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2021年12月23日更新業種別M&A
医院継承の親子・親族承継のメリット・デメリットを解説【トラブル例あり】
医院継承は病院・クリニックを存続させるうえで最も重要な場面だといえます。一般的には親子・親族承継で医院継承を実践するものですが、親子・親族承継特有のトラブルは少なくありません。本記事では親子・親族承継のメリット・デメリットやトラブル例などをお伝えします。
医院継承とは
医院継承とはいうなれば病院・クリニックの事業承継を意味しますが、それには大きく分けて以下の二つがあります。
- 親族間での継承
- 第三者への継承
親族間での継承
医院継承において、最もスタンダードな形式が親族間での継承です。
この場合、院長や経営者の子供や妻などといった親族が病院・クリニックを引き継ぐことになります。
このような形式の継承は一般的な株式会社でも行われます。
「家業を継ぐ」という言葉があるように、日本では馴染み深いやり方だといえるでしょう。
しかし、昨今は家業を継ぐことが絶対ではなく、親族でも継承しないことは珍しくありません。
また、少子化の影響もあって、そもそも後継者がいないというケースも増えています。
第三者への継承
親族への継承が減る一方、昨今増えているのが第三者への継承です。
この場合、引退を考えている院長や経営者がスタッフや外部の人材に経営を継承することで、医院継承を実現します。
親族の場合、病院・クリニックの経営や業務について一からレクチャーをする必要がありますが、既に経営や業務を熟知している人材を後継者にすれば、そのような手間がなくなります。
そのため、第三者への継承の方がスムーズに進むことがあるでしょう。
また、最近は病院・クリニックが医院継承のためにM&Aを行うケースも増えています。
M&Aであれば後継者がいなくても医院継承が可能になります。
そのため、後継者不在に悩む病院・クリニックにとって活路になり得るでしょう。
医院継承の際に親子・親族承継を選ぶメリット・デメリット
ここでは医院継承を親子間で行う場合のメリットとデメリットについてお伝えしていきます。
親子・親族承継を選ぶメリット
親子・親族承継を選ぶメリットは以下の通りです。
- 1.新規開業と比べ初期費用を抑えられる
- 2.患者・スタッフ離れのリスクが少ない
- 3.親・親族からの支援が得られる
1.新規開業と比べ初期費用を抑えられる
後継者が元々病院・クリニックの開業を考えていた場合は、親子・親族承継は初期費用を抑えられる機会だといえます。
親子・親族承継を行えば施設や設備、スタッフなどをそのまま引き継ぐことができます。そうすればゼロから病院・クリニックを開業する際に、それらを用意する必要がなくなります。
さらにこれまで病院・クリニックが培ってきたコネクションなども引き継げるため、経営を順調に進めることもできるでしょう。
病院・クリニックの開業は専門的な設備を揃えるため、どうしても初期費用がかかります。初期費用の用意ができずに開業が頓挫してしまうケースも少なくないため、開業を検討されている方には親子・親族承継は良いチャンスになるでしょう。
2.患者・スタッフ離れのリスクが少ない
患者・スタッフ離れのリスクが減るのも親子・親族承継のメリットです。
第三者への承継は育成こそスムーズにいきやすいですが、経営者の親族外の人間を後継者に据えるため、患者やスタッフの心証が悪化するリスクがあります。
最悪な場合、後継者の人選に反発して患者やスタッフが離れることもあり得ます。
しかし、親子・親族承継は経営者の子供や親族が後継者になることで、心証を保ちやすくなります。
今でこそM&Aが利用されるなど医院継承は多様化していますが、それでも依然として子供・親族という肩書の影響力は強くなっています。病院・クリニックの継承をスムーズに完了させるうえでも、このメリットは有益でしょう。
3.親・親族からの支援が得られる
親子・親族承継であれば、親・親族からの支援が得やすくなるのも大きなメリットだといえるでしょう。
いくら適性があったとしても、初めて病院・クリニックの経営を行う以上、後継者が失敗するリスクは少なくありません。ただ、親子・親族承継であれば身近な支援を得やすくなるため、円滑に経営を進められる可能性が高まります。
親・親族からの支援は経営に関するものだけでなく、資金面でも期待できます。
親・親族との関係性さえ良好であれば、経営が危機に陥った際でも助けを得られるでしょう。
親子・親族承継を選ぶデメリット
親子・親族承継を選ぶデメリットには以下のようなものが挙げられます。
- 1.意見が対立する可能性がある
- 2.医院の場所を選ぶことが出来ない
- 3.親・親族の影響がいつまでも残る
1.意見が対立する可能性がある
親子・親族承継とはいえ、意見が対立する可能性は少なからずあります。
親子・親族承継は良くも悪くも前任の院長・経営者が存在するため、その人物の意向と対立すれば経営を進めにくくなる恐れがあります。
また、スタッフなどが前任の院長・経営者との関係が深いと、後継者と対立することもあり得るでしょう。
もし身の振り方を間違えると孤立してしまうことにもなりかねないので、充分注意しておきましょう。
2.医院の場所を選ぶことが出来ない
開業を志している人であれば、医院の場所を選ぶことができない点はデメリットだといえるでしょう。
親子・親族承継は既存の病院・クリニックを承継することになるため、その施設が持つ制約も引き継がなければならなくなります。
病院・クリニックの開業で理想があった場合、親子・親族承継を行ったがためにそれが実現できなくなるリスクは踏まえておくべきでしょう。
3.親・親族の影響がいつまでも残る
さきほど親子・親族承継を行うと、親や親族の支援を受けやすくなるとお伝えしましたが、これは裏を返せば「親・親族の影響がいつまでも残る」ともいえます。
常に手厚く支援してくれる親・親族の存在は大きいですが、その影響は時として経営の支障になる恐れがあります。親・親族の意向が強いと、医院継承が完了しても後継者が上手く経営に集中できなくなるからです。
そうなれば、もし後継者が理想としている経営があったとしても、親・親族のせいで実現できなくなることにもなるでしょう。もちろん前任の支援はありがたいものですが、それが後継者の自由を制限するようなもになると意味がありません。
親・親族の影響を防ぐには後継者と親・親族との関係性に依拠しますが、必要があれば距離を取ることも選択肢に入れた方がいいでしょう。
医院継承を親子・親族承継にした事によるトラブル例
ここでは親子・親族承継を行った際のトラブルをお伝えします。
クリニックAの場合
内科のクリニックAの院長であるXは高齢を理由に医院継承を考えており、長男のYへの親子承継を実行しようとしていました。その際、Xはクリニックの出資持分を贈与という形でYに継承させていました。
しかし、贈与が完了する前にXが急逝したことで状況は一変します。xは贈与こそ続けていたものの遺言書がなかったため出資持分の最終的な分配は不明なままでした。その結果医師になる意思がない次男のZが相続の公平性を盾に出資持分の買い戻しを請求し、クリニックAは多額の出費を支払うことになりました。
この事例は相続に関する取り決めを早い段階で決めておかなかったことが招いた事態だといえます。
病院Bの場合
整形外科を専門とする病院Bは高齢化した院長のOが長男のPに医院継承を行いました。
しかし院長のOはなかなか一線から引かず、長男のPは院長になっても経営についてOに伺いを立てなければならない状況が続いていました。
体調不良で判断能力が衰えたOでも実父であるためPは逆らえず、結局経営の意思決定のスピードがいつまでも遅滞する事態に陥ってしまします。
この事例は前任の経営者である親が後継者に介入し続けている典型例だと思います。
確かに経験豊富な前任の経営者の存在は大きいですが、それが時として後継者の足を引っ張ることとなる好例だといえるでしょう。
医院継承の際に親子・親族承継をスムーズに行うために
医院継承で親子・親族承継をスムーズに進めたいのであれば、以下のポイントを意識しておきましょう。
- 1.事前に医院に勤務し共通認識を確認する
- 2.繋がりのある医院・取引先への紹介
- 3.スタッフの声・患者のニーズに対応した運営
- 4.親・親族は一歩引いて見守る
- 5.医院継承の専門家に相談する
1.事前に医院に勤務し共通認識を確認する
親子・親族承継を行うのであれば、後継者は事前に医院に勤務して共通認識を確認しておくべきでしょう。
いきなり親子・親族承継を行って院長・経営者になったとしても、現場や経営陣との共通認識を持っていなければ経営は捗らないものです。最悪な場合、内部で無用なトラブルや対立を招く原因になるでしょう。
実際に勤務をすることはこのような事態を防ぐだけでなく、スタッフや患者とコミュニケーションを取り、信頼関係を構築する良い機会にもなります。そのためいずれ病院・クリニックを引き継ぐなら、現場での勤務は行っておくことがおすすめです。
2.繋がりのある医院・取引先への紹介
親子・親族承継を行う後継者を繋がりのある医院・取引先に紹介しておくこともおすすめです。
同業者や日ごろ取引のある業者とは後継者が親子・親族承継を行った後も付き合いが続くものであり、彼らとも関係性を構築していけば継承後の経営がスムーズになります。
また、外部の人間とのコミュニケーションは後継者にとって有益なものです。医院の経営や業務についてより深く学べますし、外部と関わっていくことが見識が広がるようになります。
3.スタッフの声・患者のニーズに対応した運営
病院・クリニックを継承する以上、スタッフの声・患者のニーズに対応した運営は行わなければなりません。病院・クリニックの安定な運営を実現するうえで、スタッフや患者の声は無視できないものです。そもそも病院・クリニックは公共性が高い事業であり、スタッフや患者を軽視すると評判にダイレクトに影響します。
また、シェアを獲得していくうえでもスタッフや患者の協力は欠かせないものです。昨今はより良質な医療やサービスを求めて多くの患者がインターネットや週刊誌で情報収集をする時代です。
そのため、提供する医療やサービスの差別化ができなければ病院・クリニックの存続は難しくなります。
しかしより多くのスタッフの声や患者のニーズをくみ取っていけば、病院・クリニックが提供する医療やサービスの質を向上させることが可能になります。
4.親・親族は一歩引いて見守る
親子・親族承継を行った後、親・親族は後継者に対して一歩引いて見守るようにしましょう。
さきほどもお伝えしましたが、親・親族の影響力が強くなると後継者がのびのびと経営に取り組むことが難しくなります。
加えて現経営者の親・親族の存在感がありすぎると、スタッフが後継者に従い辛くなります。そうなれば組織運営にも支障が出てしまうでしょう。
例え後継者が心配だったとしても万が一の事態にならない限り、親・親族は経営に口を出さないことがおすすめです。
5.医院継承の専門家に相談する
親子・親族承継に限らず医院継承を行うのであれば、医院継承の専門家に相談するようにしましょう。
医院継承は一般的な株式会社の事業承継と同様に多くの時間や手間がかかるだけでなく、時には専門的な知識を交えて取り組む必要があります。
時には発生したトラブルへの適切な対処も行わなければならないため、当事者だけで行うのは難しいでしょう。円滑に医院継承を実現するうえでも、専門家のサポートは不可欠だと言えます。
ただ、医院継承の専門家は慎重に選ぶ必要があります。医院継承は通常の株式会社の事業承継と比べて専門性が高く、業務や設備などに関する知識にも精通していなければ上手くできません。そのため、医院継承を任せられる専門家はどうしても限られてしまいます。
実際に専門家を選ぶ際には、評判や実績、ノウハウにも注目して選ぶようにしましょう。
まとめ
医院継承における親子・親族承継は手軽に行いやすい分、トラブルの要因も多い点に気を付けておかなければなりません。
後継者と程よい距離感を保ちつつ、万全の体制で臨むようにしましょう。
【医院継承とは】
- 親族間での継承
- 第三者への継承
- 新規開業と比べ初期費用を抑えられる
- 患者・スタッフ離れのリスクが少ない
- 親・親族からの支援が得られる
- 意見が対立する可能性がある
- 医院の場所を選ぶことが出来ない
- 親・親族の影響がいつまでも残る
- 事前に医院に勤務し共通認識を確認する
- 繋がりのある医院・取引先への紹介
- スタッフの声・患者のニーズに対応した運営
- 親・親族は一歩引いて見守る
- 医院継承の専門家に相談する
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。