M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2023年9月2日公開業種別M&A
温泉施設業界の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!
温泉施設業界は新型コロナ禍により大打撃を受けましたが、経済の回復とともに客足の回復が見られ、今後の発展を見越したM&Aも活発化しています。この記事では、温泉施設業界の業界動向とM&Aのメリット、事例などについて詳しく解説します。
温泉施設業界の動向
古来から、温泉は日本の庶民にとって大切なリラクゼーションの場でした。しかし、日帰り温泉やスーパー銭湯などの大型温泉施設が登場したのは1955年頃からです。
温泉施設は2007年に2万8,792軒とピークに達しましたが、その後減少に転じています。
現在は、大規模改修が必要な施設が増加している上に、温泉施設や銭湯の利用者数も減少傾向にあります。また、厚生労働省の調査によると、東京都内だけでも温浴施設の年間利用者は、2007年の3,621万8,000人から、2017年の2,315万7,000人に大幅に減少しています。
業界全体として厳しい局面が今後も続くことが予想されます。
参考:株式会社アクトパス「温浴施設業界の歴史と現状」 厚生労働省「公衆浴場業(一般公衆浴場)の実態と経営改善の方策」
温泉施設会社のM&Aのメリット
温泉施設会社のM&Aには、売却側にも買収側にも双方にメリットがあります。それぞれのメリットについてみていきましょう。
売却側のメリット
温泉施設会社を売却する側のメリットは次のとおりです。
事業継続と従業員の雇用の確保
後継者問題や資金繰りの悪化などの問題により廃業せざるを得なくなったとしても、M&Aによる売却を実現できれば事業を継続させることができます。
事業を継続できれば、長年その温泉施設に通い続けてくれた顧客に廃業による迷惑をかけずにすむでしょう。また、廃業すれば従業員は解雇せざるを得ませんが、事業の継続により雇用も継続できます。
M&Aで売却すれば、その温泉のファンや従業員が変わらずに温泉に関われるというのは大きなメリットです。
経営の改善と強化
日帰り温泉施設や温泉ホテルなどは、幅広く事業を運営している会社の一つの部門であることも珍しくありません。
M&Aは会社から一部の事業だけを切り離して売却することも可能です。所有している温泉施設の事業が思わしくなく、会社全体の業績に悪い影響を及ぼしている場合には、温泉事業だけを切り離してM&Aで売却することで、経営資源の選択と集中ができます。
M&Aによる事業譲渡で経営の効率化や業績向上が期待できるでしょう。
売却益の獲得
M&Aで温泉施設を売却すれば、経営者には売却益が入ります。また、負債や個人保証は買収側に引き継がれるので、負債も残りません。
売却益が手に入ることで、引退後の生活費や新しく始める事業の資金を十分に確保できるでしょう。
買収側のメリット
温泉施設会社を買収することで、買収側が得られるメリットは次のとおりです。
シナジー効果
シナジー効果とは相乗効果のことです。異なる企業文化を持つ会社を買収することで、お互いのノウハウを活用できるようになるでしょう。
M&Aにより他の会社を買収することで、足し算ではなく相互が倍々で発展していく掛け算の効果が発揮できる可能性が高まります。
従業員やノウハウの承継
買収側の企業が、もしもゼロから温泉施設を立ち上げようとしたら、従業員向けのマニュアルを新たに作成してから、新規で募集をかけて雇用して教育しなければいけません。
特に、温泉ホテルや温泉旅館の場合には、良質なおもてなしができる従業員が必要なので、従業員の教育コストがかなりかかります。
しかし、M&Aで従業員ごと自社に迎え入れることができれば、すでにノウハウが身についた従業員を即戦力として活用できます。従業員を募集して育成する手間とコストを大幅に削減できます。
手間やコストの削減
もしもゼロから温泉施設を立ち上げようとしたら、温泉が出る土地を確保して、温泉掘削許可を得て掘削し、建物を建築しなければいけません。ゼロから始めることになると多大なコストがかかります。
しかし、すでにある温泉施設をM&Aで買収すれば、これらのコストはほぼ必要ありません。温泉を掘削したり、建物を建築したりする手間もかからず、M&Aでの買収は手間とコストを大幅に削減できるメリットがあります。
温泉施設業界のM&A・売却・買収事例5選
温泉施設業界でのM&Aの事例を5つ紹介します。
リゾリート(株)がナチュラルグリーンパークホテルの宿泊・天然温泉に関する事業をM&Aした事例
2022年11月に、株式会社アルファクス・フード・システムが所有していたナチュラルグリーンパークホテルの宿泊、天然温泉に関する事業と不動産をリゾリートに譲渡するM&Aを発表しました。
ナチュラルグリーンパークホテルが不採算事業であったことから、宿泊施設の運営や設計に専門的な知見を持つ人物が経営するリゾリートへの譲渡が適切であると判断したとのことです。
参考:株式会社アルファクス・フード・システム「計算書類の個別注記表 第29期」
ビジョンがこしかの温泉をM&Aした事例
2021年11月に株式会社ビジョンが、こしかの温泉株式会社の全株式を取得して、子会社化するM&Aを実施することを発表しました。
株式会社ビジョンはグローバルWi-Fi事業と新設法人向けの情報通信サービス事業を展開している企業です。第三の事業の柱としてグランピング事業を立ち上げています。
こしかの温泉は良質な温泉が自噴し、全室に温泉を完備しています。更に、グランピング施設も併設しており、ビジョンとしてはグランピング事業の成長を牽引する力になると考えてのM&Aとのことです。
参考:株式会社ビジョン「こしかの温泉株式会社の完全子会社化に関するお知らせ」
穴吹興産が祖谷温泉と祖谷渓温泉観光をM&Aした事例
2020年6月に穴吹興産株式会社が、祖谷渓温泉観光株式会社と有限会社祖谷温泉の株式を取得して、子会社化するM&Aを発表しました。穴吹興産が祖谷渓谷温泉観光の全株式の98.125%を、祖谷温泉の全株式を取得します。
穴吹興産は香川県及び岡山県でホテルや旅館の運営や公共施設等の指定管理者事業を行っている会社です。祖谷温泉は徳島県三好市の良質な温泉です。
穴吹興産としては、今後インバウンド事業を展開させる中で、まだまだ世界的に知名度の低い四国地方へ観光客を誘致する上で、祖谷渓温泉観光株式会社と有限会社祖谷温泉が長年培ってきたブランド力やプロモーション力は大変魅力的なものだとのことです。
参考:穴吹興産株式会社「祖谷渓温泉観光株式会社及び有限会社祖谷温泉の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
極楽湯ホールディングスがエオネックスと利水社をM&Aした事例
2020年3月に株式会社極楽湯ホールディングスが、株式会社エネオックスと株式会社利水社(以下合わせてエネオックスグループ)の全株式を取得して子会社化するM&Aを実施しました。
極楽湯ホールディングスはスーパー銭湯「極楽湯」を展開しています。エネオックスグループは、北陸地域を中心として温泉掘削や温泉施設の運営などを行っている会社です。
極楽湯としては、温泉設備の保守メンテナンスのノウハウのあるエネオックスグループと資本関係を築くことで、より低価格で安定した施設運営ができる体制が確保できるとしています。
参考: 株式会社極楽湯ホールディングス「株式会社エオネックス及び株式会社利水社の 株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
大江戸温泉物語がタラサ志摩ホテルをM&Aした事例
2018年5月に大江戸温泉物語グループ株式会社が、TSCホリスティックス株式会社から、タラサ志摩ホテル&リゾートを譲り受けるための不動産等売買契約書を締結しました。買収金額は15億3,000万円です。
タラサ志摩ホテルはタラソテラピーを軸にした営業活動を展開していましたが、宿泊者数や客単価を伸ばすことができずに営業損失が低迷していました。
その後、温泉リゾートTAOYA志摩としてグランドオープンして現在に至ります。
温泉施設会社のM&Aをする流れ
温泉施設会社をM&Aする流れをみていきましょう。
専門家に相談
温泉施設をM&Aしたいと考え始めたら、まずは専門家に相談してみましょう。日本には中小企業のM&Aを専門に扱う会社があります。M&Aをした方がいいのかどうか、といったことから相談に乗ってもらえるでしょう。
事業の行末に不安を感じたら、まずはM&Aの専門家に相談して下さい。
M&A総合研究所は、中小・中堅規模のM&A案件を主に取り扱っており、全国に案件に対応しています。
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売却先の選定
M&Aの専門会社に依頼することを決めたら、次に売却先の選定に入ります。具体的な企業名などを伏せた情報をM&A情報サイトに掲載したり、M&Aの専門会社に温泉施設の買収希望を伝えてある企業から、M&A専門会社が選定します。
いくつか売却先候補をピックアップしたら、経営者がどこの会社と交渉するのかを自ら検討した上で決定します。
トップ面談・条件交渉
交渉相手を決めたら、まずはトップ面談を行います。トップ面談とは結婚のお見合いのようなもので、お互いの相性を確かめます
資料などからは見えない企業文化や創業者の思いなどをお互いに伝え合い、M&Aする相手として適切かどうかを判断します。
お互いにM&Aの相手先としてふさわしいと判断したら、条件交渉に入ります。
秘密保持契約の締結
M&Aを行うためには、売却される側の会社の会計資料やノウハウなどの機密事項を買収側に開示しなければいけません。そのために、秘密保持契約を結びます。
秘密保持契約では、対象となる情報の内容、開示できる範囲、使用目的、使用期間、返還方法などが記載されます。双方の会社にとって不利な内容がないかよく確認した上で締結しましょう。
基本合意の締結
条件交渉がまとまったら基本合意書を締結します。基本合意書では、取引価格や売買の範囲、今後のスケジュール、デューデリジェンスの実施について、M&Aのスキームなどについて記載されます。
基本的に基本合意書には法的拘束力がありません。しかし、独占交渉権については破った場合には違約金を求められる可能性があります。
デューデリジェンスの実施
デューデリジェンスとは、買収側が買収しても大丈夫か細かく調査することです。M&Aの専門チームが入り、売却側の法務、財務、人事などについて詳細に調べます。
ここで、条件交渉のときには開示されていなかった問題点が明らかになった場合には、取引価格の減額やM&Aの破談の可能性もあります。
株主総会での承認
事業譲渡や事業売却では株主総会での承認は必要ありませんが、次の場合には臨時株主総会での特別決議が必要となります。
- 売却側が全事業を売却するとき
- 買収側が売却側の全事業を譲り受けるとき
- 売却側が総資産の5分の1以上の事業を売却するとき
なお、債務者を買収側に変更する場合には、各債権者の同意も必要になります。
最終交渉と最終契約の締結
デューデリジェンスの結果と、株主総会での承認に基づいて、最終交渉が行われます。双方が合意したら、最終契約書を締結します。
最終契約書には、取引対象、クロージングの前提条件、財務や事業に関する事項が正確であることを保証する表明保証、クロージング前後で実施することを義務付ける誓約事項、これらの事項に違反などが起きた場合の補償条項が記載されます。
クロージング
クロージングとは引き渡し手続きと代金の支払い手続きが終わり、経営権の移転が完了することです。
通常、最終契約書の締結からクロージングまでは短くても1ヶ月程度、長い場合には1年程度の期間を設けます。その間に、従業員や取引先へ説明して理解を求めたり、円滑に経営権が移行できるように社内の態勢を整えたりします。
温泉施設会社をM&Aする注意点
温泉施設をM&Aするときにはいくつか注意点があります。
まず、許認可を引き継げるかどうかを確認しましょう。温泉施設の経営には、管轄する保健所の温泉利用許可が必要です。温泉ホテルや温泉旅館の場合には旅館業の許認可も必要です。
創業当時の基準と現在の基準が異なっている場合には、現在の設備では許認可が下りない可能性もあります。買収する温泉施設の許認可について、取り直しが必要なのか、現在の基準に合致しているか、よく確認しましょう。
次に、従業員を継続して雇用できるか確認しましょう。接客に慣れた従業員がM&Aをきっかけに大量離職してしまうような事態は避ける必要があります。継続して雇用することを、丁寧に説明して従業員の理解を求めるように努めましょう。
温泉施設会社のM&A・事業譲渡まとめ
温泉施設も後継者問題などで廃業を検討せざるを得ない会社が増えています。M&Aで売却することで、事業を継続させて、地域の常連客や従業員に迷惑をかけずにすむでしょう。
温泉施設の今後に悩んだら、まずはM&Aの専門家に相談して、事業継続の可能性について検討してみましょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。