2024年5月28日更新会社・事業を売る

株式交換が株価にもたらす影響とは?株価の変動・株式交換比率についても解説

株式交換と株価は、密接に関係しています。特に株式交換比率を決定する際は、株価算定が重要なポイントです。ここでは、株式交換によって株価がどう変動していくのか、M&A事業承継にも言及しながら、株式交換と株価の関係を詳しく解説します。

目次
  1. 株式交換とは
  2. 株式交換における株価の上昇と下落
  3. 株式交換が株価に影響をもたらす要因
  4. 株式交換を用いた株価引き下げによる事業承継対策
  5. 株式交換比率と株価
  6. 株式交換が株価に影響をもたらした事例
  7. 株式交換に反対して株価を守る方法
  8. 株式交換発表後における個人株主の注意点
  9. 株式交換が株価にもたらす影響まとめ
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株式交換とは

株式交換とは、すべての発行済株式を既存他社に移転するM&A手法です。株式交換では、対価として相手企業の株式を受け取ります。株式交換の主な目的は、片方の企業が他方企業の全株式を保有し、完全親子会社関係を構築することです。

自社株式と子会社側株主の保有株式を交換することで、親会社側は子会社の全株式を保有し、子会社側の株主は親会社の株式を保有します。株式交換は組織再編を目的に使用されるケースが多いですが、他社とのM&Aのために用いられるケースもあります。

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株式交換における株価の上昇と下落

株式交換が行われた場合、当事会社の株価はどのように変動するのでしょうか。以下では、株価が上がる場合と下がる場合に分けて解説します。

株価が上がる場合

株式市場では、基本的に各投資家の期待値によって株価が決定します。投資家が「今後業績が上がる」と判断すれば株価は上がり、「業績が下がる」と判断されれば株価は下がります。つまり、株価は、投資家の予想次第で変動する仕組みです。

この株価の仕組みは、当然M&A取引にも当てはまります。株式交換によって業績が今後上がると予想されれば株価は上昇し、期待値が高ければ高いほど株価の上昇は顕著になるのが一般的です。各投資家の業績予想の判断基準はさまざまで、例としては以下が挙げられます。

  • ビジネスプラン
  • 財務状況
  • 企業のブランド力
  • 業界全体の成長性

株式交換の際、特に重要な指標は「企業のブランド力」です。当然ながら親会社が優良な大企業の場合は、子会社側の株価は上がる可能性が高いです。子会社側が赤字でも、親会社次第で株価が上がることもあります。さらに、互いに優良な企業同士が株式交換を行った場合でも、株価は上昇する可能性が高いです。

株価が下がる場合

株価は株式交換に対する期待値が高いと上昇し、株式交換に対する期待値が低いと株価は下落します。M&A後に業績が下落すると予想された場合でも株価が下がる仕組みです。

とりわけ親会社が赤字企業と株式交換を行う場合は、株価が下がりやすいです。赤字企業を傘下に置くと、親会社の財務状況も悪化するリスクがあり、リスクがあると投資家が判断すれば、親会社側の株価は下がってしまいます。

結論として、市場全体が低い評価を下せば、株式交換の際に株価は下がります。このように、株価を理論的に説明することは簡単ですが、実際に予測することは非常に困難です。株式交換の前後で株価が急落する可能性もゼロではありません。投資家の方は、株を持っている会社が株式交換を行う場合、十分に注意する必要があります。

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株式交換が株価に影響をもたらす要因

株式交換の実施により、株価はどのように変動するでしょうか。ここでは、上場企業を買収して上場廃止する事例をもとに説明します。

上場廃止

上場会社に対して非上場化を目的とした公開買付けが実施されると、その後の株式交換により対象会社の上場が廃止され、買収企業の完全子会社になります。対象会社の株主は、買手企業に株式を譲渡する対価として、買い手企業の株式を取得可能です。

対価として交付される買手企業の株式の数が売手企業の価値と比較して多ければ、買手企業の株価は下落します。一方、交付される株式が少なければ、その逆の結果が予想されます。株式交換による公開買付けを行う際は、株価に負の影響を与えないよう、交換比率の設定を慎重に行わなければなりません

プレミアムの支払い

公開買付けにより上場企業を非公開化する際、対価として交付する株式数は市場価格より高い基準価格によって決まります。市場価格より高い部分を「プレミアム」といい、既存株主へシナジー効果の果実を共有し譲渡を促す効果があります。

買収対象となる上場会社の株価はプレミアムを織り込んだ価格まで上昇する可能性が高いため、プレミアムが大きいほど対象会社の市場株価は上昇するのが一般的です。

株式交換を用いた株価引き下げによる事業承継対策

事業承継を実施する場合、自社株の引き継ぎ時に相続税もしくは贈与税が発生します。このような税負担は、株価が高ければ高いほど大きくなるため、株価の高い優良企業では株価の引き下げ対策が必要になる場合があります。

株価を引き下げる方法はさまざまですが、株式交換を用いることでも課税対象となる株価を引き下げが可能です。

株式発行による自己株の評価引き下げ

株価の低い企業が株価の高い企業を株式交換により取得すれば、株価の低い企業は株式を発行して株価の高い企業の株主へ交付します。親会社となった株価の低い企業では、「発行済み株式数が増加する一方で資産負債は変わらないため、株式の評価額が引き下げられる」というのが、自己株の評価引き下げの主張です。

これは一見正しいように思えますが、基本的には親会社と子会社が一体として見られ評価額は下がらないと考えられます。実際に行う際には、専門家へ問い合わせることがおすすめです。

大規模企業ほど自社株の評価を下げやすい

課税対象となる株式の税務上の評価額の計算では、純資産価額方式のみ利用する場合や、純資産価額方式と類似業種比準方式を併用する場合があり、会社規模に応じて変動します。一般的に評価額は類似業種比準方式による算出の方が低くなるとされており、大規模企業ほど税務上の評価額は類似業種比準方式の結果に近づきます。

そのため、大規模企業が親会社であれば、自社株の評価額の割合が下げられることが多いです。

株式交換以外の株価引き下げ対策

株式交換以外の株価引き下げ対策を紹介します。株価の引き下げに最も効果的な対策が、生命保険への加入です。生命保険に加入した直後は、生命保険の価値がゼロとみなされる場合があり、株価が下落します。そのタイミングで自社株を引き継ぐことで、通常よりも税負担が軽く済む場合が多いです。

経営者に役員退職金を給付する方法も効果的です。役員退職金を支払うと、その金額分利益が少なくなります。利益が少なくなれば、株価が下がります。株価が下がったタイミングで株式を引き継げば、税負担を軽減可能です。

このように、株価を引き下げる対策にはさまざまな方法があります。いずれの方法を用いてもある程度の節税効果が期待できるため、株式交換の活用も含めて、さまざまな株価引き下げ対策を検討しましょう。

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株式交換比率と株価

次に、株式交換比率と株価の関係を説明します。株式交換比率を決定するためには、妥当な株価算定が欠かせません。特に非上場企業の場合は、株価次第で比率が大きく変動するため注意しましょう。

①株式交換比率とは

株式交換の際、親会社が対価として交付する株式の数は株式交換比率にもとづいて決定します。株式交換比率とは、子会社の株主に対し、持ち株数に応じて割り当てられる親会社の株式比率です。株式交換比率は、「親会社(買い手)の1株あたり価値:子会社(売り手)の1株あたり価値」です。例えば、株式交換比率が10:1の場合は、子会社株10株に対して親会社株が1株付与されます。

株式交換比率は、親会社の株式が子会社株式の何株分の価値であるかを表す仕組みであるため、単元未満株が発生する場合があります。この例では、子会社株式を10株未満しか持っていない場合、親会社の株式は受け取れませんが、会社側に単元未満株式の買取を請求することが可能です。

②株式交換比率の決め方

一般的に株式交換比率は、当事会社間の株価の比較により決定します。子会社の株価を親会社の株価で割った値を使用する場合もあります。株式交換比率の決め方は、ケースバイケースなのが現状です。最終的には、株価などをもとに話し合いで決定します。ここでは、一般的な株式交換比率の決定プロセスをお伝えします。株式交換比率の決定プロセスは以下のとおりです。

  • 第三者機関に株価を算定してもらう
  • 当事会社間で交渉

第三者機関に株価を算定してもらう

はじめに、専門知識を持っている第三者機関に、売り手・買い手双方の企業価値(株価)を算定してもらいます。とりわけ非上場企業の場合は、市場の株価がありません。そのため、マーケットアプローチを用いて、妥当な株価を試算します。非上場企業の株価算定方法には、マーケットアプローチ以外にも2種類の方法があります。

1つ目はインカムアプローチです。インカムアプローチでは、企業の将来性を基に株価を算定できます。2つ目がコストアプローチです。コストアプローチでは、純資産を基に株価の算定ができます。このように企業の規模や状況に合わせて、最適な株価算定方法を用いましょう。

算定してもらった結果は、算定書として取得・保管する必要があります。なぜなら、交換比率が明らかに現実的でない場合、株式交換の効力が失われるためです。第三者の公平な意見を残すことで、M&Aの実行に正当性を持たせられます。

当事会社間で交渉

算定された株価をもとに、交渉によって最終的な株式交換比率を決定します。以上が株式交換比率の決定プロセスです。株式交換比率は専門的な分野ですので、専門家に株価算定も含めて相談することをおすすめします。

M&A総合研究所では、M&Aに関する豊富な知識と経験を持つアドバイザーがM&Aをフルサポートします。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。

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③株式交換比率による株価変動リスクの軽減方法

株式交換では、交渉がまとまり株式交換契約が締結された後、効力発生までに1カ月から数か月程度の期間が必要です。その期間も市場で株式が売買されるため、買い手企業と売り手企業の株価変動が生じます。

そのため、株式交換により公開買付けを行う場合は、契約の際に合意された株式交換比率を固定する固定比率方式と、あえて株価に応じて株式交換比率を変動させる変動比率方式とが選択可能です。

固定比率方式を採用すべき場合

固定比率方式では、株価が変動したとしても契約締結時の株式交換比率で株式交換が行われます。親会社の株価が子会社株価より大幅に上昇すれば、親会社は想定より価値の高い株式を交付しなければならず、親会社株主が損失を被ります

逆に、親会社の株価が子会社株価よりも下落していれば、損失を被るのは子会社株主です。株価にかかわらず発行する株式数が一定となるため、買い手企業の希薄化率が一定になるメリットもあります。

変動比率方式を採用すべき場合

変動比率方式では、契約締結時に売り手企業の株価のみを固定し、株式交換の実行日に買い手企業の株価を固定します。買い手企業の株価が上昇すれば売り手企業の価値は相対的に下落しますが、売り手企業株主にとってはもともと持っていた売り手株式相当額の株式が得られるため、実質的な経済的価値は保証されている点がメリットです。

そのほか、買い手企業の株価が上昇すれば、買い手企業の希薄化が抑えられるメリットもあります。

株式交換が株価に影響をもたらした事例

過去に株式交換を行った事例で、株価にどのような影響を与えたかを解説します。

  1. EduLabと教育デジタルソリューションズ
  2. 出光興産と昭和シェル石油
  3. メルカリとマイケル
  4. 日清紡HDと新日本無線
  5. トヨタ自動車とダイハツ工業
  6. セブン&アイHDとニッセン
  7. 太平洋セメントとデイ・シイ
  8. ウエルシアHDとCFSコーポレーション
  9. パナソニックと三洋電機
  10. 味の素とカルピス

EduLabと教育デジタルソリューションズ

2020年4月、教育関連事業を展開するEduLabは、教育に関するデータ分析事業を行う教育デジタルソリューションズを株式交換により取得しました。交換比率は、EduLab株式1株に対して教育デジタルソリューションズ株式211株です。教育デジタルソリューションズは、EduLabと比較して会社規模が小さく簡易株式交換で行われています。

完全親会社となったEduLabの株価は、株式交換公表日の3,995円から徐々に低下し、株式交換実施日には2,797円まで下落しました。もっとも、この株式交換は新型コロナウイルス感染症の流行と同じタイミングで行われたため、株式市場全体の下落の影響は否定できません。教育デジタルソリューションズは非公開会社であったため、市場株価の変動はありませんでした

簡易株式交換による株式会社教育デジタルソリューションズの完全子会社化に関するお知らせ

出光興産と昭和シェル石油

2019年4月、出光興産は、株式交換により昭和シェル石油を完全子会社化しました。出光興産と昭和シェル石油の株式交換比率は、1:0.41に設定されています。完全親会社となる出光興産の株価は、株式交換発表日の5,740円から大きく変動し、株式交換効力発生日には3,795円まで下落しました。

一方で、昭和シェル石油の株価は、株式交換発表日の2,378円から一時的に2,390円まで上昇したものの、株式交換効力発生日の終値は1,682円となっています。

株式交換契約の締結及び経営統合に関するお知らせ

メルカリとマイケル

2018年10月、フリーマーケットアプリのメルカリは、自動車販売情報をやり取りできるSNS事業を展開するマイケルを株式交換により完全子会社化しました。簡易株式交換により行われ、交換比率はメルカリ株1株につきマイケル株194.83株です。

完全親会社となったメルカリの株価は株式交換発表日には3,150円、一時は2,685円まで下落しましたが、株式交換効力発生日には2,996円でした。なお、マイケルは非上場企業のため、市場株価はありません。

簡易株式交換によるマイケル株式会社の完全子会社化に関するお知らせ

日清紡HDと新日本無線

2018年5月、日清紡ホールディングスは株式交換により、エレクトロニクス事業を主力とする新日本無線を完全子会社化しました。株式交換は簡易株式交換により行われ、交換比率は日清紡ホールディングス1株につき新日本無線0.65株とされています。

日清紡ホールディングスの株価は、株式交換発表日に1,595円から1,478円まで下落し、株式交換効力発生日には1,200円台でした。新日本無線の株価は、株式交換発表日には904円から950円まで上昇し、株式交換効力発生日には765円まで下落しました。

簡易株式交換による新日本無線株式会社の完全子会社化完了のお知らせ

セブン&アイHDとニッセン

2016年8月、セブン&アイ・ホールディングスは、株式交換によりニッセンをグループ会社化しました。セブン&アイ・ホールディングスは、三角合併の手法により子会社であるセブン&アイ・ネットメディアを通じてニッセンの全株式を取得し、ニッセンはセブン&アイ・ネットメディアの完全子会社となりました。

セブン&アイ・ホールディングスの株価は、株式交換発表日には4,200円程度でしたが、徐々に値上がりし株式交換実施日には4,840円まで上昇しています。ニッセンの株価は、株式交換発表により97円から76円まで下落し、株式交換実施日には67円でした。

株式会社セブン&アイ・ホールディングスの完全子会社である株式会社セブン&アイ・ネットメディア の株式交換による株式会社ニッセンホールディングスの完全子会社化に関するお知らせ

太平洋セメントとデイ・シイ

2016年5月、日本最大のセメントメーカーである太平洋セメントは、建築資材のリサイクルや不動産賃貸業などを手掛けるデイ・シイを株式交換により完全子会社化しました。簡易株式交換により行われ、交換比率は太平洋セメント株式1株に対してデイ・シイ株式1.375株の割合です。

太平洋セメントの株価は、本件発表後に279円から299円まで上昇しましたが、その後下落と上昇があり、効力発生日にも200円台後半でした。デイ・シイの株価は、本件発表により352円から401円まで上昇し、効力発生日まで400円程度を維持しました。

太平洋セメント株式会社による株式会社デイ・シイの 株式交換による完全子会社化に関するお知らせ

トヨタ自動車とダイハツ工業

2016年1月、トヨタ自動車が株式交換によるM&Aを行い、ダイハツ工業を取得しました。ダイハツ工業は簡易株式交換により完全子会社化され、株式交換比率はトヨタ自動車の株式1株に対し、ダイハツ工業株式0.26株でした。

トヨタ自動車の株価は、株式交換発表を受けて7,200円から7,339円まで上昇しましたが、株式交換実施日には5,000円台後半まで下落しました。ダイハツ工業の株価も、株式交換の発表により1,860円から1,977円まで上昇した後、1,300円台まで下落し、株式交換効力発生日には1,500円まで回復しています。

トヨタ自動車株式会社によるダイハツ工業株式会社の株式交換による 完全子会社化に関するお知らせ

ウエルシアHDとCFSコーポレーション

2015年4月から5月にかけて、イオン系列のドラッグストアチェーンを展開するウエルシアHDは、独自のドラッグストアチェーンを展開するCFSコーポレーションを株式交換により取得しました。本取引は簡易株式交換により行われ、取引比率はウエルシアHD1株に対してCFSコーポレーション0.2株です。

ウエルシアホールディングスの株価は、本件発表により4,545円から5,020円まで上昇し、その後6,630円まで上昇したものの、効力発生日には5,520円まで下落しました。CFSコーポレーションの株価は本件発表により上昇し、一時は1,319円まで上昇しましたが、効力発生日には1,008円に下落しています。

「日本一のドラッグストアチェーン」の構築を目指したウエルシアホールディングス株式会社と 株式会社CFSコーポレーションの株式交換による経営統合のお知らせ

パナソニックと三洋電機

2011年3月、日本を代表する電機メーカーのパナソニックは、同じく電機メーカーの三洋電機を、株式交換により完全子会社化しました。本取引は簡易株式交換により行われ、交換比率はパナソニック株1株に対して三洋電機0.115株の割合です。

パナソニックの株価は、本件発表日には1,169円だったところ、株式交換実施日までに1,058円まで下落しました。三洋電機の株価は、本件発表により137円から130円に下落し、その後も下がる傾向が続いて、実施日には116円になっています。

パナソニック株式会社による三洋電機株式会社の 株式交換による完全子会社化に関するお知らせ

味の素とカルピス

2007年6月、味の素は、株式交換によりカルピスを取得しました。本取引により、カルピスは味の素の完全子会社となり、交換比率は味の素株1株に対してカルピス株0.95株です。

味の素の株価は、本件発表により1,432円から1,470円まで上昇しましたが、効力発生日には1,452円にまで下落しています。カルピスの株価は、本件発表により1,106円から1,306円まで上昇し、その後行ったり来たりしながらも、効力発生日には1,304円でした。

なお、本取引の5年後、カルピスは味の素からアサヒグループホールディングスへ売却されています。

味の素株式会社の株式交換による カルピス株式会社の完全子会社化に関するお知らせ

株式交換に反対して株価を守る方法

経営陣が推進する株式交換によって株価の下落が見込まれ、株主として株式交換を止めたい場合、会社法上は以下の手段を取ることが可能です。

  • 株主総会で株式交換の特別決議を否認する
  • 簡易株式交換の場合は、完全親会社の株主の6分の1以上が反対で、株主総会に持ち込む
  • 株式交換に差止事由があるとして差止請求を行う
  • 株式交換に無効事由があるとして株式交換無効の訴えを起こす

株式交換発表後における個人株主の注意点

企業が株式を交換する際、株主として気をつけるべき主な3つの点について解説します。

①単元未満株式が生じるおそれ

株式交換が発表されたとき、個人投資家が気をつけるべき一つのポイントは「単元未満株」への変更です。通常、株式は100株を基本単位として取引されます。株式交換の際、通常は株価が高い会社が親会社、低い会社が子会社になります。

この場合、株価の高い親会社から配分される株式は、株価の差により、子会社の株主には少なくなりがちです。その結果、100株に満たない「単元未満株」になる可能性があります。

しかし、単元未満株になったとしても、株主の権利は守られています。法律では、単元未満の株が発生した場合、会社がその株を買い取るか、追加で株を買う機会を提供するか、あるいは金銭での補償を行うことが定められています。

②株価の変動が大きいリスク

株式交換が発表された後、個人投資家が特に注意すべき二つ目のポイントは、株価の大きな変動です。株式交換の際、親会社の財務状態や市場価値、さらには子会社との組み合わせによる相乗効果などが評価され、これが株価に大きな影響を与えることがあります。

特に、株式交換の発表日や、取引の最終日(子会社の株が上場廃止になる日)の前後では、株価が急激に変動することがよくあります。そのため、この時期は株価の動きをよく見て、注意深く対応することが重要です。

③新しい株式への交換時期

株式交換が発表された後、個人投資家が留意すべき三つ目のポイントは、株式交換が実際に行われるタイミングです。株式交換の実効日が来ると、保有している株式は自動的に親会社の株式に置き換わります。もし株式交換によって株の価値が下がると思われる場合は、株式交換の効果が発生する前、つまり市場での売買が終了する最終日よりも前に、株式を売却することを検討すると良いでしょう。

株式交換の実効日と株式を売買できる最終日は同じではありません。株を売るかどうかを検討している場合は、これら二つの日付を正確に把握しておくことが大切です。

株式交換が株価にもたらす影響まとめ

今回は、株式交換と株価の関係をお伝えしました。株式交換は、完全子会社化を目的に活用される手法です。効率的にM&Aを遂行できる反面、株価の変動が生じやすい手法でもあります。

株式交換は、非常に専門的な取引です。実際に株式交換を実行する際は、M&A総合研究所のようなM&A専門の税理士や弁護士が在籍する仲介会社に相談することをおすすめします。

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