2025年10月24日公開会社・事業を売る

海外M&Aのメリットや手法は?買収の目的や事例10選を解説!

国内企業が海外企業とM&Aを行う場合がありますが、海外企業とのM&Aには地政学リスクなどの国内企業とのM&Aとは違った注意点があります。この記事では、海外企業とのM&Aを検討している方に向けて、手法や事例などについて解説します。

目次
  1. 海外M&Aとは
  2. 海外M&Aの分類
  3. 海外M&Aの目的
  4. 海外M&Aの手法・流れ
  5. 海外M&Aのメリット
  6. 海外M&Aのデメリット
  7. 海外M&Aの注意点
  8. 海外M&A事例10選
  9. 海外M&Aのまとめ
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海外M&Aとは

近年、海外M&Aが増加しており、海外M&Aに興味を持つ企業の経営者も増えてきました。

海外M&Aとは、M&Aにおける譲受企業側と譲渡企業側のどちらか一方、もしくは両方が海外の企業であるM&Aのことをいいます。国境を超えてのM&Aとなることから、クロスボーダーM&Aと呼ばれることもあります。

国内企業が海外M&Aを行う場合には、海外への事業展開、グローバル展開を見据えてのM&Aとなることが多く、M&Aの規模も国内でのM&A比較すると大きくなるのが特徴です。近年、国内でのM&Aが活発化していますが、実は海外M&Aも増加傾向にあります。

しかし、海外M&Aでは、異国の言語、法律、税制、風習、商習慣などに熟知している必要があり、国内M&Aよりも幅広い知識や経験が求められるので、国内M&Aとは違った対応が必要になるでしょう。

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海外M&Aの分類

海外M&Aは大きく分けると3つのパターンに分類できます。海外M&Aの3分類をみていきましょう。

IN-OUT型M&A

IN-OUT型M&Aとは、国内企業が譲受企業となり、海外企業が譲渡企業となるM&Aです。

IN-OUT型M&Aは、国内市場の少子高齢化の影響による消費の減少による縮小を見越した企業が、海外市場へ参入することを目的として実施することが多いようです。また、日銀の異次元緩和政策による円安によって、IN-OUT型M&Aを行う企業が増加しました。

しかし、欧米企業を買収する場合には、多額の資金がかかる傾向にあり、IN-OUT型M&Aによって経営状況が悪化する企業もみられます。

OUT-IN型M&A

OUT-IN型M&Aとは、海外企業が譲受企業となり、国内企業が譲渡企業となるM&Aです。インバウンドM&Aとも呼ばれます。

OUT-IN型M&AはIN-OUT型M&Aと比較するとあまり活発には行われておらず、近年は減少傾向にあります。

海外企業による日本企業の買収であるOUT-IN型M&Aが少ない理由は、商品やサービスの価格に対して消費者からの要求水準が高すぎることや、今後の少高齢化が進むことでの消費減少が確実であること、法規制や商習慣の問題などが挙げられます。

OUT-IN型M&Aが実施される場合には、海外企業が日本に子会社を設立して、その子会社が日本の企業を買収する形を取る事例がほとんどです。

OUT-OUT型M&A

OUT-OUT型M&Aとは、譲受企業も譲渡企業もどちらも海外企業であるM&Aです。

買収側の企業と売却側の企業の両方が海外企業である場合も、日本における海外M&Aになることに疑問を感じる人もいるでしょう。

日本におけるOUT-OUT型M&Aとは、すでにグローバル展開している国内企業の海外子会社がM&Aを実施する場合を指します。そのために、海外企業同士のM&AであるOUT-OUT型M&Aでも、日本企業が関係しているのです。

OUT-OUT型M&Aを実施するときには、日本にある本社が直接買収を行うことはほぼありません。多くの場合、現地に子会社を設立してから、その子会社が買収を行い、買収した海外企業を日本本社の孫会社とします。

現地法人を間に置くのは、日本から直接買収するよりもコストを軽減できたり、手続きが簡単になったりするなど、メリットが大きいためです。

【関連】M&Aのデメリットとは?海外M&Aにおけるデメリットも解説

海外M&Aの目的

日本企業が海外M&Aを行う目的とは主にどのようなものがあるのでしょうか。主な3つの目的を解説します。

海外市場への参入・撤退

日本企業が海外企業を買収するM&Aを実施するときの大きな目的は、海外市場へ参入することです。少子高齢化で将来的に市場が縮小していく日本国内だけでは、多くの企業にとって今後の大きな成長を期待することはできません。

そのために、多くの日本企業は生き残りをかけて海外市場の開拓を実施しています。

しかし、ゼロからマーケット調査や販路の開拓などをして海外市場を切り開くよりも、すでに現地で実績のある企業を買収した方が、時間的にも労力的にもよりコストをかけない海外進出が可能です。

そのために、現地企業を買収することで海外市場を開拓する目的の海外M&Aの動きがみられます。

一方で、海外へ進出したけれども、事業を軌道に乗せることができなかったという場合や、現地の事情で事業の継続や利益を出し続けることが難しくなってしまうこともあるでしょう。

そのような場合には、海外に設立したり買収したりして築いた拠点を、海外企業へ譲渡するM&Aを実施することもあります。

知的財産や技術の獲得

日本企業が海外M&Aを行うときには、自社や日本国内にはまだない知的財産や新技術、海外ブランドを獲得することを目的とすることがあります。

特に、自社や国内にはないノウハウやブランドを自社のものにして、既存事業とのシナジー効果で発展させていくことで、さらなる新商品の開発や競争力強化につなげていくことを目的とした海外M&Aもみられます。

コスト圧縮

日本企業が海外M&Aを行うのは、人件費や原材料費、法人税などのコストを圧縮して利益を増やすことを目的としている場合もあります。

日本では海外製の安い製品が大量に出回るようになり、多くの分野で商品の価格競争が厳しくなっています。一方で、人件費や原材料費は高水準にあり、企業にとっては国内での製造コストが大きな負担となっている場合も多いようです。

そこで、人件費や原材料費を抑えることができる国の企業を買収して生産拠点を移すことで、国内で製造するときと同じ水準の製品を、より安い価格で提供できるようにしています。

【関連】海外進出のメリットとデメリット

海外M&Aの手法・流れ

日本の企業が海外M&Aを行う場合には、どのような手法を選択すればいいのでしょうか。また、海外M&Aの流れとはどのような流れなのでしょうか。海外M&Aの手法と流れについてみていきましょう。

株式譲渡

海外M&Aでよく見られる手法が株式譲渡です。譲渡企業の株式を、譲受企業が株主から譲り受けることで経営権を移行させます。

M&Aの手法の中では比較的手続きが簡単なために、よく選択されます。しかし、譲渡企業のすべてを丸ごと引き継ぐことになるので、負債などのマイナスの資産も引き継いでしまいます。

そのために、海外企業を株式譲渡でM&Aする場合には、事前調査であるデューデリジェンスを徹底的に行い、買収にあたってのリスクはないか調べることが大切です。

事業譲渡

株式譲渡の次に海外M&Aでよく見られる手法が事業譲渡です。譲渡企業の全部ではなく、一部の事業や資産、権利などを譲受企業が譲り受ける手法です。

事業や資産を負債も含めて譲受企業側が一つずつ選ぶことができます。また、従業員も一人ずつ契約を結ぶことになるので、譲受企業側としては必要な人材だけを引き受けることが可能です。

しかし、資産などを引き受けるかどうか、一つずつ判断しなければいけないので、手続きがとても煩雑になるというデメリットがあります。また、海外M&Aの場合には、現地法人でM&Aを実行するのか、新会社を設立するのかといった検討も必要です。

LBO

LBO(レバレッジド・バイアウト)とは、譲受企業側にM&Aを行うための十分な資金力がない場合に使われる手法です。譲渡企業の資産や今後期待できるキャッシュフローを担保にして、金融機関等から資金調達を行い買収します。

万が一、譲渡企業側がM&A後に期待された利益を上げることができずに、借り入れの返済ができなくなってしまうと、莫大な負債だけが残る結果になる場合もあります。

三角合併

海外M&Aでよく使われる手法には三角合併もあります。三角合併とは、吸収合併で実施されるM&Aで、消滅会社の株主に対して、存続会社の親会社の株式を交付するM&Aの手法です。

通常、吸収合併では消滅会社の株主に対して、消滅会社の株式を譲渡してもらう代わりに現金を支払います。しかし、買収側に十分な資金がない場合には、代わりに親会社の株式を譲渡することができます。

M&Aでの三角合併の手法は、日本では2007年の会社法の改正で実施できるようになったものです。このときの法改正では、親会社の国籍を問わずに三角合併の手法で日本企業の買収が可能になりました。

海外M&Aの流れ

海外M&Aは次のような流れで実施されます。

  1. 譲渡企業と譲受企業のマッチング
  2. 秘密保持契約締結
  3. トップ面談
  4. 基本合意書の締結
  5. デューデリジェンスの実施
  6. 最終交渉
  7. 最終契約書の締結
  8. クロージング


最初に売却側と買収側の企業のマッチングを行います。両社とも、自社とシナジー効果を発揮できる企業か、M&Aの目的を達成できる相手か、慎重に見極めて選ぶことが大切です。

その後、秘密保持契約締結、経営者同士のトップ面談、M&Aの方向性などもっとも重要な方針をまとめた基本合意書の締結の後で、買収側によるデューデリジェンス(買収監査)の実施です。ここでは、売却側のリスクなどを徹底的に調査します。

デューデリジェンスの結果、M&Aを進めても問題ないと買収側が判断したら、最終交渉と最終契約書の締結です。最終契約書締結から、しばらく時間を置いて経営権の移行準備を進めた後にクロージング、経営権の引き渡しとなります。

【関連】企業買収・M&Aにおける株式交換とは?方法、メリットも解説【事例あり】

海外M&Aのメリット

海外M&Aを実施するメリットとはどのようなものがあるのかみていきましょう。

対価の獲得(売却側)

会社を譲渡する、売却側のメリットとして大きいものは、会社を譲渡したことによって現金や株式といった対価を得ることができるという点です。

M&Aで子会社や不採算事業を売却して、多額の売却金や相当分の株式を手に入れることができれば、新規事業の資金にしたり、事業が悪化している場合には会社を立て直すための資金にすることが可能でしょう。

コスト削減(買収側)

海外M&Aで海外の会社を買収する譲受企業側のメリットとしては、海外展開するためのコストを大幅に削減できるという点です。

M&Aではなく、日本とは商習慣や法規制などが大きく異なる海外で、ゼロから現地で販路や調達先を開拓することになると、多大な労力と時間が必要になります。

すでに、現地で実績のある現地の会社を買収して事業を展開したほうが、より少ない労力と時間で海外展開することが可能です。

リスクのない海外進出(買収側)

海外M&Aで海外の会社を買収する譲受企業側のメリットとしては、海外進出のリスクをより低減させることが可能だという点もあります。

企業の海外進出には、言語、法規制、税制、商習慣などの違いが大きな壁となって立ちはだかり、ゼロからすべてを立ち上げるのには、大きなリスクが伴います。

しかし、すでに現地企業として大きな信頼を勝ち取っている企業を買収することができれば、自社でゼロから立ち上げるよりも、リスクなく海外での事業を始めることが可能です。

【関連】M&Aブーム!今回の特徴は?過去のブームとの違いなどまとめ

海外M&Aのデメリット

海外M&Aのデメリットもみておきましょう。

商慣習の違い

海外M&Aでは、海外企業の担当者との交渉が必要になります。言語については通訳や翻訳者を付ければコミュニケーションは問題なく取れますが、国が違えば背景となる文化が異なるので、お互いが持っている常識にすれ違いが起こる可能性があります。

M&Aの相手との交渉はなんとかすり合わせて最終契約までたどり着けたとしても、M&Aでの買収成功後に、従業員との間での働き方の違いや、取引先との交渉の出方の違いなどの商習慣の違いから、トラブルになるケースもあるようです。

M&Aを完全に成功させるためには、お互いの文化や人々の気質の違いをよく理解して、現地の人々に歩み寄る姿勢が求められます。

地政学リスク

地政学リスクとは、政治情勢や社会情勢が不安定な地域が抱えるリスクです。地政学リスクが高い地域では、ある日突然、紛争やテロなどが起きてしまい、会社の操業がストップしてしまう可能性があります。

表面的には特に問題がない地域のように見えても、政治や軍事、歴史的、地理的な知見がないと、進出しようとしている地域が抱えている地政学リスクを見落としてしまう可能性があります。

進出後に突然戦争勃発という事態に直面する可能性もあるので、そのあたりも事前調査をしっかりと行いましょう。
 

国内M&A以上に戦略立案の手間と時間がかかる

国内では当たり前に提供できていた商品やサービスでも、海外では宗教や文化の違いから受け入れられないこともよくあります。

また、法律や会計基準が違うこともあり、国内で実施するM&Aよりも情報収集を綿密に行い、どのように収益を得ていくのか、戦略立案を綿密に進めることが大切です。

【関連】M&Aで子会社化する方法とは?メリット・デメリット、子会社とグループ会社の違いを解説

海外M&Aの注意点

海外M&Aを進める上での注意点です。

十分な情報収集

海外M&Aによる海外企業の買収が成功するかどうかは、事前の情報収集が十分にできるかどうかにかかっているといっても過言ではありません。

海外で展開したい商品やサービスが現地で受け入れられるのか、現地の法律や商習慣について、地政学リスクについてなど、事前の情報収集を徹底しましょう。

PMIが難しい

PMIとはM&A完了後の統合プロセスのことです。

国内M&Aでは、日本人同士の暗黙の了解で進められるところも、海外企業の買収では、言語や文化の違いから統合プロセスが国内M&Aのように進まないことがよくあります。海外企業の買収では、現地の文化に合わせた統合プロセスの構築も必要です。

現地事情に長けたM&Aアドバイザーを選ぶ

ここまでみてきたように、海外M&Aには国内M&A以上の難しさがあります。特に国内M&Aとの違いは、現地の文化や商習慣を理解する必要性が高いことでしょう。

海外M&Aを自社だけで進めるのはとても危険です。買収しようとする会社のある国や地域の事情に詳しいアドバイザーにサポートしてもらうことをおすすめします。

M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください

海外企業とのM&Aを適切に行うには、各業界に精通した専門家によるサポートを受けるのがおすすめです。

M&A総合研究所では、M&Aの支援経験豊富なM&Aアドバイザーが専任につき、事業譲渡を丁寧にフルサポートいたします。

また、料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ)

無料相談も随時受け付けておりますので、こちらの業界で事業譲渡をご検討の際はM&A総合研究所までお気軽にご相談ください。

M&A・事業承継ならM&A総合研究所
【関連】クロスボーダーM&Aを成功させるには

海外M&A事例10選

実際に海外M&Aの事例にはどのようなものがあるのでしょうか。国内企業が海外企業とM&Aを行った事例を紹介します。

資生堂の海外M&A

2023年12月23日に、株式会社資生堂から、同社のアメリカ地域本社で連結子会社の資生堂アメリカズCorp.を通じて、DDG Skincare Holdings LLCの全株式を取得して買収するための最終契約書を締結したことが発表されました。

資生堂は国内シェア1位の化粧品メーカーです。

DDG Skincare Holdings LLCは、アメリカのニューヨークで皮膚科医のデニス・グロス博士と妻のキャリー・グロス氏によって開発された、プレステージスキンケアブランド「Dr. Dennis Gross Skincare」を持つ会社です。

今後、世界的に皮膚科医などの専門家が開発、監修した化粧品市場の成長が期待できる上に、業績が好調なアメリカ事業に収益性の高い「Dr. Dennis Gross Skincare」を加えることによる収益拡大も見込まれます。

さらに、グローバル展開する資生堂との大きな相乗効果も期待できることから、今後、資生堂のプラットフォームや経営資源を活用することで、「Dr. Dennis Gross Skincare」を主力ブランドの一つに成長させていくとのことです。

参考:DDG Skincare Holdings LLC買収(子会社化)に関するお知らせ ~皮膚科医主導のプレステージスキンケアブランドが 資生堂のグローバルポートフォリオに加わる~ 

住友生命保険の海外M&A

2023年12月22日に、住友生命保険相互会社が、Singapore Life Holdings Pte. Ltd.(以下、シングライフ)の株式の35.48%を取得することに合意したことと、子会社化する予定であることを発表しました。

住友生命は、住友グループに属する国内4位の規模を誇る生命保険会社です。シングライフは、2020年に設立されたシンガポールの生命保険会社で、特にデジタルを活用したビジネスモデルに強みを持っています。また、アジア地域への展開としてフィリピンへの進出も行っています。

住友生命では、2019年から出資を行い事業拡大の支援をしてきました。今後は、シングライフのビジネスモデルを住友生命のお客様の利便性向上と経営の効率化につなげてグループシナジーを発揮することと、アジア事業戦略の推進を行っていくとのことです。

参考:Singapore Life Holdings Pte. Ltd.の子会社化について

YKK APの海外M&A

2023年12月22日に、YKK AP株式会社から、YHS International Ltd.(以下、YHSI社)とその製造会社であるSiam Metal Co., Ltd.(以下、SM社)の株式を取得して、連結子会社化したことが発表されました。


YKK APは東京都に本社のあるアルミ建材メーカーで、アルミサッシの国内シェア1位を誇る会社です。YHSI社はタイのカーテンウォール(CW)メーカーで、製造、設計、施行、メンテナンスまで行う最大手の会社です。

YHSI社は日本の大型物件への出荷実績も豊富であり、品質へのこだわりがYKK APと合致する部分も多くあります。

YKK APでは、成長著しいアジアでも将来性の高いタイの市場に注目しており、YHSI社をグループに迎え入れることで、グローバルサプライチェーンの強化と、アジア地域でのCW事業の構築と拡大に務めるとのことです。

参考:タイ最⼤⼿のカーテンウォールメーカーの株式を取得

東京ガスの海外M&A

2023年12月22日に、東京瓦斯株式会社から、アメリカのClean Capital Partners, LLC社のLongbow蓄電池事業を取得することが発表されました。

東京ガスがアメリカに子会社を設立して、その子会社を通じてLongbow蓄電池事業を保有する事業会社の全株式を取得して子会社化します。

東京ガスでは経営ビジョン「Compass2030」で海外事業500億円の利益目標を掲げています。

今回取得する事業の建設予定地であるテキサス州では、近年の再生エネルギーの増加に伴い電力供給が不安定化しており、電力価格の急騰が頻繁に起きており、系統用蓄電池の開発余地が大きいことから事業への参画を検討してきました。

テキサス州では、電力の供給力が不足している電力市場価格の高い時間帯に放電することで、市場の供給安定化に寄与できるとしています。

参考:米国における系統用蓄電池事業の取得及び子会社の設立について

田辺三菱製薬の海外M&A

2023年12月21日に、三菱ケミカルグループ内の田辺三菱製薬株式会社は、75.35%所有していた海外連結子会社である天津田辺製薬有限公司の持分を、中国の遠大医薬有限公司へ譲渡する持分譲渡契約と締結したことを発表しました。

田辺三菱製薬は日本の製薬会社で、三菱ケミカルグループの完全子会社です。天津田辺製薬は、1993年に中国の天津市に設立した製薬会社で、循環器用薬、消化器用薬、アレルギー治療薬などの高品質な医薬品を中国で製造販売してきました。

譲渡先である遠大医薬は、中国の製薬会社で循環器系の製品ラインナップの拡充と生産供給力の向上を事業戦略として掲げています。

近年の中国における事業環境の変化を踏まえて、中国市場に知見の深い企業に事業運営を委ねることが、天津田辺製薬の今後の成長と競争力強化につながると判断しての持分譲渡だとのことです。

参考:海外連結子会社の持分譲渡契約締結に関するお知らせ

モンスターラボホールディングス の海外M&A

2023年12月20日に、株式会社モンスターラボホールディングスが、中国の成都市にある特定子会社の夢思特科技有限公司の出資持分の一部を譲渡することの決議と、持分譲渡契約書の締結を発表しました。

モンスターラボが100%所有していた持分のうち60%を譲渡することで、夢思特科技はモンスターラボの持分法適用関連会社となり、モンスターラボの夢思特科技に対する議決保有割合は40%になります。

モンスターラボは、東京都渋谷区に本社のあるデジタルコンサルティング事業やソフトウェア開発、販売などを行う会社です。

夢思特科技は、2014年にモンスターラボが設立した会社で、中国クライアント向けの海外IT人材の募集や海外市場においてのコンサルティングなどを行っています。

モンスターラボとしては、選択と集中の観点から、今後は本業であるデジタルコンサルティング事業に経営リソースを集中させて、収益性向上を図るために、不採算拠点閉鎖の一環の中での座いて処理だとのことです。

参考:連結子会社(特定子会社)の持分法適用関連会社への異動に関するお知らせ

ミネベアミツミの海外M&A

2023年12月20日に、ミネベアミツミ株式会社が、同社の子会社であるNMB-Minebea UK Ltd.が、RO-RA Aviation Systems GmbHの全株式を取得するための株式譲渡契約を締結したことを発表しました。

ミネベアミツミは長野県北佐久郡御代田町に本社のある、ベアリングやモーターなどの電気部品メーカーです。小径・ミニチュアサイズのボールベアリングで世界首位のシェアを誇ります。

RO-RAは、オーストリアにあるリンクロッドアセンブリ、精密機械加工部品などの製造販売を行っている会社です。

リンクロッドアセンブリは航空機の内装、構造、エンジンなどに幅広く使われているものです。リンクロッドアセンブリは、ミネベアミツミのロッドエンドベアリングとRORAのスウェージチューブで構成されています。

このM&Aによって、リンクロッドアセンブリの垂直統合生産が可能になることで、生産時間やコスト、技術サービスなどの面で競争優位性を獲得できるとのことです。

参考:RO-RA Aviation Systems GmbHの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

日立製作所の海外M&A

2023年12月20日に、株式会社日立製作所が、同社の米国子会社のGlobalLogic Inc.が、Mobiveil, Inc.を買収するための契約を締結したことを発表しました。M&Aのスキームは公表されていません。

GlobalLogic Inc.は、シリコンバレーに本社があり、世界中にデザインスタジオ、エンジニアリングセンターなどを展開して、多種多様な業界の顧客へデジタルエンジニアリングの深い専門知識を提供している会社です。

Mobiveil, Inc.は近年急成長しているテクノロジー企業で、シリコン知的財産、プラットフォーム、ソリューションの開発などを行っています。

このM&Aにより、GlobalLogic Inc.はMobiveil, Inc.が世界の5拠点で展開している半導体業界向けの成熟したセンター・オブ・エクセレンスの恩恵を受けられるようになるとしています。

参考:GlobalLogicが米国のエンジニアリングサービス企業Mobiveilを買収

綜合警備保障の海外M&A

2023年12月18日に、綜合警備保障株式会社が、インドネシア子会社であるPT. ALSOK BASS Indonesia Security Servicesを通じて、PT. Shield-On Service Tbk(以下、SOS)の発行済株式の79.3%を取得して、連結子会社化することを発表しました。

綜合警備保障では、平成25年にインドネシアに現地法人を設立しました。また、平成28年に警備事業拡大のために現地の大手警備会社の株式を取得して、日系企業を中心としてセキュリティニーズに対応してきました。

SOSは、インドネシアの総合アウトソーシング企業で、人材派遣や警備、清掃、駐車場管理サービスを提供している、インドネシア証券取引所の上場企業であり、現地財閥Sinarmasグループを大口顧客としています。

綜合警備保障としては、SOSをグループ内に迎え入れることにより、これまで現地の日系企業を中心に提供してきた高品質なセキュリティサービスを、インドネシア企業や金融機関にも幅広く提供できるようになるとしています。

参考:PT. Shield-On Service Tbkの株式取得(連結孫会社化)に関するお知らせ

アシックスの海外M&A

2023年12月18日に、株式会社アシックスが、同社が保有するスウェーデンのHaglöfs AB(以下、ホグロフスAB)の発行済株式のすべてを、LionRock Capital Aspire Limitedに譲渡したことを発表しました。

アシックスは兵庫県神戸市に本社のあるスポーツ用品メーカーで、特にランニングシューズやバレーボールシューズなどのスポーツシューズが世界的に評価されています。

ホグロフスABはスウェーデンで100年以上の歴史を持つアウトドアウェアと用品のメーカーで、2010年にアシックスが買収しました。

アシックスによる買収以降、マーケティングの強化やデジタル化でホグロフスABのプレゼンス向上と収益性改善を図ることができました。今後、さらなるホグロフスABの成長、発展のために新たなパートナーのもとでの投資強化が重要であると判断しての、株式譲渡だとのことです。

参考:Haglöfs ABの株式譲渡に関するお知らせ

【関連】M&Aの手続きは?自社で必要な準備から最終契約まで解説!

海外M&Aのまとめ

国内M&Aでも成立させるのは難しいものですが、海外M&Aにはそれ以上の困難があります。海外M&Aの経験がない企業には、かなりハードルが高いものになるでしょう。

海外M&Aを希望するのであれば、海外M&Aに詳しい専門家のサポートが必要です。まずは、海外M&Aに精通したM&Aの専門家への問い合わせから始めましょう。

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