合併における資本金の決定

合併では、被支配会社の純資産(資本金)を支配会社が受け継ぎます。合併の状況によって、変動する株主資本額や資本金への割り振り額が異なります。合併と資本金の関係、合併後の存続会社の資本金の決め方、合併で変動する株主資本の割り振りについて解説します。無対価合併や債務超過会社との合併では、例外的な会計処理を実行するため注意が必要です。

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2020年3月27日更新

目次
  1. 合併における資本金
  2. 合併と資本金の関係
  3. 合併後における存続会社がするべき資本金の決め方
  4. 合併で変動する株主資本の割り振り
  5. 合併の手続き
  6. まとめ

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合併における資本金

合併における資本金

大企業同士のM&Aでは、合併手法を活用するケースが多いです。

複数の企業を統合する手法として、合併は有用で、合併によって双方企業が大きく変わります。株主や従業員、多くの利害関係者に影響を与えるため、合併は慎重に実施しなくてはいけません。

そんな合併において大事なことがあります。それが「資本金の決定」です。
 

合併の際は、消滅する会社の資産を存続会社が引き継ぎます。その資産の中には、資本金といった純資産も含まれます。

実は、引き継ぐ純資産の額や引き継いだ純資産の割り振り方は、法律上厳格に定められています。そのため、自由に資本金の額を決定できる訳ではありません。

この記事では、合併時の資本金の決め方について、分かりやすく解説します。

合併と資本金の関係

合併と資本金の関係

まず初めに、合併と資本金の関係を簡潔に説明します。

⑴合併とは

合併とは、片方企業の資産や権利・義務を、もう片方の企業に全て移転するM&A手法です。簡単に言うならば、二つの企業を一つに統合する手法です。そのため、必ず法人格が消滅する会社が出てきます。


合併には、二種類の方法があります


まず一つ目は、片方企業が消滅し、もう片方の企業に資産や義務が引き継がれる手法です。これを「吸収合併」と呼ばれます。


次に二つ目は、合併に関係する企業全ての法人格が消滅します。そして、新しく設立する会社に、消滅する企業の権利を移転させます。これを「新設合併」と呼びます。


しかし、新設合併は手続きが面倒であるため、あまり実施されません。合併は、多角化やグループ内再編を主要な目的として行われます。

現金が無くとも実施できる為、大企業に好まれる手法です。一方、手続きに時間や手間がかかるため、中小企業には向いていない手法です。
 

合併を実施する際は、会計のみならず税務についても注意しなくてはいけません。何も考えずに合併を実行すると、非適格合併となる恐れがあります。


非適格合併となると、株式が対価であっても(現金を受け取らなくても)、多額の税金が課されます。よって合併の際には、適格要件を満たすことが大前提です。


適格要件には、様々な要件があります。グループ内再編の際には、適格要件をクリアする様に設計しましょう。
 

このように合併は煩雑になりがちな手法であり、専門家のアドバイスが不可欠です。そのため、合併を行う際にはぜひM&A総合研究所にご相談ください。

M&A総合研究所では、M&Aに豊富な知識と経験を持つプロがM&Aをフルサポートいたします。相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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⑵資本金の構成

資本金は、しばしば株主資本と混同されがちです。ですが、両者は大きく異なる概念です。
 

正確には、株主資本の中に資本金が存在します。簡単に言うと株主資本とは、株主の持ち分である会社の資産です。
 

株主資本は、資本金以外に資本剰余金や利益剰余金、自己株式から構成されます。株主資本に新株予約権を加えたものが、純資産となります。
 

合併では、消滅会社の株主資本が存続会社に引き継ぎされます。その際、株主資本をどの様に評価するかは、合併ごとに異なります
 

加えて株主資本のうち、どの程度を資本金に割り振るかも、ケースごとに違います。


次は、合併における株主資本(資本金)の取り扱い方を、パターンごとに説明します。


また、以下の記事では企業合併についてメリットや注意点を紹介しているので、合わせてご確認ください。

【関連】企業合併とは

合併後における存続会社がするべき資本金の決め方

合併後の存続会社の資本金の決め方

初めに、合併後における存続会社がするべき資本金の決め方をご紹介します。


合併では、消滅会社の資本金が、存続会社に加算されます。その際どの程度の金額を加算するかは、「会社計算規則」に定められています。
 

ここでは、合併のパターンごとに、資本金の決め方を分かりやすくお伝えします。

⑴グループ外の企業同士、支配取得目的の合併

支配取得目的とは、グループ外の企業を獲得する行為です。

新規事業へ参入するため、他者と合併します。
 

合併が支配取得目的であれば、受け継ぐ資産・負債を時価に換算した上で、変動する資本金(株主資本)を決定するのです。


理解を深める為に、簡単な例をご紹介します。


消滅会社の資本が1,000万円であり、時価が500万円である場合、存続会社の株主資本は1,000万円ではなく、500万円分増加します。この500万円を、資本金や剰余金へ割り振るのです。

⑵グループ内企業同士、共通支配下での合併

共通支配下での合併とは、グループ内企業同士の合併です。

子会社同士の合併や、親会社と子会社の合併が該当します。また、兄弟会社同士の合併等も含まれます。

このケースでは、資産・負債を「簿価」換算します。簿価換算された株主資本を基準に、変動する資本金を決定します。

つまり先ほどの例だと、存続会社の株主資本が1,000万円分増えます。

1,000万円の中から、資本金の額を取り決めます。

以下の記事では会社の合併と仕訳について解説しています。通常取得や逆取得の合併仕訳、純資産の引継ぎ方法などについて紹介しているので、こちらも合わせてご確認ください。

【関連】合併と仕訳

合併で変動する株主資本の割り振り

合併で変動する株主資本の割り振り

株主資本の算出方法は、前述の説明で理解して頂けたかと思います。合併の際には、株主資本からどの程度を資本金に割り振るかを決定します。
 

株主資本(資本金)の割り振り方も、合併の状況ごとに異なります。


ここでは、状況別に株主資本の割り振り方を解説します。

⑴支配取得目的の合併

支配取得目的の場合、合併契約書の定めにより、自由に振り分け可能です。つまり、資本金に全額振り分けられます。


一方で、資本金を1円とするのも可能です。どう割り振りすべきかは、各会社(経営陣・株主)の考え方次第です。
 

会社としての体力や信用力を良く見せたいならば、極力資本金を多くすべきです。ただし、資本金を多く計上し過ぎると、税務上の問題が生じます。
 

まず合併では、資本金増加額の1000分の7に及ぶ登録免許税が発生します。加えて資本金が1億円を超えると、法人税法上の優遇税制等が適用されません。
 

よって節税面を重視するならば、資本金は増やし過ぎないのがベストです。とはいえ、資本金が少な過ぎるのも、信用面でデメリットがあります。
 

結局のところ、バランス良く資本金と資本準備金に割り振るのが無難です。


ちなみにこのようなケースの場合、売り手の会社の条件が買い手のニーズと合致させる必要があります。

売り手の条件を確実に合致させたいのであれば、M&A総合研究所のM&Aプラットフォームを活用してください。

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⑵共通支配下での合併

共通支配下での合併では、原則⑴と同様に自由に割り振ります。つまり、資本金は自由に決定できます。


ただし合併対価が全て株式の場合、資本金や剰余金の額を、そのまま引き継ぐのも可能です。共通支配下での合併は、基本的に株式を対価として行われます
 

ですので、基本的には二つの方法から好きな方を選択できます。

⑶子会社同士、無対価による合併


子会社同士の合併では、対価を支払わないケースもあります。その場合、会計処理がやや特殊なため注意が必要です。


子会社同士の無対価合併に関しては、「会社計算規則36条 2項」に設定されています。規則によると、消滅会社の株主資本は下記の通り振り分けます。
 

  • 資本金、資本剰余金→その他資本剰余金
  • 利益剰余金→その他利益剰余金


無対価合併では、新株発行等資本の増加を伴いません。ですので、資本金や剰余金は増加させない処理が必要です。
 

やや特殊なので、無対価合併を実施する際は注意しましょう。

⑷債務超過会社の合併

中には、債務超過会社との合併を実施するケースも存在します。債務超過会社とは、貸借対照表に記載された負債額が資産額を上回っている状態です。
 

つまり、借金が資産額を上回っており、経営状態は著しく悪いと言えます。


債務超過会社は、株主資本がマイナスとなります。したがって債務超過会社と合併すると、存続会社の株主資本が減少します


以上の前提を基に、株主資本の割り振りを考えましょう。株主資本のマイナス分は、存続会社のその他資本剰余金を減額する事で相殺します。
 

それでもマイナス分が残るならば、その他利益剰余金を減額します。つまり債務超過会社との合併では、原則資本金は増加しません。

合併の手続き

合併の手続き

合併の手続きはいささか煩雑であり、必要書類も多いです。  

合併の手続きをする際、大まかに分けて2つの申請書が必要になります。それは、存続する企業の「変更登記申請書」と消滅する企業の「解散登記申請書」です。  このうち、解散登記申請書はそれ自体を書けば問題ありません。  

一方で、やっかいなのが存続する企業が提出する変更登記申請書です

変更登記申請書は提出手続きの際に添付書類が必要となり、その数はなんと10種類以上に及びます。  

ここからは、手続きの際に必要な書類を詳しく紹介します。

⑴合併契約書

文字通り合併の契約書です。  

合併の契約書には法定記載事項があり、それが抜けていると無効になってしまうので要注意です。  

法定記載事項には7つあります。 具体的には、下記の7つです。

  1. 「存続する会社と消滅する会社のそれぞれの商号と住所」 
  2. 「消滅する会社の株主か社員に対して株式、持ち分に代わる存続する会社の株式や金銭などを交付する際はその内容など(なければ記載不要)」
  3. 「合併の対価が存続会社の株式がある際は『増加する資本金の額の定め』、『増加する資本準備金の額の定め』(なければ記載不要)」
  4. 「②に該当する場合当該金銭の割り当てに対する事項(なければ記載不要)」 
  5. 「消滅する会社が新株予約権を発行するとなった際、存続する会社は新株予約権者に向けて交付する予定の当該新株予約権に代わる存続株式会社の新株予約権、または金銭の内容等」について記載(なければ記載不要) 
  6. 「④に該当する場合、当該新株予約権又は金銭の割当てに関する事項(なければ記載不要)」 
  7. 効力発生日 

⑵合併契約の承認の議事録

議事録には、基本的に決議手続きを実施した株主総会のものが使われます。

⑶債権者の保護に関する手続きを証明する公告と催告証明書

異議を唱えている債権者がいた時は、当該債権者の合併契約の承認に関する議事録や証明書、弁済金受領書等と債権者を害する恐れがないことを証明する書面が必要です。

⑷消滅する会社の登記事項の証明書

消滅する会社の本店の所在地、存続する会社の本店の所在地のそれぞれの管轄登記所が違う時に必要となります。

⑸簡易合併、あるいは略式合併の形式を取る場合は要件を証明する書面

簡易合併か略式合併の場合に必要となる書類です。

また、簡易合併に反対する株主がいる場合、その株主の所持している株数が、会社法で規定されている株数より少ないことを証明する書類も必要となります。

⑹合併手続きの際に必要となる書類(その他)

  • 資本金計上証明書 
  • 株券を発行する会社の場合は、株券提供公告を証明する書面 
  • 新株予約権を発行する会社の場合は、新株予約権提供公告を証明する書面 
  • 合併に主務官庁の認可が必要になる場合は主務官庁の認可書 
  • 登録免許税を算定した根拠を明らかにする書面 
  • 合併によって役員が変わる場合には役員変更関係書類 
  • 債権者保護手続関係書面 
  • 合併契約の承認の証明書

そして、以下の記事では合併に関わる手続きについて解説しています。メリットや注意点についても紹介しているので、気になる人は確認してみてください。

【関連】合併の手続きについて解説します

まとめ

今回は、合併時の資本金処理を中心に解説しました。

合併の際は、まずは自社の置かれている状況を把握することが重要です。

基本的に、資本金への割り振り額は自由に決定できます。どの程度割り振るかは、自社の信用力と税負担とのバランスを考え、決定することがベストです。


また、無対価合併や債務超過会社との合併では、例外的な会計処理を実行します。上記合併に該当する場合、自由に資本金を決定できません。
 

以上の通り、合併における資本金の決定は、非常に複雑です。実際に合併を行う時は、会計の専門家にアドバイスを貰った方が無難です。


要点をまとめると下記になります。
 

  • 合併とは

→片方企業の資産や権利・義務等を、もう片方の企業に全て移転するM&A手法
 

  • 資本金の構成
→株主資本の一部
  • 合併と資本金の関係
→消滅会社の株主資本(資本金)が、一定基準に基づいて存続会社に取り込まれる
  • 合併による資本金等の決め方
 
  1. 支配取得目的の合併(グループ外企業の取り込み)→資産・負債を時価で引き継ぎ、それを基に資本金等を算定
  2. 共通支配下での合併(グループ内での合併)→資産・負債を簿価で引き継ぎ、それを基に資本金等を計算
 
  • 合併で変動する株主資本の割り振り
 
  1. 支配取得目的の合併→合併契約書の定めにより、自由に振り分け可能
  2. 共通支配下での合併→「自由に分配」もしくは「資本金等の構成をそのまま引き継ぐ」
  3. 共通支配下かつ無対価による合併→資本金・資本剰余金をその他資本剰余金、利益剰余金をその他利益剰余金に振り分ける
  4. 債務超過会社の合併→その他資本剰余金を減額し、それでも足りない際にはその他利益剰余金を減額する

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