2021年4月30日更新節税

相続における信託の活用

信託は、被相続人が理想とする相続を実現しやすくする効果が期待できます。相続で信託を活用する際は税理士や信託銀行など、専門家のアドバイスを得ることがおすすめです。この記事では、相続における信託の種類、課税と節税、信託銀行で扱われる信託商品などについて解説します。

目次
  1. 相続における信託の活用
  2. 相続とは?相続の概要
  3. 相続における信託とは
  4. 相続における信託の種類
  5. 相続における信託の課税
  6. 信託銀行で扱われる信託商品
  7. 相続における信託は専門家に相談しよう
  8. まとめ

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相続における信託の活用

相続は年齢を重ねてくると誰もが考えるものであり、お金や遺言書の管理など、知識が必要になります。ある程度財産を持っている人であれば相続準備に苦労するかもしれません。そんな時に役立つものが「信託」です。

相続のために設計された信託は様々な銀行で提供されており、それを利用することで相続がスムーズに進むだけでなく、被相続人が理想とする相続が実現しやすいというのがあります。

相続とは?相続の概要

「相続とはどういったものか」と聞かれたら、「故人の遺産を相続する」と答えることでしょう。間違いではありませんが、相続は決して単純なものではありません。被相続人であれば財産の整理、遺言書の作成、相続人の確認、相続税の節税対策といった作業があります。

相続人は各種書類の作成、被相続人が持つ契約の整理、相続税の申告といった作業を行わなければなりません。もし遺言書がなければ遺産分割協議を行う必要があり、初めて相続に携わるという人であれば混乱してしまいます。

相続は、トラブルが発生しやすいリスクを抱えており、遺産を巡って相続人同士が対立することがあります。

また、被相続人が遺言書を残していても望んだ通りの分配がされるとも限りませんので、相続人は、相続が発生する前から準備を進めておく必要があります。

相続における信託とは

相続を行う際、あるいは相続を想定し、信託を利用するという人は多いです。平成19年に信託法が改定されてから信託は一般の人でも使いやすいものになり、相続で活用する人は増えている傾向にあります。

そもそも信託とは財産を持つ委託者が財産の管理・運用を行う受託者に財産を託し、委託者の意向に沿って運用、指定した受益者に利益を与えるという行為です。

相続における信託は節税を目的にしたものではなく、あくまで委託者となる被相続人が理想とする相続が実現できるように財産を運用する目的で使われます。

先ほども触れましたが、相続の難しいところは相続トラブルが発生するリスクがあり、遺言書を残していたとしても被相続人が理想とする形で遺産の分配が行われるわけではないという点です。

相続は被相続人が死亡してから発生するものであり、死亡した以上、被相続人は相続をコントロールすることが難しくなります。そのため信託は、被相続人の意向に従って遺産の分配を行う第三者を相続に介入させるために使用されます。

この信託を利用することによって被相続人が理想とする相続が実現しやすくなります。信託は委託者の意向通りに設計できるものであり、柔軟に相続のプランニングを行うことができるのです。

そのため、被相続人は遺言書を残すよりも確実性が高い信託で、相続の準備を進めることができるようになります。また、被相続人や相続人が高齢化や病気などで正常な判断力をできなくなるケースでも、信託であれば相続が行われるでしょう。

相続における信託の種類

信託には大きく分けて3種類ありますので、それぞれ詳細を解説します。

①商事信託

受託者(信託会社や信託銀行など)によって営利目的で運営され、不特定多数の相手と反復継続して信託契約を締結する商事信託です。

②民事信託

営利を目的としておらず、正常な判断能力を担保することが難しい受益者のため、親族や信頼できる知人が受託者として財産の管理・承継を目的とした信託契約を締結する民事信託です。

③家族信託

最近では新たに「家族信託」という形式が誕生しています。家族信託は家族や親族を受託者として財産を信託するものであり、形式としては民事信託に近いものです。

家族信託は主に認知症などで親が正常な判断能力を失い、相続の準備を進めることが難しくなったような状況で活用できる信託であり、実際に受託者となるのは被相続人の子供であることが多いです。

家族信託は家族間で信託ができるため、相続をよりスムーズに実行できるうえに信託銀行などに預けるより手数料などのコストがかからないというメリットがあります。

※関連記事
民事信託とは?信託の仕組みや方法、メリット・デメリットもご紹介
 

相続における信託の課税

信託の場合、委託者、受託者、受益者の3つの当事者が存在します。委託者は、信託を依頼する人であり財産を託す人です。受託者は、委託者に管理や運用を託された人になります。そして受益者は、運用をおこなって得た利益を受け取る人になります。

基本的に経済的利益を獲得する受益者が課税対象になります。一般的に相続が発生した場合相続税が課されますが、信託も同様に課税対象となります。信託を利用すると、3つのタイミングで課税が発生します。

  1. 信託が設定される時
  2. 信託の運用・管理の期間
  3. 信託が終了した時

家族信託を利用した場合、どのようなケースでどのような税金が発生するのかを把握しておく必要があります。

贈与税(生前に受益者に財産を贈与した場合)

贈与税は、相続税とは違って家族信託の対象となる財産の額が多額の場合、贈与税が発生してしまう恐れがあります。生前の贈与税の発生を避ける対策としては、委託者の生前は委託者を受益者として設定しておくことが多いでしょう。

将来的に委託者が死亡し相続が発生した場合に、親族に受益者として地位を相続させることによって、相続人がそのまま引き継ぐ形となります。受益者は相続税が発生することになります。

相続税(委託者の死亡により相続人が受益者として引き継いだ場合)

委託者の死亡によって、受益者が相続人が変わった場合には、その相続人に対して相続税が発生します。平成30年度税制改正によって、経営承継円滑化法の事業承継税制が改正されております。

中小事業者が後継者に会社運営のために株式を生前贈与したり、相続によって取得させることになった場合は、相続税や贈与税の課税対象から除外してもらうことが可能です。家族信託によって事業承継を行う場合は、数代先の後継者まで指定できるメリットがあります。

しかし、相続税対策の効果は基本的にはありません。事業承継について、相続税の負担についても検討し適切な方法を選択する必要があるでしょう。
 

所得税・法人税(受益権を売却した場合)

受益者が信託受益権を他人に売却した場合は、売却から生じた利益に対して所得税・法人税が発生することになります。

登録免許税・固定資産税(不動産を受託者の名義にした場合)

不動産を売買した場合には、不動産を取得し登記する際に発生する「登録免許税」、1年後には「固定資産税」が発生します。例えば、不動産を信託財産にした場合、委託者から受託者に名義変更が行われることになります。

名義変更が行われた際に、登録免許税が発生します。しかし、信託による所有権移転のケースでは、通常の所有権移転よりも登録免許税が安くなるというメリットがあります。

そのため不動産価額が大きい場合は、登録免許税も高額になりますので、家族信託によって名義変更するというのは大きなメリットがあると言えるでしょう。また不動産売買をおこなった場合は、一般的に不動産取得税を購入者は支払うことになります。

しかし信託の場合は、受託者は不動産取得税を負担する必要がないというのもメリットです。
 

信託銀行で扱われる信託商品

信託を依頼する場合、銀行に依頼するケースが多いですが、信託銀行で扱われている一般的な信託商品は様々なものがあります。ここでは代表的な信託商品をお伝えします。

①暦年贈与信託

暦年贈与信託は相続というより、生前贈与のために使われる信託です。暦年贈与信託は一年間に110万円以内の贈与を非課税にする暦年贈与を受託者が行うという信託であり、贈与契約書や贈与資金の入金確認といった作業を信託銀行が代行してくれます。

暦年贈与は贈与を非課税で行うためよく使われますが、贈与であることを立証できなければ課税される恐れがあります。暦年贈与信託はそんな暦年贈与を信託銀行に任せるため、贈与の証明を得ることができます。

しかし暦年贈与は1年に110万円以内の贈与でなければ非課税にならないものであるため、一定以上の財産を持っている場合は暦年贈与を完了するまで時間がかかります。暦年贈与信託を使用する際はこの点はデメリットとして留意する必要があります。

②遺言代用信託

遺言代用信託は委託者である被相続人の生きている間に委託した財産を運用し、相続が発生した際はあらかじめ指定した受益者に財産が分配されるように設定できる信託です。遺言代用信託のメリットは金銭信託をしている場合、スムーズに相続を行うことができる点です。

通常、相続が発生しても相続に関する手続きが完了していなければ、相続人は遺産を受け継ぐことはできません。

しかし遺言代用信託は相続が発生した際、死亡診断書や印鑑、本人確認書類があればすぐに財産を受け取ることができます。

そのため被相続人が亡くなった後に発生する葬儀代や遺族の生活費を確保できるようになります。また被相続人が生きている間であれば、信託した財産を使うことも可能です。

③教育贈与信託

教育贈与信託は平成25年の税制改正で教育資金の一括贈与ができるようになってから誕生した信託です。贈与を活用した信託であり、祖父母や父母が委託者、子や孫、ひ孫を受益者とし、その受益者の教育資金として1,500万円を限度に金銭を信託し、贈与するというものです。

教育資金として贈与した場合、贈与税は非課税となるため、教育資金として必要なタイミングで贈与していけば相続税の節税対策となります。

教育贈与信託は教育資金を目的とした贈与でしか活用できないというデメリットはありますが、1,500万円を一括で贈与でき、暦年贈与信託と比べてスピーディーに行えるという点がメリットとして挙げられます。

ただし受益者が30歳になっても信託した財産が余っていた場合は、その分が贈与税の課税対象になるので注意が必要です。

④結婚・子育て支援信託

結婚・子育て支援信託は平成27年の税制改正で扱われるようになった信託であり、基本的な構造は教育贈与信託と似ています。

結婚・子育て支援信託は祖父母や父母を委託者とし、20歳以上50歳未満の子や孫を受益者としたうえで1,000万円を限度に信託した金銭が贈与された際、贈与税が非課税になります。まとまったお金を一括贈与できるため、スピーディーに生前贈与を進められるというメリットがあります。

ただ結婚・子育て支援信託も使いきれなかった財産に贈与税がかかります。受益者が50歳になった際や追加の拠出をしない場合、贈与税が発生するため留意しておきましょう。

相続における信託は専門家に相談しよう

相続のために信託を活用する際は、専門家に相談することがおすすめです。信託は受益者の状況やライフプラン、税金など様々な要素を念頭に置いたうえで使用するものです。

どういった相続を行いたいか、被相続人や相続人のビジョンをもとに取り組む必要があります。しかし、相続の具体的な手続きを知っている人はあまり多くはありません。

信託のメリットは委託者が柔軟に設計できるものですが、信託や相続の知識がなければ、そのメリットを生かすことは難しいでしょう。

事業承継などで家族信託を行う場合などは、M&A仲介会社に相談するのがおすすめです。M&A総合研究所では、M&Aや財務の知識が豊富なアドバイザーがフルサポートいたします。

相談は無料で行っておりますので、ぜひご相談ください。

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まとめ

今回の記事をまとめると以下のようになります。
・相続は様々な手続きをする必要があるうえに被相続人の理想通りに相続ができるとは限らないものである。
・相続おける信託は節税対策よりも被相続人が理想とする相続の実現を助ける効果が期待できる。
・信託の種類には商事信託と民事信託があるが、家族信託も注目されている。
・信託における課税は受益者に発生するが、税金の種類によって様々である。
・信託銀行で扱われている信託商品には暦年贈与信託や遺言代用信託などがある。
・信託を活用する際には専門家に相談することがおすすめ。

信託は相続を円滑に進め、被相続人が理想とする相続を実現しやすくする効果が期待できます。しかし信託は税制の改定によって新しい商品が出てきたり、信託そのものに様々な知識が必要であるなど、専門家の協力が必要な場面があります。

相続で信託を活用したい場合、専門家を慎重に選び、適切なアドバイスを受けることが大切です。

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