2024年2月27日更新会社・事業を売る

商法と会社法の違い、問題点と会社法改正をわかりやすく解説

商法・会社法とは、営利を目的とする個人・企業の活動や手続に関してルールを定めた法律です。商法・会社法はビジネスシーンでかかわる機会が多いので、事業活動を行う上で欠かすことができません。今回は、商法・会社法の違いや問題点について詳しく解説します。

目次
  1. 商法と会社法とは
  2. 商法と会社法の違い
  3. 会社法の問題点
  4. 会社改正法とは
  5. 会社法改正による会社法の変更点
  6. まとめ

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商法と会社法とは

商法・会社法とは、営利目的の個人・企業の活動や手続きに関するルールを定めた法律です。商法・会社法には明確な違いがありますが、どちらも商売をしやすくすることを目的として定められています。

商法・会社法のボリュームは非常に大きく、全てを把握することは難しいです。弁護士や司法書士などの専門家を除き、商法・会社法の詳細を知る必要はありませんが、M&Aや会社経営を行う際は基本的な内容が役立つ場面も多くなります。

本記事では、商法・会社法の違いや改正について取り上げていますが、この章ではまず、商法・会社法の定義や最低限押さえておきたい基本知識を確認していきます。

商法とは

商法とは、商人の商業行為などの商事に関する基本的な法律を定めたものです。ここでいう商人は「自己の名をもって商行為をすることを業とする者」とされており、個人・企業の両方に適用されることが記されています。

ただ、2006年の改正により商法・会社法に分けられたため、基本的に会社には会社法が適用されます。商法の対象は個人・企業の両方が対象となっていますが、実際には個人事業者が対象と考えるのが適切とされています。

商法の成立は明治の時代まで遡ります。現在の商法・会社法の形になるまでに、明治に旧商法が成立、平成17年に大幅改正という過程がありました。

明治の制定時においては商法は全5編で構成されていました。小切手法制定で4編が削除され、新会社法施行により商法・会社法に分割されたことで全3編(850条)になっています。

【商法】

  • 1編:総則(第1条~第500条)・・・通則や商人の定義等に関する規定
  • 2編:商行為(第501条~第683条)・・・売買や中立、問屋営業等に関する規定
  • 3編:海商(第684条~第850条)・・・船舶の所有や保険、救助等に関する規定

会社法とは

会社法とは、会社の設立・組織・管理について定めた法律です。従来の日本には存在しなかった概念ですが、平成17年の商法大改正により商法・会社法に分割されて新しく施行された法律です。

イメージとしては「同じものとして扱われていた商法・会社法から会社に関する法律が切り出されたもの」が分かりやすいです。商法・会社法が一緒ではわかりにくいため、また時代の変化に合わせた制度を設けるために現在の商法・会社法に分けられました。

会社法は全8編で構成されており、1,000条近くまであります。大ボリュームな構成となっていますが、商法・会社法に分割されたことで、改正前よりも内容が整理されていて知りたい条項についてチェックしやすくなっています。

【会社法】

  • 1編:総則(第1条~第24条)・・・会社法における用語定義など包括的な規定
  • 2編:株式会社(第25条~第574条)・・・株式会社設立の手順や株主総会の設置に関する規定
  • 3編:持分会社(第575条~第675条)・・・持分会社設立・管理に関する規定
  • 4編:社債(第676条~第742条)・・・募集社債に関する事項や社債譲渡に関する規定
  • 5編:組織変更(第743条~第816条)・・・合併や会社分割などの組織変更行為に関する規定
  • 6編:外国会社(第817条~第823条)・・・外国会社が日本で取引する場合に関する規定
  • 7編:雑則(第824条~第959条)・・・訴訟や登記、公告に関する規定
  • 8編:罰則(第960条~第979条)・・・取締役や代表社債者等の特別背任罪に関する規定

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商法と会社法の違い

会社法は、平成17年の改正により商法・会社法に分割されてわかりやすく整理されたものです。従来の商法に関しては廃止されるわけではなく、会社に関する法律が定められていた第2編を抜き出すことで商法・会社法に分けられる形となりました。

商法・会社法の違いは、対象者が会社に限定されるかどうかです。商法・会社法の目的自体は共通したものがありますが、商法は商人すべてを対象とする法律であり、会社法は会社のみを対象とする法律です。

このことから、会社は商法・会社法の両方の対象となっていることがわかります。そのため、商法・会社法の両方の規定も守らなくてはなりません。

商法・会社法は基本的には会社法に触れることの方が多いです。会社法は、株主総会や株式の扱いに関して重要な制度が変更されることも珍しくないので、従業員や株主にとっても影響力がとても大きいためです。

なお、商法・会社法は商売をやりやすくするという目的のため、目的や制度の内容自体は酷似している部分もあります。その際は、会社である場合は会社法、個人である場合は商法、というように商法・会社法を使い分ける方法が適切とされています。

【商法・会社法の違い】

  • 商法・会社法のうち会社法は会社のみ適用
  • 商法・会社法においては会社法を優先的に適用
  • 会社は商法・会社法の両方を守る必要がある

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会社法の問題点

商法・会社法に分割されて10年以上が経過していますが、商法・会社法に関しては現在に至るまで度々改正が行われています。会社法の改正内容としては、コーポレート・ガバナンス制度に関するものが多くなっています。

コーポレート・ガバナンスとは、経営を管理する仕組みのことです。不正防止や収益力向上による価値向上のために、社外取締役や監査役、委員会を設置してコーポレート・ガバナンスの強化が必要不可欠とされています。

不正防止や収益力向上の仕組みは商法・会社法で適切に管理するべきものですが、コーポレート・ガバナンスに求められるものは時代の流れと共に変化していきます。

近年は特に電子化の推進が激しく、経営に関する書類を書面から電子データに移行する傾向が強まっています。このような変化に対応するためには、商法・会社法を適宜改正していく必要があります。

M&Aのご相談はM&A総合研究所へ

商法・会社法は事業活動を行う上で把握しておく必要があるものです。特にM&Aでは法務が重要になるのですが、商法・会社法の定めは膨大な量になるため、全てを正しく理解するのは大変な労力がかかります。

M&Aで商法・会社法に関して不安な方は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所は、主に中堅・中小規模のM&A案件を取り扱っており、さまざまな業種で成約実績があります。

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会社改正法とは

2019年12月、国会で会社法改正案の一部修正がされて、改正会社法が公布されました。会社法改正により2006年に商法・会社法に分割されてスタートした新会社法は細かな改正を繰り返しており、大型改正は2014年に一度行っています。

今回の改正会社法の施行の発端は、2014年の大型改正によるものです。「大型改正から2年経過したころにコーポレート・ガバナンス制度のあり方を検討する」という附則が追加されており、その附則に基づいて2019年の改正会社法が実施されることとなりました。

施行タイミングは1年6ヵ月後となっており、2021年の6月頃から適用される見通しです。2020年度に開催される株主総会には直接的な影響はないものの、来年行われる改正を見据えた対応や検討が求められます。

なお、株主総会の開催に影響が大きいとされる「株主総会資料の電子提供制度」に関しては3年6か月以内の施行とされています。他の改正条項よりタイミングは後となりますが、実務への影響を考えると早期の準備が必要になるでしょう。

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会社法改正による会社法の変更点

2006年の新会社法施行で商法・会社法が明確に分割されてから、会社に関する法律は大きく変更されています。

以降は細かい改正を行いながら微調整が行われてきましたが、2019年に大幅な改正が行われました。この章では、2019年に成立した会社法改正の変更点や、新・旧会社法の比較検討を行います。

新会社法になり変更された点

2019年12月に公布された新たな会社法改正案は、旧来の会社法と比較すると多くの変更点がみられています。

特に株主総会や取締役会に関する見直しが大きく、早いものでは2021年の6月から適用されるため、早期に確認しておく必要があります。改正内容の全てを網羅することはできませんが、重要なポイントをおさえつつ取り上げていきます。

株主総会に関する見直し

株主総会は全ての株式会社に設置が義務付けられているため、無関係な会社はありません。今回見直しされたのは以下の2点です。

【株主総会に関する見直し】

  1. 株主総会資料の電子提供制度の導入
  2. 株主提案権の濫用的な行使の制限

1.株主総会資料の電子提供制度の導入

株式会社が株主総会を開催する際は、関連資料を全ての株主に周知する必要がありますが、関連資料の全てを書面で提出することが原則とされています。

参考資料や計算書類などの一部書面に関しては、事前に定款で定めることでウェブの開示が認められていますが、株主の関心が高い事項に関する資料に関しては必ず書面として提供しなければなりません。

印刷や発送コストなどの面から無駄が多いため、新たな会社法では会社のウェブサイト等に関連資料を掲載することで、株主から個別の許諾を得なくとも株主に対して株式総会の参考資料を提供したものとするように変更がされました。

電子提供制度の対象範囲については、「電子提供措置をとる旨を定款で定める」ことが条件となっています。ただし、上場会社に関しては本改正の施行日に当該定款変更の決議がされたものとされているため、特別な手続きは不要とされています。

上場会社以外に関しては、定款変更決議を行った上で電子提供措置の旨を定めることで本制度を利用することができるようになります。

2.株主提案権の濫用的な行使の制限

株主提案権とは、株主が一定の事項を株主総会の議題とすることを提案できる権利のことであり、以下の3つがあります。
 

  • 議題提案権(303条)
  • 議題提出権(304条)
  • 議案要領通知請求権(305条)

従来は、株主の権利を重視するために議案数や提案内容に関する制限はされていませんでした。しかし、特定の株主が大量の議案を提案するなど、株主総会の進行に支障が出るなどの弊害が度々問題視されていました。

この度の改正から、株主が提案できる議案数に関する制限が行われるようになりました。取締役会設置会社において、株主に要領通知請求できる議案数は原則10に制限されています。

また、議案内容や株主提案権行使の目的等の制限に関しては導入が見送られています。議案数の制限ができれば株主総会の進行が著しく妨げられることは防げるという判断とみられています。

取締役会に関する見直し

取締役等に関しては、取締役の報酬などについて大幅な見直しが行われています。今回見直しされたのは以下の3点です。

【取締役会に関する見直し】

  1. 取締役等の適切な報酬
  2. 社外取締役の活用等
  3. 社外取締役の設置義務

1.取締役等の適切な報酬

取締役等の報酬は、功績に対する見返りとしてインセンティブの付与をすることが一般的です。現行の制度は、取締役等の地位を悪用した不適切な報酬獲得に対する対策として施行されています。

しかし、株主総会の決議では取締役全員の報酬額の最大限度のみを定めて、その範囲内で代表取締役や上席役員が決定する実務慣行が定例化しており、見直しが急務とされていました。

この対策として、適切な報酬であることの説明範囲の拡大や新株予約権の付与に関する決議事項の見直しなどが盛り込まれています。

2.社外取締役の活用等

会社と取締役の利益が相反する取引を行う際、取締役が取引の進行を担当すると利益を損なうと判断された場合は、社外取締役に該当の取引の進行を委託できるという内容です。

該当する取引としては、親子会社間の取引やMBO(マネジメント・バイアウト)などがあります。状況次第では他方の利益が大きく損なわれることもあるため、社外性のある取締役に委託する方が適切という考えです。

しかし、社外から客観的な立場で意見する社外取締役が特定受託行為に直接かかわることは不適切ではないかという意見も上がっており、物議を醸しています。

3.社外取締役の設置義務

従来では、有価証券報告書を提出する義務を負う会社つまり上場会社は社外取締役の設置が義務づけられていましたが、監査役会設置会社の場合に関しては義務付けられていませんでした。

改正以降は、監査役会設置会社の場合も社外取締役の設置が必須に変更されます。とはいえ、ほとんどの上場会社が社外取締役を設置済みであり、実務への影響は軽微と予測されています。

その他の見直し

株主総会や取締役等以外にもいくつかの見直しが行われています。施行後の影響が大きいと予測される変更点は以下の2つです。

【その他の見直し】

  1. 社債の管理
  2. 株式交付制度の創設

1.社債の管理

従来は原則、社債管理者の設置が定められていますが、社債管理の責任が一人に集中してしまうため、社債管理者の確保が難しいことが問題視されていました。

事実、社内に社債管理者を置かずに、財務代理人だけを置く「FA債」などを導入する企業も増えており、全ての企業が社債管理者を設置しているわけではありません。

今回、新たに創設される制度は、社債管理者の責任や事務手続きの量を軽減することが可能とされています。なお、導入に関しては任意とされており普及するかは不明ですが、全体的に歓迎ムードが強い傾向にあります。

2.株式交付制度の創設

株式会社がM&A買収を行う際に、自社株を取得対価にできる制度です。従来では株式交換による完全子会社化や現物出資などに限定されていましたが、その制限が解除されて使い勝手が向上します。

本制度の目的は、株式を対価として親子会社関係を円滑に構築することにあります。そのため、他の会社を子会社とする際に限られており、既に子会社の株式を自社株を対価として追加取得することはできません。

株式交付の利用場面が広がるメリットは、買収側と売却側の双方にあります。買収側は資金調達の手間を省くことができ、売却側は買収側の株式を保有することで利益拡大のチャンスを得られます。

新・旧会社法の比較

ここまで2019年の会社法改正案に関してみてきましたが、会社法は2006年に商法・会社法に分かれたことで旧商法と大幅な変更が行われました。まずは商法・会社法に分かれた際の新旧比較表から確認していきます。

【商法・会社法の新旧比較】

  平成17年以前の商法 平成17年以降の会社法
資本金 株式会社1000万円以上
有限会社300万円以上
1円から
取締役会の設置 必須 株式譲渡制限会社は任意
取締役の人数 株式会社3名以上
有限会社1名以上
株式譲渡制限会社1名以上
その他は3名以上
取締役の任期 株式会社2年
有限会社は任期なし
原則2年
株式譲渡制限会社は10年まで延長可能
取締役の人数 株式会社1名以上
有限会社は任意
原則1名以上
株式譲渡制限会社は任意
株式総会の招集通知期限 開催日の2週間前 取締役会非設置会社は原則1週間前
定款で変更可能

続いて、2019年の会社法改正により変更された内容の振り返りです。一目で確認できるように一覧表としました。

【2019年の会社法改正の見直し】
  従来の会社法 見直しポイント
株主総会資料の提供手段 書面として提供 電子提供が可能
株主提案権の濫用的な行使の制限 制限無し 議案数10個に制限
取締役等の適切な報酬 不適切な報酬獲得防止 説明責任や決議事項の見直し
社外取締役の活用等 社外性を失う活用は不可 活用可能
社外取締役の設置義務 監査役会設置会社は設置義務がない 設置が必須
社債の管理 原則として社債管理者の設置 社債管理補助者制度の導入
株式交付制度の創設 利用場面が限定 利用場面が拡大

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まとめ

本記事では、商法・会社法についてみてきました。商法・会社法は適用の対象者という点で違いがありましたが、事業者が商売をやりやすくするための法律という共通点がありました。

2006年に商法・会社法に分かれてからは明確な区分がされるようになり、商法・会社法それぞれに改正が行われるようになりました。商法・会社法は事業者にとって大きな影響を与えるものなので、重要なポイントを押さえておくと事業活動がやりやすくなるでしょう。

【商法・会社法まとめ】

  • 商法・会社法は商売をやりやすくするための法律
  • 商法とは商人の商業行為などの商事に関する基本的な法律を定めたもの
  • 会社法とは会社の設立・組織・管理について定めたもの

【商法・会社法の違い】
  • 商法・会社法のうち会社法は会社のみ適用
  • 商法・会社法においては会社法を優先的に適用
  • 会社は商法・会社法の両方を守る必要がある

【株主総会に関する見直し】
  1. 株主総会資料の電子提供制度の導入
  2. 株主提案権の濫用的な行使の制限

【取締役会に関する見直し】
  1. 取締役等の適切な報酬
  2. 社外取締役の活用等
  3. 社外取締役の設置義務

【その他の見直し】
  1. 社債の管理
  2. 株式交付制度の創設

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