M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年1月19日公開事業承継
有限会社のM&Aを徹底解説!株式会社との違いや手法・注意点は?
有限会社も株式会社と同様にM&Aで売買することができるため、有限会社を保有している方は参考にしてみてください。
有限会社のM&Aについてあまり詳しくない方は多くいるため、今回は有限会社のM&Aや手法、注意点を徹底解説します。
目次
有限会社とは
株式会社について詳しい方は多くいると思いますが、有限会社について理解している方があまり多くないと思います。
また、株式会社とどのような違いがあるのかについても気になります。
ここでは最初に、有限会社について詳しく解説します。
有限会社と株式会社との違い
有限会社は、株式会社よりも資本金などの条件が低いことから家族経営や小規模事業者の法人化に効果的な手段でした。
2006年までは会社法で株式会社の設立に資本金1,000万円以上が必要でしたが、有限会社はその半分以下の300万円以上で設立できました。
ただ、現在は会社法の改定により株式会社の資本金が1円へ変更されたことや合同会社の誕生により有限会社の存在意義がなくなり廃止されました。
特例有限会社とは
特別有限会社とは、会社法が改定された2006年以前に設立された有限会社のことです。
現在、有限会社は設立することができませんが、すでに設立された有限会社は名前を変更する必要ない代わりに法律上は株式会社になっています。
また、一定の手続きを行うことで正式に株式会社へと変更することが可能です。
有限会社のM&Aは可能?
有限会社特徴や株式会社との違いについては分かりましたが、実際にM&Aは可能なのかどうか気になります。
有限会社は株式会社のようにM&Aが可能ですが、M&Aが難しい場合や準備に必要なことがいくつかあります。
ここでは、有限会社のM&Aについて解説します。
有限会社のM&Aが難しい理由
有限会社のM&Aはできますが、譲渡制限によってM&Aが難しくなります。
有限会社は、会社の承認がない状態での株式譲渡を制限する譲渡制限があるため、有限会社がM&Aを行う場合は会社の承認が必要です。
さらに、有限会社はすべての株式が譲渡制限にあたるため、有限会社のM&Aを検討している方は以上のことを理解しておきましょう。
有限会社の売却時に準備すること
有限会社は、株主総会によって会社の承認を得る必要があります。
会社の承認を得ることができなければ有限会社の売却は行えないため、売却を検討している場合は事前に準備しておくことが大切です。
また、会社の承認方法を定款に定めておくことで、株主総会以外への変更ができます。
定款変更に関する注意点
有限会社の定款変更には、いくつかの注意点があります。
会社の承認方法を「代表取締役が承認する」と定めることで株主総会を行う手間を省いて売却できますが、定款変更には主に以下の条件が必要です。
- 株主総会で特別議会を開催する
- 過半数以上の株主の出席を得る
- 議決権3/4以上の賛成を得る
そのため、M&Aのために定款変更を行う場合は、売却する前までに行うようにしましょう。
有限会社をM&Aする理由
有限会社がM&Aをする理由は、株式会社や小規模事業者がM&Aをする場合の理由とほとんど変わりません。
ここでは、有限会社がM&Aする理由について解説します。
後継者問題
有限会社がM&Aをする理由の1つは、後継者問題です。
有限会社は、小規模事業者や中小企業などが法人化させたケースがほとんどなため、後継者候補や後継者育成などを行える環境がない場合があります。
しかし、後継者がいなければ廃業によりそこで雇用されている従業員が失業してしまいます。
そのため、従業員の雇用や自社の存続を理由にM&Aを行います。
人材不足
人材不足を解消するためにM&Aを検討するケースも多くあります。
人材不足に悩まされている有限会社は多く、特に専門的な技術や知識が求められる業種では簡単に人材を補充することが難しい状態です。
そのため、大手企業や同業種の企業に売却することで、自社の人材不足解消を目指します。
また、買い手側も優れた人材を確保することができるため、お互いに大きなメリットになります。
休業している
廃業手続きを行わずに休業している有限会社は、自社を手放すためにM&Aを検討する場合があります。
有限会社の中には、休業している会社も多く存在しており、その多くが「廃業手続きが面倒だからしていない」というケースです。
また、廃業よりもM&Aによる売却の方がコストが低いというメリットもあるため、休業している有限会社がM&Aを行います。
有限会社のM&Aスキーム(手法)
M&Aを行う場合、自社の目的や状態に応じて適したスキーム(手法)で行われます。
有限会社がM&Aを行う場合も株式会社と同様にいくつかのスキームがあり、その有限会社に適しているスキームでM&Aを行うことが基本です。
ここでは、有限会社のM&Aスキーム(手法)について解説します。
株式譲渡
株式譲渡とは、買い手側が売り手側の株式を譲受するM&Aの方法のことです。
有限会社でも株式譲渡によるM&Aは行えますが、買い手側として株式譲渡を行うことができません。
そのため、自社を売却する場合に用いる方法の1つです。
事業譲渡
事業譲渡とは、自社の事業を売却するM&Aの方法のことです。
事業譲渡では、一部の事業を売却する「一部売却」と、すべての事業を売却する「全部譲渡」の2種類があります。
有限会社の事業譲渡では、全部譲渡が行われることがほとんどです。
会社分割
会社分割とは、会社の一部もしくは全てを買い手側に譲受するM&Aの方法のことです。
会社分割は、既存の会社に自社を引き継ぐ「吸収分割」と、新しく新設した会社に引き継ぐ「新設分割」の2種類があります。
新設分割をする場合、有限会社を新たに新設することはできないため、株式会社として新設します。
合併
合併とは、2つ以上の会社を1つの会社に全てまとめるM&Aの方法のことです。
合併にも、既存の会社に会社をまとめる「吸収合併」と、新しく設立した会社にまとめる「新設合併」2種類があります。
有限会社の場合、合併によって存続することはできませんが、M&Aの方法として用いることは可能です。
有限会社のM&Aに必要な手続き
これから有限会社のM&Aを検討している方は、有限会社のM&Aに必要な手続きについて理解しておくことが大切です。
有限会社のM&Aでは、株式会社のM&Aとは少し異なる準備が必要なため、しっかりと理解しておきましょう。
ここでは、有限会社のM&Aに必要な手続きについて解説します。
株主総会においての決議が必要
有限会社のM&Aでは、行うために株主総会の決議が必要となります。
株主総会の決議で過半数の株主から賛成を得られなければ有限会社をM&Aすることができないため、M&Aを検討している場合は事前に株主総会の決議を行いましょう。
定款を変更すれば承認機関の変更も可能
株主総会の決議が必要な有限会社のM&Aですが、定款を変更すれば、承認機関の変更も可能です。
定款を変更する際には、株主総会の決議が必要になりますが、上記でも解説した通り定款の変更には厳しい条件があります。
定款を変更するための条件
- 株主総会で特別議会を開催する
- 過半数以上の株主の出席を得る
- 議決権3/4以上の賛成を得る
そのため、定款を変更したい場合は、M&Aを行う前までに変更しておくことをおすすめします。
有限会社をM&Aするメリット
M&Aをすることによって、さまざまなメリットが売り手側と買い手側のどちらにもあります。
自社のM&Aを検討している場合は、しっかりとM&Aによって期待できるメリットを理解した上で実施することが大切です。
ここでは、有限会社をM&Aするメリットについて解説します。
売り手側
売り手側には、主に以下のようなメリットがあります。
- 売却益を獲得できる
- 従業員の雇用を確保できる
- 会社を存続させられる
- 廃業よりもコストが低い
- 取引先との関係を維持できる
休業しておらず企業価値がある有限会社であれば十分に売却益を獲得でき、従業員の雇用も確保できます。
実際に、休業届を税務署に提出している有限会社の中には、廃業手続きを行うのではなくM&Aによって自社を処分しようと考えている方も少なくありません。
ただ、その場合は十分に企業価値がある状態でなければ、簡単に売却することができないことを理解しておくことが大切です。
有限会社の売却を検討している方は参考にしてみてください。
買い手側
買い手側には、主に以下のようなメリットがあります。
- 会社の会計書類を公開しなくてもいい
- 新規事業を獲得できる
- 社歴の長い会社の譲受で社会的信用の獲得ができる
さらに、有限会社は2006年までに設立された法人なため、社歴の長さをアピールできることもメリットの1つです。
社歴の長い会社を譲受することができれば、その分社会的信用も獲得できるため、自社の将来性や売上などにも大きく貢献します。
そのため、M&Aを検討している企業は、有限会社とのM&Aも視野に入れておくこともいいでしょう。
有限会社のM&A実施の際の注意点
これから有限会社のM&Aを検討している場合は、メリットだけでなくしっかりと注意点についても理解しておくことが大切です。
しっかりとM&Aの注意点を理解しておくことで多くのメリットを得ることができます。
ここでは、有限会社のM&A実施の際の注意点について解説します。
有限会社は上場できない
1つ目の注意点は、有限会社は上場できないことです。
有限会社は譲渡制限があるため、株式を自由に売買することができず上場するための手続きも行えません。
M&Aによって上場を検討している方は、定款を変更したうえで、株式会社に変更しましょう。
株主資格を限定している有限会社もある
株主資格を限定している有限会社も少なくありません。
そのため、有限会社のM&Aを検討している場合は、定款を変更して株主資格の限定を解消したり誰が株主資格を保有しているのか確認するなどしましょう。
また、有限会社のM&Aを検討している方で行き詰まっている状態であれば、行政書士やM&A専門家に相談してサポートしてもらうことをおすすめします。
バリュエーションの方法を知る
有限会社のバリュエーションの方法は、基本的に株式会社と同様の方法です。
具体的なバリュエーションの方法は、主に以下のものがあります。
DCF法:企業価値を会社や事業の将来的な価値から換算して算出する手法です。
そのため、その会社の事業計画などを調査して中長期的な計画から将来性を予測する必要があるため、将来性のある事業を行う企業が対象になることがほとんどです。
マルチプル法:非上場企業の価値評価で用いられることが多い手法の1つです。
評価対象の企業と業種や規模などが類似している上場企業を探して、その上場企業の評価を元に価値を算出します。
そのため、類似した上場企業がない場合などは用いることができない手法でもあります。
修正純資産法:評価対象企業の帳簿に記載された資産を評価して時価に直すことで、1株あたりの時価純資産額を求めるという方法です。
有限会社のM&Aでは、この修正純資産法が用いられることがほとんどで、有限会社の価値を評価するために最も優れている手法でもあります。
そのため、有限会社のM&Aを検討している方は、さまざまなバリュエーションの方法の中でも、この修正純資産法について理解しておくことをおすすめします。
ただ、有限会社のM&Aはその特徴から、株式会社のM&Aよりも安く評価されるケースがあるため、その点は注意してM&Aを行いましょう。
売却案件が限られる
有限会社は、会社法の改定により2006年から新たに新設されていないため、有限会社の売却案件は限られています。
さらに、有限会社のM&A案件を積極的に探している会社もほとんどいないため、有限会社の売却を検討している場合はマッチングがなかなかしない可能性があります。
ただ、有限会社が後継者不在や人材不足などが原因で廃業してしまうのは非常にもったいないことでもあるため、有限会社の経営者はM&Aに向けた取り組みを積極的に行うことをおすすめします。
今後も、有限会社の売却案件は減少し続けていき、さらに限られてくることが予想されています。
そのため、これから有限会社のM&Aを検討している場合は、以上の点を十分に理解した上で行いましょう。
有限会社のM&Aは専門家にサポートを依頼しよう
有限会社は、株式会社と同様にM&Aによって売却することが可能ですが、さまざまな手続きや注意点があります。
そのため、有限会社の売却を検討している経営者は、有限会社のM&Aに必要な手続きやコストなどを理解してしっかりと準備した上で実施するようにしましょう。
また、有限会社のM&Aをスムーズに進めていくことが難しいと感じている場合は、自社のみで行わずに行政書士やM&Aの専門家などに依頼してサポートしてもらうことをおすすめします。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。