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2022年10月29日更新節税
個人事業主が死亡した場合の相続手続きはどうする?届出、相続税軽減、相続放棄の方法を解説
この記事では、個人事業主が亡くなった際に遺産をどのように相続すればよいか、相続人が個人事業主の事業を引き継ぎたい時に必要な届出は何かを解説します。近年、国が整備を進めている相続税の軽減制度や相続放棄のやり方なども解説します。
目次
個人事業主とは
個人事業主とは、税務署に開業届を提出して事業を営んでいる個人のことです。個人事業主は株式会社と違い、株式を発行して資本金を集められません。事業を開始するのに必要な資金は個人事業主が自分で用意し、この資金のことを「元入金」と呼びます。
個人事業主に似た言葉に「フリーランス」がありますが、フリーランスは会社に雇用されずに働く働き方を指す言葉で、法人としてフリーランスでも活動できる意味合いで個人事業主とは違います。個人事業主の業種は多くの職種にわたり、飲食・小売・医療・士業・技術職など、さまざまな業種を個人事業主として営むことが可能です。
個人事業主が死亡した場合の相続手続き
個人事業主が死亡して財産を相続する場合、さまざまな手続きを行う必要があります。まず実施しなければならないのは、死亡届の提出など、被相続人が死亡したことを届け出る手続きです。遺言の確認または法定相続人の確定といった相続に関する手続きも行わなければなりません。さらに、廃業届の提出や準確定申告といった、被相続人が営んでいた事業に関する手続きも行います。
中でも「相続人の確認」は普段それほど行う機会がないので、どのように手続きを進めていくかわからないことも多いです。個人事業主は債務を多く抱えていることもあるので、債務超過の事業をどのように相続すればよいかも問題となります。そこで、以下の節では、相続人数の確認方法と相続する負債が多い場合の対応方法を解説します。
相続人数の確認
個人事業主が死亡して相続手続きをする場合、まず相続人数の確認をしておく必要があります。遺言がある場合はそれに従い、ない場合は法定相続人が誰になるか確定させます。法定相続人を確定させるには、相続人と被相続人の戸籍謄本を揃えなければなりません。被相続人が頻繁に本籍地を変更していた場合は、各本籍地での戸籍謄本を入手します。
法定相続人には優先順位があり、1位が被相続人の子供、2位が親、3位が兄弟姉妹です。もちろん、被相続人の配偶者は、必ず相続人になります。
相続する債務が多い場合
亡くなった個人事業主が有している財産には、債務・負債が多く含まれることがあります。債務を相続することはもちろん可能ですが、額が大きい場合は相続放棄を選択します。相続放棄とは相続人が相続する権利を放棄することで、債務だけでなくプラスの資産も含めてすべての相続権を放棄することです。
一部の財産のみ相続したい場合は、限定承認と呼ばれる制度もあります。相続承認とは、相続した正の財産で相殺できる分だけ、負の財産を相続することです。限定承認の手続きは相続放棄より複雑ですが、負債の大きい事業を承継したい時には有効な手段となります。
個人事業主が死亡した際の届け出
個人事業主が死亡した場合、相続手続きを進めるためにさまざまな書類を届け出なければなりません。届出には期限があるものも多いので、どのような書類を届け出なければならないか把握しておくことが大切です。具体的な届出書類は事例によって変わることもありますが、主に以下の7つの書類は多くの場合に届出が必要です。この章では、この7つの書類を1つずつ詳しく解説します。
- 死亡届
- 廃業届
- 事業廃止届
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
- 所得税に関係した書類の提出
- 消費税に関係した書類の提出
- 準確定申告
死亡届
個人事業主が死亡した場合、死亡した旨を死亡届として役所に提出しなければなりません。提出先は亡くなった個人事業主の本籍地か死亡地または死亡届を出す届出人の住所地の市役所・区役所・町村役場です。
届出期限は届出人が個人事業主の死亡を知った日から7日以内となっているので、忘れずに提出しましょう。期限を過ぎると火葬の許可がもらえなかったり、場合によっては罰金が科せられたりすることもあります。
廃業届
個人事業主が死亡して後継者が相続する時は、死亡した個人事業主の廃業届を出し、その後で後継者が新たに開業届を提出します。廃業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」で、これは開業届の時と同じ書類です。「届出の区分」の欄に「開業」「廃業」のチェック欄があるので、廃業の場合は「廃業」の方にチェックを入れます。
提出期限は廃業日から1カ月以内となっていますが、死亡による相続の場合は死亡日から1カ月以内です。
事業廃止届
相続される個人事業主が課税事業者だった場合は、事業廃止届出書を提出します。課税事業者とは、消費税を納付する義務がある法人・個人事業主のことです。提出先は普段納税をしている管轄の税務署で、提出期限はありませんが、事由が生じたら速やかに提出すると定められています。
給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
相続される個人事業主が従業員を雇って給料を支払っていた場合は、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書」を提出する必要があります。この書類は「届出の内容及び理由」の欄に「開設」「移転」「廃止」のカテゴリーがあるので、死亡による廃業の場合は「廃止」カテゴリーの「廃業又は清算結了」にチェックします。
提出先は事業所の所在地の所轄税務署で、提出期限は廃止の事実があった日から1カ月以内です。個人事業主の死亡による相続の場合は、死亡日から1カ月以内となります。
所得税に関係した書類の提出
所得税に関する書類は、被相続人が青色申告をしていた場合であっても死亡による事業廃止の場合は「所得税の青色申告の取りやめ届出書」は提出する必要がありません。
ただし、相続人が新たに青色申告を申請する場合は、「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。提出期限は、相続人がもともと事業を営んでいたかによって変わります。相続人がもともと青色申告をしていた場合は、改めて提出する必要はありません。
消費税に関係した書類の提出
亡くなった被相続人が消費税を納める課税事業者だった場合は、「個人事業者の死亡届出書」を提出します。被相続人が死亡した後、速やかに納税地を所轄する税務署長へ提出します。
準確定申告
個人事業主が死亡した場合、その年の確定申告は相続人が行いますが、これを「準確定申告」と呼びます。
準確定申告では、1月1日から被相続人が死亡した日までの所得と税額を計算します。提出期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内」と定められており、普通の確定申告の提出期限とは違う点に注意が必要です。
前年の確定申告書を提出する前に死亡した場合は、前年と本年の分をまとめて相続の開始を知った日の翌日から4カ月以内に準確定申告を行わなければなりません。
準確定申告はすべての相続人で行わなければならず、各相続人が連署で提出するか各相続人が別々に作成して提出します。
個人事業主が死亡した場合の事業引き継ぎ
個人事業主が死亡した場合、死亡した個人事業主が営んでいた事業に関する届出に加えて、相続人がその事業を引き継ぐために必要な届出も行う必要があります。個人事業主の引き継ぎでは、死亡した個人事業主が使用していた屋号をどのように引き継ぐかも重要です。
この章では、個人事業主が死亡した場合の事業引き継ぎに必要な届出と、屋号を引き継ぐ方法を解説します。
決められた届け出の提出
個人事業主が死亡した場合の事業引き継ぎに必要な届出は、通常の開業に必要な届出と基本的には同じです。必要な書類は開業届に加え、従業員を雇う場合や青色申告を行う場合に別途届出が必要とされます。
個人事業主が死亡した場合の事業引き継ぎに必要な届出は、以下のとおりです。
- 個人事業の開業届出書
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
- 所得税の青色申告承認申請書
個人事業の開業届出書
個人事業主は株式会社のように株式譲渡で事業を承継できないので、死亡した個人事業主の事業を廃業したうえで、相続人が新たに開業届を提出して引き継ぎます。開業を届け出るために提出する書類は「個人事業の開業・廃業等届出書」で、通常の開業時と同じ書類を使用します。記載事項にも、特別な違いはありません。
提出期限は、個人事業主が死亡した日から1カ月以内です。ただし、相続人が以前から事業を営んでいる場合は提出不要です。
給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書は亡くなった個人事業主の廃止届出でも提出する書類ですが、相続人が事務所等を開設・移転した場合は、同様にその旨を届出書に記載して提出します。
届出書には「届出の内容及び理由」の欄に「開設」「移転」「廃止」のカテゴリーがあるので、「開設」または「移転」から該当する項目にチェックを入れます。提出期限は「開設、移転又は廃止の事実があった日から1か月以内」と定められているので、個人事業主の死亡による引継ぎの場合は死亡日から1カ月以内です。
所得税の青色申告承認申請書
死亡した個人事業主の事業を引き継いだ相続人が以前から個人事業主として事業を営んでいなかった場合は、「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。記載事項は通常の申請と同じですが、提出期限が違う点に注意しましょう。被相続人の個人事業主が死亡した日によって、提出期限が変わってきます。
死亡日 | 提出期限 |
1月1日から8月31日 | 死亡日から4カ月以内 |
9月1日から10月31日 | 12月31日 |
11月1日から12月31日 | 翌年の2月15日 |
屋号の引き継ぎ方法
個人事業主の事業承継では、屋号を引き継ぐかどうかが大きな問題といえます。引き継がずに新しい屋号を使用することも可能ですが、事業承継では屋号を引き継ぐケースの方が多いです。特に飲食やサービス業では屋号を変えてしまうと顧客に別な店になったと勘違いされる可能性があるので、死亡した個人事業主が使用していた屋号を引き継ぐことが大切です。
個人事業主は、屋号の引き継ぎのために何か特別な届出をする必要はありません。相続人が開業届を出す時に死亡した個人事業主が使用していた屋号を記入すれば、それだけで屋号を引き継げます。
個人事業主が死亡した場合の相続税軽減方法
近年は個人事業主の高齢化による事業承継問題が深刻化しており、政府も2018年度から事業承継支援の集中期間を設け、税制を改正して事業承継を行いやすいように支援しています。個人事業主の死亡による相続では相続税が大きなネックになるので、国が支援している相続税の軽減方法を知っておくことは重要です。
個人事業主の相続で特に注目したいのが、2018年に制定された個人版事業承継税制です。これは今まで法人にのみ適用されていた相続税の猶予制度を個人事業主に拡大するもので、事業用資産の贈与税・相続税を猶予し、最終的に贈与者・被相続者が死亡したら納税が免除となります。
個人事業主が死亡した場合の相続放棄の方法
個人事業主が死亡したが、その事業を継ぐ人がいない場合や、負債が大きく相続できない場合は、相続放棄を選択します。相続放棄の手順は、まず死亡した個人事業主の戸籍謄本や相続放棄申述書などの必要書類を揃え、家庭裁判所に提出します。
これにより、家庭裁判所から「照会書」と呼ばれる質問状が届くので、質問に回答して返送する流れです。その結果、問題なければ「相続放棄申述受理通知書」と呼ばれる書面が送付されて相続放棄が確定します。
相続放棄ができる期間は、被相続人の死亡を知った日から3か月以内です。ただし、遺産の調査に時間がかかって3か月を超えてしまった場合は、裁判所に申し出ることで期間を延長できます。
個人事業主の事業承継におすすめの相談先
個人事業主の事業承継は親族に適切な後継者がいれば問題ないものの、他の職業に就いていて事業を継げないケースも多くあります。そういった場合は廃業してしまうのではなく、M&Aで第三者へ事業承継する手段も有力です。
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個人事業主が死亡した場合の相続手続きまとめ
本記事では、個人事業主が死亡した場合の相続手続きを解説しました。個人事業主が死亡した時、突然のことに戸惑って相続手続きがうまくいかないこともあります。必要な届出書類や節税方法などをあらかじめ理解しておきましょう。
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