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2019年6月11日更新
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チェンジオブコントロール条項とは?M&Aの活用や条項の具体例、メリット・デメリットを解説

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

チェンジオブコントロール条項は、M&Aなどによって経営権(支配権)が移転したとき、契約内容に何らかの制限がかかるとする条項のことで、通知義務の発生や契約解除などが定められます。

目次
  1. チェンジオブコントロール条項とは
  2. チェンジオブコントロール条項とM&A
  3. チェンジオブコントロール条項の具体例
  4. チェンジオブコントロール条項の目的
  5. チェンジオブコントロール条項のメリット・デメリット
  6. チェンジオブコントロール条項の注意点
  7. チェンジオブコントロールの判例
  8. まとめ

チェンジオブコントロール条項とは

チェンジオブコントロール条項とは、M&Aなどによって経営権(支配権)が移転したとき、契約内容に何らかの制限がかかるとする条項のことです。
例えば、経営権が移転したときに通知義務が発生するといった条項のほか、契約そのものを破棄できるなどの条項もあります。チェンジオブコントロール条項は、M&Aを実行する際にも十分に注意すべきポイントです。以下、その概要や具体例を整理しておきましょう。

チェンジオブコントロール条項の仕組み

まず、チェンジオブコントロール条項の大まかに仕組みについて、簡単な例で説明します。

例えば、A社の取引先にB社があるとします。A社とB社は契約関係にありますが、この契約の中にチェンジオブコントロール条項があったとします。すると、もしA社の経営権がM&Aなどによって移転したとき、B社との契約内容に何らかの制限がかかることになります。

チェンジオブコントロール条項には、契約そのものを破棄できるといった条項もあります。この場合、A社の経営権がM&Aなどによって他社へ移転したら、取引先のB社は、A社との契約を解除できるということになります。このような定めを設けた条項が、チェンジオブコントロール条項です。

チェンジオブコントロール条項が持つ意味

次に、なぜチェンジオブコントロール条項が定められるのか、その意味を整理しておきます。チェンジオブコントロール条項の目的について詳しくは後述しますが、ここでも少し触れます。

チェンジオブコントロール条項が定める制限の内容は、通知義務から解除事由まで多岐に渡ります。一定の条件下で契約内容を変更・破棄できるので、契約の相手が行うM&Aなどに対し、効果的に対処することが可能です。先ほどの例でいえば、A社のM&Aに対し、A社と取引関係にあるB社は、契約解除などの対処をすることができます。

B社の立場から考えてみましょう。
A社が他社とM&Aを進めると、取引関係にあるB社はA社の動きに注目せざるを得ません。もしA社の経営権が実質的に他社に移転すれば、実質的な当事者が変わるからです。そうなれば、安心して取引ができるのか、B社としては不安に思うでしょう。B社にとっては、A社とこれまで通りの取引ができるかどうかが問題なのです。もし経営権が移転し、これまで通りの取引ができないのであれば、A社との契約を解除するといった対策も必要になるでしょう。
そこで、チェンジオブコントロール条項が大きな意味を持ちます。チェンジオブコントロール条項があれば、経営権が移転した際に契約内容に制限がかかり、契約解除なども可能になるからです。

チェンジオブコントロール条項とM&A

上記の例をもう一度整理しておきます。
まず、A社とB社は契約関係にあり、この契約の中にチェンジオブコントロール条項が存在します。そのため、M&AなどによってA社の経営権が移転したら、B社は契約解除などの対処をすることができます。

さて、このケースにつき、今度はA社の立場から考えてみましょう。
例えばA社がM&Aによる売却を考えている場合、後継者不足問題の解決、経営基盤の安定化、創業者利益の獲得など、A社にとっては様々なメリットがあります。特に事業継続が難しい場合、M&Aによって他社に事業を受け継いでもらうことは、A社にとっても大きな意味があるでしょう。ただ、取引先であるB社との契約でチェンジオブコントロール条項が存在すれば、M&Aによって他社に事業を承継させた場合、B社がA社との契約を解除する可能性もあります。

取引先が1社でもなくなれば、A社の事業にも大きな影響を及ぼします。A社としては、M&Aを実行する際に、取引先との契約に含まれるチェンジオブコントロール条項に十分に注意しなくてはなりません。

もちろん、取引先との間でチェンジオブコントロール条項があるからといって、M&Aを行うメリットがないということはありません。上記の例でいえば、A社の事業継続が難しいこと、そのためにM&Aを行う必要があること、きちんと信頼できる企業がA社を買収すること、B社との取引にも問題がないことなど、諸々の点をB社が理解してくれれば、B社もあえて解除権を行使することはしないでしょう。むしろM&AによってA社がこれまで以上に業績を伸ばすことができれば、取引先であるB社にとっても様々なメリットがあります。
ただ、契約解除の権利がB社にある以上、B社の立場も考慮すべきということになります。

チェンジオブコントロール条項の具体例

ここまで、チェンジオブコントロール条項の仕組みや意味、M&Aとの関係についてご紹介しました。次に、チェンジオブコントロール条項の具体的な規定についてご紹介します。

チェンジオブコントロール条項は、以下のような例で規定されます。

第○○条(解除)
甲および乙は、相手方が次の各号の事由に該当するときは、何ら催告をすることなく本契約の全部または一部を解除することができる。
─────
⑷ 合併などの組織変更や事業譲渡、株式の過半数の譲渡により、経営環境に著しい変化が生じた場合
─────


実際には解除事由としてもっと細かく規定されますが、上記の例をもとに条項の内容を整理しておきます。

上記の例では、「第○○条(解除)」として、契約の解除に該当するケースが挙げられています。そのうちの一つに、「⑷ 合併などの組織変更や事業譲渡、株式の過半数の譲渡により、経営環境に著しい変化が生じた場合」と規定されています。つまり、取引関係にある当事者(この場合は甲と乙)は、相手方が組織変更や事業譲渡、株式譲渡によって経営権を移転させ、それによって経営環境が著しく変化したら、その契約の全部または一部を解除できることになります。

チェンジオブコントロール条項の目的

さて、ここまでご紹介した内容も踏まえ、主にM&A関連してチェンジオブコントロール条項の目的を整理しておきます。

チェンジオブコントロール条項は、契約関係にある相手方の経営権に関する動向に対し、効果的に対処するという目的があります。取引先が実質的に変われば、それだけ不安要素も生まれます。不測の事態に備える目的で、チェンジオブコントロール条項を定めておくことには大きな意味があるのです。

また、買収防衛策としてもチェンジオブコントロール条項は効果的です。
チェンジオブコントロール条項があれば、企業は買収を躊躇する可能性があります。もし買収した企業の取引先が契約を解除すれば、事業に支障を来たすおそれがあるので、そういったリスクも考えると買収を躊躇しやすくなります。特に敵対的な買収の防衛を目的にチェンジオブコントロール条項を定めることは、大いに効果があります。

他にも、自社のノウハウや技術の流出を防ぐといった目的も考えられます。
先ほどの例でいえば、A社がM&Aによって他社に経営権を移転すると、A社と取引関係にあるB社のノウハウや技術も流出する可能性があります。ここでチェンジオブコントロール条項を活用すれば、契約解除によって自社の情報の流出を防ぐことが可能になります。

チェンジオブコントロール条項のメリット・デメリット

ここまでの話をもとに、チェンジオブコントロール条項のメリットとデメリットを整理しておきます。

メリット

チェンジオブコントロール条項は、契約関係にある相手方の経営権をめぐる動向に、効果的に対処することができます。自分の知らないところで相手方がM&Aを進めていたというケースもあるでしょう。こうした動向に適切に対応できることは、取引先との取引、ひいては企業の事業展開において非常に重要なメリットがあります。

また、買収防衛策や自社の情報の流出の防止などを目的にチェンジオブコントロール条項を規定することもできます。こちらも、企業活動を進めるうえで大きなメリットがあります。

デメリット

一方で、M&Aに関するチェンジオブコントロール条項のデメリットとしては、M&Aの相手企業が躊躇しやすいという点が挙げられます。
例えば、A社が事業継続を目的に自社の売却を考えても、取引先となるB社の間でチェンジオブコントロール条項が存在するために、買い手がなかなか見つからないといったケースも考えられます。買い手に名乗り出た企業が買収を躊躇する可能性もあるからです。

この場合、B社にとってはA社の経営権をめぐる動向に適切な対応ができるというメリットがありますが、A社にとってはM&Aがうまく進まないというデメリットがあります。

チェンジオブコントロール条項の注意点

M&Aに関連し、チェンジオブコントロール条項の注意点について整理しておきます。

M&Aを進めるにあたっては、当事者と取引先の間にチェンジオブコントロール条項があるかどうか、きちんと確認しなくてはなりません。以下、M&Aにおける売り手をA社、買い手をC社、そしてA社の取引先をB社として考えてみましょう。

買い手であるC社としては、M&AにあたってA社の経営状況や債務をきちんと把握しておかなければなりません。A社を買収する以上、A社の債務なども承継することになるからです。そのため、C社は買収するA社の詳細な調査・検証を行い、あらゆる問題点を洗い出しておく必要があります。このような調査・検証はデューデリジェンスと呼ばれます。

このデューデリジェンスの際に、A社が当事者となる契約書も確認します。そこでA社とB社の間の契約にチェンジオブコントロール条項があれば、C社はB社の状況もきちんと分析し、対策を講じなくてはなりません。B社の反発が予想されるような場合は、特に迅速に同意や承諾を得るための手続きを進める必要があります。

このように、チェンジオブコントロール条項については、特にデューデリジェンスの際に注意しなくてはなりません。また、デューデリジェンスは法律分野のほか、財務や税務などの専門分野に関する知識も必要になります。そのため、M&A仲介会社・M&Aアドバイザリーなどの専門家のサポートが不可欠です。チェンジオブコントロール条項のチェックについても、専門家のサポートを受けつつ分析する必要があります。

チェンジオブコントロールの判例

チェンジオブコントロール条項に関連した近年の判例として、最高裁判所の「平成29年12月19日第三小法廷決定」(事件番号:平成29(許)10)を例に挙げます。この判例は事例が複雑ですが、M&Aとも関係するので、以下、簡単にポイントをまとめておきます。

事例の概要

この事例では、建物の賃貸借契約が登場します。
その契約には、「賃借人が契約当事者を実質的に変更したときは、賃貸人は契約を解除し、違約金を請求することができる」という定めがあります。これは、建物を借りた人(賃借人)が、その賃借人の地位を誰かに承継させるなどして、契約当事者を実質的に変更したときには、建物を貸した人(賃貸人)は契約を解除し、違約金を請求できるという意味です。

また、この事例の当事者はいずれも会社です。つまり、上記の規定は、賃借人である会社が実質的に変わり、その経営権が実質的に移転した場合、賃貸人である会社は契約解除や違約金請求ができることを意味します。契約関係にある一方の当事者が経営権を移転させたことで、もう一方の当事者が契約を解除できると考えると、この規定はチェンジオブコントロール条項の一つになります。

さて、この事例では、当該賃借人が吸収分割によって契約当事者の地位を他社に承継させた場合に、当該賃借人が、「吸収分割によって当事者の地位は移転したのだから、上記の定めによる違約金の債務は負わない」と言えるかどうか、という点が問題になりました。

結論から言うと、この賃借人の主張は認められていません。つまり、賃借人という地位を移転させた後でも、違約金を払う必要があるということです。本事例では、「信義則に反し許されない」ということで賃借人の主張は認められず、上記の吸収分割後も、賃貸人は賃借人に違約金を請求できることになります。

裁判の要旨

「信義則に反し許されない」というのは、簡単に言うと、「相手の信頼や期待を裏切るようなことをしたため、許されない」といった意味があります。裁判所が本事例でこのような判断をしたのは、以下のような理由があります。(以下、賃貸人をX、賃借人をYとします。)

本事例では、Xは長期にわたってYに建物を貸していました。Xとしては、その賃料によって建物の建築費用を回収することを期待していたと考えられます。そして、Xが違約金請求や契約解除を定めた上記の規定を設けたのは、賃借人の変更によって不利益を被らないようにするためであり、Yもこの事情を理解したうえで賃貸借契約を結んでいたと言えます。

しかしYは、Xの同意がない状態で、吸収分割によって契約当事者の地位を他社(Z)に承継させました。しかも、違約金の額を大幅に下回る額の資産のみ、Zに承継させています。つまり、Zには違約金に対応できるだけの資産がないので、違約金の支払能力を欠くことは明らかです。この場合に、Yが「吸収分割によって当事者の地位は移転したのだから、違約金の債務は負わない」と主張すれば、Yは債務を免れ、Xは支払能力を欠くZにしか違約金を請求できないという結果になってしまいます。
このような事情を考えると、Yの主張はさすがに信義則に反するのではないか、ということになります。そのため、「信義則に反し許されない」として賃借人Yの主張は認められず、当該吸収分割後も、賃貸人Xは賃借人Yに違約金を請求できることになります。

チェンジオブコントロール条項との関係

この判例は違約金の請求に焦点が置かれていますが、チェンジオブコントロール条項と会社分割の関係を考えるうえでも重要な判例と言えます。

判例では、違約金の請求先が問題になっているものの、チェンジオブコントロール条項の存在自体に疑問はなく、それによる解除も別段問題になっていません。つまり、会社分割によって経営権が移転したとき、チェンジオブコントロール条項による契約解除が認められるケースの一例として、本事例を考えることができるのです。

まとめ

チェンジオブコントロール条項は、M&Aなどによって経営権(支配権)が移転したとき、契約内容に何らかの制限がかかるとする条項のことで、通知義務の発生や契約解除などが定められます。
M&Aにおいては、M&Aの当事者が取引先との契約でチェンジオブコントロール条項を定めていた場合、特に注意する必要があります。M&Aによって経営権が実質的に移転することに対し、その取引先が反発する可能性もあるからです。そうなると、M&A後の事業展開に大きな支障を来たすおそれがあります。

ただ、その取引先にとっては、チェンジオブコントロール条項は大きな意味があります。契約の相手方の経営権が移転する際、その対処法として大きなメリットがあるからです。
また、チェンジオブコントロール条項があるからといって、M&Aがうまくいかないわけではありません。その取引先がしっかりと理解を示してくれれば、取引先も納得する形でM&Aを進めることができます。

売り手企業の経営権が移転しても、M&Aによってこれまで以上に業績が伸びれば、その売り手企業の取引先にとっても大きなメリットがあります。そして、取引先がこれまでと同様に取引を継続してくれれば、M&Aの当事者にとっても大きな経済効果を期待できるのです。

チェンジオブコントロール条項は、特にデューデリジェンスにおいて十分に分析することが大切です。より経済効果の高いM&Aにつなげるためにも、チェンジオブコントロール条項を事前にきちんと確認し、調査・検証を行う必要があります。

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