2022年10月30日更新節税

租税公課とは何?勘定科目や仕訳、消費税や計算方法、注意点を解説

租税公課とは、国に納める税金や各種団体に支払う公課の総称ですが、勘定科目や仕訳はどのようにすればよいのでしょうか。この記事では、租税公課に該当するものはどのようなものか、勘定科目や仕訳、消費税の計算方法などを解説します。

目次
  1. 租税公課とは?租税公課の意味
  2. 租税公課の対象例
  3. 租税公課であるが経費にできないもの
  4. 租税公課における消費税
  5. 個人事業主における必要経費である租税公課(個人事業税、固定資産税、印紙税)
  6. 租税公課の計算方法
  7. 租税公課の仕訳と勘定科目
  8. 未払い租税公課の処理方法
  9. 租税公課として損金算入できない所得税
  10. 租税公課のまとめ

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租税公課とは?租税公課の意味

はじめに、租税公課の意味を取り上げます。租税公課とは、国税や地方税として納める税金、および国や地方の公共団体・その他団体に対する交付金や賦課金などのことです。ここでいう賦課金とは、税金以外に企業や団体に対して割り当てられるお金をさします。

一般的には、税金を租税、国や地方の公共団体・その他団体に対する交付金や賦課金などを公課と呼び、法人の決算書・個人の確定申告書において「租税公課」の科目で処理します。

租税や公課でも経費として認められるものとそうでないものがある点に注意が必要です。個人事業主が経費として計上できる租税公課には以下があります。

  • 個人事業税
  • 自動車税
  • 不動産取得税
  • 固定資産税
  • 商工会議所の会費

上記の税金や会費は租税公課として経費計上できるため、納税額を減らす効果に期待できます。M&Aにおけるデューデリジェンスでは、「過去の損益実績」「現在の簿外負債の有無」などのほか、租税公課に関する過去の処理も調査されるのが一般的です。

租税公課の知るべき3つのポイント

租税公課を取り扱うに際しては、以下3つのポイントを理解しておきましょう。

  • 勘定項目のうち、租税とは国税や地方税などの税金であり、公課とは国や公共団体などに対する交付金や会費などの公的な課金を意味する
  • 事業に関連しない税金・公的負担金は経費計上できない
  • 租税の例は登録免許税・印紙税など、公課の例は印鑑証明書・住民票の発行手数料など

租税公課の対象例

租税の対象となるものは主に以下があります。いずれも経費として計上する機会が多いものなので、覚えておくとよいでしょう。

  • 登録免許税
  • 印紙税
  • 固定資産税
  • 不動産取得税
  • 自動車税(軽自動車税)
  • 消費税(税込方式)
  • 事業税・個人事業税
  • 事業所税
  • 都市計画税

公課の対象となるものは、例えば以下のようなものです。

  • 印鑑証明書や住民票などの発行手数料
  • 公共サービスに関する手数料
  • 地方公共団体や同業者組合などの会費・組合費・賦課金(例:商工会議所の会費)

事業年度に損金算入する租税公課

損金算入できる租税公課のなかには、事業年度内の処理が必要なものがあります。自ら税務申告をすることで納付額が決定し納付することを「申告納税方式」といい、主なものは以下のとおりです。

  • 事業税・個人事業税
  • 事業所税
  • 相続税
  • 印紙税
  • 酒税

賦課決定のあった事業年度に損金算入する租税公課

また、事業年度内に賦課決定があった租税公課を損金算入する場合があります。「賦課課税方式」と呼ばれ、国や地方自治体が納める税金を計算し、納税者に通知する方式のことです。賦課課税方式で損金算入できる租税公課には、たとえば以下があります。

  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 自動車税
  • 不動産取得税

特別徴収される租税公課

事業者を通して間接的に税金を徴収する方法を「特別徴収方式」といいます。国や地方自治体が直接税金を徴収するのではなく、事業者が納入申告書を提出する事業年度に必要経費として算入するやり方です。特別徴収される租税公課は、主に以下があります。

  • 入湯税
  • ゴルフ場利用税
  • 軽油引取税

租税公課であるが経費にできないもの

租税公課であっても経費として認められないものもあります。たとえば、以下は租税公課の対象外例となり、経費とは認められません。

  • 法人税・都道府県民税・市町村税
  • 各種加算税・加算金・延滞税・延滞金・過怠税
  • 罰金・科料
  • 法人税から控除する所得税・外国法人税

また、個人事業主の所得税・住民税なども事業主個人に課税が生じるため、租税公課には該当しない点を把握しておきましょう。

税引き前利益から支払われるもの

前述した法人税・都道府県民税・市町村税などは、税引き前利益に課税されます。そのため、租税公課ではあるものの必要経費として算入できません。

これは「利益処分説」という考え方によるものですが、これらを経費と認めると税引き前所得が減少してしまうため、減少した所得に対して税金を再計算が必要です。

もしこれを繰り返し行うと、税引き前所得は減少して税金は増え続けることになりますが、これは「所得波動説」という考え方で税務政策上、適切ではないとされています。

罰則に該当するもの

税金の納付を延滞した際に課される延滞税・延滞金・不納付加算税などは、租税公課ではあるものの、罰則に該当するため経費としては認められません。また、交通罰則金なども同様です。

法人税額から控除する所得税など

銀行預金などの利息や、株式の配当金などにかかる源泉所得税も租税公課に分類されます。先に納付した税金であるため、納付額から控除できます。しかし、経費としては認められません。

このように、租税公課であれば全て経費算入できるわけではないので、覚えておきましょう。

租税公課における消費税

会社経営や店舗を運営している場合、課税売上高が1,000万円を超えると消費税の納税義務が発生します。消費税を計上する方法には、税込経理・税抜経理の2種類があります。

採用する経理方式ごとに消費税を租税公課として扱うか否かが変動するため注意しましょう。ここからは、消費税の処理方法を解説します。

①税込経理

税込経理とは、売上や経費を計上する際に税込価格を用いる方法のことです。例えば、本体価格が1,000円・消費税率が10%の商品を仕入れた場合、仕入として1,100円を計上します。

税込経理では消費税を損益の一部として認識するため、このケースの100円は経費として認識される仕組みです。税込経理は日々の経理入力が簡単であるメリットがある一方で、売上が現実以上に大きくなるなど、本来の収益力を把握しづらい点がデメリットです。

日々の取引における消費税の取り扱いのほか、消費税を納税した際も租税公課として経費計上できます。

②税抜経理

税抜経理とは、売上や経費を計上する際に税抜価格を用いる方法のことです。上記で挙げた例の商品仕入れの際、実際に支払った金額は1,100円でも、税抜経理の仕入計上額は1,000円とします。

そして、消費税分の100円は「仮払消費税」という資産勘定に計上する仕組みです。この仮払消費税は、確定申告時に「仮受消費税」という負債勘定と相殺して、消費税の納税金額を算定し「未払消費税」を計上します。

このように、税抜経理は消費税を資産勘定・負債勘定として処理する(損益科目として認識させない)方法です。損益項目である売上や租税公課として計上しません。

つまり、税込経理では、納税した消費税は租税公課として経費計上できますが、税抜経理では経費計上できないのです。納税時は「未払消費税」という負債勘定を用いるため、租税公課として経費計上しないよう注意しましょう。

税抜経理は、日々の経理入力が比較的面倒である一方で、消費税の影響を除いた現実的な損益を一目で把握できる点がメリットです。以上のとおり、採用する経理方式によって消費税の扱い方が異なります。

消費税を租税公課として計上すべきかどうか迷ったら、まずは自社の経理方式を確認しましょう。

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個人事業主における必要経費である租税公課(個人事業税、固定資産税、印紙税)

本章では、個人事業主が必要経費に算入できる租税公課の中から、代表的な以下の3つを取り上げます。

  1. 個人事業税
  2. 固定資産税
  3. 印紙税

それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。

①個人事業税

個人事業税とは、ある特定の事業により得た利益に対して、事務所や事業所が所在する都道府県が課す税金をさします。利益に対して課される点では所得税と類似しています。所得税は国に納める国税である一方で、個人事業税は都道府県に納める地方税です。

所得額が290万円以下である場合は非課税となる点や、地方税法で定められた業種を営む場合にのみ事業税が課される点などが特徴的です。個人事業税の課税対象となる場合は、毎年3月15日までに事業所が所在する都道府県に申告書を提出する必要があります。

所得税の確定申告を税務署で済ませている場合は、個別に事業税の申告書を提出する必要はありません。8月と11月の2回に分けて、事業税を納税する流れです。

②固定資産税

固定資産税とは、固定資産を保有する人物が、その固定資産が所在する市町村に納める税金のことです。納税義務は、毎年1月1日時点で土地や家屋などの固定資産を保有している場合に発生します。

つまり、1月2日以降に購入した固定資産に関しては、来期以降に課税が発生する仕組みです。地価や建築物の種類などにより、固定資産税の価格は変動します。

固定資産税の納税方法は、「一括払い」もしくは「年4回払い」のいずれかを選択できます。資金繰りに応じて納税方法を検討しましょう。

③印紙税

印紙税とは、一定の取引で用いる文書に対して課税される税金のことです。一定金額以上の契約を締結する際には、印紙税を支払う必要があります。

印紙税は、現金で納税するわけではありません。収入印紙と呼ばれる所定の用紙を購入し、契約書に貼り付けて納税する仕組みです。

収入印紙を添付せずに契約を締結した場合、本来支払うべき印紙税額の3倍の金額を支払う必要が生じます。このペナルティは経費に計上できないため、忘れずに支払いましょう。

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租税公課の計算方法

代表的な租税公課の種類を把握したところで、本章では租税公課の計算方法を取り上げます。個人事業税・固定資産税・印紙税の3種類の租税公課について、具体的な計算方法をまとめました。

①個人事業税

個人事業税の計算方法は、以下のとおりです。

  • 個人事業税=(収入ー必要経費ー専従者給与等ー控除等)✕税率

考え方のベースは通常の利益計算と同様であり、収入から発生した経費を控除します。専従者給与とは従業員として働いている家族に対して支払う給与であり、一定金額を経費として控除可能です。

この専従者給与に加えて、各種地方税の法律において定められている控除も差し引けます。個人事業税の計算では、所得税でも検討される繰り越した損失を控除できるほか、事業主控除と呼ばれる制度も利用できるため、年間最大で290万円を控除できる点がポイントです。

上記の控除は、所得税などの申告期限までに申告を終えている場合にのみ適用されるため、申告期限を厳守しましょう。なお、税率は業種により異なるため、県税局などに問い合わせて具体的な税率を確認してください。

②固定資産税

租税公課において固定資産税を計算する際は、以下の計算式を用います。

  • 固定資産税=固定資産税評価額✕標準税率(1.4%)

固定資産評価額とは、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて、市町村長が決定した固定資産の価額のことです。この固定資産評価額に対して、原則1.4%の税金が課税されます。

市町村の財政状況次第では標準税率よりも高い税率が設定されている場合もあるため、事前に確認しましょう。なお、固定資産の種類によっては、宅地や住居用の建物に対して税金が減額される特例も存在します。

③印紙税

印紙税も租税公課の一つです。個人事業税や固定資産税とは異なり、収入印紙の金額がそのまま租税公課として扱われます。つまり、収入印紙の金額=租税公課となるため、計算は不要です。

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租税公課の仕訳と勘定科目

①租税公課の勘定科目

経費への算入の可否次第で、租税公課の勘定科目は異なります。経費に算入可能な租税公課は、勘定科目に租税公課をそのまま用いる一方で、経費として計上できない租税公課は勘定科目に事業主貸を用いる仕組みです。

もともと租税公課に計上できる固定資産税などの税金は、一部プライベート分として案分すべき場合などにおいても事業主貸の勘定で処理しましょう。

②租税公課の仕訳

租税公課の仕訳では、原則として借方に租税公課や事業主貸、貸方に現金や預金を計上します。ここからは、理解を深めるために、以下2つの例を用いて仕訳を確認しておきましょう。一つ目の例は、固定資産税30万円を現金で納付するケースです。

借方 貸方
租税公課 300,000 現金 300,000

続いて、自動車税20万円を預金から支払うケースです。 このケースにおける自動車は、7割仕事・3割をプライベートで使用していると想定します。

借方 貸方
租税公課 140,000 預金 200,000
事業主貸 60,000

上記の例のように、租税公課の仕訳を処理します。租税公課の仕訳を実施する際は、経費としての計上可否の判断に十分注意しましょう。

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未払い租税公課の処理方法

確定申告の際に、納期が翌年にまたがっている税金の処理方法に迷うこともあるでしょう。賦課課税方式の租税公課のうち、自動車税や固定資産税、不動産所得税などは、第1期~第4期など分割して納付が定められていることがあります。

このような場合、賦課決定された年にまとめて処理するか、または実際に納付した翌年に処理するか、どちらでもよいことになっています。賦課決定された年に必要経費とする場合は、借方に「租税公課」を計上し、同時に貸方として「未払い金」にも計上する処理方法です。

租税公課として損金算入できない所得税

最後に、租税公課として損金算入できない所得税を取り上げます。結論からいうと、稼いだ利益(=所得)に対して課税される所得税は、租税公課ではあるものの経費には算入できません。

累進課税の観点から、高所得の方は当然所得税が高額になります。この所得税を経費として認めてしまうと、税金とともに算入できる経費も増加してしまいます。

そのため、所得税は、課税方法の公平性から「所得税を払う前の利益をベースに税金を計算する」というイメージを持っておくとよいでしょう。

M&Aの実施に際しても、所得税をはじめとする税金の課税が発生します。M&Aに関する税務の手続きは複雑であるため、スムーズに手続きを済ませるには専門家のサポートを受けるとよいでしょう。

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租税公課のまとめ

本記事では、租税公課を解説しました。租税公課とは、国に納める税金や各種団体に支払う公課の総称です。租税公課の中でも、経費として計上可能であるものとそうでないものが存在します。

節税対策や租税公課の仕訳を考える際は、経費であるかどうかを十分に注意しましょう。租税公課は専門的に高度な分野であるため、税理士などの専門家からサポートを受けることをおすすめします。本記事の要点は、以下のとおりです。

・租税公課とは?
→国税や地方税として納める税金および国や地方の公共団体・その他団体に対する交付金や賦課金など

・租税公課における消費税
→税込経理では消費税として租税公課に含める、税抜経理では未払消費税として租税公課には計上しない

・必要経費である租税公課(事業税、固定資産税、印紙税)
→事業税(ある事業によって得た利益に対して、事務所や事業所が所在する都道府県が課す税金)、固定資産税(固定資産を保有する人物がその固定資産が所在する市町村に納める税金)、印紙税(一定の取引で用いる文書に対して課税される税金)

・租税公課の計算
→個人事業税=(収入ー必要経費ー専従者給与等ー控除等)✕税率、固定資産税=固定資産税評価額✕標準税率(1.4%)、印紙税=収入印紙の購入金額

・租税公課の勘定科目
→経費として計上できる項目は租税公課、経費として計上できない項目は事業主貸を用いる

・租税公課の仕訳
→借方に租税公課や事業主貸、貸方に現金や預金を計上する

・租税公課として損金算入できない個人税
→個人の所得に課される税金であるため租税公課として損金算入できない

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