M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年6月7日更新会社・事業を売る
配当所得とは?確定申告や税率、控除についてわかりやすく解説
配当所得とは、株式の配当金や投資信託の収益分配金で得られる所得をさします。配当所得を得ると所得税や住民税などが課税されるうえに、確定申告の手続きが必要です。そこで本記事では、配当所得に課される税金や確定申告の方法などを中心に解説します。
配当所得
株式への投資は、資産運用の代表的な方法のひとつです。株式の運用では、売却によるキャピタルゲイン(譲渡所得)だけでなく、保有により得られるインカムゲイン(配当所得)が存在します。このうち本記事で着目するのは、インカムゲインにより獲得した配当所得についてです。
合わせて、配当所得にかかる税金もわかりやすく解説します。特に株式を運用している方や配当所得の仕組みを知りたい方などは必見の内容です。
配当所得とは?配当所得の意味
本章では、まず基礎的な知識として、配当所得の概要・具体例・配当所得と譲渡所得の課税方法の違いなどを中心に取り上げます。
配当所得とは
はじめに、配当所得の意味を取り上げます。配当所得とは、株式の配当金や投資信託の収益分配金などで得られる所得のことです。企業や投資信託によっては、投資してもらう見返りとして定期的に稼いだ利益の一部を投資家に配っています。
このときに配っている利益は配当金と呼ばれており、配当金として受け取った利益は配当所得と呼ばれます。その一方で、保有する株式の売却時に得られる利益は譲渡所得です。
配当所得の具体例7つ
配当所得の具体例としては、以下のような項目が挙げられます。
- 法人から受ける剰余金の配当(株式会社の剰余金の配当など)
- 法人から受ける利益の配当 (合同会社・合名会社・合資会社の利益の配当など)
- 剰余金の分配(農業協同組合への出資に対する剰余金の配当金など)
- 投資法人から受ける金銭の分配
- 基金利息(相互保険会社の基金に対する利息など)
- 公社債投資信託および公募公社債等運用投資信託以外の投資信託の収益分配(ユニット型証券投資信託の期中分配金・オ-プン型証券投資信託の普通分配金など)
- 特定受益証券発行信託の収益の分配
上記の中でも、多くの経営者の方にとっては株式の配当金などが最も身近にイメージできる具体例だといえます。
配当所得と譲渡所得の課税方法の違い
配当所得はインカムゲイン・譲渡所得はキャピタルゲインと比較して呼ばれる場合もありますが、配当所得と譲渡所得は課税方法が異なっているため注意しましょう。そこで本章では、配当所得と譲渡所得における課税方法の違いについて、順番に詳しく取り上げます。
なお、配当所得・譲渡所得を問わず税務上の所得には該当するため、当然ながら所得税や住民税の課税対象です。
配当所得の課税方法
まずは配当所得から取り上げます。配当所得は原則として総合課税が採用されます(法人から受ける剰余金の配当および、公募証券投資信託の収益の分配などの所得 ※申告分離課税を選択したものを除く)。
しかし、一定の内容については「確定申告せずに源泉徴収のみで課税を完了させる方法」や「申告分離課税」を選択できる場合(特定目的信託の社債的受益権の収益の分配などの所得)も存在するため、事前に配当所得の性質を確認するように注意しましょう。
譲渡所得の課税方法
譲渡所得については、総合課税に該当するケース(ゴルフ会員権・金地金・機械などの譲渡による所得)と、申告分離課税に該当するケース(土地・建物・借地権・株式など譲渡による所得)が存在します。
なお、M&Aを行う際にも配当所得および譲渡所得の課税を受けるケースが一般的であるため、税務に関する専門知識が必要不可欠です。
M&Aスキームにより課税方法や税額が大きく異なるため、配当所得や譲渡所得への影響を踏まえたうえでスムーズにM&Aを進めたい場合は、専門家のサポートが有用です。
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配当所得における申告不要制度と課税方式
配当所得を確定申告する場合、原則として以下の3つの課税方法から自由に選択できます。
- 総合課税方式
- 申告分離課税方式
- 申告不要制度
なお、上場株式以外の配当は、申告不要制度を選択できません。採用する確定申告の方法によって課税の仕組みが大きく異なるため、それぞれの方法を順番に詳しく紹介します。
①総合課税方式
総合課税方式とは、配当所得を他の所得と合算したうえで税額を計算する方法です。この所得には配当所得以外にも給与所得・譲渡所得・事業所得などさまざまな種類が挙げられますが、総合課税方式を選択した場合は法人(あるいは個人)が年間で獲得した所得をすべて合算したうえで所得税・住民税を計算します。
例えば、「配当所得を50万円・事業所得を800万円・譲渡所得を100万円」得たケースを想定すると、「50万円+800万円+100万円=950万円」が年間の総所得であり、この950万円に対して課税されます。
②申告分離課税方式
申告分離課税方式とは、配当所得を他の所得と分離したうえで個別に税額を計算する方法です。つまり、「配当所得は配当所得・譲渡所得は譲渡所得」のもとで、それぞれ個別的に所得税・住民税を計算します。
ここで総合課税方式で取り上げたケースを用いると、配当所得の50万円を他の所得の合計900万円(事業所得800万円+譲渡所得100万円)と切り離したうえで、所得税・住民税を計算します。なお、一般口座や源泉徴収されない特定口座を利用して株式投資を行う場合は、申告分離課税方式を選択するのが原則です。
非上場株式の配当は申告分離課税方式を利用できないため、混同しないよう注意してください。その一方で、株式譲渡時の譲渡所得に対しては申告分離課税方式が適用されるため把握しておきましょう。
③申告不要制度
申告不要制度とは、自身で確定申告を行わずとも自動的に課税(源泉徴収)される制度のことです。例えば、配当所得を10万円獲得したケースを想定すると、源泉徴収されたうえで手元に入金されているため、所得に関する課税関係は完結しています。
ちなみに、特定口座(源泉徴収あり)を利用して上場株式売買を行う場合には、確定申告が不要です。この制度は、個別的に税金の計算をせずに済む点において非常にメリットの大きい制度だといえます。
配当所得における所得税と住民税
本章では、配当所得に課税される所得税と住民税を詳しく解説します。
①所得税・住民税とは
所得税とは「ある1年間で稼いだ所得に対して課税される税金」のことであり、国に納税する税金です。給与所得・事業所得・譲渡所得だけでなく、本記事で取り上げている配当所得も課税を受けます。その一方で、住民税とは、「ある年の1月1日時点で自身が住んでいる地域に納付する税金」のことです。
上記は「市町村民税」と「道府県民税」の2種類で構成されており、いわゆる地方税に該当する税金であるため、地域発展などに対して直接的に活用されます。
②申告制度の選択と所得税・住民税
配当所得は、確定申告の方法を自由に選択できるうえに、所得税と住民税ごとに異なる確定申告の方法を選択可能です。例えば、「所得税は申告分離課税方式・住民税は申告不要制度を利用する」といった形式のもとで、自身の税負担を考慮したうえで申告方法を選択できます。
なお、「総合課税方式」と「申告分離課税方式・申告不要制度」の2つを比較すると、後者の方が住民税率が低く設定されています。そのため、住民税については、「申告分離課税」もしくは「申告不要制度」のいずれかを選択すると良いでしょう。配当所得に関する税率は、次の項で詳しく解説します。
配当所得の税率と控除
本章では、配当所得の税率と控除を取り上げます。配当所得の税率と控除について理解しておくと、確定申告の際により有利な申告手続きの検討が可能です。
①配当所得の税率
配当所得の税率は、採用する確定申告方法ごとに異なります。「総合課税方式」「申告分離課税方式」「申告不要制度」について、それぞれの税率を以下のとおりまとめました。
総合課税方式
配当所得において総合課税方式を選択した場合、所得税率と住民税率は以下のとおりです。
- 所得税率→累進課税(5.105~45.945%)
- 住民税率→10%
住民税率は、所得金額に関係なく一律で10%です。その一方で、所得税率には所得金額が多くなるほど税率が高くなる「累進課税」が適用されます。配当所得や給与所得など、あらゆる所得の合計金額が4,000万円を超えた場合は、45.945%もの税率が課される仕組みです。
そのため、「配当金額が多額にある方」あるいは「配当所得以外で多額の所得がある方」などは、所得税申告において総合課税の選択を控えると良いでしょう。
申告分離課税方式
配当所得において申告分離課税方式を選択した場合、所得税率と住民税率は以下のとおりです。
- 所得税率→15.315%
- 住民税率→5%
申告分離課税方式では、配当所得の金額に関係なく一律で上記の税率が適用されます。住民税率は総合所得よりも低いため、申告分離課税方式を選択すると良いです。その一方で、所得税は、他の所得も考慮したうえで納税額を抑えられる方法を選択しましょう。
申告不要制度
配当所得において申告不要制度を選択した場合、所得税率と住民税率は以下のとおりです。
- 所得税率→15.315%
- 住民税率→5%
申告不要制度では、申告分離課税方式と同様の税率が適用されます。
参考:株式の税金(みずほ証券)
②配当所得の控除とは
配当所得の控除とは、所得税や住民税から配当金の一部を税額控除できる制度をさします。国内株式(非上場含む)や国内投資信託(REITを除く)などによって得た配当所得であれば、一定金額を控除可能です。ただし、配当所得の控除を受けるには、総合課税方式を選んで確定申告する必要があります。
総合課税方式では累進課税が採用されているため不利になるケースも存在しますが、一般的には合算した所得額が約695万円以下の場合は総合課税を選択すると有利です。そのため、配当所得の控除を活用する際は、事前に所得金額を計算しておきましょう。
確定申告における配当所得の計算方法
最後に、確定申告における配当所得の計算方法について、以下の順番で取り上げます。
- 配当所得に該当する利益を列挙する
- 列挙した配当所得を分類する
- 配当所得の確定申告方法を選択する
- 負債の利子を控除する
それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。
①配当所得に該当する利益を列挙する
はじめに、配当所得に該当する利益を列挙しましょう。ここでは、株式の配当金だけでなく投資信託の利益分配金なども配当所得に含まれる点に注意してください。
②列挙した配当所得を分類する
配当所得を列挙したら、次にこれを「上場株式の配当」と「上場株式以外の配当」に分類しましょう。このうち上場株式以外の配当には、非上場株式の配当や投資信託の利益分配金・保険会社からの利益分配が該当します。分類する理由は、配当の種類によって選択可能な確定申告の方法が異なるためです。
具体的にいうと、上場株式の配当ではすべての申告方法を選択できる一方で、上場株式以外の配当では「総合課税方式」もしくは「申告不要制度」の2つから選択します。
③配当所得の確定申告方法を選択する
配当所得を分類した後は、配当所得ごとに確定申告の方法を選択します。ここでは、さまざまなシミュレーションを行い、最も税負担の軽い申告方法を選択することが重要です。シミュレーションを行う際は、所得税と住民税で別々の申告方法を選択できる点も意識しておきましょう。
④負債の利子を控除する
株式購入のために負債を借り入れた場合は、負債の利子について配当金の収益からの控除が認められます。そこで、配当の収益から負債利子を控除すれば、配当所得の計算が完了です。
以上、配当所得の計算方法を紹介しましたが、慣れていない方にとっては非常に困難なプロセスです。正確に計算する自信のない方は、税理士に税額計算を依頼するのも良いでしょう。
配当所得における確定申告まとめ
本記事では、配当所得に関するポイントを中心に幅広く解説しました。証券取引により配当所得を得た場合、所得税や住民税が課税されます。株式や投資信託により配当所得を得たら、納税を行いましょう。
とはいえ、配当所得の申告には選択肢の多さや手続き面などで大きな手間・労力がかかります。慣れていない方は、税理士・税務署などへの依頼を検討すると良いでしょう。本記事の要点は、以下のとおりです。
・配当所得とは
→株式の配当金や投資信託の収益分配金などで得られる所得
・配当所得の総合課税方式とは
→配当所得を他の所得と合算したうえで税額を計算する方法
・配当所得の申告分離課税方式とは
→配当所得を他の所得と分離したうえで個別に税額を計算する方法
・配当所得の申告不要制度とは
→自身で確定申告を行わずとも自動的に課税される制度
・配当所得における所得税と住民税
→所得税と住民税においてそれぞれ別の申告方法を選択可能
・配当所得の税率
→総合課税「所得税率は累進課税(5.105~45.945%)・住民税率は10%」、申告分離課税「所得税率は15.315%・住民税率は5%」、申告不要制度「所得税率は15.315%・住民税率は5%」
・配当所得の控除とは
→所得税や住民税から配当金の一部を控除できる制度
・確定申告における配当所得の計算方法
→配当所得に該当する利益を列挙する、列挙した配当所得を分類する、配当所得の確定申告方法を選択する、負債の利子を控除する
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