2020年6月26日公開会社・事業を売る

M&Aにおける企業価値評価とは?手法、営業権を加えた算出方法を解説

M&Aにおける企業価値評価には、実に様々なアプローチ方法があり、業種や業界によって適した手法が分かれています。本記事ではM&Aの企業価値評価の代表的な3つの手法を比較を行い、それぞれの違いを明らかにします。M&Aを検討されている方は是非ご覧ください。

目次
  1. M&Aにおける企業価値評価とは?
  2. M&Aにおける企業価値評価の手法
  3. M&Aにおける企業価値評価の算出方法
  4. M&Aにおいて企業価値評価を行うタイミング
  5. M&Aにおける企業価値評価のポイント
  6. M&Aの際に企業価値評価に関する相談先
  7. まとめ
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M&Aにおける企業価値評価とは?

M&Aにおける企業価値評価とは?

M&Aにおける企業価値評価とは?

出典:https://unsplash.com/

国内市場の縮小やグローバル化の進展などに伴って、M&Aの案件数は企業規模を問わず上昇傾向にあります。かかる中、M&Aに関して知識装備をしておくこと、またM&A戦略を立案しておくことなどは、今後の企業経営において益々重要になると考えられます。

この章では、M&Aの取引価額の土台ともいえる企業価値評価とはどのようなもので、M&Aにどのような影響をあたえるのかを確認します。

M&Aとは

M&Aとは「Mergers & Acquisitions」の略称で、「合併と買収」と訳される企業間の取引のことを指します。

合併(M&A)とは、狭義では複数の会社の統合、つまり株式を取得することを意味しますが、広義では、会社の一部の機能や部署、事業を、別の法人へ譲渡・統合・売却することも含まれます。

消費者ニーズの変化や競合の出現など、事業環境の変化が激しい中において、M&Aは有力な経営戦略であり、日本国内でも業界・業種・規模の大小に関わらず、案件数が増加しています。

企業価値評価とは

対象企業が、定量的にどれくらいの価値(企業価値)があるのかを算定、評価することを企業価値評価といいます。

似たようなもので、事業価値評価・事業評価という言葉もありますが、ほぼ同義と考えていただいて大丈夫です。エンタープライズバリュー(EV)と呼ばれることもあります。

M&Aとは端的にいうと企業売買にあたりますが、企業の価額には、相場や平均値のようなものは存在せず、企業の業績、規模、業界動向、競合他社事情など、様々な要素が絡まりあって案件ごとに価額が決まります。

M&Aの交渉段階において、買い手企業の「可能な限り安く買いたい」ニーズと売り手企業の「可能な限り高く売りたい」ニーズ、双方の相反する主張をぶつけあっているだけでは、交渉価額が正当なものなのか判断ができないので、企業価値評価がその判断のベースになります。

M&Aの交渉においては、買い手企業が売り手企業の価値を評価するために実施しますが、M&Aによる出口戦略を検討している企業も、自己採点的な意味合いで自身の企業価値評価を行うこともできます。

M&Aの交渉では、相対的に売り手企業が劣勢な立場に立たされること多いため、交渉に発展する前に企業価値評価などを行い理論武装をしておくことは有益と考えられます。

【関連】企業価値と株式価値の違い

M&Aにおける企業価値評価の手法

M&Aにおける企業価値評価の手法

M&Aにおける企業価値評価の手法

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M&Aにおける企業価値評価は、何に重点を置くかによっていくつかの評価手法に分かれています。各評価方法にはどんな特徴があるのでしょうか?それぞれのメリットと注意点について確認します。

【M&Aにおける企業価値評価の手法】

  • コストアプローチ
  • マーケットアプローチ
  • インカムアプローチ

コストアプローチとは

貸借対照表の純資産価値に着目して評価を行う手法が、コストアプローチです。「ストックアプローチ」や「ネットアセットアプローチ」とも呼ばれ、主に中小企業のM&Aで使われるケースが多いです。

大きく分けると評価額算出方法は、簿価純資産法、時価純資産法、営業権を加えた時価純資産法の3つがありますが、資産の時価評価を行わない簿価純資産法は、M&Aの現場で使われることはほとんどありません。

メリット

財務諸表の数字をベースに企業価値を算定するため、客観性に優れている点がコストアプローチを採用する最大のメリットです。

貸借対照表をみれば、簿価純資産の価額はすぐにわかりますし、最新の業界動向や競合他社の事情といった複雑な要素は基本的に考慮されないため、客観性という面だけ考えれば十分であるといえます。

注意点

コストアプローチのデメリットは、企業の将来性が評価に反映されず、また足許の収益性なども考慮されづらいという点です。

純資産とは、創業以来の積みあげによってつくられる実績なので、評価時点で業績好調、収益率拡大中だったとしても、それは純資産評価の一部にしかなりません。

将来性に至っては、評価に反映されることはありません。 M&Aは、将来の企業経営や事業拡大に向けた投資という意味合いが強いため、将来性が考慮されない点には注意が必要です。

マーケットアプローチとは

類似企業や類似業種の株価に着目した評価方法が、マーケットアプローチです。市場で売買されている類似企業(業種)の株価をベースとして、対象企業の評価額を算出します。

対象企業との類似性が高いほど、評価の精度は上がりますが、一方で類似性が低ければ評価額の妥当性にも疑義が生じる方法であり、いかに類似性が高い企業・業種を選択するかがポイントになります。

具体的な評価額算出方法としては、類似業種比較法、類似取引比較法の2つがあります。

メリット

マーケットアプローチのメリットとしては、株式市場の価額が評価額に直結するため客観性に優れていること、また最新の株価が評価額に反映されやすいことなどが挙げられます。M&Aの際には、ステークホルダーの同意を得られやすい手法でしょう。

類似業種比較法に関しては、国税庁が財産評価のために採用している方法でもあるので、客観性の裏付けは十分といえます。

ただし、これは、相続税の算出や非上場株式の株価算定による課税を目的として国税庁が採用しているだけであり、事業の将来性やブランド力などに着目するM&Aとは性格がちがうことは理解しておく必要があります。

注意点

マーケットアプローチの注意点としては、株式市場の混乱・歪みによって株価が乱高下している場合、適切な企業価値評価ができない恐れがあるということが考えられます。

自社でコントロールできない、同業他社の不祥事や倒産や、天災や感染症拡大などの予期せぬ出来ごとはいつ起きるか全くわかりません。マーケットアプローチの場合は、その影響をダイレクトに受けてしまうかもしれないということです。

また、企業評価に適切な類似企業があるのかどうか、どの程度の類似性が求められるかなどの確認が必要になる点もデメリットといえます。特にベンチャー・中小企業などは類似する企業が存在しないケースも多く考えられます。

インカムアプローチとは

企業が将来生み出すと予測される利益・キャッシュフローに着目した評価手法が、インカムアプローチです。具体的な評価額算出方法としては、DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法、収益還元法、配当還元法の3つがあります。

メリット

インカムアプローチを採用する最大のメリットは、企業の将来性やM&A後のシナジー効果などを評価額に反映させることができる点といえます。先行投資の意味合いが強いM&Aにおいては、インカムアプローチは企業評価額算出に最も適していると考えられています。

注意点

他の2つのアプローチと比べて評価額の客観性が欠けてしまう点は、インカムアプローチのデメリットです。

コストアプローチでいう貸借対照表、マーケットアプローチでいう株価、のような客観的な数字ではなく、将来性・シナジー効果といった不確定要素への依存度が高いため、評価額の妥当性には一層の検証が必要です。

ステークホルダーへの説明も十分に行うことが肝要でしょう。企業の永続が前提になっているので、清算などを行う場合には採用ができない点も覚えておきましょう。

【関連】企業価値評価とは?評価方法を知って企業価値を高めよう

M&Aにおける企業価値評価の算出方法

M&Aにおける企業価値評価の算出方法

M&Aにおける企業価値評価の算出方法

出典:https://pixabay.com/ja/

前章までで、企業価値評価の概要と代表的な手法について確認しました。この章では、各評価アプローチの具体的な算出方法をみていきましょう。

コストアプローチ

コストアプローチには、簿価純資産法と時価純資産法、それと営業権を加えた時価純資産法の3つの評価方法があります。

簿価純資産法

対象企業の貸借対照表に基づいて、評価額を算出する方法が簿価純資産法です。その名の通り、貸借対照表の簿価額のみを基準にて計算する簡易的な方法で、純資産額=企業価値評価額となります。

客観性と簡便性に優れたやり方ではありますが、資産の時価評価を行わないため、含み損益が考慮されず、実態と乖離した評価になる恐れがあります。

時価純資産法

対象企業の貸借対照表をベースに、資産および負債の時価評価を行って実質自己資本を算出する方法が、時価純資産法です。実質自己資本(時価修正考慮後の純資産)=企業価値評価額となります。

簿価純資産法の欠点を補う算出方法であり、より実態に即した評価額の算定が可能になります。時価評価をする代表的な勘定科目は、資産項目では売上債権や棚卸資産、有形固定資産など、負債項目では、買掛金や未払給与、さらに簿外債務は偶発債務などがあります。

時価純資産法は(簿価純資産法も)、貸借対照表という過去の実績のみ着目して評価をするため、企業が有する将来の収益力や帳簿上には表れないブランド力のようなものは、一切反映されません。

M&Aは先行投資の意味合いが強いので、将来性等を考慮しない評価方法とM&Aとの相性には、若干の疑義があるかもしれません。

営業権を加えた時価純資産法

営業権(のれん)とは、ブランド力や人材資源、将来の収益力といった帳簿上には考慮されない無形の財産価値のことを指します。

上述の時価純資産法では帳簿外の事項は未考慮であるという欠点があるため、時価純資産に営業権(のれん)を加えることでその欠点を解消することができます。

コストアプローチの中では、中小企業のM&Aで最も採用される手法です。なお、営業権の計算方法にも、超過収益還元法と年倍法の2種類があるので、各M&A案件にマッチした計算方法を採用するよう努めましょう。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチには、類似企業比較法と類似取引比較法の2つの評価方法が存在します。

類似企業比較法

評価対象企業と似たような上場企業の「株価」を指標にして、株式価値を算定する方法が類似企業比較法です。評価対象企業が非上場の場合によく採用される方式です。

業種、企業規模、収益率、ビジネスモデル、財務状況、などの様々な項目に照らし合わせて、対象企業と類似している上場企業を選択し、比準割合から対象企業の評価額を割り出します。

評価額の客観的な妥当性は十分といえますが、類似企業が存在するのか、また類似性は十分なのかといった検証が必要になります。類似性が十分でない場合は、実態との評価額に乖離が生まれる恐れがあります。

類似取引比較法

評価対象企業と似たような上場企業の「M&Aの取引額」を指標にして、株式価値を算定する方法が類似取引比較法です。類似企業比較法の指標が「株価」であるのに対し、類似取引比較法は「M&Aの取引額」に着目している点に違いがあります。

M&A事例の取引額に各種倍率を掛け合わせて評価額を算出するのですが、買収プレミアムが多額に加味されることがあるため、類似企業比較法にくらべて評価額の妥当性が不透明になりやすい点は留意が必要です。

インカムアプローチ

インカムアプローチには、DCF法(ディスカウントキャシュフロー法)と配当還元法の2種類があります。

DCF法

M&Aにおける企業価値算定の代表的な手法の一つがDCF法です。企業が「将来」生み出す収益(キャッシュフロー)を「現在」の価値に割り引いて、企業価値評価を算出するので、割引キャッシュフロー法と称されることもあります。

少々複雑な方程式を使用しているため、ここでは詳細の説明は割愛しますが、企業の将来の収益力に着目して評価額を計算する方法だと考えていただければ結構です。

配当還元法

企業が将来払い出す株主への「配当金」を現在の価値に割り引いて、企業価値評価を行う方法が配当還元法です。

将来の価値を割り引くという意味ではDCFと共通していますが、DCF法が将来の「収益」を指標にしていたのに対し、配当還元法は将来の「配当金」に着目している点が、大きな違いです。

計算方法はさらに細分化され、過去の配当実績を使用して算出する「実績配当還元法」、同業界内の標準的な配当性向を使用して算出する「標準配当還元法」、過去の配当実績を資本還元率10%で割引いて算出する「相続税法上(国税庁)配当還元法」などがあります。

いずれの方法においても、配当を行なっていない企業(中小企業など)には適用不可であること、企業の資産およびキャッシュフローは全く考慮されないことには、留意が必要です。

【関連】DCF法による企業価値の算定

M&Aにおいて企業価値評価を行うタイミング

M&Aにおいて企業価値評価を行うタイミング

M&Aにおいて企業価値評価を行うタイミング

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M&A取引では、企業価値評価は取引価額を決定する際の交渉材料として使われます。したがって、M&Aのプロセスにおいて、基本的には秘密保持契約後~最終契約の間に企業価値評価が行われます。

対象企業にどれくらい価値があるのかを算定し、それをベースに実際の価格交渉がなされます。ですから、企業価値評価はM&Aにおいて非常に重要な役割を担っているといえます。

また、M&Aでの出口戦略を検討するにあたり、売却価格のイメージをつけるために買い手候補をみつける前から企業価値評価を行ったり、他方では、M&Aとは関係なく中長期的な経営戦略を検討する上での判断材料として、企業価値評価を行うこともあります。

【関連】バリュエーション(企業価値評価)の方法・手法

M&Aにおける企業価値評価のポイント

M&Aにおける企業価値評価のポイント

M&Aにおける企業価値評価のポイント

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M&Aにおける企業価値評価において、留意すべき点やポイントはどのようなものがあるのか理解を深めましょう。

1.キャッシュフローに注目する

企業経営において、キャッシュフロー(資金繰り)は何よりも重要な要素であるといえます。黒字倒産(黒字決算で一見順調と思われる企業が倒産すること)という事象があるように、資金繰りがしっかりと回っていなければ企業としての価値を評価できない恐れがあるからです。

経営と資金繰りは一体不可分であり、決算状況の優劣に関わらず、企業価値評価においては対象企業の資金繰り状況は必ず確認しましょう。

2.いくつかの手法を併用する

上述の通り、企業価値評価には様々な算出方法があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。どの手法が良くてどの手法が悪いかを断定的に判断するのではなく、複数の手法を併用することで、より実態に即した評価ができる可能性が高まります。

企業の決算状況や規模、業界動向によっても、最適な算出手法は変わります。どのような目的でM&Aを実施するかにもよって、それは算出方法の適切度は異なります。

M&Aにおいては、企業価値評価は取引価額を決める重要な材料なので、M&Aを成功に導くためにも、妥当性のある企業価値評価ができるよう努めることが肝要です。

3.事業計画を入念に確認する

事業計画は、企業にとっては今後進もうとしている道が記されているロードマップであり、将来の対象企業の姿を判断する材料となりうるものです。事業計画の内容を分析できなければ、それは対象企業の行く末を分析できないことと同義といえます。

対象企業がどのような将来を見据えて事業をしているのか、そのために足許ではどんな取り組みをしているのか、事業計画を通してしっかりと確認し、投資判断の可否を検討しましょう。

【関連】企業価値の評価方法とは?代表的な3つのアプローチを解説

M&Aの際に企業価値評価に関する相談先

M&Aの際に企業価値評価に関する相談先

M&Aの際に企業価値評価に関する相談先

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すでにM&Aに取り組まれている方や、出口戦略としてM&Aを検討しようと考えられている方は、是非M&A総合研究所までご相談ください。

M&A総合研究所は、完全成功報酬制を採用しているM&A仲介会社です。M&Aアドバイザーや弁護士・会計士によるフルサポートのもと、高水準のM&A支援サービスを実現しており、企業価値評価についても各方面からご相談を頂いています。

相談は24時間受け付けておりますので、どうぞお気軽にご連絡ください。

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まとめ

まとめ

まとめ

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M&Aにおける企業価値評価について解説しました。企業価値評価は、M&Aの取引価額を決定する上で大変重要な材料になるので、疎漏なく取り組む必要があります。

また、一口に企業価値評価といっても様々な手法があり、大分類でわけると、過去の実績(貸借対照表)に着目したコストアプローチ、類似企業の株価に着目したマーケットアプローチ、将来の収益力に着目したインカムアプローチの3つがあることを確認しました。

それぞれのアプローチは算出方法の違いによって、更ににいくつかのやり方に細分化されます。各手法の概要や特徴を理解しておくことが大切です。

スムーズな交渉と適切な取引価額の決定、そしてM&Aを成功に導くためにも企業価値評価をしっかりと行いましょう。

【M&Aにおける企業価値評価の手法】

  • コストアプローチ
  • マーケットアプローチ
  • インカムアプローチ


【M&Aにおける企業価値評価の算出方法】

(コストアプローチ)
  • 時価純資産法
  • 簿価純資産法
  • 営業権を加えた時価純資産法
(マーケットアプローチ)
  • 類似企業比較法
  • 類似取引比較法
(インカムアプローチ)
  • DCF法
  • 配当還元法

【M&Aにおける企業価値評価のポイント】
  • キャッシュフローに注目する
  • いくつかの手法を併用する
  • 事業計画を入念に確認する

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