2021年5月30日更新会社・事業を売る

事業譲渡・事業売却の費用や手数料、税金まとめ【仕訳/勘定科目】

事業譲渡・事業売却はM&A手法として広く利用されている手法の1つです。事業譲渡・事業売却の際は費用や手数料、税金が発生するので、正しく把握することが大切です。計画的にM&Aするためにも、費用や手数料、税金について詳しくみていきましょう。

目次
  1. 事業譲渡・事業売却の費用や手数料とは
  2. 具体的な事業譲渡・事業売却の費用や手数料の内訳
  3. 事業譲渡・事業売却の際に発生する税金
  4. 事業譲渡・事業売却の仕訳/勘定科目
  5. 事業譲渡・事業売却の際の価格の決まり方
  6. 事業譲渡・事業売却の際の注意点
  7. 事業譲渡・事業売却の際におすすめの相談先
  8. まとめ
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事業譲渡・事業売却の費用や手数料とは

事業譲渡・事業売却の費用や手数料とは

事業譲渡・事業売却を行う上で重要なポイントは、費用や手数料、税金などの存在です。

最終的にかかる費用や手数料を正しく把握しておくことで、具体的な事業計画を初期段階から立てられるようになります。

一方で、費用や手数料を軽視したまま、事業譲渡・事業売却を行った場合、想定外の出費によって事業資金が足りなくなってしまう恐れもあります。

事業譲渡・事業売却を計画的に実施するためにも、費用や手数料、税金に関する知識を身につけておきましょう。

事業譲渡・事業売却とは

事業譲渡・事業売却とは、事業あるいは事業の一部を譲渡・売却するM&A手法の1つです。譲渡対象は事業なので、会社の経営権は維持したままという特徴があります。

譲渡対象を自由に選択できる事から、会社の事業再生の手段として広く利用されています。例えば、事業の多角化を図ったものの、特定事業が不採算に陥り、会社の業績が著しく低下した場合に、会社全体の負担の軽減目的で事業譲渡・事業売却を行うケースです。

ケースによっては高額な売却益を獲得することもあるので、不採算事業の切り離しと事業資金の獲得を両立させることも可能です。

【関連】事業譲渡とは?意味や方法、M&Aにおける活用​を解説

事業譲渡・事業売却の費用や手数料とは

事業譲渡・事業売却は大きなメリットをもたらしてくれますが、全ての手続きを完了するまでには、様々な費用や手数料が発生します。

その中でも大きな割合を占めるのは、M&A・事業譲渡・事業売却の専門家に支払う仲介手数料です。事業譲渡・事業売却を完了させるまでに要する手続きは多岐に渡るので、トラブルを起こすことなく進めるために、専門家のサポートを得るのがベストです。

具体的な事業譲渡・事業売却の費用や手数料の内訳

具体的な事業譲渡・事業売却の費用や手数料の内訳

事業譲渡・事業売却の費用や手数料は主に専門家に支払う手数料です。専門家の中には複雑な料金体系を採用しているところもありますので、それぞれの費用・手数料について見ていきましょう。

【具体的な事業譲渡・事業売却の費用や手数料の内訳】

  1. 着手金
  2. 仲介手数料
  3. 企業価値評価費用
  4. 月額報酬
  5. 中間報酬
  6. 成功報酬

1.着手金

専門家に事業譲渡・事業売却の仲介サポートを正式に依頼する段階で発生する手数料です。主に企業概要書の作成や取引先の選定など、事業譲渡・事業売却の初期段階で必要になる資金にあてられます。

相場は50~200万円前後となっており、高い手数料を先払いすることになりますが、事業譲渡・事業売却が成約しなかった場合においても、返却されることはありません。

なお、従来は着手金制度が一般的でしたが、近年は着手金を無料とする専門家も多く見受けられるようになりました。初期資金に不安がある場合は着手金をとっていない専門家に相談するのもおすすめです。

2.仲介手数料

事業譲渡・事業売却の費用や手数料について調べていると「仲介手数料」という言葉を目にしますが、これは専門家に支払う手数料の総称です。

本章で紹介している費用や手数料を全て含めたものを仲介手数料、と考えていただけると分かりやすいです。

3.企業価値評価費用

譲渡対象の事業価値を算出するために要する費用です。

事業譲渡・事業売却の取引価格は売り手と買い手の交渉で決定するものですが、交渉の土台となる事業価値が存在していなければ、まともに進行することができません。

そこで役立つのが企業価値評価で算出された事業価値です。専門家によって算出された信頼性・客観性に優れた価値であれば、売り手と買い手の双方が納得感を持って交渉を進めることができます。

譲渡対象の事業規模によって左右されますが、相場は50万円前後です。また、事業譲渡・事業売却の初期段階で必要となる費用なので、着手金に含まれているケースも珍しくありません。

4.月額報酬

事業譲渡・事業売却が成約するまで毎月発生する手数料です。事業譲渡・事業売却の進行に携わるコンサルタントの活動費・人件費にあてられます。

専門家の活動資金を安定して供給することができますので、事業譲渡・事業売却の進行も安定するメリットがあります。ただし、交渉が長引くほど依頼者の金銭的負担が増していくデメリットが存在する点に注意が必要です。

早期決着が望めない場合は、負担する費用も覚悟しなければなりません。また、月額報酬の獲得を目当てに成約の望みが薄い案件を請け負うところも存在しているので、月額報酬を採用する専門家への相談は慎重に検討を重ねたほうが良いでしょう。

5.中間報酬

基本合意書の締結段階で発生する手数料です。基本合意書は、売り手と買い手の双方が事業譲渡・事業売却に対して前向きであるという意思表明を行うために取り交わします。

こちらの手数料は何かの費用のために支払うというよりは、基本合意まで交渉を進めたことに対するインセンティブというイメージが適切です。

売り手と買い手の意思表明がされたとは言え、成約が保証されているものではありませんので、専門家の一定の利益を獲得するために設けられています。

相場は成功報酬の10~30%です。高い手数料を支払いますが、前述した通り成約を保証するものではありません。今後のデューデリジェンスや交渉によって事業譲渡・事業売却が破談した場合も返却されない点に注意が必要です。

6.成功報酬

最終契約書の締結を経て成約(クロージング)した段階で発生する手数料です。成約という確かな成果が得られるものですので、専門家に支払う仲介手数料の中でも最も大きな割合を占めます。

成功報酬は取引価格にレーマン方式の料率を乗じたものが一般的です。

【一般的なレーマン方式の料率】

  • 5億円まで・・・5%
  • 5億円超~10億円まで・・・4%
  • 10億円超~50億円まで・・・3%
  • 50億円超~100億円まで・・・2%
  • 100億円超・・・1%

仮に取引価格を25億円とすると、以下のようになります。
 
取引価格 料率 成功報酬
5億円まで 5億円×5% 2500万円
5億円超~10億円まで 5億円×4% 2000万円
10億円超~50億円まで 15億円×3% 4500万円
合計 合計 9000万円

【関連】M&Aの費用

事業譲渡・事業売却の際に発生する税金

事業譲渡・事業売却の際に発生する税金

事業譲渡・事業売却の際は様々な税金が発生します。即座に発生する仲介手数料と異なり、税金は翌年以降に納税することになりますので、事前に把握しておくことが大切です。

【事業譲渡・事業売却の際に発生する税金】

  1. 消費税
  2. 法人税
  3. 不動産取得税
  4. 登録免許税

1.消費税

課税資産に対して課せられる税金です。2020年現在の消費税率は10%なので、課税資産の総額に対して10%を乗じた金額が消費税となります。

課税資産に対して課せられるので、売却益に関係なく納税義務が発生します。

なお、納付者は売り手側ですが、実際に負担するのは買い手側です。買い手側は課税資産に準ずる消費税を加えた金額を売り手に引き渡し、後日、売り手側が税務署に納税する流れとなります。

課税資産とは

事業譲渡・事業売却は全ての譲渡対象に対して消費税が課せられるものではありません。課税資産と非課税資産に分類されて消費税が算出されます。

【課税資産】

  • 有形固定資産(土地を除く)
  • 無形固定資産(特許権・商標権等)
  • 棚卸資産(製品・原材料・仕掛品等)
  • 営業権(のれん代)

【非課税資産】
  • 土地
  • 有価証券(株式・債券・手形等)
  • 債権(売掛金等)

事業の性質によって課税資産と非課税資産の割合が大きく異なりますので、買い手側は譲受する資産について検討しておく必要があるでしょう。

2.法人税

事業譲渡・事業売却の売却益に対して課せられる税金です。法人税・地方法人税・法人住民税・事業税等があり、総合すると約30%前後となります。

近年は法人税率を引き下げる動きが見られますので、今後の動向次第では法人税率が大きく変動する可能性もあります。

また、課税資産に対して課せられる消費税とは異なり、売却益が赤字だった場合は課せられません。

3.不動産取得税

不動産を取得した際に課せられる税金です。事業譲渡・事業売却で不動産を取得した場合も例外なく課せられることになります。

税率は原則4%ですが、特例として土地及び住宅(2021年3月31日まで)の取得に関しては3%とされています。

取得する事業内容に土地や建物が多く含まれる場合は、不動産取得税も高くなりますので注意が必要です。

4.登録免許税

不動産の所有権移転登記の際に課せられる税金です。事業譲渡・事業売却における売買においても、土地や建物の所有者が変わったことを公示するために、法務局に申請・納税しなければなりません。

税率は相続・売買・贈与等のケースによって変わりますが、事業譲渡・事業売却の場合は売買に該当します。

【登録免許税の税率(売買)】

建物 2%
土地 2%
1.5%(2021年3月31日まで)

【関連】事業譲渡で発生する税金は?税務について徹底解説!

事業譲渡・事業売却の仕訳/勘定科目

事業譲渡・事業売却の仕訳/勘定科目

事業譲渡・事業売却の際は正しく会計処理を行う必要があります。下記の設例を基に、売り手と買い手のそれぞれの会計処理を見ていきましょう。
 

  • 譲渡資産・・・200万円(時価250万円)
  • 譲渡負債・・・30万円(時価40万円)
  • 取引価格・・・220万円

売り手の会計処理

売り手側は譲渡資産・負債を簿価で計上して、取引価格は時価で受け取ります。
 

借方 貸方
譲渡負債 30万円 譲渡資産 200万円
現金預金 220万円 譲渡益 170万円

買い手の会計処理

買い手側は譲受した資産・負債を時価評価します。今回の設例ですと、純資産(資産250万円-負債40万円)よりも高い取引価格になっていますので、差額の10万円をのれんとして計上します。
 

借方 貸方
譲受資産 250万円 譲受負債 40万円
のれん 10万円 現金預金 220万円

【関連】M&Aにおける会計処理(仕訳)とは?会計に強いM&A仲介会社やM&A会計に関するおすすめの本をご紹介

事業譲渡・事業売却の際の価格の決まり方

事業譲渡・事業売却の際の価格の決まり方

事業譲渡・事業売却の取引価格は、譲渡対象事業の純資産価値に営業権(のれん代)を加えることで算出されます。営業権は将来的に期待される収益価値を数値化させたもので、将来のキャッシュフローというイメージが分かりやすいです。

営業権は技術・ノウハウや顧客・取引先等があります。3~5年の期間で計算されることが多く、事業譲渡・事業売却の取引価格に大きく影響する要素です。

事業譲渡・事業売却の際の注意点

事業譲渡・事業売却の際の注意点

事業譲渡・事業売却を成功させるためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。この章では、費用や手数料に関わる注意点を確認しておきましょう。

【事業譲渡・事業売却の際の注意点】

  1. 営業権(のれん代)
  2. 棚卸資産の変動
  3. 専門家の料金体系

1.営業権(のれん代)

事業譲渡・事業売却の取引価格は営業権(のれん代)が大きく影響します。譲渡対象の技術・ノウハウが高く評価されると取引価格も高くなるケースです。

これ自体は適正な評価によるものなので問題はないのですが、営業権は課税資産に含まれていますので、課せられる消費税が高くなることについて注意しておかなければなりません。

【関連】事業譲渡で発生するのれん

2.棚卸資産の変動

棚卸資産も課税対象に含まれますので、事業譲渡・事業売却の実行日までに棚卸資産が変動することで、課せられる消費税が増減します。

製品・原材料等の在庫を多く抱える事業の場合、変動も大きくなることが想定されるため、棚卸資産の変動を考慮した上で消費税を試算しておかなければなりません。

3.専門家の料金体系

事業譲渡・事業売却の費用や手数料は専門家に支払う仲介手数料が大きな割合を占めます。ただ、専門家によって採用している料金体系が異なりますので、事前に確認しておく必要があるでしょう。

その際は料金体系を明記している専門家をおすすめします。初期段階から費用や手数料を試算することができますので、計画的に事業譲渡・事業売却を実施することができます。

事業譲渡・事業売却の際におすすめの相談先

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事業譲渡・事業売却の際は、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所は、中堅・中小規模のM&Aを中心に請け負っているM&A仲介会社です。

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まとめ

まとめ

事業譲渡・事業売却の費用や手数料について見てきました。専門家に支払う仲介手数料や国に納める税金等、様々な費用が発生するので、自力の計算が困難になることも珍しくありません。

信頼できる専門家を見つけてサポートを依頼すると、事業譲渡・事業売却を円滑に進めることができるでしょう。

【具体的な事業譲渡・事業売却の費用や手数料の内訳】

  1. 着手金
  2. 仲介手数料
  3. 企業価値評価費用
  4. 月額報酬
  5. 中間報酬
  6. 成功報酬
【事業譲渡・事業売却の際に発生する税金】
  1. 消費税
  2. 法人税
  3. 不動産取得税
  4. 登録免許税
【事業譲渡・事業売却の際の注意点】
  1. 営業権(のれん代)
  2. 棚卸資産の変動
  3. 専門家の料金体系

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