社会福祉法人のM&Aの手続き手順や手法は？成功事例・メリットも解説！

社会福祉法に基づいて設立され、社会福祉事業の施行を目的として設立された法人を社会福祉法人といいます。

一般的な法人形態である株式会社は収益確保のための事業内容を自由に設定できますが、社会福祉法人は社会福祉事業への従事が義務付けられその他の事業に携わることも可能です。

社会福祉法人の事業内容は主に長期滞在型の施設事業である一種と、滞在・訪問型の保育・介護事業である二種に分類されます。

一種事業としては児童養護施設や特別養護老人ホーム、障害者支援施設や救護支援施設などの事業が一般的です。

一方の二種は訪問介護や保育所、デイサービスやショートステイなどが挙げられます。

 

その他にも法人次第では子育て支援事業や人材育成事業などをはじめとした公益事業や、貸しビルや駐車場運営などの収益事業を手掛ける事例の社会福祉法人も少なくありません。

社会福祉法人は社会全体の高齢化に伴い、業界全体のニーズが向上すると同時にさまざまな課題を抱えているのが現状です。

では社会福祉法人の業界における今後の課題を紹介します。

人材育成や確保に関しても、社会福祉法人の課題として挙げられます。

近年は少子高齢化により若い人材が不足し、有能な人材の確保・育成が最重要課題とされています。

育成に関してはそれぞれの個性を重視し、その個性をベースにした育成・人事管理を徹底しなければいけません。

 

また確保した人材を離職させないためにも、職場の労働環境の改善なども社会福祉法人業界全体の重要課題です。

 

社会福祉法人業界では、賃金に関する問題も重要な課題の1つです。

社会福祉法人では事業者と契約者の契約にも続いてサービスが提供され、事業者の収益や賃金規定により社会福祉職員の賃金が設定されます。

そして現在の社会福祉職員の賃金は全業種平均よりも低く、賃金の低さゆえに勤続年数も短い傾向が強いです。

 

このような状況を改善するためにも事業者は財務諸表などに基づく収益性を確認し、的確な数値分析を行ったうえでの賃金改定も課題として挙げられます。

デジタル技術導入に関する問題も、社会福祉法人業界の課題の1つとして挙げられます。

社会福祉法人では業界全体で依然として慢性的な労働力不足が続いており、都道府県や市町村の条例で必要人員が規定されていますが十分な人手は確保できていません。

このような状況を改善するためにも、ICTをはじめとしたデジタル技術を導入し、少人数での業務効率化を目指す点も今後の課題として挙げられます。

 

近年の社会全体の高齢化により社会福祉法人のニーズも高まり、その動向に伴って業界全体で積極的なM&Aが展開されています。

では社会福祉法人のM&Aの目的を紹介します。

地域社会のニーズの変化への対応が迫られている点も、社会福祉法人のM&Aの目的として挙げられます。

近年急速的に進行している少子高齢化の動向に伴い、地域ごとに社会福祉法人業界に求めるニーズも変動しているのが現状です。

特に近年は少子高齢化で増加する高齢者や介護者に対し、人員不足などで十分なサービスを提供できていない社会福祉法人も多く見受けられます。

 

このような事態を回避して地域社会のニーズに対応できる高品質なサービス提供するのを目的として、集中力を高める事例のM&Aも多いです。

社会福祉法人では、運営体制の見直しを目的としたM&Aも盛んです。

特に近年は業界全体で採算性の悪い事業のみを切り離し、採算性の高い事業のみに集中して競争力を高める事例の社会福祉法人が増加しています。

また倒産時に企業価値の高い事業のみを切り離し、倒産による被害を軽減するスキームも業界内で増加しているのが現状です。

近年は多くの社会福祉法人が競争力を高めるためのM&Aを積極的に展開していますが、実際にどのようなスキームでM&Aが行われているのでしょうか。

では社会福祉法人で頻繁に使用されているM&Aスキーム（手法）を紹介します。

事業の一部、または全ての事業他社に譲渡・売却するM&Aスキームを事業譲渡といいます。

事業譲渡は事業における資産や権利、従業員などの資産が売り手側から買い手側にそのまま承継されるM&Aスキームです。

尚譲渡する事業や資産の範囲は売り手と買い手の協議によって設定され、譲渡範囲設定後に売り手と買い手と仲介会社で本格的な交渉を始めます。

 

また事業譲渡は一部の事業のみを売却可能な便利なM&Aスキームなので、不採算事業のみを譲渡・売却して事業再建を図る事例も多いです。

 

2つ以上の会社が1つの法人格として統合される事例のM&Aスキームを合併といいます。

合併時には事業の権利は合併時に新設する新設会社か、事業を統合する買い手側に引き継がれるスキームです。

基本的に社会福祉法人では、業界内のみで合併を行うことが義務付けられています。

 

また2つ以上の会社が合併し、合併により法人格が消滅する会社の事業や権利の全てを存続会社が引き継ぐスキームを吸収合併といいます。

一方2つ以上の会社が合併する際に新しい会社を設立し、存続会社と消滅会社の双方の事業や権利を新設会社に引き継ぐスキームが新設合併です。

社会福祉法人でM&Aを行う際の有効なスキームとして事業譲渡と合併が挙げられますが、具体的にどのように手続きを行うのでしょうか。

では社会福祉法人のM&Aの手続き手順を紹介します。

社会福祉法人のM&Aの有効なスキームの事業譲渡では、さまざまな手続きが必要です。

では社会福祉法人の事業譲渡の手続きの流れを紹介します。

社会福祉法人での事業譲渡では、最初に事前調査を行います。

社会福祉法人は一般企業とは事業譲渡における許認可も異なるので、各関係省などに相談して事業譲渡が可能か問い合わせましょう。

また事前に仲介会社などに相談して譲渡先のリサーチも行い、譲渡後に効率的な運営が可能かどうか調査するのもおすすめです。

譲渡の相手の確認が完了すれば、次に事業譲渡契約書を作成して譲渡契約を締結します。

譲渡契約の締結は義務づけられていませんが、公正な契約を行うためにも締結するのがおすすめです。

また双方の理事会の承認を得て議事録を残せば、後々のトラブル予防にも繋がります。

譲渡契約が締結すれば、次に定款の変更を行います。

定款変更に関して譲渡側は事業廃止に関する事項や財産処分に関する事項、譲受側は事業追加や財産増加などに関する事項を評議会で決議して申請します。

定款変更後に資産や負債の移転手続きを行います。

事業譲渡では不動産や負債も移動するので、仲介会社などに依頼して基本財産や負債の譲渡・不動産登記移転に関する手続きを行いましょう。

事業譲渡同様に合併にもさまざまな手続きが必要です。

では合併の手続き手順を紹介します。

社会福祉法人の事業譲渡では、最初に取引相手との合意確認を行います。

合意確認では仲介会社に相談してお互いの機密情報の漏洩を防ぐための秘密保持契約を締結し、事業譲渡範囲などに関する協議を行います。

その際に取引完了後の役員や従業員の処遇などに関しても相談・協議を行いましょう。

 

取引に関する合意確認・相談が完了すれば、次に譲渡後の役員の選定を行います。

場合によっては役員になるため資格や権限などが制限されているので、事前に相談・確認して適切な人材を選択しましょう。

 

役員選定後に、仲介会社などの専門家に相談して譲渡契約書の作成へと進みます。

契約内容に関しては双方で事前に相談・協議して各法人の理事会で承認を行います。

この際には決議に関しての議事録を残すのも重要なポイントです。

合併では双方の評議員会に相談し、承認を得なければ手続きの効力を発揮できません。

評議員会への相談・承認の内容に関しては議事録に明確に記載しましょう。

評議員会への相談・承認が完了すれば、各所轄帳に申請して正式な認可を取得しましょう。

その際には合併認可申請書や合併理由書など多岐にわたる書類が必要なので仲介会社に依頼しての準備がおすすめです。

社会福祉法人業界でM&Aを行えばサービス拡充などさまざまなメリットを取得できますが、他にどのようなメリットを得ることができるのでしょうか。

では社会福祉法人がM&Aをするメリットを詳しく解説します。

業務を効率化できるのも、社会福祉法人がM&Aをするメリットです。

社会福祉法人同士で事業統合すれば、お互いの事業ノウハウや人材、設備などを共有して現状よりもスムーズにサービスを提供できます。

またM&Aによる事業拡大で地域間の連携も高まってユーザーニーズへの迅速な対応も可能です。

 

社会福祉法人業界でM&Aを行えば、質の高いサービスが提供できる点もメリットです。

M&Aにより提携先の技術やノウハウ、革新的な設備などを共有・活用することにより自社のノウハウやスキルも向上して相対的なサービスも向上します。

また双方のスキルやノウハウが共有され、新たなシナジー効果を算出する可能性も高くなります。

 

経営基盤を強化できるのも、社会福祉法人でM&Aを行うメリットとして挙げられます。

M&Aで取引相手の強固な経営基盤を確保すれば、長期的な運営を継続して運営効率を高めることも可能です。

社会福祉法人でM&Aに成功すれば、事業ノウハウ取得などさまざまなメリットを取得できます。

では実際に行われた社会福祉法人のM&A成功事例を紹介します。

2021年4月には社会福祉法人のひらいルミナルが、特定非営利法人のヒーライトネットを江戸川区精神障害者地域生活安定化支援事業に譲渡しました。

このM&Aはひらいルミナルが運営効率促進のために手掛けた事例です。

2021年12月には社会福祉法人閑谷福祉会が、同じく社会福祉法人である浜っ子の障害福祉サービス事業を譲受しました。

このM&Aは閑谷福祉会が自社サービス拡充のために手掛けた事例です。

社会福祉法人のM&Aを成功させるためにも、いくつかの点に留意して手続きを進めなければいけません。

では社会福祉法人のM&A実施の際の注意点を紹介します。

社会福祉法人のM&Aを実施する際には、許認可や財産に関して所轄庁に相談して細かい調整を行わなければいけません。

M&Aで重要な財産や定款の手続きでは所轄庁からの許認可が必要です。

したがって事業譲渡や合併の際には、所轄庁への相談・調整が重要といえます。

職員・利用者への事前相談・説明も、社会福祉法人のM&Aを成功させるための注意点の1つです。

職員や利用者へ事前説明を行わずにM&Aを進めれば、余計な混乱を招いてしまいます。

また急な環境の変化に対応できずに職員が退職したリ、利用者が退所する可能性もあります。

 

このような事態を防いで健全な運営を行うためにも、職員や利用者への事前の相談・説明を徹底しましょう。

社会福祉法人のM&Aを成功させるためにも、説得力のある対価説明を準備しましょう。

社会福祉法人では法人外への対価性のない支出が認可されていないため、M&Aで生じる対価に関しても事業における対価として適切に評価しなければいけません。

仲介会社などの専門家に依頼してデューデリジェンスを徹底するのも、社会福祉法人のM&Aを成功させるための注意点です。

デューデリジェンスを行わなければ、取引完了後に売り手側の簿外債務などが発生して想定外の債務の支払い義務が発生する可能性が高くなります。

このような事態を防ぎ、取引完了後の余計な支払いを避けるためにも仲介会社による取引期間中のデューデリジェンスを徹底しましょう。

本記事では社会福祉法人のM&Aの手続き手順や手法を紹介し、成功事例・メリットも解説しました。

社会福祉法人のM&Aに成功すれば事業シェアの拡大やサービスの拡充など、さまざまなメリットを取得して高齢化によるニーズの多様化に備えることができます。

しかし手続きには法関連の複雑な手続きも多いので、仲介会社をはじめとした専門家に相談してスムーズに取引を進めて下さい。

 

またM&Aでも社会福祉法人の効率的な事業引継ぎが可能ですが、さらにスムーズな引継ぎや買収、売却を行うのであれば仲介会社による事業承継がおすすめです。

事業承継を活用すれば、自社親族内の後継者を擁立できれば簡単に手続きが完了します。

さらに親族や従業員内に後継者がいなくても、第三者企業から最適な後継者の擁立ができるのも仲介会社による事業承継のメリットです。

特に近年は事業承継に特化している仲介会社も多いので、一度利用を検討してみてはいかがでしょうか。