M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年11月29日更新事業承継
LPガス会社の事業承継の動向!メリットや流れと事例など解説!
ガス業界は日本社会を支えている重要な産業ですが、LPガス会社はガス業界の需要縮小や高齢化などに伴い年々減少傾向にあり、事業承継を行う会社が多くなっています。この記事では、LPガス会社の事業承継の現状や動向、メリット、流れを解説します。
目次
LPガス業界の現状
ガス会社の多くは、高齢化や後継者不足などが原因で廃業するケースが増加しているため、その対策として事業承継を進めています。ここでは、ガス会社の現状や事業承継の動向について解説します。
LPガス業界とは
LPガス業界は電力業界や水道業界、鉄道業界などと同じインフラ業界の1つであり、ガスは社会で必要不可欠な資源です。
取り扱われているガスには都市ガスとプロパンガスの2種類がありますが、取り扱いが非常に危険なためガス会社が供給・販売を行っています。近年のガス業界の動向として、年々需要の低下や業界の高齢化などに伴い縮小が進んでいる状態です。
LPガス業界の市場規模
LPガス業界の市場規模は年々縮小しており、今後も廃業するガス会社が増えていくことが予想されています。特に、プロパンなどのLPガス業界の市場規模は大きく減少しており、それに伴い事業者数も年々減少してきました。
近年は都市ガスやオール電化などが時代と共に普及が進んでいることもあるため、プロパンを含むLPガス業界は今後も縮小していくと考えられており、事業者にとって競争力を高めて需要を拡大するための戦略やサービス開発が重要となっています。
LPガス業界の事業承継動向
LPガス業界における事業承継の動向として挙げられるのは、事業承継を進める企業が増加していることです。事業承継が増えているのは経営者や従業員の高齢化、後継者不在、需要の現象による市場規模の縮小が原因であり、廃業を選択する会社もみられます。
また、ガス会社の場合、あらたに人材を確保したくても労働環境の過酷さや専門性の高さなどにより、難しい部分があるのが実情です。
そのため、多くのガス会社の動向として事業承継を行い商圏獲得や事業の多角化を図り、競争力や企業価値の向上を目指しています。
LPガス会社の事業承継を行うメリットとデメリット
LPガス会社が事業承継を行うメリットとデメリットは数多くありますが、実際にどのようなメリットとデメリットがあるのか理解している方はあまり多くありません。
また、LPガス会社のM&Aによる事業承継の場合、売却側と買収側ではそれぞれメリットとデメリットが異なります。ここでは、LPガス会社が事業承継を行うメリットとデメリットを解説します。
売却側
LPガス会社が事業承継によって自社を売却する場合、主に以下のメリット・デメリットがあります。
メリット
- 後継者不足を解消できる
- 売却益を獲得できる
- 債務責任を解消できる
- 事業拡大になる
- 事業の多角化になる
- 従業員の雇用を確保できる
- 人材不足や高齢化の解消になる など
LPガス会社を売却することで自社の自社の事業拡大を図れるだけでなく、人材確保や廃業を防げるなどのさまざまなメリットがあります。さらに、LPガス会社同士での事業承継であれば、スムーズに経営統合も進められることでしょう。
デメリット
- 希望の価格や条件で売却できない
- 従業員や取引先から反対される
- シナジー効果を期待できない
- 相手先が見つからない
- 売却後に相手先が不祥事を起こす
- 税金対策にならない など
LPガス会社を売却を検討している場合は、以上のデメリットもしっかりと理解したうえで事業承継を進めていく必要があります。
そもそも相手先が見つからなかったり交渉がスムーズに進まなかったりなどの問題があれば、売却自体できなくなってしまうため、注意が必要です。
買収側
LPガス会社が事業承継によって会社を買収する場合、主に以下のメリット・デメリットがあります。
メリット
- 事業拡大に繋がる
- 事業の多角化ができる
- 経営資源を確保できる
- 商圏の拡大を果たせる
- ガスの流通経路を効率化できる
- 企業価値の向上が期待できる など
LPガス会社には、他業界と比較しても強く商圏が決まっているため、なかなか事業拡大や商圏拡大を図ることが難しい状態です。
しかし、別地域の商圏を保有しているガス会社を買収することで、簡単に商圏の拡大やそれに伴う事業拡大が可能となります。
デメリット
- 買収に多額の費用がかかる
- シナジー効果を得られない
- 従業員の大量離職
- 負債を抱える場合がある
- PMIに失敗してしまう
- 買収後に設備改善や追加で費用がかかる など
LPガス会社を買収する場合、これらのデメリットが発生する可能性もあります。特に、買収するガス会社は自社よりも設備が劣っているケースでは、M&A後に追加の設備投資が必要です。
さらに、買収したLPガス会社の顧客が他社に離脱してしまう可能性もあるため、それらの対策もしっかり行わなければいけません。
LPガス会社の事業承継を行う基本的な手続き方法と流れ
LPガス会社が事業承継を行う場合は、その他産業の会社が事業承継を行う場合と同じ手続き方法と流れで進めていきます。
そのため、LPガス会社の事業承継を検討している場合でも、通常の事業承継と基本的な手続き方法と流れは同じです。ここでは、事業承継を行う基本的な手続き方法と流れについて解説します。
①事業承継(M&A)の検討・専門家への相談
まず最初に事業承継(M&A)の検討・M&A専門家への相談を行います。自社が事業承継をする上で抱えている課題の対策を行い、十分に事業承継による効果を期待できればM&A専門家への相談を行うとよいでしょう。
事業承継をスムーズに進めていくためには、豊富な経験や知識のあるM&A専門家からのサポート・アドバイスは欠かせません。自社のみM&Aを実行する企業もいくつか存在していますが、その場合車内に多くの専門家を抱えているケースがほとんどです。
特に、初めて事業承継を進める企業が、M&Aの専門家からのサポート・アドバイスを受けずに進めてしまうと、スケジュール調整や戦略立案がスムーズに進まずに失敗するリスクが高まります。
そのため、自社で事業承継の検討を行うと同時に、M&Aの専門家への相談も欠かさずに行いましょう。
②事業承継(M&A)売却価格・条件・課題などを検討
事業承継の売却価格・条件・課題を検討することも大切なプロセスの1つです。自社の適正価格や条件、事業承継を行う上での課題などをしっかりと検討し、十分に事業承継を進められるかどうか判断する必要があります。
価格や条件が高すぎるとマッチングが難しくなりますが、反対に低過ぎてしまうと自社が不利になる場合があるので、慎重に検討しましょう。
③交渉相手を選ぶ
事業承継に関する条件や課題の検討が完了すれば、実際に交渉相手を選んでいきます。交渉相手は、M&A専門家からのサポートを受けて、幅広い選択肢の中から自社に適した交渉相手を選定することが大切です。
また、この交渉相手を選ぶためには、自社の情報をまとめた資料である「ノンネームシート」を用意して交渉相手に提示します。そして、交渉相手が提供された資料(ノンネームシート)を確認して関心をもった場合は、交渉を進めていくためにさらに自社の情報を詳しくまとめた資料(企業概要書)を提示します。
ただ、幅広い選択肢の中から自社に適した相手を見つけるためには、交渉の中で自社に十分なメリットがあるかどうか見極めることが重要であり、安易に交渉相手を選定しないように意識が必要です。
④秘密保持契約の締結
交渉相手の選定が完了したら、続いて交渉相手とM&A専門家との間に秘密保持契約を締結します。
事業承継では、自社の重要情報を開示して交渉・取引を進めていく必要があるため、秘密保持契約を締結して情報漏洩を防ぐことが大切です。
そのため、秘密保持契約を締結することは事業承継プロセスの中でも非常に重要な手続きになります。
⑤相手企業との交渉開始
選定した交渉相手と実際に交渉を行い、お互いの事業承継に対する認識のすり合わせや条件の提示をします。
さらに、他にもお互いの譲れない条件や妥協できる条件、事業承継を進める上での条件なども慎重に話し合います。
ある程度交渉が進んだ段階でお互いの経営者同士が顔を合わせるトップ面談を実施し、書類やデータでは判断できない部分の話し合いを進めていきます。
この段階では、スムーズに面談を進めるために、事前に想定される質問やその回答を用意しておくことが効果的です。
⑥基礎情報開示
基礎情報開示では、秘密保持契約を締結した上で、以下2つの重要情報が記載された資料を提示します。
- IM(インフォメーションメモランダム)
- プロレスレター
IMは事業内容・財務状況・取引先・資産・設備・雇用状況などが記載されており、プロセスレターには今後のスケジュールや入札の手順、デューデリジェンスについての情報が記載されています。
そのため、基礎情報開示も事業承継プロセスの中で、非常に重要な手続きになります。
⑦デューデリジェンス実施
デューデリジェンスとは、事業承継によるメリットやリスク、相手企業の価値や状態を調査するプロセスです。
事業承継を行なっても問題がないか判断するために財務・法務・税務・雇用などを専門家が徹底的に調査します。特に、LPガス会社の場合は簿外債務についての調査が徹底的に行われます。
そのため、デューデリジェンスは事業承継を行う上で非常に重要なプロセスであり、このデューデリジェンスの結果が事業承継後の利益に大きく繋がることもあります。
さらに、デューデリジェンスで問題が見つかった場合は、取引が中断される場合もあります。事業承継を行う場合は、自社に弱点や問題がほとんどない状態にした上で交渉を進めることが最適です。
⑧最終契約締結
全ての手続きが問題なく完了したら、最終契約締結に進みます。最終契約では、最初に提示した条件にデューデリジェンスの結果を反映させて、売却価格や条件の提示をします。
提示された内容に問題がなければ締結しますが、自社が不利になってしまう場合はこの段階で破棄するのも1つの手です。ただ、締結後一方的に契約破棄をしてしまうと損害賠償請求が発生するため、慎重に進めていきましょう。
⑨クロージング
最終契約締結が完了すれば、取引は全て完了します。クロージングでは、売り手側の引き渡し・買い手側の支払い・その他必要な書類の手続きなどが行われます。
多くの場合、クロージングがスムーズに進められるように事前にクロージングの計画書を作成します。クロージングが終了すれば、事業承継の手続きは全て完了です。
LPガス会社の事業承継(M&A)の成功事例
これまでに多くのLPガス会社が事業承継を行っており、成功事例も数多く存在しています。これからLPガス会社の事業承継を検討している会社は、自社の事業承継を成功さるためにも成功事例を参考にしてみることをおすすめします。
岩谷産業とアイエスジーとのM&A
2024年11月、総合エネルギー事業をグループ展開する岩谷産業は、 千葉県船橋市のアイエスジーを子会社化すると発表しました。子会社となるアイエスジーは、家庭用・業務用のLPガス小売事業やガス機器・住設機器の販売施工などを手掛けています。
今回のM&Aは、千葉県・茨城県エリアでの事業規模拡大と物流機能の連携強化が主な目的です。岩谷産業はアイエスジーを子会社化することで同社が事業展開する千葉県・茨城県エリアでの事業規模拡大を図るとともに、双方の物流機能の連携して合理化や営業効率化を進めるとしています。
また、本M&Aにより顧客基盤や顧客向けサービスを融合させることで、岩谷産業グループの事業基盤強化を図る狙いです。
参考:アイエスジー株式会社の株式取得に関するお知らせ
日本海ガス絆ホールディングスと北雄ホームサービスとのM&A
2024年7月、ガス事業・総合エネルギー事業・インフラ設備事業などを展開する日本海ガス絆ホールディングスは、富山県高岡市の北雄ホームサービスを完全子会社化すると発表しました。
子会社となる北雄ホームサービスは、LPガス・灯油などエネルギー販売事業を高岡市中心に行う、日本海ガス絆ホールディングスの傘下企業です。
今回の完全子会社化によって、日本海ガス絆ホールディングスはより地域に根差したサービス・提案が可能な体制を構築し、グループの経営資源を有効活用することでさらなるシナジー創出を図るとしています。
参考:株式会社北雄ホームサービスの株式取得(完全子会社化)に関するお知らせ
SMBCキャピタル・パートナーズによるアクアクララレモンガスホールディングスとアクアクララの子会社化
2024年7月、SMBCキャピタル・パートナーズは、アクアクララレモンガスホールディングスおよびアクアクララの2社について、SMBCキャピタル・パートナーズの投資事業有限責任組合が設立した特別目的会社を通じて全株式を取得すると発表しました。
M&A対象となるアクアクララレモンガスホールディングスはLPガスの卸売および小売事業、アクアクララは宅配水の販売および製造事業を行っています。
今回の子会社化は、アクアクララレモンガスグループの顧客基盤をSMBCキャピタル・パートナーズのネットワークで強化し、地域社会への貢献向上が目的です。
参考:株式会社SMBCキャピタル・パートナーズの資本参加についてのお知らせ
大阪ガスとTerra Motorsとの資本業務提携
2023年5月、大阪ガスは東京都港区のTerra Motors資本業務提携締結したと発表しました。大阪ガスは、ガスの製造供給販売・電力の発電販売・LPGの販売を展開する企業です。Terra Motorsは、EV充電インフラ事業・金融サービス事業・e-Mobility事業などを手掛けています。
今回の資本業務提携は顧客へのEV充電インフラの提案とインフラ網の整備が主な狙いです。本M&A後は、EV充電をエネルギーマネジメントすることで電力ピーク抑制による電気料金の最適化や、車載蓄電池を活用による地域の電力需給調整を進めていくとしています。
参考:EV充電インフラ事業を展開するTerra Motors株式会社との資本業務提携について
東京ガスとaipassとの資本業務提携
2022年7月、東京ガスは、東京都渋谷区のaipassと資本業務提携したと発表しました。aipassは、WEBアプリケーションの企画開発と運営を手掛けており、旅館やホテルのDX化を実現するシステム「aipass」を提供しています。
両社は2021年3月に業務提携契約を締結しており、以降「aipass」の共同提案を通じて経営支援を行ってきました。
今回、資本業務提携によってまずは東京ガスの「JoyCoMES Re」と「aipass」をシステム連携を行い、旅館やホテルなどのほかさまざまな事業者のデータ経営の推進を目指していくとしています。
参考:aipass社との資本業務提携および両社のシステム連携を通じた新事業の検討開始について
大阪ガスとサビン社のM&A
大阪ガスは、2019年7月にアメリカ テキサス州にあるサビン社の全発行済株式を取得し、完全子会社化しました。サビン社はシェールガス開発事業を展開している企業で、テキサス州で琵琶湖の約1.5倍の広さの鉱区を保有しています。
このM&Aによって、大阪ガスはサビン社が保有する鉱区全てを所有することになります。さらに、大阪ガスの展開しているガス事業とサビン社の事業を統合させることで、効率的で持続可能な事業展開を目指すことが可能です。
今後の動向として、大阪ガスは自社が展開している液化天然ガス事業と発電事業に加えて、サビン社のシェールガス開発事業の3本を成長させていく方針です。
参考:米国シェールガス開発会社Sabine Oil & Gas Corporationの全株式取得について
東京ガスとエコナビスタのM&A
東京ガスは、2018年11月にエコナビスタと資本業務提携契約を締結しました。
資本業務提携契約を締結した理由は、睡眠や疲労回復をサポートする新サービスの開発を共同で行うためです。
エコナビスタは、睡眠解析技術を使って社会の健康問題やその他課題を解決させることを目的に活動している企業です。
そのため、睡眠や疲労回復に欠かせない要因や新サービス開発に必要な知識を豊富に保有しています。さらに、東京ガスはガス市場の縮小に伴い事業の多角化が必要な状態にありました。今後は、お互いの持つ健康に関するデータを元に、豊かな暮らしを実現するための取り組みを進めていく方針です。
参考:睡眠・疲労回復サポートサービスの開発に向けた 資本業務提携契約の締結について
東京電力と日本瓦斯のM&A
東京電力は、2018年3月に日本瓦斯の株式を取得し、子会社化させました。
元々、東京電力と日本瓦斯は今回の事業承継が実行される前から電力・ガスの小売自由化の影響で、都市ガスプラットフォームを提供する会社の設立などを共同で行っていました。
そのため、この事業承継ではお互いに経営や業務の統合がスムーズに進みやすく、このM&Aの目的である提携維持や事業発展も効果的に実行できる状態でした。
事業発展では、主に付加価値サービスの開発やエネルギー・プラットフォーム事業開拓などが挙げられます。このM&Aは、お互いが提携して新たなサービスや事業を展開していき、企業価値を向上させることが目的です。今後はお互いの技術や設備を活用し、エネルギー市場の占有率拡大や事業の早期展開を目指しています。
参考:日本瓦斯株式会社の発行済株式の取得
サーラコーポレーションと中部ガス・サーラ住宅のM&A
サーラコーポレーションは、2016年4月に中部ガス・サーラ住宅との株式交換を行い、完全子会社化させました。
サーラコーポレーションは愛知県と静岡県の1部を拠点とし、都市ガスやLPガスの供給や戸建住宅の建設・販売を展開している企業です。
中部ガス・サーラ住宅は、東海地方で主に注文住宅・分譲住宅・メンテナンスリフォームを展開している企業です。
この事業承継では、エネルギーの自由化や少子高齢化による社会の変化に対応するために、お互いの経営資源や顧客基盤を有効活用して企業価値を向上させることが目的です。
また、お互いにこの事業承継を行うことで上場を廃止し非上場企業として新たに事業展開を進めていきます。そのため、東海地方のガス・住宅事業の今後の動向に注目が集まっています。
参考:中部瓦斯株式会社及びサーラ住宅株式会社 の完全子会社化に関する株式交換契約締結のお知らせ
岩谷産業とエヌ・ケイ・ケイのM&A
岩谷産業は、2016年9月にエヌ・ケイ・ケイの発行済み株式を全て取得し、完全子会社化させました。
岩谷産業は、業界屈指の製造プラントを保有しており、そこで産業ガスの製造・販売・輸入を行っている企業です。
さらに、産業ガスを利用する機器設備の製造・販売も手がけている大手ガス会社になります。
エヌ・ケイ・ケイは、ダストブロワーや冷媒感などの製造・販売をしている企業です。
エヌ・ケイ・ケイの製造過程は、基本的に地球環境への負担が少なく温暖化対策やSDGsの促進に期待できます。
そのため、岩谷産業は企業成長や経営基盤の拡充を目的に、エヌ・ケイ・ケイを完全子会社化させました。
今後は、効率的な資源確保やそれに伴う経営資源の投入を進めていき、岩谷産業の販売網を活用した海外市場への拡大も進めていく方針です。
参考:エヌ・ケイ・ケイ株式会社の株式取得(子会社化)について
西部ガスとエストラストのM&A
西部ガスは、2017年2月にエストラストをTOB(株式公開買い付け)で株を最大51%取得し、子会社化させました。
このTOBでは、西部ガスがエストラストの東証1部の上場は維持した状態で、西部ガスから常勤役員を1人派遣することで締結されました。
エストラストは、九州・山口を中心にオール電化のマンション販売を展開し、これまで拡大してきました。
ただ、2017年4月に参入した九州電力との競争が激しくなることを見込んで、不動産販売とガス販売を掛け合わせて競争力を向上させる目的で、このTOPが実施されました。
不動産販売とガス販売はシナジー効果を生みやすく、今後の経営統合によって事業や顧客基盤の強化を測ることができます。
そのため、西部ガスは「オール電化マンション販売に加えてガス主体のマンション販売を行うことで、九州電力を牽制することも期待できる」ことを見込んでいます。
エストラストは、TOP後2017年11月に、福岡証券取引所で上場を果たしました。
参考:株式(証券コード 3280)に対する公開買付けの結果 及び子会社の異動に関するお知らせ
LPガス会社の事業承継を行うべきタイミング
事業承継を行うことで、後継者確保や事業拡大などのさまざまなメリットが得られます。ただ、事業承継を行うべきタイミングをしっかりと判断して進めることも事業承継を成功させる大切なポイントです。ここでは、LPガス会社の事業承継を行うべきタイミング3つをそれぞれ解説します。
業界内の競争環境が変わったとき
業界内の競争環境が変わった時は、事業承継をする効果的なタイミングです。業界内の競争環境が変わったことで、自社の市場占有率が向上したり競合他社が減少することがあります。
そういった場合は、自社の企業価値が高めやすくなるため、事業承継の交渉でも有利になります。そのため、事業承継を検討している会社は常に業界内の状態を把握しておくことが大切です。
会社の経営状態の良いとき
自社が好条件で事業承継を進めるためには、会社の経営状態がいい時に行うこともポイントです。会社が常にいい経営状態を保てているのであれば、あまり意識しなくてもいい場合がありますが、基本的に多くの会社は経営状態に波があります。
経営状態が悪いタイミングで事業承継を進めても、交渉がうまくいかず失敗してしまうリスクが高くなるため、会社の経営状態がいい時を見計らって事業承継を進めていくことをおすすめします。
経営者が引き継ぎの準備ができるとき
事業承継を進める主な理由の1つは、経営者の高齢化です。ただ、経営者が高齢過ぎてしまうと引き継ぎの準備ができていなかったり、事業承継後の引き継ぎを十分に行う元気が残っていない可能性があります。
そのため、高齢化を原因に事業承継を進めていく場合は、経営者が元気で引き継ぎの準備ができているタイミングにしましょう。
LPガス会社の事業承継の価格相場
LPガス会社の事業承継の価格相場は、その会社の経営状況や価値の評価方法によって異るため、ひとくちに相場を算出することが難しいです。
ただ、企業価値の評価手法とそれによる相場についで気になる方も多いでしょう。ここでは、LPガス会社の事業承継時に行う企業価値の評価手法を3つ解説します。
コストアプローチ
コストアプローチとは、企業の純資産の時価評価価格などを元に企業の価値を評価する手法のことです。
その企業を現状の状態にまで成長させるまでにかかるコストに注目して評価するため、純資産を元にしています。
そのため、負債が多い場合でも純資産が多い企業であれば、企業価値が高く評価される場合もあります。
また、ストックアプローチという呼び方をする場合もあります。
インカムアプローチ
インカムアプローチとは、その企業が将来的に生み出す利益やキャッシュフローの予想を元に企業の価値を評価する手法のことです。
具体的な評価手法は、「DCF法(ディスカウンテッドキャッシュフロー法・割引現在価値法)」と言います。
この手法は、主に商業用の不動産などを評価する場合などに用いられます。
また、DCF法は基本的に会計事務所などの専門家に依頼して算出してもらいます。
マーケットアプローチ
マーケットアプローチとは、評価対象の企業を同業他社の評価や類似の買収事例などと比較して企業価値を評価する手法のことです。評価対象の企業が上場企業であれば株価を元に評価できますが、非上場企業であれば株価で評価できません。
そこで、同類の上場企業と比較するなどの手法が用いられており、具体的な評価手法としては、取引事例比較法や類似株価法などがあります。
LPガス会社の事業承継をする上での注意点
自社の存続や事業拡大を目指して事業承継を行うLPガス会社が多く、今後も増加し続けていくことが予想されています。
ただ、LPガス会社の事業承継をする上でいくつか注意点もあるため、それらの注意点もしっかりと理解した上で事業承継を進めていくことが大切です。ここでは、LPガス会社の事業承継をする上での注意点を主に5つ解説します。
前もって準備を始める
1つ目の注意点は、前もって準備を始めることです。ガス会社の事業承継には、さまざまな準備や計画が必要であり、それらを怠ってしまうと事業承継によって経営が悪化してしまう可能性があります。
さらに、後継者に十分な引き継ぎを行ったり自社に十分な利益があるような契約を進めるには、しっかりと戦略を練ることが重要です。そのため、事業承継を検討している場合は、余裕のある準備期間を設けましょう。
タイミングを逃さない
タイミングを逃さないことも事業承継をする上では、大切な注意点の1つです。事業承継のタイミングは会社ごとに大きく異なりますが、基本的に後継者が十分に育ってきたタイミングや自社の業績が良好なタイミングなどが挙げられます。
事業承継を行うことで後継者確保や事業拡大などの多くのメリットが期待できますが、タイミングを逃してしまうと事業承継によって多くのデメリットが発生する場合もあります。そのため、事業承継を行うタイミングを逃さないことも大切です。
情報の漏えいに注意する
事業承継を進める上で情報漏洩には細心の注意を払わなければいけません。事業承継を行うことが従業員や取引先に漏れてしまうと、従業員の自主退社や取引先との関係悪化のリスクが高まります。
さらに、以上のことが原因で自社の企業価値が下がってしまうと、交渉にも大きな悪影響がでてしまい事業承継が失敗してしまう可能性も十分あります。そのため、事業承継が正式に決定するまで情報の取り扱いには十分注意しましょう。
PMIを実施する
PMIを実施することも忘れずに行いましょう。事業承継が完了すると気が抜けてPMIを疎かにしてしまうケースがありますが、事業承継はPMIが完了するまで安心してはいけません。
PMIを実施して経営や業務を統合させられなければ、事業承継によるシナジー効果が得られないだけでなく最悪の場合、経営が悪化して廃業してしまう可能性があります。そのため、事業承継はPMIが完了するまで気を抜かずに行いましょう。
M&Aの専門家に相談する
事業承継には多くの専門知識や時間が必要です。そのため、自社のみで進めることもできますが、できるだけM&Aの専門家に相談してサポートやアドバイスを受けながら進めていくことをおすすめします。
事業承継の経験や知識がない状態で事業承継を進めることによって、本業務に支障が出たり事業承継プロセスがスムーズに進められなくなってしまうリスクが高くなります。事業承継を成功させるためには、以上の注意点もしっかりと意識しておきましょう。
LPガス会社の事業承継はM&A専門家のサポートを受けるのがおすすめ
これからLPガス会社の事業承継を進めようとしている場合は、自社のみの知識や人材で進めていかずにM&A専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
しっかりと事業承継に関する経験や知識を持っているM&A専門家のサポートを受けることで、より自社の事業承継を成功させられる確率を高められるようになります。ここでは、LPガス会社の事業承継を行う上でおすすめなM&A専門家について解説します。
M&Aの経験と知識が豊富なM&A仲介会社に相談する
M&A仲介会社は、豊富な経験や知識を持っている場合が多いため、事業承継を検討している場合相談することをおすすめします。
多くのM&A仲介会社は全国にいくつも存在しており、相談だけなら無料で対応してくれる場合がほとんどです。
また、M&A仲介会社の選定に悩んでいる場合は、ガス業界や自社周辺の地域に特化しているM&A仲介会社を選ぶようにしましょう。
M&A仲介会社は、主に「特定の地域や事業に特化している専門的な会社」と「幅広く対応している総合的な会社」の2種類に分かれています。
LPガス事業に特化しており、M&Aに関する経験や知識を豊富に持っているM&A仲介会社を探す場合は、専門的な会社から選定することが最適な手段です。自社の事業承継についてより効果的なサポートやアドバイスを受けられる可能性があります。
金融機関に相談する
金融機関も事業承継に関する相談を受け付けています。特に、事業承継で必要な資金調達や融資、経営課題についての相談を受け付けているため、買収に必要な費用で悩んでいる場合などに効果的です。
さらに、相談だけでなく適切な事業承継先の会社や専門家を紹介してくれる場合もあるため、自社のみでは不足していた知識や人脈を補い万全の状態で事業承継に望めます。そのため、金融機関に相談することも効果的です。
公的支援機関に相談する
公的支援機関では、事業承継に関する相談から経営に関する相談まで幅広く受け付けています。
各地域に存在する主な公的支援機関には、以下のものがあります。
- 事業承継・引継ぎ支援センター
- 後継者人材バンク
- よろず支援拠点
- 事業承継ガイドライン
- 農林水産省の手引書
- 中小企業基盤整備機構ファンド事業 など
さらに、公的支援機関の中にはM&Aマッチング支援を行なっていたり、マッチングサービスを提供している場合もあります。
公的支援機関のサポートを受けながら事業承継を進めることができれば、自社に適している事業承継先の会社とマッチングや自社が不利にならない条件での事業承継が実現できます。
そのため、相談先として自社の拠点周辺の公的支援機関も調べてみることをおすすめします。
LPガス会社の事業承継はM&A専門家の助けを得ながらすすめよう
LPガス会社は、市場規模の縮小や高齢化などの問題によって廃業してしまう事例が増えていますが、事業承継を行い経営を立て直している事例も多いです。そのため、事業承継を進めることでガス会社の将来性を確保し、より企業価値を高めることは十分に期待できます。
ただ、事業承継には多くの専門知識や注意点があるため、これから事業承継を考えている場合はM&A専門家などの助けを得ながら進めていくことをおすすめします。
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二段階買収(Two-Tier Takeover Strategy)は、買収側が売却側の少数株主から株式を買い集める際に有益な手法です。当記事では、実施目的や手法、メリットやデメリット、過去事例や...
事業承継の相談先はどこがいい?選び方から注意点まで徹底チェック!
近年は中小企業の経営者の高齢化に伴い、積極的に事業承継を行って生き残りを図る企業が増えています。 事業承継には複雑な手続きが多いため、信頼できる相談先の選択が重要です。そこで本記事では事業...
M&A後の退職金や給与はどうなる?節税方法や注意点まで徹底チェック!
M&Aで退職金を活用すると、節税効果が得られます。当記事では、退職金を利用したM&Aの節税方法やメリット、注意点を交えながら、退職金の扱い方や税務について解説します。従業員や役員...
M&Aにおける人事DDの目的や調査範囲を徹底チェック!費用・注意点は?
人事DD(デューデリジェンス)は、買収側がM&Aの実施後に受ける損失を最小限に抑えるために必要な調査です。当記事では、調査が行われる目的や調査範囲、かかる費用や注意点を踏まえながら、人事...
100日プランとは?PMIの概要・重要性・策定のポイントまで徹底解説!
M&Aを実施する際にはPMIの工程が重要となり、100日プランはPMIの成功に大きな役割を果たします。今回はM&Aを検討している企業に向けて、100日プランの概要・重要性・策定の...
管工事会社の事業承継の動向や事例を徹底解説!メリットや費用相場・注意点は?
管工事会社業界は将来的な需要増加が見込める半面、人材不足や後継者不在といった問題が深刻です。当記事では、過去の事例を取り上げながら、管工事会社(管工事業界)の事業承継について解説します。事業承継...
株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。