M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年6月6日更新会社・事業を売る
事業リスクの種類とリスクマネジメント方法
事業の運営にはリスクが付き物です。事業を成功させるうえで、適切かつ迅速なリスク対応が欠かせません。そこで本記事では、事業リスクの種類・事例・事業リスクに対するマネジメント・リスクマネジメントに必要な事業リスクの分析手法などを中心に解説します。
事業リスクとは?
事業リスクとは、事業を運営するうえで起こり得るリスクの総称です。事業を運営するうえで、リスクは必ず存在します。事業拡大・海外展開・経営戦略を遂行するには、一定のリスクを背負うことになります。
そのため、事業を運営する方は、リスクをゼロにするのではなく、適切なリスクマネジメントを講じると良いでしょう。今回は、事業で起こり得るリスクの種類・リスク分析・マネジメントを中心に紹介します。
事業リスクの種類と内容
企業が抱える事業リスクは、大きく分けて以下の4つに分類可能です。それぞれの事業リスクを事前に知っておくと、適切な対策を打ちやすくなります。
- 経営戦略リスク
- 事業運営リスク
- 事故・災害リスク(事業継続リスク)
- 法務リスク
それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。
経営戦略リスク
経営戦略とは、企業が持続的に生き残るために定める計画を意味します。これを踏まえると、経営戦略リスクとは、経営戦略の実行に伴うリスクの総称です。具体的にいうと、M&Aの実行・事業規模の拡大・設備投資・海外進出など、経営者が判断をくだすことで生じ得るリスクを意味します。
特に近年ではインターネットの普及が進んで企業の不祥事が広まりやすい時代となっており、不適切な対応を取ってしまうと経営計画が崩れてしまうリスクが高いです。経営戦略の策定によりハイリターンを目指せる一方で、大きなリスクの存在に留意しなければなりません。
経営戦略の一環としてM&Aをご検討の場合は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所には知識・経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、M&A手続きのフルサポートを提供しております。
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事業運営リスク
事業運営リスクとは、実際に事業を運営していくうえで生じ得るリスクの総称です。代表的なリスクとしては、情報漏えいが挙げられます。メールやファックスなどの操作ミス・コンピューターウィルスによるサイバー攻撃・社員によるUSBメモリーやスマートフォンの紛失など、リスクの要因はさまざまです。
仮に情報漏えいが起きた場合、個人や企業への謝罪が要求されるだけでなく、損害賠償や刑事責任が発生するおそれもあります。事業を運営する際は、情報漏えいのほかにも、リコール・製造物責任・苦情などのトラブルが生じるリスクも高いです。
事業運営リスクを回避するには、5Sや品質管理・情報管理の徹底・顧客への迅速かつ丁寧な対応などを心がける必要があります。ここでは、経営者のみならず、現場の一人ひとりがリスクを認識したうえで、日頃から注意を払うことが大切です。
事故・災害リスク(事業継続リスク)
事業を運営する際は、どうしても避けられない事故や災害などのリスクも存在します。具体的には、盗難・通勤災害のほか、地震・火災・台風などです。このように、経営者や従業員では対策できないリスクに対しては、リスクを回避するのではなく、リスクが顕在化した際の対応に重点を置きましょう。
なお、甚大な災害によるリスクは、事業継続リスク(事業の継続が不可能になるリスク)と呼ばれます。事業継続リスクに対しては、被害の最小化や極力早く事業を復旧するための仕組みづくりが必要不可欠です。
事業継続リスクの対策の一つに、事業継続計画(BCP)が挙げられます。これは、事業の早期復旧に向けた方法や手段をまとめる計画です。中小企業庁のホームページに策定に関するポイントが掲載されているため、参考にしましょう。
甚大な災害はいつ起こるかわからないうえに、発生した際は事業運営に大きな損害を及ぼします。万が一の状況において事業を中断しなくて済むように、事前に事業継続計画を策定しておいてください。
法務リスク
法務リスクとは、会社法や労働基準法などに関して生じるリスクです。これには、脱税問題により信用を失うおそれのある財務リスクなどが該当します。具体的には財務諸表の虚偽記載などであり、会計ルールの変化に対応できないと意図せず違法な処理を行ってしまうケースも少なくありません。
ここで、もしも粉飾決算の事実が周知されてしまえば、顧客の信頼を失う事態に陥ります。そのほか、近年特に問題視されている「パワーハラスメント」「セクシャルハラスメント」も法務リスクの一つであり、企業側は法令順守を意識しなければなりません。
リスクへの対応としては、法務に詳しい専門家の起用・全社的な法令順守の徹底などが有効です。
事業リスクの事例
経営者は、さまざまなリスクを抱えながら事業運営を行っています。リスクは事業を営んでいれば必ず抱えるものですが、中には顕在化しやすい場面も見られるのです。そこで本章では、事業リスクが生じる事例として以下の3項目を取り上げます。
- 事業規模の拡大
- 海外事業展開
- 事業の撤退
それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。
①事業規模の拡大
最もリスクが発生しやすい場面は、事業規模を拡大するときです。自社のみで拡大するにせよM&Aを用いて拡大するにせよ、事業規模の拡大には多額の先行投資が求められます。成功して投資を回収できれば問題ありませんが、事業規模の拡大により必ずしも期待どおりの成果が得られるとは限りません。
事業規模の拡大に伴うリスクの顕在化によって、先行投資に失敗した事例は数多く存在します。ここでは、既存の資本が活用できる範囲で拡大し、リスクヘッジを図ると良いでしょう。また、昨今はM&Aを用いて事業規模の拡大を行う会社も増加中ですが、債務を抱えてしまうケースもあるため注意が必要です。
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②海外事業展開
販路開拓を理由に海外で事業展開を図る動きは、大企業だけでなく中小企業でも増加中です。しかし、海外展開にもリスクが伴い、失敗事例は多い傾向にあります。海外進出で発生するリスクは、主に3種類です。
1つ目はカントリーリスクであり、該当エリアにおける情勢の変動により企業が被るリスクのことです。具体的には、政権交代・反政府暴動・反日感情などさまざまな要因によって生じます。
2つ目はセキュリティリスクであり、企業や従業員に危険が生じるリスクのことです。例えば、テロ・誘拐・感染症などが挙げられます。特に自然災害が発生した場合は、事業の継続が困難になるおそれがあるため対策は必要不可欠です。
3つ目はオペレーショナルリスクであり、主に日常業務で発生するリスクのことです。これには輸出入規制や操業規制などが該当します。また、ストライキ・デモなどの労務リスクも、オペレーショナルリスクです。
海外進出におけるリスクには、そのほかに「現地企業との競争に勝てない」「現地法律・慣習に適応できない」といった点も挙げられます。したがって、海外事業を始める際は、現地の慣習を徹底的に調べたうえで競争に勝てる計画を策定しなければなりません。
③事業の撤退
採算が取れずに事業撤退を図る事例は数多いですが、ここにもリスクが存在します。事業撤退時は、市場や顧客からの信頼を失うリスクに注意しましょう。たとえ採算が取れなくとも、商品・サービスを利用している顧客は少なからず存在します。
そのため、自社都合で撤退してしまうと、顧客は商品・サービスを利用できなくなり、不満を抱えるおそれがあります。その結果として、自社の他製品の購入を避ける顧客を生み出すことにつながりかねません。事業撤退のリスクは見落とされがちですが、思わぬ損失を被る事例が多いため注意しましょう。
事業撤退の判断を間違えないためには、損益管理の工夫が必要不可欠です。具体的にいうと、会社全体としてだけでなく部門別・商品別に細分化して損益管理をすると良いでしょう。損益結果を継続的に把握しておくと、事業に将来性があるかどうか判断しやすくなります。
事業のリスクマネジメント
さまざまな事業リスクの存在を知ると、どのように対策すべきか困惑してしまいがちです。そこで本章では、リスクマネジメントの重要性とともに、各リスクに対応できるよう事業リスクの分析方法について取り上げます。
リスクマネジメントの重要性
リスクマネジメントとは、事業遂行により生じるリスクを適切に管理する行為です。近年の市場変化に伴い、事業の多角化や拡大をスピーディーに行う企業が増えています。こうした事業展開の迅速化により企業がリスクと接する機会が増えたため、以前にも増してリスクマネジメントが重要視されている状況です。
特に最近では長時間労働やハラスメントなどが社会全体で問題視されており、法務リスクの徹底的なマネジメントが求められています。
リスクマネジメントに必要な事業リスクの分析
事業を成功に導くには、事前に想定できるリスクを分析しておくことが理想的です。しかし、やみくもにリスク対策を講じても、致命的なリスクを見落としてしまいかねません。ここからは、この点を踏まえて事業リスクの分析方法を以下の項目に分けて取り上げます。
- 事業リスクの洗い出し
- 事業リスクの選別
- 事業リスクの定量化
それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。
事業リスクの洗い出し
まずは、想定できる事業リスクを可能な限りすべてを洗い出します。ここでは、自社内の情報のみならず外部からも幅広く情報を収集して、規模の大小を問わずあらゆる事業リスクを洗い出しましょう。事業リスクを洗い出す方法は主に3つあります。
1つ目はヒアリング法であり、それぞれの役割や担当に基づいて過去に発生したリスクをヒアリングします。直接的にヒアリングする機会が取れない場合は、2つ目のアンケート法が有効です。この方法では、具体的なリスクを用紙に記入してもらいます。
複数の部門を交えてリスクを洗い出したい場合は、3つ目のワークショップ法がおすすめです。この方法では、各部門から参加したメンバーで意見交換しながらリスクを共有します。いずれの方法においても、どれだけ多くの事業リスクを洗い出せたかによってリスク分析の精度が変わるのです。
事業リスクの選別
すべての事業リスクを洗い出した後は、その事業リスクについて重要度・緊急度に応じた優先順位を付けます。ここでいう重要度・緊急度とは、企業の収益性・信用性に影響を与えやすい事業リスクのことです。
すべての事業リスクをマネジメントできるわけではないため、ある程度は影響力の高い部分に絞ってリスクマネジメントを行う必要があります。具体的にいうと、消費者や事業継続に影響を与えるおそれのあるリスクについて特に重点的に管理すると良いでしょう。
事業リスクの定量化
最後に、選別した事業リスクを定量化(数値化)します。ここでは、「事業リスクの発生確率」と「リスクの影響度」の2つの観点から、事業リスクを定量化することが一般的です。
例えば、Aのリスクを「発生確率3ポイント×影響度5ポイント=15ポイント」、Bのリスクを「発生確率4ポイント×影響度4ポイント=16ポイント」といったように数値で表すと、リスクを分析しやすくなります。
そのほか、定量化する際の方法としては、モンテカルロ・シミュレーションも挙げられます。これは、予測値の設定が難しい指標などにおいて、ランダムな数を用いて何度も計算して近似解を求める方法であり、市場リスク計測や投資評価に用いられるケースが多いです。
その後は定量化した事業リスクに順位を付けたうえで、重点的なリスクマネジメントを実行します。
事業におけるリスクマネジメントの手法
事業リスクの分析が完了したら、実際にリスクマネジメントを行います。リスクマネジメントの具体的な手法は、主に以下の2種類です。
- 保険の利用
- マニュアルの整備
それぞれの手法を順番に詳しく紹介します。
①保険の利用
リスクが顕在化すると、企業側に多額の損失が発生して事業の継続が困難となるおそれがあります。どれほど手厚く対策していても100%事業リスクを回避できるわけではないため、万が一に備えられる保険は非常に重要です。
例えば、火事・天災などに対する損害保険や経営者の死亡に備える生命保険などに加入しておくと、対象の損害が発生しても事業を継続できます。また、労災保険・損害賠償責任保険なども、資金面のリスクを回避するうえで有効です。
そのほかにも、業種ごとに対応した保険・訴訟費用を補償する保険など、保険には各ニーズに応える内容が見られます。ただし、保険の利用には保険料が発生するため、リスク回避手段をすべて検討したうえで利用を検討しましょう。
②マニュアルの整備
リスク対応のマニュアルとして、事前対策と事後対策の双方をそろえることも大切です。事前対策マニュアルには、事業リスクを発生させないための品質管理・顧客対応などを盛り込みます。その一方で、事後対策には、事業リスクが顕在化した場合に被害を最小限に抑制するための施策を記載しましょう。
事前・事後のマニュアルを整備すると、「事業リスクの回避」と「事業リスクの対応」の双方を徹底できます。ただし、たとえマニュアルを作成したとしても、実践的な内容でなければリスクの回避には直結しません。ここでは、利用者を明確にしたうえで作成し、誰もが読みやすい文章で構成する必要があります。
また、マニュアルを活用する段階でパニックに陥らないよう、事前にデモンストレーションを行っておくことも大切です。
事業リスクのまとめ
本記事では、事業のリスクについて紹介しました。事業を運営するには、規模の大小を問わずさまざまなリスクが伴います。事業のリスクは、事前・事後の双方による回避対応が効果的です。事前にリスクを洗い出すことで、事業リスクが顕在化した際に迅速な対応を講じられます。
事業を成功させるには、まず自社が保有するリスクの把握から始めると良いでしょう。本記事の要点をまとめると、以下のとおりです。
・事業リスクとは
→事業を運営するうえで起こり得るリスクの総称
・事業リスクの種類
→経営戦略リスク、事業運営リスク、事故・災害リスク(事業継続リスク)、法務リスク
・事業リスクが起こり得る事例
→事業規模の拡大、海外事業展開、事業の撤退
・リスクマネジメントに必要な事業リスクの分析
→事業リスクの洗い出し、事業リスクの選別、事業リスクの定量化
・事業におけるリスクマネジメントの手法
→保険の利用、マニュアルの整備
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。