日更新業種別M&A
金融・リース・レンタル業界のM&A・売却・買収事例!最新動向、費用の相場も解説
金融・リース・レンタル業界では、主要企業が積極的にM&Aを活用するケースが目立ち、M&Aで事業の強化・拡大を図ることやサービス体制・機能の強化、事業エリア拡大などを実現しています。本記事では、各業界の特徴や動向、費用の相場などを解説します。
目次
金融・リース・レンタル業界とは
近年、さまざまな業界でM&Aの増加が目立ちますが、これは金融・リース・レンタル業界も例外ではなく、事業拡大やサービス体制の強化などを目的にM&Aが行われている状況です。
また、海外事業における強化・拡大のため、海外企業とのM&Aを進めるケースも見られます。こうした金融・リース・レンタル業界のM&A動向をおさえるにあたり、まずは金融・リース・レンタルについて見ていきましょう。
金融とは何か
金融とは、資金が不足している人に対して資金を流通させることで、一般的には銀行や信用金庫、信用組合などをイメージします。
しかし、銀行などのように預金を集めて融資を行う事業をしている企業だけでなく、融資を専門とする消費者金融などの貸金業者も金融業に含まれるのです。
また、保険会社や証券会社も金融に含まれるため、一般的な認識よりも多くの企業が金融業界を形成しています。
リースとは何か
リースとは、企業などに設備・機械を長期間貸すことです。具体的には、企業などが必要とする設備・機械をリース会社が代わりに購入して企業に貸し出し、リースの契約期間中は企業が毎月定額の料金を支払って設備や機会を長期的に使用できます。
つまり、企業は設備・機械を購入することなく、毎月発生する定額の料金だけで一定期間の設備投資ができるメリットがあります。設備・機械の初期費用を大きく抑えられるので、資金の柔軟な運用も可能です。
レンタルとは何か
レンタルとは、企業などに設備・機械を短期間貸すことをいいます。基本的な仕組みはリースとあまり変わりませんが、企業は必要なときに必要な期間だけ設備・機械を使用できるため、費用を抑えられるメリットがあるのです。
リースとレンタルの違いは
リースとレンタルの大きな違いは、設備・機械を貸し出す期間です。前述のとおり、リースは1年や5年など長期間貸し出すのに対し、レンタルは数日や数ヶ月など短期間のみ貸し出します。
また、リースは基本的に一つの企業が一つの設備・機械を使用するのに対し、レンタルの場合は他の企業が使用していた設備・機械を使用することも十分にあり、不特定多数の利用者が一つの設備・機械を使用するのです。
貸し出す期間が違うことで設備・機械の扱いも変わるため、一つの設備・機械をある程度長期間使用したい場合はリースの方が良く、短期間ずつしか使用しない場合はレンタルの方が良いといえます。
ただ、リースは原則として中途解約ができないため、解約したい場合は残りのリース料を支払って解約する必要があり、レンタルは比較的長期間借りるとコストが高くなるデメリットもあるので、ケースに応じて選択しなければなりません。
いずれにしてもリースとレンタルは企業が必要とする設備・機械を貸す点は同じで、企業からの需要は高いです。
金融・リース・レンタル業界の特徴
ここで、金融・リース・レンタル業界の特徴を整理しておきましょう。先述しましたが、金融はその名にもあるとおり金融業界を構成する中枢ともいえ、リース業界も基本的には金融業界に含まれます。
特にファイナンス・リースの場合、企業が希望する設備・機械をリース会社が購入し、それを企業が使用する際に、帳簿上資産扱いになることから資金を借りて設備・機械を購入するケースとあまり変わりません。
帳簿上費用として取り扱うオペレーティング・リースもありますが、これは二次使用を想定する自動車などの機械に限られます。こういった設備・機械以外でさらに帳簿上資産扱いになれば、資金を借りて資産を購入するのと大きな違いはありません。
こうした側面もあることから、リース業界は金融業界に含まれるケースが一般的です。
レンタル業界も金融業界に含まれる
レンタル業界については諸説ありますが、企業が必要とする資産を貸し出す点においては少なくともリース業界と共通点があります。
そのリース業界が金融業界に含まれること、さらには「リース・レンタル事業」などとまとめて表現するケースもあることから、レンタル業界も金融業に含まれるといえるでしょう。
つまり、金融業界とは単に銀行などの金融機関や消費者金融などの貸金業者、保険会社、証券会社だけでなく、リース業界やレンタル業界も含めた大きな業界です。
金融・リース・レンタル業界の種類
リース取引には、主にファイナンス・リースとオペレーティング・リースがあり、以下の条件を満たすリースをファイナンス・リース、それ以外をオペレーティング・リースといいます。
- 途中解約が許されない、あるいは解約時に残存リース期間におけるリース料全額の支払いが求められるなど実質的に途中解約が選択不可能な契約
- リース取引に要する費用(リース物件の取得価格、資金調達コスト、保険料など)のほぼ全額を借り手の支払うリース料で賄う
また、ファイナンス・リースには、所有権移転ファイナンス・リースと所有権移転外ファイナンス・リースがあり、どちらもリース物件から見込める経済的利益を実質的に享受するのは借り手企業です。
リース物件は、契約期間終了時点で耐用年数のほとんどを経過するので、他社へリースしたり市場で売却したりできず、リース会社にとって利用する価値はほぼありません。
つまり、ファイナンス・リースとは、借り手がリース物件を担保としてリース会社から融資を受け物件を買うものといえます。
一方のオペレーティング・リースは、ファイナンス・リースより契約期間が短く、借り手は借りている期間に対応するコストを負担して利益を享受し、それ以外のコスト・価値はリース会社が持つので、レンタルに似た取引です。
リース取引の会計
現状の日本会計基準では、原則として、ファイナンス・リースは売買取引、オペレーティング・リースは賃貸借取引として処理します。
もし、リース資産またはリース料が軽微だったりリース期間が短かったりするケース、借り手が中小企業であるケースは所有権移転外ファイナンス・リースも賃貸借取引としての形状が可能です。
売買取引となる場合はリース資産および債務の計上が必要であり、リース取引は貸借対照表の計上対象になります。対して、賃貸借取引となる場合は、リース料を支払った日ごとに費用計上すればよく、貸借対照表の形状対象とはなりません。
リース取引のメリット
ここでは、リース利用企業とメーカー・販売企業に分けて、リース取引のメリットをみていきましょう。まず、リース利用企業のメリットとしては以下の点が挙げられます。
- 設備などの導入に多くの資金の準備が要らない
- 減価償却費の平準化
- 調達力に余裕が生じる
- オフバランス化で収益性指標向上・資産価格変動リスクの低減が見込める
- 事務管理の省力化
また、メーカー・販売企業におけるリース取引の主なメリットとしては以下のものがあります。
- 販売時における与信リスクの軽減
- 販売方法を多様化して売上促進・新規顧客開拓を図れる
- リース契約期間に合わせた計画的な販売活動が実施できる
金融・リース・レンタル業界の主な動向
ここでは、金融・リース・レンタル業界の主な動向を解説します。なお、リース業界やレンタル業界も金融業界に含まれますが、各業界の特徴が違うこともあるため、各業界に分けてみていきましょう。
金融業界の動向
銀行などの金融機関では、本業ともいえる融資が低調で期待した利益を得られず、保険や投資信託の販売、各種手数料の見直しなどで収益をあげている現状です。
保険会社においても、度重なる自然災害により保険金の支払いが増えたこともあり、保険料の引き上げなどを行っています。
金融業界の規模としては増加傾向にあるものの、実際には主力業務で十分な収益を得られず、規制の強化などによって苦境に立たされているといえるでしょう。
リース業界の動向
リース業界では最大手となる独立系のオリックス、銀行・商社系の三菱UFJリース、三井住友ファイナンス&リース、東京センチュリーなどが活躍していますが、近年は金融危機の影響などもありリースの需要低下が見られます。
リース業界は企業の設備投資意欲に大きく左右されるため、景気や各業界の動向が大きく影響して業界の規模は減少傾向です。
リース取扱高・比率の減少
リース業は1960年代からバブル期に急成長しました。しかし、2008年の会計基準変更とリーマンショックの影響で、取扱高が大きく下がっています。
会計基準が変更し、オフバランスの対象となるリース取引が制限されたことは、リース業界への大打撃でした。リーマンショック後の低金利状況は借入による購入を促す要因となり、これもリース利用の減少につながったと考えられます。
その後も、リース取扱高は伸び悩んでおり、企業の設備投資に占めるリースの割合は減少傾向です。
全リース取引オンバランス化の動向
2019年から、国際会計基準では、オペレーティング・リースを含むすべてのリース取引は、オンバランス処理となっています。日本企業は国際会計基準を用いるため、すでに適用している状況です。
ただし、日本の会計基準を国際会計基準へ合わせるよう改訂が行われる流れであり、リース会計でも改訂の議論が進められています。会計基準改訂で、リースのオフバランス処理がより制限あるいは撤廃されると、リース業界への影響は大きくなるでしょう。
サブスクリプション型サービスとの競合
使う分だけサービスとして提供を受けて使う、といったサブスクリプション型が、主にソフトウェア関係で拡がっています。
クラウド上のサブスクリプション型ソフトウェア(SaaS)は、オーダーメイドのシステムやパッケージ販売のソフトウェアをサーバ上で運用するのと比較して導入コストが安い点がメリットであり、必要とする設備や機器のスリム化も可能です。
ソフトウェア関係以外でも、これからはサブスクリプション型サービスが拡がると考えられます。サステナビリティなどの点で、シェアリングエコノミーが注目され、シェアリングエコノミーの普及に伴いサブスクリプション型サービスの多様化も見込まれる状況です。
サブスクリプション型サービスやシェアリングエコノミーにより所有の数が減少すると、リース業にマイナスの影響となるでしょう。
レンタル業界の動向
リース業界の規模が減少傾向であるのに対し、レンタル業界の規模は増加傾向です。これは長期間契約で固定費が発生するリースよりも、必要なときだけ借りられるレンタルを利用する企業が増えていることが一つの要因でしょう。
ただ、DVDなどのレンタルを主力とする企業では、インターネットによる動画配信が普及したこともあり減少傾向にあります。
金融・リース・レンタル業界のM&A・買収・売却・譲渡動向
ここでは、金融・リース・レンタル業界におけるM&Aや買収、売却、譲渡の動向について見ていきましょう。
金融業界のM&A・買収・売却・譲渡動向
銀行などでは、同一の営業エリアを持つ金融機関が生き残りをかけて合併や業務提携などを行っており、消費者金融などの貸金業は大手銀行グループの傘下に入る動きが落ち着きを見せています。
また、保険会社では国内企業同士の合併が落ち着き、今度は海外企業とのM&Aによって海外事業の強化・拡大、ネット保険の強化や新規参入を図る企業が増加し、業界での生き残りをかけた経営戦略としてM&Aが積極的に行われている現状です。
リース業界のM&A・買収・売却・譲渡動向
後ほど事例として詳しく紹介しますが、近年のリース業界ではオリックス、三菱UFJリース、東京センチュリーといった主要企業が、事業拡大やサービス体制の強化などを目的にM&Aを行っています。
また、国内需要が低調なことから海外におけるM&Aも増加傾向です。
レンタル業界のM&A・買収・売却・譲渡動向
レンタル業界においても、金融・リース業界と同様にM&Aによって事業拡大やサービス体制の強化などを図る動きが見受けられます。
金融・リース・レンタル業界ではこれまでも業界再編が見られ、いくつかグループ・系列が存在しますが、今後、M&Aの加速に伴い業界再編がさらに進むでしょう。
金融・リース・レンタル業界のM&A・買収・売却・譲渡の事例14選
この章では、金融・リース・レンタル業界において実際に行われたM&A事例を紹介します。
- 三菱HCキャピタルによるCAIの完全子会社化
- 芙蓉総合リースによるWorkVisionの完全子会社化
- 日本包装リースによるJA三井リースへの譲渡
- 日通商事によるリース事業の分社化・東京センチュリーとの協業
- 十八総合リースによる東京センチュリーとの資本業務提携
- ヤマトリースによる芙蓉総合リースへの譲渡
- 三菱UFJ信託銀行が三菱商事アセットマネジメントを買収
- 東京海上ホールディングスがGCubeを買収
- ナルネットコミュニケーションズによるジャフコとの戦略的パートナーシップ締結
- 神鋼リースによる昭和リースへの譲渡
- 全国保証によるYUTORI債権回収の子会社化
- オリックスがNTI Connectを買収
- 東京センチュリーによるアマダリースの子会社化
- グランド山形リースによるフィデアHDへの譲渡
①三菱HCキャピタルによるCAIの完全子会社化
2022年3月に、三菱HCキャピタルは、株式譲渡の手法により米CAIを完全子会社にすることを決めました。
CAIは、米国を拠点に海上コンテナリース事業をグローバルに手掛け、三菱HCキャピタルは、総合リース・レンタル、資産・機器の有効活用、環境・エネルギーソリューションなどを行っています。
これにより、三菱HCキャピタルは、海上コンテナリース子会社と融合した海上コンテナリース事業の競争力を高め、中長期的な成長ドライバーとして同事業を強化する見込みです。
②芙蓉総合リースによるWorkVisionの完全子会社化
2021年10月、芙蓉総合リースは、株式譲渡の手法によりWorkVisionを完全子会社にしました。
WorkVisionは、SaaS型システムソフトウェアシリーズの開発・販売・運用やクラウド基盤構築サービスなどを行い、芙蓉総合リースは、総合リース・割賦販売、金銭貸付その他金融業務などを行っています。
これにより、芙蓉総合リースは、新しく展開しているBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とPCライフサイクルマネジメント事業を、WorkVisionのICTソリューションと融合して強める見込みです。
③日本包装リースによるJA三井リースへの譲渡
2021年6月、日本包装リースは、JA三井リースの子会社となりました。
日本包装リースは、包装機械や関連機器のリース、割賦販売を手掛け、JA三井リースは、総合リース・割賦販売、農林水産事業者向けリース・資金サポート、再生可能エネルギー事業参入支援などさまざまな事業を行っています。
これにより、日本包装リースは、シナジー発揮により包装機械・食品機械分野での専門性向上を見込み、JA三井リースは、地域における農林水産業の成長に資するビジネスの加速、既存の営業基盤を活性化させることを狙います。
④日通商事によるリース事業の分社化・東京センチュリーとの協業
2021年3月、日通商事は、リース事業を分社化して東京センチュリーと協業しました。
日通商事は、物流関連商品や石油・LPガスの販売・リース、保険代理店、車両建設機械整備、コンテナ製作、不動産賃貸などを手掛け、東京センチュリーは、総合リース・レンタル、IT・IoTソリューションなどの事業を行う会社です。
これにより、日通商事は、両社の顧客基盤やノウハウ、拠点ネットワークを生かしてリース事業の成長・発展を見込み、東京センチュリーは資本効率と企業価値の向上を狙います。
⑤十八総合リースによる東京センチュリーとの資本業務提携
2020年4月、十八総合リースは、東京センチュリーと資本業務提携することを決めています。
十八総合リースは、主に長崎県で十八親和銀行の取引先にリース・割賦販売などを行い、東京センチュリーは、総合リース・レンタル、海外進出支援、IT・IoTソリューションなどの事業を手掛ける会社です。
これにより、十八総合リースは、親会社であるふくおかフィナンシャルグループの顧客基盤と東京センチュリーのサービスノウハウを合わせて事業の拡大を見込み、東京センチュリーは、関連業務の協業を狙います。
⑥ヤマトリースによる芙蓉総合リースへの譲渡
2020年4月、ヤマトリースは、芙蓉総合リースの子会社となりました。
ヤマトリースは、運送事業者へのトラックリース、中古トラックマッチングアプリによるトラック流通サポートサービスなどを行い、芙蓉総合リースは、総合リース・割賦販売、金銭貸付その他金融業務などを行っています。
これにより、ヤマトリースは、ヤマトグループの事業基盤と芙蓉総合リースグループにおけるノウハウを合わせ、ソリューションの高度化とサービスラインナップの拡充を狙います。
⑦三菱UFJ信託銀行が三菱商事アセットマネジメントを買収
2020年4月、三菱UFJフィナンシャル・グループの子会社である三菱UFJ信託銀行は、不動産などに特化した運用商品を提供する三菱商事アセットマネジメントを買収しました。
三菱UFJフィナンシャル・グループでは、三菱UFJ信託銀行を中心に資産運用事業の強化に取り組んでおり、この買収もその一環です。
三菱アセットマネジメントが運用する不動産やヘッジファンドは「オルタナティブ領域」といわれ、この分野が成長することを見越して商品の提供力強化を図ります。
⑧東京海上ホールディングスがGCubeを買収
2020年3月、保険事業を手掛ける東京海上ホールディングスは、GCubeを買収しました。GCubeはアメリカやヨーロッパを中心に再生可能エネルギーの保険に特化した保険代理店で、リスクの評価やサービス力に強みを持っています。
東京海上ホールディングスはこの買収により、再生可能エネルギー分野を支援しつつ、収益力の拡大を図ります。
⑨ナルネットコミュニケーションズによるジャフコとの戦略的パートナーシップ締結
2019年9月、ルネットコミュニケーションズは、ジャフコと戦略的パートナーシップを結びました。
ナルネットコミュニケーションズは、自動車専門リース事業を手掛け、ジャフコは、プライベート・エクイティ分野に重点を置いた投資活動を行う会社です。
これにより、ナルネットコミュニケーションズは、創業者の引退に伴う事業承継とジャフコが持つノウハウ・ネットワークの活用による成長の加速を狙います。
⑩神鋼リースによる昭和リースへの譲渡
2019年7月、神鋼リースは、株式譲渡の手法により昭和リースの子会社になりました。
神鋼リースは、主に建設機械における動産のリース・賃貸・売買・割賦販売などを行い、昭和リースは、新生銀行グループのメンバーとして総合力を生かした金融ソリューションを手掛けています。
これにより、建設機械分野における一気通貫サービスをより拡大し、さまざまな金融ソリューションを展開する見込みです。
⑪全国保証によるYUTORI債権回収の子会社化
2018年12月、信用保証事業を手掛ける全国保証は、債権回収業を行うYUTORI債権回収の子会社化を発表しました。取得価額は非公表で、同年12月中にYUTORI債権回収の子会社化が完了しています。
全国保証は、住宅ローンを中心とした信用保証事業を国内で展開している会社です。YUTORI債権回収は、債権管理回収業に関する特別措置法に基づく債権回収業を行っています。
YUTORI債権回収を全国保証が子会社化したことで、全国保証が持つ求償債権の回収業務や取引先における債権管理業務の受託といったシナジー効果を期待します。なお、2019年3月にYUTORI債権回収は「あけぼの債権回収」に社名変更をしました。
⑫オリックスがNTI Connectを買収
2018年12月、オリックスは米国現地法人ORIX Corporation USA傘下のプライベート・エクイティ(PE)運用会社となるORIX Capital Partners, LLC(以下、ORIX Capital)が、アメリカで通信インフラ設備の設置や保守サービスを行うNTI Connect, LLC(以下、NTI Connect)を買収したことを発表しました。
オリックスはメンテナンスリースや法人金融、事業投資といったさまざまな事業展開を進めており、海外事業も積極的に進めています。これまでも交通インフラ安全サービス会社などを買収し、アメリカでの公共インフラ関連サービスの需要を取り込んでいました。
今回のNTI Connectの買収も、こうした動きの一環です。NTI Connectは、通信関連事業者向けに通信インフラ設備の設置、保守・メンテナンス、修繕工事などのサービスを提供し、アメリカ東部を中心に事業展開を行っています。
NTI Connectの主要顧客にはGoogleやAT&Tといった大手も含まれます。オリックスは2018年6月にORIX CapitalをつうじたPE投資として、公共インフラの設置・保守サービス会社であるPeak Utility Services Group(以下、Peak)を買収しました。
PeakとNTI Connectは通信インフラ事業での顧客基盤が近いため、シナジー効果も見込んで今回の買収が行われました。近年のアメリカではインターネット通信の高速化やクラウド化などを背景に、通信インフラの新規設備投資が活発化しています。
こういった動向も踏まえ、オリックスは、今後もアメリカにおける公共インフラ関連サービスの需要を取り込む予定です。
⑬東京センチュリーによるアマダリースの子会社化
伊藤忠商事などを母体とする東京センチュリーは2018年11月、金属加工機械総合メーカーであるアマダホールディングスの100%子会社であるアマダリースの連結子会社化を発表しました。
アマダリースの発行済株式総数の60%を東京センチュリーが取得する形で子会社化が行われ、株式譲渡実行日は2019年3月末です。
東京センチュリーは伊藤忠商事などを主要株主とし、賃貸事業や割賦販売事業などを展開しており、東京センチュリーとアマダホールディングスは、海外でのベンダーファイナンス事業において10年以上協業しています。
アマダホールディングスにおける国内販売金融会社の役割を担うアマダリースが、東京センチュリーの子会社となり、東京センチュリーとアマダホールディングスの合弁事業として、アマダリースのファイナンス機能の強化、事業基盤の拡大などを図ります。
⑭グランド山形リースによるフィデアHDへの譲渡
2018年10月、グランド山形リースは、株式譲渡の手法によりフィデアホールディングスの完全子会社となりました。
グランド山形リースは、総合リース業を行い、フィデアホールディングスは、荘内銀行と北都銀行の金融持株会社として経営管理などを手掛けています。
これにより、フィデアホールディングスは、提供ソリューションのラインナップが拡がるのでコンサルティングの営業体制を強め、グループ全体の収益力を強化する見込みです。
金融・リース・レンタル業界のM&A・買収・売却・譲渡の成功ポイント
M&Aを成功させるのは簡単なことではなく、目的や事前の準備などをしっかり行わなければ失敗する可能性が高くなるでしょう。ここでは、M&Aを成功させるポイントを、売却を行うケースと買収を行うケースに分けて紹介します。
売却を行うケース
売却を行う以上、まずは相手に自社の魅力をしっかり伝える必要があります。相手にとって魅力的な事業やサービスを展開していれば、相手企業が買収に名乗り出す可能性が高まるのです。自社の魅力・強みをしっかりアピールしましょう。
売り手の魅力が買い手のニーズにマッチすれば、売り手にとってもさまざまなシナジー効果が期待できます。こういったM&Aを実現するためにも、自社が特化している事業は何か、強みのあるエリアはどこか、などを事前に整理し、相手にわかりやすく伝えましょう。
買収を行うケース
事業の強化・拡大といったシナジー効果を実現するためには、そもそも自社がどの分野を強化したいのか、強化または進出したいエリアはどこかなど、目的を整理してから買収対象を検討することが大切です。これがはっきりすれば適切な相手企業を探しやすくなり、買収を成功に導けます。
特に金融・リース・レンタル業界では、同業者同士のM&Aによって双方のノウハウやサービス体制などを生かし、事業の強化・拡大につなげるケースが多いです。
こういった買収を成功させるためにも、強化すべき事業やサービス体制などを再確認したうえで、買収するべき企業を決めましょう。
金融・リース・レンタル業界のM&A・買収・売却・譲渡で注意したいポイント
M&Aを実行するにあたり、成功のポイントをおさえることは大事ですが、それ以外に注意しなければならないポイントもおさえる必要があります。ここで紹介するM&Aで注意したいポイントも踏まえてM&Aを進めましょう。
目的に合った手法を選択すること
先ほど、「目的がはっきりしていれば適切な相手企業を探しやすい」点を紹介しましたが、これは相手企業を探しやすくするだけではありません。M&Aの目的を明確にすれば、具体的なM&A戦略を策定でき、最適な手法の選択が行いやすくなり、M&Aの方向性が定まるのです。
目的がはっきりしていなければ「M&Aをしたが期待した効果が現れなかった」などの事態になりかねません。メリットが多いM&Aの実現につなげるためにも、M&Aの目的は明確にしましょう。
対象企業は丁寧に選ぶこと
M&Aによって売却または買収を行う以上、信頼できる相手と取引をしなくてはなりません。最初の段階はもちろん、基本合意後のデューデリジェンスにおいても企業の事業内容や方針などをチェックし、自社に合うかどうかを慎重に検討する必要があります。
ふさわしい対象企業が見つかったら他の企業に先を越されるリスクをなくすためにも、早めにアプローチを行いましょう。
専門家のサポートをしっかりと受けること
M&Aでは法務、税務、財務といった専門知識のほか、対象企業との交渉力も求められます。特に金融業界では各法律に注意しなければならず、自社だけでM&Aを進めることは難しいです。また、近年増加傾向にある海外企業とのM&Aでは、現地の法律や習慣なども把握しなければなりません。
そのため、M&A仲介会社・M&Aアドバイザリーなど専門家のサポートを受けることが大切です。専門家のサポートを受ければ、適切な手法や相手企業の選定、交渉において力となり、トラブルが起こらないよう細心の注意を払いながらM&Aが進みます。
M&A仲介会社をお探しの場合は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所では、さまざまな業界・業種のM&A経験と豊富な知識を持つM&Aアドバイザーが、丁寧に案件をフルサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります。)無料相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
金融・リース・レンタル業界のM&A・買収・売却・譲渡の相場
金融・リース・レンタル業界では、国内のM&Aに加え、海外企業とのM&Aも活発化しています。M&Aの多様化に伴い、相場や費用を一概に把握するのは難しいです。しかし、相場や費用の目安を知らなければ、想定外の費用が発生することもあります。
こうした事態を防ぐためにも、自社に似た事例は徹底的に分析し、事例から相場・費用の目安をつけることが必要です。
具体的には、各事例におけるM&Aの目的、M&Aの当事者となる会社の規模、対象事業の規模、会社の業績、従業員の数、M&Aのスキームなどをチェックしましょう。そして、自社の状況と似た事例を十分に分析し、相場・費用を検討することが大切です。
金融・リース・レンタル業界のM&A・売却・買収まとめ
近年の金融・リース・レンタル業界では、業界の主要企業が積極的にM&Aを活用するケースが目立ちます。これらの事例ではM&Aによって事業の強化・拡大を図り、サービス体制・機能の強化、事業エリアの拡大などを実現しています。
また、海外企業とのM&Aも活発化しており、 国内における需要の動向に伴って、海外における需要取り込みのためのM&Aは今後も増加するでしょう。金融・リース・レンタル業界ではM&A事例が多様化しています。
M&Aの際は多様な事例に注目しつつ、自社に似た事例は徹底的に分析し、検討を進めることが大切です。
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近年は事業承継手段としてのM&Aが増えており、寿司・日本料理店でも同様の動きがみられます。M&Aを行う際は、動向を把握したうえで売却や買収の戦略策定が必要です。この記事では、寿司...