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2023年9月8日更新会社・事業を売る
会社売却の際に債務(負債)・赤字はどうなる?注意点や成功ポイントを解説
債務(負債)・赤字を抱える会社でも、会社を他社へ譲り渡すことは可能です。当記事では、債務(負債)・赤字を抱える会社の会社売却に関して、売却の際の債務(負債)・赤字の引き継ぎや、引き継ぎ不可のケース、引き継ぎの際の注意・成功ポイントなどを取り上げています。
目次
会社売却とは
会社の株式や事業のすべてを他の会社に譲り渡すのが会社売却です。株式を譲るなら会社を経営する権利を委譲させ、自社が営む全事業を譲るなら事業を営む主体を他社へ移して、会社の経営・事業の運営から手を引きます。
株式と事業を譲るほかにも、分割と合併も会社売却の方法に加えられています。事業にまつわる権利義務を別の会社に移すのが分割で、2つを超える会社が1つの会社になるのが合併です。
このように、会社売却が完了すると、会社を経営する権利か事業の主体が他の会社に移されます。ちなみに、合併に関しては他の会社売却とは違って当事会社の解散が伴うので、会社売却によって会社そのものがなくなってしまいます。
会社の債務(負債)・借入とは
会社を売るとき、借金や負債がどうなるか気になる方も多いでしょう。この部分は会社売却の大切なポイントです。ここで、借金や負債の基本的な内容をわかりやすくご説明します。
債務(負債)とは
会社の「負債」とは、将来誰かにお金や物を返さなければならない義務のことを指します。例えば、銀行からの借金は明らかな負債です。今はそのお金が会社にありますが、後で銀行に返す必要があります。
しかし、株主からの資金は返す義務がないので、負債ではありません。要するに、返す義務がないお金は負債とは言えません。また、仕入れた商品の未払い代金や、返済期日のある社債も負債の一部です。
借入とは
借入金とは、他人からもらったお金で、後で返す約束をしたものです。たとえば、銀行からの融資や、経営者が会社に貸し付けたお金などがこれに当たります。借入金は、いつ返すかによって「短期借入金」と「長期借入金」に分けられます。
①短期借入金
短期借入金は、一年以内に返すお金や、会社の普段の業務に関連するお金です。業務に関連するとは、商品を仕入れたり、製造・販売することに使ったお金のことを指します。この短期借入金は、会計の書類では「流動負債」と呼ばれます。
②長期借入金
一方、長期借入金は、一年以上かけて返すお金です。例えば、5年のローンを組んだ場合、最初の一年間の返済分は短期借入金として、残りの4年分は長期借入金として分けられます。長期借入金は「固定負債」として記載されます。さらに、利息が付くかどうかで、「有利子負債」と「無利子負債」に分けることもできます。
会社売却の際に債務(負債)・赤字はどうなる?
赤字・債務・負債を抱える企業が会社売却に取り掛かると、他社に劣ると判断される赤字・債務・負債の取り扱いに疑問を抱く方もいるでしょう。会社が抱える赤字・債務・負債は、下記のように取り扱われます。
- 株式譲渡を行った場合
- 事業譲渡を行った場合
- 会社分割や合併を行った場合
株式譲渡を行った場合
会社の株式を譲ることで会社を経営する権利を譲る株式譲渡では、会社をそっくり他の会社に移す方法のため、売り手の赤字・債務・負債も丸ごと引き継がれます。
しかし、買い手は売り手のマイナスな要素を抱えても、自社事業との親和性や求める人材、特殊な技術、事業エリア、取引先などを得られるため、赤字・債務・負債のある会社も株式を譲り渡すことで、会社売却を済ませられる可能性があります。
事業譲渡を行った場合
事業に関する経営の主体を他の会社に譲る事業譲渡は、譲り渡す対象を選べるため、会社売却を済ませても自動的に赤字・債務・負債は承継されません。
つまり、赤字が出ている事業や、抱えている債務・負債の移譲は、買い手との交渉に委ねられます。交渉により買い手が赤字を出す事業と債務(負債)を受け入れることを同意してくれれば、事業譲渡でも債務(負債)・赤字を抱える事業を譲り渡せます。
とはいえ、買い手へリスクを背負わせてまで事業譲渡を受け入れてもらうには、売り手事業が買い手にとって利益となる長所を備えている必要があります。どの会社の事業であっても、赤字の事業や、事業の債務・負債をほかの会社に移せるとはいえません。
会社分割や合併を行った場合
分割・合併で会社売却に取り掛かる際には、赤字・債務・負債は下記のように取り扱われます。
- 会社分割のケース
- 合併のケース
会社分割のケース
かつては会社を分割する際に、債務の履行を行えるなら、分割をしてよいとされていましたが、会社法による規定では債務の履行を行える可能性が明記されていないため、債務超過の会社でも分割は可能です。
分割を進める際は、株主に債務の履行が行えるかどうかを知らせたり、債権者保護の手続きをとったりする必要があります。
合併のケース
合併の場合には、吸収合併の方法を選ぶと、吸収される売り手の繰越欠損金を、買い手に引き継いでもらえます。
ただし、合併前に買い手と吸収される売り手の株式について、50%を超える割合を保有し、その割合が5年の間続いていないと、繰越欠損金を用いた節税は行えません。
それでも、5年を過ぎるまでに合併し、みなし共同事業要件という基準に達していれば、繰越欠損金の引き継ぎは可能です。
会社売却の際に債務(負債)・赤字引き継ぎが行われない場合がある
債務・赤字が会社売却で買い手に引き継がれないことはあるのかと疑問に思う方もいるでしょう。債務・赤字が引き継がれない例には、下記のような場合が挙げられます。
- 株式譲渡の場合
- 事業譲渡の場合
- 会社分割の場合
- 合併の場合
株式譲渡の場合
株式の所有者を変えて経営する権利を他の会社へ移す株式譲渡でも、譲渡契約に債務(負債)の引き継ぎが明記されていないと、買い手には引き継がれません。契約書の内容を見落としてしまうと、譲渡契約を結んでも、債務(負債)は残されます。
また、株式譲渡を済ませても、オーナー経営者が抱える連帯保証の債務は、自動で買い手に引き継がれません。
個人の連帯保証を引き継いでもらうには、譲渡契約に引き継いでもらう点を盛り込み、買い手による借入金の融資の肩代わりか、借入金の保証の肩代わりが必須といえるので、株式譲渡でも、債務(負債)が引き継がれない点に留意しましょう。
事業譲渡の場合
会社売却における事業譲渡は、すべての事業を譲渡の対象としています。しかし、赤字を出す事業が含まれていれば、買い手は対象事業から得られる利益とリスクを考量し、赤字を出す事業を譲り受けず、優良な事業のみを引き継ぐのが大半です。
債務(負債)でも、事業譲渡では承継する対象を選べるため、自社に不利益となる債務(負債)は承継の対象とせず、大半は債務(負債)を除いた対象のみを承継します。
会社分割の場合
自社が営む事業を他の会社に移す会社分割では、不採算事業を自社に残し、優良事業は他の会社へ移す例が見られます。買い手に譲り渡す対象は、優良事業を承継した会社のため、赤字・債務(負債)は自社に残されるので、赤字・債務(負債)の引き継ぎを果たせません。
また、繰越欠損金についても、会社分割では引き継げません。他の会社に移す事業に関係する繰越欠損金を正確に導き出せない点が理由とされています。
しかし、下記の条件に当てはまると、会社分割でも繰越欠損金は引き継がれます。
- 分割会社の主要事業が、承継会社で引き続き運営されることが予想される
- 分割の直前に保有している分割会社の全資産・負債が、承継会社に移される
- 分割してすぐに分割会社が解散する旨を、分割日までに株主総会か社員総会で決議している
合併の場合
買い手が売り手の株式を取得し、吸収合併により売り手を自社に取り込もうとする場合、下記のような条件に達していなければ、繰越欠損金は引き継げません。
- 合併から5年の期間を超えて、売り手に対する50%超えの支配関係が続く
上記では5年を超える期間が条件でしたが、5年に達していない状態でも、繰越欠損金の引き継ぎは可能です。ただし、下記に挙げる要件の①~③か、①と④を満たしていないと、繰越欠損金は引き継げません。
【みなし共同事業要件】
- 合併する両社が営む事業に関連性がある(吸収される会社の事業は主要な事業とする)
- 両社の売上・社員数・資本金などの割合が5倍を上回らない
- 両社の運営事業が合併前まで営業を続けていることと、合併直前における事業の規模が2倍を上回らないこと
- 両社の経営に関わる特定役員が、合併した会社の特定役員に就任することが予想される
会社売却の際に債務(負債)・赤字引き継ぎの注意点
会社売却で赤字・債務(負債)を他の会社に承継させるのなら、下記の点に注意を払います。
- 会社売却後に借入が残る場合がある
- 希望通りの売却先が見つからない可能性がある
- 詐害行為に該当するおそれがある
1.会社売却後に借入が残る場合がある
会社売却で得られた対価を抱える赤字・債務(負債)の解消に充てる場合、対価の額が赤字・債務(負債)の額を下回ると、自社・個人に借入金が残されます。
また、譲渡契約を済ませてから債務が発覚した場合、契約内容によっては売り手が債務者となるため、会社売却を終えても、債務を果たす責任が自社に残されます。
2.希望通りの売却先が見つからない可能性がある
赤字・債務(負債)を抱える会社・事業は、財務状況の良い会社・事業よりも低く評価されます。
買い手は主にリスクの少ない会社・事業を買収の対象に据えるので、売り手の会社・事業が自社の価値を高めるに値する資産などを保有していないと、求める買い手は見つからないといえます。
売り手は当初の条件を下げたり、会社売却の方法を変えたりしないと、売却先を探せない可能性がある点を留意しましょう。
3. 詐害行為に該当するおそれがある
事業を手放すとき、債務超過の状態であると、特別な注意が必要です。「詐害行為」に該当するリスクがあるためです。これは、自分が返すべき借金があるのに、故意に持っている資産を減らす行為を指します。
例えば、会社が倒産する際、持っている資産を売って借金を返すことが一般的です。しかし、事業を他人に譲ることで資産を売ると、借金を返すためのお金が不足してしまいます。その結果、お金を貸している側に迷惑がかかります。
このような行為が詐害行為とみなされると、事業の譲渡は無効とされる可能性があるので、十分注意しましょう。
債務(負債)・赤字がある会社を売却する際の成功ポイント
赤字や債務(負債)を抱える会社が、求める条件で会社売却を終えるには、下記のポイントを押さえましょう。
- 人材や技術、資産など自社の強みを持つ
- 権利や特許など独自の価値がある
- 安定した取引先を持っている
- 売却前までに業績を少しでもよくしておく
- 売却のタイミングを間違えない
- 自社事業の収益性を理解し、アピールする
1.人材や技術、資産など自社の強みを持つ
買い手は自社事業とのシナジーや、事業・業容の拡大などを目的に、会社売却に応じます。そのため、事業を行う上で必要となる人材を一定数確保でき、自社にはない技術・システムを備えていれば、会社売却は可能です。
そのほか、工場などの建物や、事業所を構えるための土地、事業に用いられる設備などの資産を保有している点も、会社売却を果たすための必要な要素といえます。
2.権利や特許など独自の価値がある
事業運営に必要な権利の取得や特許における技術の開発を一から始めると、多くの費用・労力、長い期間を費やす必要があります。
しかし、売り手が事業を行うための許可を有していたり、特殊技術を使用する権利を備えていたりすると、買い手は対価の支払いと交換に、価値のある権利・特許を取得できます。
つまり、売り手が赤字を出していたり、債務(負債)を抱えていたりしても、価値のある権利・特許を有していれば、買い手を見つけられるので、会社・事業を売却できる可能性が高いといえます。
3.安定した取引先を持っている
特定の相手と取引をしたいと考えていても、既に他の会社と取引関係にあれば、自社が介入する余地はありません。しかし、売り手が対象の取引先との関係を築いていれば、買収により求める取引先を確保できます。
売り手が行ってきた取引はもちろん、買い手事業に関連した取引を新たに始められる可能性があるので、赤字・債務(負債)のある会社でも、深い関係にある取引先を確保していれば、会社売却を終えられるといえます。
4.売却前までに業績を少しでもよくしておく
会社売却に取り組む前に、自社の弱点を補って利益率を高めたり、短期間に修正した経営計画を進めたりすると、業績の改善が買い手に評価されます。
また、新たに特許を取得したり、不良な資産を処分して現金に換えたりなど、自社の長所を活かした取り組みや、会社のスリム化を図るなどの方法で業績をアップさせると、買い手の関心を高められ、会社売却の成功を呼び込みます。
5.売却のタイミングを間違えない
赤字・債務(負債)のある会社は、優良な会社と比べて、買い手の数が少ないといえます。
限られた買い手のうちの1社が興味を示してくれたにもかかわらず、交渉に応じるかどうかを決めかねているうちに、買い手が交渉から手を引いてしまえば、次の買い手がいつ現れるかはわかりません。
条件を下げてでも交渉に応じるか、別の買い手が現れるのを待つかを決めるのは売り手次第ですが、業績の良い会社よりも買い手が少ない現状を考慮すれば、条件を下げた交渉で買い手を逃さないのも1つの方法です。
ただし、売り手市場の時期なら、通常の時期よりも買い手が集まりやすいといえるので、売り手の希望に沿った買い手の探索に時間をかけられます。
6.自社事業の収益性を理解し、アピールする
いくつかの事業を運営していても、すべての事業で赤字を出しているとは限りません。赤字を出している事業が1つなら、他の事業についての収益性をアピールしましょう。
株式譲渡・合併での売却は難しくても、事業譲渡と分割なら、収益性の良い事業だけを切り離せるので、赤字会社でも会社売却は可能といえます。
債務(負債)・赤字がある会社は売却以外の方法はある?
債務(負債)・赤字を抱える会社には、売却を除いた手段に下記のような方法が用意されています。
- 企業再生
- 解散・清算
企業再生は、企業監査により財務状況を改めて確認し、立てた再生計画に基づいて、債務の免除や、減資、第三者割当増資、投資ファンドからの投資などを活用しながら、赤字・超過債務からの脱却を図ります。
解散・清算は、会社の事業活動を中止し、資産の売却と債権の回収により、抱える借金を返す方法です。解散・清算を選ぶと、会社の運営を続けられず、会社そのものがなくなってしまうので、会社を残すなら企業再生による取り組みを選ぶようにしましょう。
とはいえ、企業再生を図るには、株主・取引先などの関係者の理解を得て、企業監査・再生計画の立案・計画に見合ったスキームの実行などに取り掛かるため、完了するまでには数年を要します。
また、専門性が高い方法のため、士業・コンサルタントなどの専門家の協力が必須といえるため、支払う費用も嵩んでしまうので、短い期間・少ない負担で赤字・債務(負債)を解消するには、会社売却をお薦めします。
債務(負債)・赤字がある会社の売却の相談先
債務(負債)・赤字を抱える会社を売る際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は、中堅・中小企業向けのM&A案件を主に取り扱っており、さまざまな業種で成約実績を有しています。
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会社売却における債務(負債)・赤字のまとめ
債務(負債)・赤字を抱える会社の会社売却について、会社・事業を譲り渡す際の債務(負債)・赤字の取り扱いや、債務(負債)・赤字が引き継がれない場合などを取り上げました。
会社売却は、方法ごとに債務(負債)・赤字の引き継ぎ方が異なり、譲渡契約の内容や譲渡の対象資産、定められた条件によって債務(負債)・赤字は引き継がれません。
そのため、取り上げた注意・成功のポイントを踏まえて、自社にふさわしい会社売却の方法を選びましょう。
【会社売却の際に債務(負債)・赤字引き継ぎの注意点】
- 会社売却後に借入が残る場合がある
- 希望通りの売却先が見つからない可能性がある
【債務(負債)・赤字がある会社を売却する際の成功ポイント】
- 人材や技術、資産など自社の強みを持つ
- 権利や特許など独自の価値がある
- 安定した取引先を持っている
- 売却前までに業績を少しでもよくしておく
- 売却のタイミングを間違えない
- 自社事業の収益性を理解し、アピールする
また、債務(負債)・赤字を抱えている会社を売るとなれば、優良な会社よりも、買い手を見つけるのが難しいといえるので、過去に債務(負債)・赤字のある会社を仲介した実績のある専門家に協力を仰ぐようにしましょう。
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