M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年5月28日更新会社・事業を売る
事業譲渡にかかる税金は?株式・会社譲渡の方が節税対策になる?税務を徹底解説!
事業譲渡は会社における事業の一部、あるいは全部を相手に譲り渡すことです。金銭取引である事業譲渡は、課税を受けます。この記事では、事業譲渡の特徴、事業譲渡にかかる税金や税務などについて詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
事業譲渡とは
事業譲渡はM&Aで使われる手法の1つです。会社が行っている事業の一部、あるいは全部を第三者に売却することをさします。例外として、会社オーナーが身内などに対し、無償譲渡の形式で事業譲渡が行われるケースもあります。
無償譲渡が行われる一般的なケースとしては、事業単位での事業譲渡よりも、後継者に対し会社の経営権を丸ごと譲渡する株式譲渡(会社譲渡)が行われるほうが多いでしょう。
事業譲渡の場合、事業を譲渡しても会社そのものはなくなりません。この点が事業譲渡における最大の特徴です。
事業譲渡は手続きを進めるにあたって、株主総会を経なければなりません。そのため、株主の数が極めて少数、あるいは株主が経営者のみのオーナー企業などが多い中小企業でよく使われる手法です。
しかし、株主総会は簡略に済ませられても複雑な手続きと準備、相手との交渉があります。実際に事業譲渡を行う際は、M&A仲介会社など専門家へ依頼しサポートを受けましょう。
事業譲渡をご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aの豊富な知識と経験を持つM&Aアドバイザーが、案件をフルサポートいたします。
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会社譲渡との違い
会社譲渡(株式譲渡)は、株主が変わるのみです。会社名や会社が有する債権債務、取引先契約や許認可権などの資産はすべて引き継がれ、対外的に見ると変化がほとんどないといえます。
事業譲渡は会社譲渡と違って、特定された事業の一部あるいは全部を切り出して譲渡するため株式に動きはなく、譲渡対象となる事業以外は会社に残ります。
譲渡側の税金
事業譲渡を実施した際、譲渡側で納税義務が生じるのは消費税、法人税とそれに付随して事業税、地方法人税、法人住民税です。それぞれ個別に解説します。
①消費税
消費税が課税されるのは、譲渡対象の中に課税資産が含まれている場合です。消費税の納付は譲渡側が行いますが、消費税そのものを負担するのは譲受側になります。
つまり、一般の商品を購入するときと同じです。譲渡側は譲渡対象に課税資産が含まれていれば、その分における消費税を加えて譲受側に請求します。譲受側からの支払いを受け、後日、消費税を納付する流れです。譲渡側には、消費税額分の実負担はありません。
②法人税・事業税・地方法人税・法人住民税
事業譲渡で得た対価に利益がでれば、その利益額に対する法人税が課されます。法人税が課される場合は、事業税、地方法人税、法人住民税も課税対象です。
利益額の計算は以下の式で求めます。
- 事業譲渡益=譲渡価格-譲渡資産の簿価
法人税、事業税、地方法人税、法人住民税の全てを合わせた実効税率は、約31~35%です。事業譲渡益の金額が大きければ、それだけ納税額も高くなります。
譲受側の税金
事業譲渡で譲受側にかかる税金をみていきましょう。前項で述べた消費税のほかに、不動産取得税や登録免許税がかかるケースもあります。
①消費税
譲渡対象に課税資産が含まれていれば、当然消費税がかかります。課税資産および非課税資産の主なものは以下のとおりです。
- 課税資産:無形固定資産、土地以外の有形固定資産、棚卸資産、のれん代(営業権)
- 非課税資産:土地、有価証券、債権
無形固定資産とは、ソフトウェアや特許権、商標権などです。営業権をこのなかに含める解釈をする場合もあります。有形固定資産は施設、設備、機材、10万円以上の備品が該当します。また、棚卸資産とは、事業における販売を目的として譲渡側が保有・保管していた製品や商品のことです。
②不動産取得税
譲渡対象事業の内容によっては、事業を行うために必須となる事業所や工場、作業場などが譲渡対象に加わります。その場合、譲受側は新たに不動産を取得することになるので、当然ながら不動産取得税が課されます。
③登録免許税
上記における不動産取得の場合、登記変更手続きも行うので、その際に登録免許税がかかります。譲受側は、譲渡対象事業に関連する許認可は、全て新たに取得しなければなりません。一つひとつの許認可に付随して、そこでも登録免許税は生じます。
事業譲渡で発生する税金の計算方法
下表に、事業譲渡で発生する税金の基本的な計算方法をまとめました。
税金 | 計算方法 |
消費税 | ・譲渡代金から消費税対象外の資産を差し引いた額に10%をかけた金額 例:事業譲渡の対価が10億円、消費税の非課税財産が1億円の場合、納税額は9,000万円 |
法人税・事業税・地方法人税・法人住民税 | ・「譲渡する資産と負債の差額」よりも「譲渡金額」が上回った場合、その利益に対して課される税金 例:譲渡対価が4億円、譲渡資産と負債の差額が2億円の場合、事業譲渡益は2億円。この2億円に約30%程度の税率が課され、納税額は6,000万円程度 |
消費税 | 事業譲渡側により、譲渡金額に対して課される消費税の金額分を上乗せした形で譲渡対価が設定される |
不動産取得税 | ・以下の計算式で求められる ・取得した不動産の価格×3/100 |
登録免許税 | ・以下の計算式で求められる ・土地の価格×15/1000 |
会社譲渡で発生する税金一覧
この章では、会社譲渡で発生する税金一覧についてみていきましょう。ここで紹介するのは、下記の4つです。
- 所得税
- 住民税
- 法人税
①所得税
まずは、所得税です。会社譲渡を行う側が個人の場合、所得税が課されます。この際における所得税は、株式を売却したときに得た譲渡所得の利益へかかり、株式売却価格から取得代金やM&A手数料を引いたのが譲渡所得です。
計算式は、「譲渡所得=株式譲渡価格-(株式取得代金+M&A手数料)」で、譲渡所得の15%が税金(所得税)となります。
②住民税
所得税と同じく、会社譲渡側が個人の場合に生じるのが住民税です。計算式も上述のとおりで、算出した譲渡所得の5%が税金(住民税)となり、会社譲渡側が個人であれば住民税と所得税で20%の税金がかかります。
③法人税
会社譲渡の株主が法人の場合に課されるのが法人税です。会社法上の総合課税方式で計算するため法人税はおよそ30%となります。
会社譲渡では譲渡益に税金がかかり、計算式は「法人税=譲渡益(株式譲渡額-株式取得額-M&A手数料など)×法人税率(29〜42%)」です。
会社譲渡で発生する税金の計算方法
この章では、会社譲渡で発生する税金の計算方法を、会社譲渡側が個人のケースと法人のケースに分けてみていきましょう。
会社譲渡側が個人のケース
まずは、会社譲渡側が個人のケースです。会社譲渡金額が2億5,000万円、株式取得費用が1,100万円、M&A仲介手数料が2,000万円の場合を考えてみましょう。
この場合は、譲渡所得が2億1,900万円になります。所得税は譲渡所得の15%となるので3,285万円、住民税は譲渡所得の5%となるので、1,095万円です。結果、手取り額は1億7,520万円になります。
会社譲渡側が法人のケース
次に、会社譲渡側が法人のケースです。上述した個人のケースと同じ会社譲渡金額、株式取得費用、M&A仲介手数料とすると、会社譲渡益は2億1,900万円になります。
法人税(29〜42%)を計算すると6,570万円となるので、手取り額は1億5,330万円です。(30%の法人税率で計算)
事業譲渡よりも会社譲渡の方が節税対策になる
事業譲渡によって得た利益には、法人税などが約34%かかります。例えば、譲渡する資産の簿価が100、対価が500の場合、事業譲渡益は400となり、その34%である136が法人税などとしてかかります。
個人株主の株式譲渡(税率約20%)と比べると、税率の面でやや負担が重くなります。また、その後、個人に対価を還流したい場合、例えば株主への配当や役員への役員報酬には追加の税負担がかかります。
ただし、譲渡する資産の簿価と対価が同じ100の場合、事業譲渡益が発生しないため税金はかかりません。また、事業譲渡益を相殺できる損金が別にあれば税負担は生じないため、一概に事業譲渡の方が税負担が重いとは言えません。
事業譲渡・会社譲渡の税務対策
この章では、事業譲渡・会社譲渡の税務対策について見ていきましょう。
事業譲渡の税務対策
まずは、事業譲渡の税務対策です。譲渡側と譲受側に分けて見ていきましょう。
事業譲渡での譲渡側税務対策
事業譲渡の譲渡側税務として最大の関心事は、やはり法人税、事業税、地方法人税、法人住民税でしょう。しかし、これら法人税について直接的な節税策はありません。というのは、ほかのM&A手法では受けられる課税優遇措置も事業譲渡にはないためです。
事業譲渡の場合に考えられる節税対策は多くありませんが、もし会社の決算が赤字状態であれば、赤字額と同程度の事業譲渡益にすることで、法人税の課税対象外になります。
決算の数字が判明していないタイミングであれば、譲渡価格を譲渡資産の簿価と同等額にして事業譲渡益をゼロにする考え方もあります。これら2つの対応が難しければ、経費の計上を怠らずに行うなどの一般的な節税対策しかありません。
事業譲渡での譲受側税務対策
事業譲渡の譲受側税務としては、消費税額の把握が第一に求められます。譲渡対象リストの中から課税資産と非課税資産を仕分けし、消費税額を算出するのですが、厄介なのが棚卸資産です。おそらくは、譲渡側においても棚卸資産の詳細で正確な数量は把握しきれていない可能性があります。
それを簿価ではなく時価で換算するとなれば、かなりの時間を要するでしょう。のれん代(営業権)は、5年間の均等償却措置となり、その間は課税所得における損金算入の節税効果を得られます。
会社譲渡の税務対策
次に、会社譲渡の税務対策について見ていきましょう。
退職金による節税対策
これは、M&Aや事業承継において、株式譲渡の対価の一部を役員退職金で支払う方法です。「会社を売却するタイミングで退職金を支払い、純資産を減らして株式を譲渡する」というのが具体的なスキームです。
売主の立場からすると、会社の売却によって得る手取りを少しでも多くしたいと考えるでしょう。この方法では、単に会社の譲渡対価を受け取るよりも、退職金のルールを活用することで手取りが増えることがあります。中小企業では代表取締役が株主であることが多いため、株式売却の対価と役員退職金を組み合わせて受け取ることが可能です。
具体的には、退職金にかかる税率を計算し、最も手取り額が多くなるように調整します。譲渡対価の金額によっては、すべてを役員退職金として受け取った方が手取り額が最大化する場合もあります。
株式譲渡の場合、株式譲渡益に対する税率は一律20.315%です。一方、退職金にかかる税金は、退職所得控除(役員勤続年数によって変動)と1/2計算が適用されるため、非常に優遇されています。その結果、実質税率は0%から27.5%(退職所得金額により累進課税)となります。
役員退職金の活用には、買主にとってもメリットがあります。一つは「買収時の資金負担の軽減」です。役員退職金は譲渡企業が役員に支払うため、その支払いは譲渡企業の現金や預金(または現物資産)から行われます。つまり、買主は株式譲渡対価の一部を役員退職金とすることで、買収時の資金負担を軽減できます。
もう一つのメリットは「退職金の損金算入」です。株式取得にかかった資金は損金算入できませんが、退職金は損金算入できるため、退職金発生年度や翌事業年度以降に繰越欠損金として課税所得と相殺でき、節税効果が期待できます。
第三者割当増資による節税対策
M&Aの手法として、株式譲渡ではなく第三者割当増資を行うことで、税金の発生を避けられます。第三者割当増資とは、会社が第三者に新株を引き受ける権利を割り当てることです。これにより、新株の引受人が発行会社の一定割合の株式を取得でき、M&Aの手法として活用されます。
対象会社が買い手に対して50%超の議決権を取得させる第三者割当増資を行うと、経営権を買い手に渡せます。第三者割当増資を行っても、売り手株主は現金を得ることはなく、対象会社の資金が増加するのみです。そのため、売り手株主に課税は発生せず、対象会社にも損益が生じません。
ただし、第三者割当増資は以下の点で株式譲渡とは異なりますので、留意しておきましょう。
- 売り手は完全に撤退せず、M&A後も少数株主として残ります。
- 対象会社の資本金が増加し、財務状況が改善します。
- 他の少数株主の議決権が希薄化し、株主全員に影響があります。
- 増資後に登記手続きが必要となります。
発行会社に対する株式譲渡の税金
この章では、発行会社に対する株式譲渡の税金について見ていきましょう。
みなし配当の処理方法
個人や法人が有する株式を株式の発行会社に売却する取引は、発行会社にとって自己株式の取得で、支払われる対価は、利益剰余金を原資とするのでみなし配当(税務上配当)になります。会社から株主が配当金を受け取っていなくても受け取ったとみなされて課税されるのが、みなし配当です。
法人株主が株式譲渡を実施する場合、みなし配当は受取配当金として営業外利益に計上されますが、税務では、一定金額を所得から引くことが出来ます。また、発行会社側で配当金から徴収された源泉所得税額は、法人税額から控除可能です。
個人株主が株式譲渡を実施する場合は、個人が株式を発行法人に売却してもみなし配当になります。所得税法で、みなし配当は配当所得に区分されます。総合課税として確定申告し、所得税から一定額が控除を受けられるのです。株式を発行会社以外に売却する際の譲渡所得(分離課税)とは異なります。
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事業譲渡と会社譲渡の税金まとめ
事業譲渡は、中小企業にとっては会社の独立性を担保したまま行えるM&Aとして有効な手法です。さまざまな手続きの面倒さは否定できませんが、それでも大企業に比べれば簡素化できる点があります。
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