M&A・事業承継の理解を深める M&A総合研究所ポータル

2019年7月12日公開
この記事は、約3分で読めます。

民事信託とは?信託の仕組みや方法、メリット・デメリットもご紹介

Medium
この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

信託銀行が、家族間で行う信託など営利を目的とせずに引き受けるのが民事信託です。委託者・受託者・受益者という3者で構成される仕組みを把握したうえで、民事信託の特徴をおさえ、適切な活用を検討することが大切です。

目次
  1. 民事信託とは
  2. 信託とは何か?
  3. 民事信託と商事信託
  4. 民事信託の方法
  5. 民事信託のメリット・デメリット
  6. 民事信託における税金の問題
  7. 民事信託の注意点
  8. まとめ

民事信託とは

民事信託とは、営利を目的としないで引き受ける信託のことをいいます。この「信託」というのは、他人に財産の管理・運用を任せることを意味します。そして、営利目的で引き受ける信託を「商事信託」、非営利目的で引き受ける信託を「民事信託」といいます。つまり、民事信託を引き受けるというのは、営利を目的としないで他人の財産の管理・運用を引き受けることを意味するわけです。

さて、こうした民事信託ですが、事業承継と関係する場合もあります。特に近年は、事業承継のスキームとして民事信託を選択するケースも見られます。このような民事信託について、その特徴やメリット・デメリットなどをご紹介していきます。

信託とは何か?

民事信託の意味を正確に知るには、そもそも「信託とは何か」という点に触れる必要があります。先ほど述べたように、信託とは「他人に財産の管理・運用を任せること」を意味します。例えば、信託銀行に自分の財産の管理・運用を任せるといったケースが代表的です。

この場合、財産の管理・運用を任せる側の人を「委託者」、財産の管理・運用を引き受ける側の人を「受託者」といいます。「信託する」「信託される」という表現を使うと、財産を信託する者が「委託者」、信託された財産を管理・運用する者が「受託者」ということです。上記の例でいえば、財産の運用・管理を任された信託銀行が受託者になるわけです。

さらに、信託には「受益者」も登場します。受益者というのは、信託された財産から生じた利益を受ける人のことです。この仕組みについて、以下で詳しくご説明しますが、まずは信託においては「委託者」「受託者」「受益者」の3者が登場するということをおさえておいてください。

信託の具体的な仕組み

以下、委託者をA、受託者をB銀行、受益者をCとして、信託の仕組みを整理しておきます。受託者であるB銀行は信託銀行だと思ってください。

さて、AがB銀行に、自分の財産の管理・運用を任せるとします。なぜ、わざわざこのようなことをするのでしょうか。それは、B銀行に財産を適切に運用してもらうことで、その財産から生じる利益をCに受け取らせたいからです。自分で財産を運用するより、B銀行に運用してもらった方が利益が出やすいと判断したのでしょう。具体的には、不動産などの運用をB銀行に任せるといったケースが考えられます。

このように、信託というのは、委託者と受託者だけが行うのではありません。その利益を受け取る受益者も存在するのです。

信託される財産の所有権

上記の、Aが委託者、B銀行が受託者、Cが受益者という例をもう一度見てみましょう。

AはCのために自分の財産の管理・運用をB銀行に任せるわけですが、その際には、AからB銀行に財産権が移転します。その財産が不動産であれば、不動産の所有権がAからB銀行に移ることになります。そして、不動産の所有権を得たB銀行は、その不動産を管理・運用できることになるわけです。

このように、信託によって受託者に財産の管理・運用を任せるためには、その受託者に財産権を移転することになります。上記の例であれば、委託者(A)が受託者(B銀行)に、信託される財産の所有権を移転させることになるのです。

受益者が委託者または受託者になるケース

信託には「委託者」「受託者」「受益者」の3者が登場しますが、受益者が委託者と同じ、または受益者が受託者と同じというケースもあります。

例えば、A(委託者)がB銀行(受託者)に自分の財産の運用を任せ、その財産から生じる利益を自分で受け取りたいとします。この場合、Aは委託者であると同時に受益者でもあるわけです。自分が利益を受けたいから信託をするということです。

また、受託者が受益者を兼ねるというケースも考えられます。例えば、一人の受託者と複数の受益者がいたとして、その受益者の中に受託者も含まれているなどのケースがあります。ただし、後発的な事情によって受託者だけが受益者となり、その状態が1年間続くと、信託は終了するという仕組みになっています。

民事信託と商事信託

さて、いよいよ民事信託の話に移ります。上記でご紹介した仕組みを持つ信託には、民事信託と商事信託があります。営利目的で引き受ける信託が「商事信託」、非営利目的で引き受ける信託が「民事信託」となるわけです。

上記で触れた、Aが委託者、B銀行(信託銀行)が受託者、Cが受益者となるケースの場合、商事信託と考えることができます。信託銀行であるB銀行が営利目的で信託を引き受けると、信託報酬を受け取る形になるからです。一方で、こうした営利を目的としないで引き受ける信託が、民事信託となるのです。

さて、信託の仕組みは信託銀行を例に挙げるとわかりやすいので、上記では商事信託を例に挙げてご説明しました。ただ、「委託者」「受託者」「受益者」の3者が登場するなど、基本的な仕組みは民事信託ももちろん同様です。民事信託は信託の一つだからです。こうした民事信託の例を、以下で詳しく整理しておきます。

民事信託の例

民事信託の代表例としては、家族間で行われるケースを挙げることができます。例えば、親が委託者・受益者、子供が受託者という形で、子供が親のために財産を管理・運用するといったケースがあります。親が高齢者となり、財産の管理・運用が難しい場合などで、民事信託の形で子供に財産の管理・運用を任せるというわけです。

この場合、営利目的で信託を引き受けているわけではないので、民事信託に含まれます。このような家族間で行われる民事信託は、「家族信託」と呼ばれることもあります。

民事信託と事業承継

近年、「民事信託による事業承継」というスキームを見聞きする機会も増えています。これは、事業承継のスキームとして民事信託を使用するケースが増えているからです。

例えば、経営者が後継者に株式を贈与するため、経営者を委託者、後継者を受益者とし、自社株式に信託を設定するなどの方法があります。または、経営者が委託者・受益者となり、自社株式に信託を設定しつつ、「自分の死亡後には後継者が受益権を取得する」と定めておくなどの手法もあります。

いずれも、後継者が株主となって会社を経営できるようにする仕組みで、事業承継として活用することができるわけです。

民事信託の方法

ここまで、信託の意味や仕組み、民事信託の例についてご紹介しました。次に、民事信託の具体的な方法について整理しておきます。以下、信託全般に共通する方法も含みますが、ここでは民事信託の方法を中心として紹介します。

信託契約

信託契約というのは、委託者と受託者の間で締結する契約で、受託者が一定の目的のもとで財産の管理・運用や処分を行うこと、委託者が受託者に財産を譲渡することなど、信託の内容が定められます。大きなポイントは、信託契約は委託者と受託者の間で締結するということです。契約としては、受益者の関与がなくても成立します。

このような信託契約によって民事信託を行う場合、親が委託者、子供が受託者であれば、親と子供の間で信託契約を締結することになります。

遺言

遺言によって民事信託を行うケースもあります。こちらも信託契約と同様に、受託者が一定の目的のもとで財産の管理・運用や処分を行うこと、委託者が受託者に財産を譲渡することなど、信託の内容を遺言で定めるという形になります。この場合、遺言の効力が発生する時、つまり委託者が死亡した時に、信託の効力も発生します。

一方で、遺言代用信託という仕組みが活用される場合も多いです。遺言代用信託というのは、信託銀行などに財産を信託しておき、委託者が死亡した後は、その配偶者や子供に財産を引き継ぐという仕組みです。こちらは、信託銀行が登場するケースとなります。ただ、遺言代用信託ではなく、遺言によって民事信託を行うことももちろん可能です。

信託宣言

信託宣言というのは、委託者自身が受託者となる信託のことです。信託宣言は、委託者が一定の目的で自分の財産の管理・処分をする旨を宣言することで、信託を設定するという仕組みです。自分自身が受託者になるという意味で、「自己信託」とも呼ばれます。委託者が他人のために自分の財産を管理・処分すると考えると、イメージしやすいかと思います。

民事信託のメリット・デメリット

次に、民事信託のメリット・デメリットについてもまとめておきます。

民事信託のメリット

家族間で民事信託を行う場合で、親が委託者、子供が受託者となれば、親に代わって子供が財産の管理・運用を進めることができます。親が高齢になって財産の管理・運用が難しくなる場合に備え、あらかじめ信託を設定し、子供に管理を任せておくというメリットがあるわけです。

信託契約の場合を例に挙げると、契約の中に親(委託者)の希望や関係する権限などをきちんと定めておくので、後日親が病気などで判断能力が低下してしまっても、定められた条件のもとで子供(受託者)がしっかりと財産の管理・運用をできることになるのです。また、成年後見制度より比較的柔軟な財産の管理・運用も可能という特徴があります。

民事信託のデメリット

民事信託は成年後見制度などとしばしば比較されますが、民事信託はあくまで信託の一つです。例えば成年後見制度では、後見人は身上監護と財産管理を行うことができます。

一方で、民事信託には身上監護という仕組みはありません。親の高齢化といった家族の問題を、民事信託だけでカバーできるわけではないのです。それぞれの制度を比較し、何ができて何ができないのか、慎重に検討しなくてはなりません。

民事信託における税金の問題

民事信託における税金についても、代表的なポイントを整理しておきましょう。

原則として受益者に課税される

民事信託は、原則として受益者に課税されるという点が重要なポイントです。一定の場合は法人課税信託となり、その際には受託者が納税義務者となりますが、原則としては受益者に課税される仕組みになります。というのも、信託された財産から収益を得ているのは受益者だからです。収益を得ている以上、受益者に所得税が課税されるわけです。

確かに、信託を引き受けるのは受託者となり、財産の所有権も受託者が保有します。ただし、信託された財産から収益を得ているのは受託者ではなく受益者です。この場合、受託者に所有権が移転するという点と、受益者に課税されるという点は別問題ですので、注意しなくてはなりません。

具体的な税金の種類

上記で触れたように、受益者に課税されるのは所得税となります。これは、収益を得ている受益者を財産の所有者とみなすためです。そのため、受益者が所得税の納税義務者になるわけです。

一方で、贈与・相続によって受益権を得た場合、贈与税・相続税が課税されます。例えば受益者が変わると、別の受益者から権利を取得する形になるので、その際に贈与税や相続税が発生することになります。

民事信託の注意点

信託という仕組み上、民事信託は気軽に実行できる制度ではありません。そもそも委託者、受託者、受益者という仕組みが複雑であり、権利関係や手続きも複雑化するため、専門家にも相談しつつ全体像を把握する必要があります。

また、先ほどデメリットの部分でも少し触れましたが、成年後見制度などの仕組みと比較することも非常に重要です。それぞれの仕組みによって達成できることは異なるので、しっかりと比較検討しなくてはなりません。

一方で、それぞれの目的をはっきりさせ、専門家にも相談し、正しい理解のもとで民事信託を進めれば、様々なメリットを享受することもできます。親の病気などに備えて行うケース、さらには事業承継のスキームとして行うケースなど、目的を明確にしたうえで検討する必要があります。

電話で無料相談WEBから無料相談

まとめ

一般的に信託というと、信託銀行を思い浮かべる方も多いと思います。一方、信託銀行が営利目的で信託を引き受けるようなケースではなく、家族間で行う信託など、営利を目的とせずに信託を引き受ける場合もあります。これが民事信託です。特に家族間で行う場合、親の病気や高齢化などに備えて子供が財産の管理・運用を引き受けるなど、様々なメリットがあります。

一方で、民事信託は成年後見制度などとも比較し、具体的にどのような目的で行うのか、あらかじめ整理することも重要です。というのも、親の高齢化といった家族の問題に対し、民事信託だけで対処できるとは限らないからです。

信託は、あくまで財産の管理・運用を任せるという仕組みです。このことを踏まえ、委託者・受託者・受益者という3者で構成される仕組みを把握したうえで、民事信託の特徴をおさえ、適切な活用を検討することが大切です。

M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所

M&A・事業承継のご相談なら専門の会計士のいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。

M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴

  1. 業界最安値水準!完全成果報酬!
  2. M&Aに強い会計士がフルサポート
  3. 圧倒的なスピード対応
  4. 独自のAIシステムによる高いマッチング精度
>>M&A総合研究所の強みの詳細はこちら

M&A総合研究所は会計士が運営するM&A仲介会社です。
企業会計に強く、かつM&Aの実績も豊富です。全国にパートナーがいるので案件数も豊富。
また、業界最安値水準の完全成果報酬制のため、M&Aが成約するまで完全無料になります。
まずはお気軽に無料相談してください。

>>【※国内最安値水準】M&A仲介サービスはこちら

電話で無料相談WEBから無料相談
  • 02
  • 03
  • 04
  • 05
ご相談はこちら
(秘密厳守)