M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2023年9月22日更新会社・事業を売る
ロックアップとは?必要性や期間、注意点を徹底解説【事例あり】
M&A後、旧経営陣が売却した企業に拘束されるロックアップ(キーマン条項)は、買い手と売り手で求める条件が食い違い、争点となりやすい部分もあります。本記事では、ロックアップ(キーマン条項)とは何かについて、その必要性や注意点などを解説します。
目次
ロックアップ(キーマン条項)とは?
M&Aが成約すると最終契約書が締結されますが、条項のなかに「ロックアップ(キーマン条項)」というものが盛り込まれることがあります。
ロックアップ(キーマン条項)は、M&Aで会社を売却した後も旧経営陣が一定期間その会社に拘束される条項であり、対象となる旧経営陣にとってはその期間中の仕事などに大きな影響を及ぼします。
よって、M&Aを行う際はロックアップ(キーマン条項)について知っておくことが重要です。ロックアップ(キーマン条項)のことをよく理解せずにM&Aを締結してしまうと、後々大きなトラブルを招く要因ともなります。
この章では、ロックアップ(キーマン条項)が持つ意味や内容といった、基本的な事項を解説します。
ロックアップ(キーマン条項)が持つ意味
ロックアップ(キーマン条項)とは、M&Aによって会社を売却した後も、旧経営陣が売却後の会社に引き続き残ることを約束するものです。ずっと会社に残り続けるのではなく、一般的には2年~3年程度の限られた期間だけ拘束されます。
なぜこのような条項が必要になるかというと、M&Aは経営陣が刷新されて会社を取り巻く環境が大きく変わるので、新体制への移行をスムーズに行うためには旧経営陣のサポートが必要になるからです。
買収した会社を今後経営していく買い手としては、スムーズに新体制への引き継ぎを行い、投資した買収金額に見合う収益を上げられるようにしたいと考えるのは当然です。
しかし、ロックアップ(キーマン条項)がなければ、旧経営陣がM&A後のサポートをしてくれないかもしれませんし、またサポートがあっても個人的な都合ですぐに退職されるかもしれません。
このような事態を避けるために、契約として旧経営陣がサポートしてくれることを約束するのが、ロックアップ(キーマン条項)の主要な意味だといえます。
ロックアップ(キーマン条項)の内容はそれぞれ
ロックアップ(キーマン条項)の具体的な内容は、個々のM&A事例ごとに買い手と売り手が交渉して決定されます。ロックアップ期間の設定やそのほかの条件も、各ケースによって変わってきます。
例えば、ロックアップ(キーマン条項)の期間は2年や3年であることが多いといわれていますが、1年に設定しても5年にしても構いません。
期間以外にロックアップ(キーマン条項)に盛り込まれる内容としては、個人的な出資の禁止やアーンアウト条項などがあります。個人的な出資の禁止は、旧経営者が競合他社へ出資するのを禁じる目的で盛り込まれます。
アーンアウトとはM&A後の業績によって買収金額を変える条項で、業績が好調なら買収金額を増額し、逆に思ったような業績が上がらない場合は、買収金額を低くすることで買い手のリスクを低減します。
【ロックアップ(キーマン条項)の主な内容】
- ロックアップ期間
- 個人的な出資の禁止
- アーンアウト条項
ロックアップ(キーマン条項)の必要性
M&Aで会社を買収すると、その会社(売り手)は買収した親会社のもとで子会社として事業を続けていくことになります。
経営陣が入れ替わるだけでなく、企業理念や社風といった精神的な要素も変わることになり、従業員にとっては細かな業務システムの変更がストレスや混乱を招くこともあります。
このように、M&Aでは成約後の数年間はトラブルや業績悪化が起こりやすいため、この期間をいかに乗り越えるかが成功のポイントとなります。
買収した側の会社が事業をスムーズに引き継ぐには、買収された側の旧経営者や旧役員がしばらくの間業務をサポートする必要があります。
ロックアップ(キーマン条項)は、旧経営者や旧役員を買収後一定期間会社に拘束することで、業務の引き継ぎを必ず行ってもらえるよう保証するために必要です。
業務の引き継ぎに失敗して業績が悪化してしまうと、買い手としては買収額に見合った利益が得られなくなります。ロックアップ(キーマン条項)は、買い手のリスク回避の必要性のために、売り手に課される条件であるともいえます。
ロックアップ(キーマン条項)の期間
ロックアップ(キーマン条項)の内容には、個人的な出資の禁止やアーンアウトなど、さまざまなものがありますが、最も重要なのはロックアップ(キーマン条項)の期間です。
買い手・売り手双方が納得できるM&Aを成約し、成約後のトラブルが起こらないようにするためには、ロックアップ(キーマン条項)の最適な期間を設定することが大切です。
この章では、ロックアップ(キーマン条項)期間の平均はどれくらいなのか、買い手・売り手それぞれにとってのベストな期間などについて解説します。
ロックアップ(キーマン条項)期間の平均
ロックアップ(キーマン条項)の期間について統計的にまとめたデータはありませんが、一般論としては平均2年から3年くらいに設定することが多いとされています。
ロックアップ(キーマン条項)は業務の引き継ぎをスムーズに行うのが主な目的なので、業務システムがシンプルな中小企業に比べると、大企業のほうが期間が長くなる傾向があるといわれています。
ロックアップ(キーマン条項)期間の平均は目安にはなりますが、ベストな期間は個々のM&Aによっても変わります。
買い手・売り手双方の話し合いのもと、自分の事例にとってベストなロックアップ(キーマン条項)期間を模索していくことが大切です。
買い手・売り手、それぞれにちょうどよい長さが違う
ロックアップ(キーマン条項)のちょうどよい長さは、買い手か売り手かによって変わってくる部分があります。
売却益で早くアーリーリタイアしたい場合や新しい事業を始めたい場合など、売り手にとってはできればロックアップ(キーマン条項)を設けたくないのが本音でしょう。
また、売却後もしばらく会社に残って貢献したいと思っている場合でも、それを条項として強制されるのは拒否感があるかもしれません。
一方で買い手としては、買収した会社が安定した経営を行えるまでの間は、旧経営陣に残ってもらってサポートしてもらいたいと多くの場合において考えます。
M&Aを行うと経営陣が刷新されるので、しばらくの間は業務や経営が不安定になり、業績も一時的に落ちるケースもあります。
M&A交渉時に行った企業価値評価に値する業績をあげるためには、この時期をトラブルなく乗り越えることが買い手にとって重要です。
M&A交渉時においては、買い手・売り手それぞれに思惑があることを理解したうえで、両者が妥協できるロックアップ(キーマン条項)期間を模索していくことが大切です。
ロックアップ(キーマン条項)を行う際の注意点
ロックアップ(キーマン条項)は、買い手にとっては必要である一方、売り手としてはできれば受け入れたくない条項でもあります。
そのため、M&Aの交渉においては、ロックアップ(キーマン条項)について買い手と売り手の意見が対立してしまい、M&Aが頓挫するような事態も考えられます。
ロックアップ(キーマン条項)を盛り込む際は、注意点を踏まえてトラブルが起こらないようにすることが大切です。ロックアップ(キーマン条項)を行う際の主な注意点としては、以下の3点が挙げられます。
【ロックアップ(キーマン条項)を行う際の注意点】
- 選ぶべき選択肢によりロックアップ(キーマン条項)をつける
- 相手選びに気をつける
- アーンアウト条項について
選ぶべき選択肢によりロックアップ(キーマン条項)をつける
M&Aの契約内容にロックアップ(キーマン条項)をつけるのは義務ではなく、敢えてつけずに契約することも可能です。
旧経営陣を拘束するデメリットが大きい時や、旧経営陣がいないくてもスムーズに業務が行えそうな場合は、ロックアップ(キーマン条項)をつけないほうが有効になります。
個々のM&Aによって、ロックアップ(キーマン条項)をつけるかどうか、選ぶべき選択肢によって考えていく必要があります。
相手選びに気をつける
ロックアップ(キーマン条項)の対象となる相手は、基本的には旧経営者や旧経営陣ですが、社員などの人物を選んでも構いません。
ロックアップ(キーマン条項)を設ける際は、相手選びに気をつけることも大切です。経営上あまり重要でない人にロックアップ(キーマン条項)を設けてしまうと、買い手としても経営に支障がでかねず、拘束される本人も大変な不利益を被ることになります。
また、拘束されることに反対している人に無理にロックアップ(キーマン条項)を設けても、本人のモチベーションが上がらず、トラブルの原因になる可能性が高くなってしまいます。
アーンアウト条項について
アーンアウト条項とは、M&A成約時には譲渡価格の一部だけを支払い、その後の業績の良し悪しによって残りの対価を支払うか決めるものです。
M&Aでは、交渉時にデューデリジェンスを行うなどしてできるだけ相手企業のことを調査し、買収後得られる利益を予想して価格を決定します。
しかし、実際に業績を上げられるかはやってみないと分からない部分も大きく、想定していた業績が上がらなければ買い手は損をしてしまうことになります。
ロックアップ(キーマン条項)の中にアーンアウト条項を入れておけば、思ったほどの業績が上がらなかった場合に、買収価格を抑えて買い手のリスクヘッジをすることができます。
一方で、業績がよければ追加で対価を受け取ることができるので、ロックアップ(キーマン条項)を課される売り手としてはモチベーションの維持にもつながります。
アーンアウト条項は、将来性が読みづらいベンチャー企業のM&Aにおいて特に効果を発揮します。ベンチャー企業の買収時にアーンアウト条項をつけておけば、買い手にとっては買収がしやすくなり、売り手にとっても買い手がつきやすくなるメリットがあります。
ロックアップ(キーマン条項)の事例
M&Aの契約内容の詳細が公開されることは少ないので、個々の事例でロックアップ(キーマン条項)がどのように行われているか詳細なデータはあまりありませんが、一部ロックアップ(キーマン条項)について知られている事例もあります。
この章では、ロックアップ(キーマン条項)を設けるメリットが大きい士業事務所の事例と、あえてロックアップ(キーマン条項)を設けない方針をとっているクックパッド株式会社の事例を紹介します。
ロックアップ(キーマン条項)を設けるメリットが大きい事例
一般的には、弁護士事務所や税理士事務所など士業事務所のM&Aでは、ロックアップ(キーマン条項)が設けられることが多いといわれています。
士業事務所は、顧客が特定の弁護士や税理士などを懇意にしていることが多いので、ロックアップ(キーマン条項)を設けてM&A後も一定期間旧経営者に残ってもらうメリットが大きくなります。
あえてロックアップ(キーマン条項)を設けない事例
クックパッド株式会社は、あえてロックアップ(キーマン条項)を設けない方針をとっていることで知られている企業です。
クックパッドは積極的なM&Aを行っている企業でもありますが、元社長の穐田誉輝氏はロックアップ(キーマン条項)を設けないことを明言しています。
拘束される売り手側の精神的負担への配慮が、クックパッドがロックアップ(キーマン条項)を設けない理由とされています。
M&A相談におすすめの仲介会社
M&Aを行う際は、ロックアップ(キーマン条項)などの契約内容を理解する必要があるので、M&A仲介会社などの専門家のサポートを受けることが大切です。
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ロックアップ(キーマン条項)などについても、納得いく条件で成約できるように全力でサポートいたします。
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まとめ
ロックアップ(キーマン条項)は旧経営陣が会社に拘束される期間を定めるもので、M&Aの交渉において争点になりやすい部分でもあります。
M&Aを行う際は、ロックアップ(キーマン条項)について理解しておくことが大切です。
【ロックアップ(キーマン条項)の主な内容】
- ロックアップ期間
- 個人的な出資の禁止
- アーンアウト条項
- 平均は2年から3年くらいといわれている
- 買い手・売り手それぞれにちょうどよい長さが違う
- 選ぶべき選択肢によりロックアップ(キーマン条項)をつける
- 相手選びに気をつける
- アーンアウト条項について
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。