M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2021年5月30日更新会社・事業を売る
M&A後に人事制度統合を成功するには?進める上でのポイントを解説
M&Aを成功させるためには、M&A後の統合プロセスを徹底することが大切です。そして統合プロセスの中で重要なものの一つに、人事制度統合があります。本記事では、M&A後の人事制度統合について、進めるうえでのポイントや注意点などを解説します。
目次
M&A後の人事制度統合とは
M&Aには、売買先の選定と交渉を始め、デューデリジェンスやクロージングなど、様々なプロセスがあります。
どれも重要なプロセスではありますが、M&A後の人事制度の統合というのも、それらに劣らず重要なプロセスです。
M&A後の人事制度統合とは、別々の人事制度のもとで業務を行っていた会社同士がM&Aで買収・合併した際、それぞれの人事制度を統合して、一つの事業体として円滑に業務を遂行できるようにすることです。
これはM&Aの手続きの中ではPMI(統合プロセス)の一部であり、場合によってはデューデリジェンスの一環として人事に関する調査が行われることもあります。
M&Aとは
M&Aは会社の合併(Mergers)と買収(Acquisitions)を意味する用語で、会社(個人事業の場合もある)を売買する取引の総称だといえます。
具体的には、株式譲渡・事業譲渡・株式交換・株式移転・合併・分割などのことで、これらの手法をまとめてM&Aと呼びます。
狭義にはM&Aとはいえない資本提携や業務提携なども、広い意味でM&Aに含めることがあり、定義には若干の曖昧さがあります。
M&Aは、大企業やグローバル企業による大規模な買収や組織再編から、中小企業や町の飲食店の譲渡まで、幅広い規模で行うことができます。
M&A後の人事制度統合の重要性
M&Aを行うと、今までは独立した存在だった2つの会社が、親会社・子会社の関係になったり、合併されて1つの会社になったりします。
今まで別々のシステムや風土で機能してきた会社同士ですから、M&A後はすり合わせをうまく行わないと、トラブルが起こったりシナジーが得られなくなったりします。
人事においても同様で、M&A後はお互いの会社の人事および社員の処遇をしっかり統合しないと、従業員が不満を持ち、場合によっては離職してしまう恐れもあります。
M&A後の人事制度統合について考えておくことは、M&Aを成功させるために非常に重要です。
M&A後に人事制度統合を行うメリット
M&A後に人事制度統合を行うことは、大きなメリットをもたらします。
例えば、人事制度統合により従業員に適切な給与を支払い、福祉や仕事環境などを満足できるものに改善することで、従業員のモチベーション低下や離職、さらには訴訟リスクなどを抑えることができます。
さらに、M&A後に人事制度統合を行い従業員が満足して働けるようにすることは、M&Aによるシナジー効果を高めることにもつながります。
M&A後に人事制度統合を成功するには?
M&A後に人事制度統合を成功させるには多くの困難がともないますし、人間をまとめあげていく人事の統合は個々の事例によって変わる部分も多く、成功の手法を一般論として語るのは難しい部分もあります。
しかし、一番重要な点としては、従業員が不満を持たないようにケアすることが挙げられます。
従業員が待遇や職場環境に不満を持ってしまうと、モチベーション低下や離職へとつながり、従業員という大事な経営資源を失うことになります。
別々の風土やシステムで経営されてきた会社同士がM&Aで統合される以上は、全ての従業員が100%満足する人事制度統合はできないことが普通です。
その中で最も重視するべき点を絞り、効果的に人事制度統合を進めていくことが、成功するためには重要だといえるでしょう。
M&A後に人事制度統合を成功させる進め方
M&A後の人事制度統合を成功させるには、個々の事例に合わせた柔軟な対処が重要です。例えば以下のような進め方をしていくと、成功率を高めることができると考えられます。
【M&A後に人事制度統合を成功させる進め方】
- 人事制度統合の戦略決定
- 統合後の人事戦略
- 人事制度の検討
- 評価基準の明確化
- 統合後の評価・報酬の方法設計
- 人事制度の移行借置の設定
1.人事制度統合の戦略決定
M&A後の人事制度統合を行うには、まず戦略の決定を行う必要があります。
労働時間や休日など従業員の働く環境をどうするか、人材の育成や採用をどういう方針で進めていくか、そして評価制度をどのように導入するかなど、人事制度における各分野の内容を吟味し、最適な戦略を決定していきます。
M&A後の人事制度統合の戦略では、一方の企業の人事制度をそのまま採用するのか、両社の人事制度を混ぜるのか、または全く違う別な人事制度を一から作るのか、方針を明確に決めておくことが重要になります。
2.統合後の人事戦略
人事戦略とは、それぞれの従業員に最適な仕事やポストを与えることで、人的資源を最大限に生かすことを目指す人材マネジメントのことです。M&A後の人事制度統合においても、この人事戦略は重要になります。
人事戦略は人事部が普段行っている人事とは違う部分もあるので、その違いを理解したうえで、最適な人事戦略が行えるようにしておく必要があります。
人事戦略は、HRBP・OD&TD・CoE(センターオブエクセレンス)・OPs(オペレーションズ)といった要素から成り立っています。
3.人事制度の検討
M&A後の人事制度統合をどのように進めるべきかは、個々のM&A事例によっても異なりますし、会社にとって大きな転換を迎える中で、日々状況が変化していくことも考えられます。
M&A後の人事制度統合を行うにあたっては、現行の人事制度の問題点を適宜検討し、最適な人事制度を設定できるように留意しておくべきです。
4.評価基準の明確化
従業員のモチベーション低下や離職対策として、評価基準を明確化しておくことは重要です。あいまいな評価基準では、もっといい評価をしてもらえるはずだと不満を感じる従業員が出てくる可能性があります。
評価基準をどう設定すべきかは、職種によって大きく変わってきます。例えば営業職なら成果を比較的数値化しやすいですが、事務職など数値化しにくい職種もあります。
数値化しにくい職種に関しても、仕事への真面目な取組みや規範を守る姿勢など、いわゆる情意評価を用いることで、ある程度評価基準を明確化することができます。
5.統合後の評価・報酬の方法設計
M&A後の人事制度統合では、統合後の評価制度や報酬制度の方法設計を適切に行うことが重要になります。
ここで従業員の意に沿わない評価・報酬制度を採用してしまうと、従業員のモチベーション低下や離職にもつながってしまいます。
M&A後の人事制度統合では、等級制度・評価制度・報酬制度をバランスよく設計していくことが重要になります。
等級制度とは従業員の能力に応じて適切な役割を与えること、評価制度とは従業員の能力をどのように評価するかの基準、そして報酬制度は等級と評価をどのように報酬に反映させるかの規則です。
6.人事制度の移行借置の設定
M&A後の人事制度統合における移行措置とは、急に制度を移行せず、中間的な制度を一時的に採用して徐々に慣らしていくことです。
M&Aを行う前は、それぞれの会社の従業員が別々な人事制度のもとで働いていたので、M&A後に急に人事制度を変えてしまうとトラブルが起こる恐れがあります。その場合は移行措置を設定することで、トラブルの回避を図ることができます。
例えば、給与面で不利益を被る従業員がいる場合は、当面の間減額分を補償し、徐々に新制度に移行していくといった措置が有効だと考えられます。
M&A後に人事制度統合を成功させるポイント
M&A後の人事制度統合を行おうとすると、いろいろな困難が出てくるはずです。その場合は、以下のような点を押さえて徹底しておくことで、成功の可能性を高めることができます。
【M&A後に人事制度統合を成功させるポイント】
- 従業員に説明する際の事前準備
- 従業員への事前説明の徹底
- 企業理念・価値観の再設定
- 評価・報酬・教育制度の説明
従業員に説明する際の事前準備
従業員にとって、M&Aによって人事制度が変わるのは非常に大きな出来事です。特に給与や労働時間などの待遇面がどうなるのか不安に思う従業員は多いでしょう。
従業員に新しい人事制度に納得して受け入れてもらうためには、事前に十分な説明を行うことが重要です。
ただし、従業員が納得いく説明を行うためには、事前準備をしっかり行っておく必要があります。特に待遇が悪くなる点がある場合は、その必要性を従業員に理解してもらえるよう、十分な準備を行っておく必要があります。
従業員への事前説明の徹底
M&A後の人事制度統合では、事前準備をしっかりと行ったうえで、従業員への事前説明を徹底しておく必要があります。
特に、今までの人事制度と比べて変化する部分は、従業員が十分理解して納得できるように、分かりやすい説明を心がけることが大切です。
たとえ優れた人事制度を構築しても、それが従業員に理解されないと、モチベーション低下や離職につながる恐れもあります。
事前説明を徹底することは、人事制度の構築と同じくらい重要なプロセスの一つだといえるでしょう。
企業理念・価値観の再設定
企業というのはそれぞれが企業理念や価値観を持っており、意識しているにしろ無意識にしろ、従業員はそれに影響されて仕事をしています。
ですから、M&Aによって人事制度が変わるとともに、企業理念や価値観もすり合わせていくことが重要になります。
企業理念は抽象的な部分も多いので再設定が難しいこともありますが、将来的なビジョンや大切にすべき精神など、できるだけ具体化して従業員に伝え、浸透させていくことが重要だといえます。
評価・報酬・教育制度の説明
M&A後の人事制度統合では、評価制度や報酬制度、そして教育制度について従業員にしっかり説明しておくことが重要です。
人事評価においては、能力評価・業績評価・情意評価に分けて、それぞれがどういったチェックポイントで評価されるのかを明確にしておきます。
報酬制度では、年功序列的になるのか成果主義になるのか、それとも両方の面を取り入れるのかなど、具体的な方針を従業員に理解できるように説明しましょう。
教育制度では、研修や公開講座などの支援を、どういった形で行うかを従業員に説明します。
M&A後に人事制度統合を行う注意点
M&A後の人事制度統合にともなう注意点としては、主に以下の3点が挙げられます。
【M&A後に人事制度統合を行う注意点】
- 人件費増
- 従業員のモチベーション維持
- 訴訟リスク
人件費増
統合前の2つの会社はそれぞれが独自の給与体系を採用しているので、統合後にそれらをそのまま適用すると、同じ仕事をしているのに出身会社によって給与が違うという事態が起こり得ます。
こういった不公正を修正する一番シンプルな方法は、給与の高い方のシステムに合わせることです。しかし、それをすると人件費が膨れ上がってしまい、実際に適用するのが困難なこともあります。
人件費の増加をどこまで受け入れるかは、個々の事例によって正解が変わる問題でもあります。人事制度統合の過程において、適切な人件費を模索していくことが重要になります。
従業員のモチベーション維持
M&Aの後、人事制度を統合せずに各社の制度をそのまま適用すると、給与が低い方の社員のモチベーションが下がる可能性があります。
従業員というのはM&Aを成功させるカギとなる重要な資産ですから、モチベーションが下がって離職してしまわないように留意する必要があります。
しかし、モチベーション維持のために給与面を充実させると、今度は人件費が増えるという、トレードオフの関係性があるのが問題です。
どちらを重視するかに一般的な正解はないので、個々の事例での最適な方法を見極めつつ、人事制度統合を進めていく必要があります。
訴訟リスク
M&A後の人事制度統合において、特定の社員が不利益を被るような状況が生じると、モチベーション低下を招くだけでなく、社員から訴訟を起こされるリスクも想定されます。
訴訟リスクは人件費増やモチベーション低下に比べて起こる可能性は低いですが、ひとたび訴訟を起こされると会社にとって大きな負担となってしまいます。
訴訟のリスクを完全に避けるというのは難しい部分もありますが、M&Aを実行する時点で社員にしっかりと説明をし、納得してもらうよう努力することが大切です。
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まとめ
M&Aはクロージングすれば終わりではなく、その後の人事制度統合を含む統合プロセスが重要になります。
M&A後の人事制度統合について理解して、統合後の経営がスムーズに進むように準備しておきましょう。
【M&A後に人事制度統合を成功させる進め方】
- 人事制度統合の戦略決定
- 統合後の人事戦略
- 人事制度の検討
- 評価基準の明確化
- 統合後の評価・報酬の方法設計
- 人事制度の移行借置の設定
【M&A後に人事制度統合を成功させるポイント】
- 従業員に説明する際の事前準備
- 従業員への事前説明の徹底
- 企業理念・価値観の再設定
- 評価・報酬・教育制度の説明
【M&A後に人事制度統合を行う注意点】
- 人件費増
- 従業員のモチベーション維持
- 訴訟リスク
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。