2022年6月6日更新会社・事業を売る

吸収合併とは?新設合併との相違点、手続きの流れ、メリット、最新事例、登記も解説

企業間における組織再編行為の中でも吸収合併は、ひときわドラマチックです。対外的にも内部で働く従業員にとっても、インパクトが大きいといえます。この記事では、M&Aとしても行われる吸収合併の特徴と注意点、手続きの流れなどについて紹介します。

目次
  1. 吸収合併とは
  2. 吸収合併と新設合併の相違点
  3. 吸収合併のメリット
  4. 吸収合併のデメリット
  5. 吸収合併の手続きの流れ
  6. 吸収合併のスケジュール・期間
  7. 吸収合併の登記方法と契約書
  8. 吸収合併時の各種実務
  9. 吸収合併の通知内容・相手先
  10. 子会社の吸収合併
  11. 吸収合併の注意点
  12. 吸収合併のまとめ
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吸収合併とは

法律上、企業間の吸収合併とは、企業における組織再編行為の1つです。吸収合併とは具体的に、複数の会社のうち1社が存続会社となって他の会社を吸収し、他の会社は消滅することをいいます。

理論的には合併する会社の数に制限はありません。しかし、実際に行われる吸収合併は、2社間によるものが多いです。

吸収合併の概要

吸収合併の具体例として、A社とB社の2社間における吸収合併を見ていきましょう。A社が存続会社、B社が消滅する会社とします。存続会社A社の法人格は何ら変わりがありません。B社は法人格を失って消滅し、その権利義務(従業員や資産・負債など)すべてをA社が承継します。

吸収合併は、一般的に会社規模の大きいほうが、小さい規模の会社を吸収する傾向が多いです。また、経営における合理性の追求やシナジー効果を目的に、親会社が子会社を吸収合併するケースもよく行われます。

吸収合併の英語訳

合併は英語で「Merger」、吸収は「Absorption」なので、吸収合併を英語でいうと「Absorption merger」や「Absorption-type Merger」になります。

そのほかにも、「Merger by Absorption」や「Merger through Absorption」などと呼ぶこともあります。英語ではいろいろないい方があることを、知っておきましょう。

M&Aにおける吸収合併

M&Aでの吸収合併は、会社法でも定義されています。会社法第2条第27号に「会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいう。」と記載があります。

M&Aにおける吸収合併は、消滅会社の資産や負債一切を引き継ぐ包括承継です。買収して子会社化するM&Aとは違った意味で、デューデリジェンスをしっかりと実施する必要があります。法務・財務・税務全てを細かく精査しなければなりません。

合併方法には新設合併もありますが、M&Aでは吸収合併の選択が多いです。その主な理由は、以下になります。

  • 諸手続きの簡便さ
  • 経済的合理性
  • 存続会社の既存イメージやブランド力の維持
  • 存続会社の組織体制のまま事業統合をスムーズに実施

新設合併は、全てゼロから構築しなければなりません。ビジネスでは時間が非常に貴重なので、労力を節約できる吸収合併が多く選ばれるのです。しかし、いずれの合併方法を選ぶ場合も、M&Aを実施するには、相手を探し交渉を行わなくてはなりません。

理想的なM&Aの相手を見つけて交渉をスムーズに進める第一歩は、実績のあるM&A仲介会社を選ぶことです。

M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所では、豊富な知識と経験を持つM&Aアドバイザーが案件をフルサポートいたします。

M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります。)無料相談を行っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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吸収合併と株式譲渡の相違点

譲受会社が譲渡会社の株式を取得し、経営権を獲得するのが株式譲渡です。譲渡会社は存続するため、世間から見ると吸収合併のような変化を感じません。

また、株式譲渡は株式の保有割合に応じて譲渡企業に対する影響力が変化しますが、吸収合併は合併される企業をすべて取り込みます。

株式譲渡では、議決権がある株式の過半数以上を得れば、経営権を得て子会社にできます。議決権のある株式の2/3以上を得れば、子会社への支配権を得られるのです。支配権があると、子会社の根本に関する決定権を持てます。

株式を100%保有すれば、完全経営支配権を得て完全子会社化できますが、あくまで別会社なので、1つの法人格となる吸収合併と異なります。

吸収合併と事業譲渡の相違点

吸収合併では、存続会社へ消滅会社の全資産や権利義務、債務も移行しますが、事業譲渡は、譲渡する事業を選択でき、債務を引き継がないことも可能です。

また、吸収合併では、合併したときに吸収された会社は自動消滅しますが、事業譲渡では、会社は消滅しません。

吸収合併は許認可も引き継げますが、事業譲渡では許認可を引き継げないため、申請する必要があります。ただし、事業譲渡は吸収合併より簡便な手続きで済みます。

吸収合併と新設合併の相違点

新設合併とは、全法人格が消滅し、新設立する新法人へ全権利義務を承継させることです。

吸収合併ではA社が消滅会社、B社が存続会社で、新設合併ではA社とB社が消滅会社、新法人が存続会社となる違いがあります。合併では、吸収合併が行われるケースが多いです。

新設合併は、「吸収合併より登録免許税が高い」「事業に必要とする許認可の新規取得あるいは引き継ぎ手続きが必要」「上場会社が消滅会社となれば上場維持のために新規上場申請を行わなければならない」などの理由で、あまり用いられません。

吸収合併のメリット

企業の吸収合併にはさまざまなメリットがあり、それぞれの企業が置かれている立場によって受ける恩恵に差があります。ここでは、数々の吸収合併におけるメリットのなかから、代表的な6つをみていきましょう。

①事業規模の拡大

同業他社との吸収合併が実行された場合、組織や人員が増えるだけでなく、事業の売上規模も大きく増えることが見込まれます。合併前における両社の売上規模が合算される結果となるのか、それを上回る実績を出せるかは未確定ですが、事業規模は拡大するでしょう。

単純な数合わせの論理にとどまらず、両社がそれぞれ個別に築き上げてきた技術や開発力、企画力や営業力などさまざまなビジネス上のノウハウが融合されることに大きな意味があります。したがって、合併後の業務統合プロセスはとても重要です。

②シナジー効果による収益の向上

吸収合併は、同一業種での合併だけでなく、関連する業種間の吸収合併も行われます。この場合、合併前までは自社事業の関連業務で外注していた部分を、1つの社内で完結できるのです。

吸収合併は、お互いの会社が想像していた以上に、社内で多くのシナジー効果が生まれます。外から見るのと内から見るのとでは、視点が全く変わるのです。業務も改善され、収益を向上させるシナジー効果となります。

原価の点でも、いろいろな場面で合理性が増すのでコストカットにつながり、収益性は改善されるのです。

③後継者問題の解決

日本の少子高齢社会化現象は、多くの中小企業で後継者難の問題を呼んでいます。洗練された組織、優秀な人材、立派な業績のある会社も後継者がいなければ、立ち行かなくなるでしょう。M&Aでの吸収合併は、後継者問題を解決する手段としても適しているのです。

会社は消滅しても、吸収合併で包括的な承継が行われるので、築き上げてきた会社の伝統は、合併会社に残せます。仮に合併もできず廃業の事態になれば、従業員を路頭に迷わせるでしょう。経営者として従業員への責任を果たす意味でも、吸収合併は意義があります。

④節税効果

納税は義務ですが、吸収合併の結果、節税ができればそれに越したことはありせん。まず、考えられるのは消費税です。課税売上割合が高い会社を吸収合併すれば、控除できる消費税額が上がり、節税につながります。

また、吸収合併で損益を通算できるので、仮に黒字会社と赤字会社が合併した場合、黒字会社の課税所得が減少されます。つまり、法人税は節税される結果となるのです。自社株評価を引き下げて相続税対策を講じることも可能です。

ただし、相続税対策だけが目的である吸収合併は、税務署からペナルティを受ける可能性があります。相続税対策は、税理士などの専門家に相談して慎重に実施しましょう。

⑤対等な立場でのM&Aをアピールできる

株式譲渡でM&Aを行うと、親会社と子会社の関係が生まれます。しかし、吸収合併では、存続会社と消滅会社の違いはありますが、対等合併とすれば対等な立場でのM&Aをアピールできるのです。

対等合併では、合併比率が1:1です。つまり、将来受け取る配当金など経済的価値が1:1となるため、合併した当事者は、対等な立場で経営が継続できます。

⑥買収時に資金調達を必要としない

吸収合併を実施すると、存続会社は消滅会社の株主へ合併対価を支払わなければなりません。合併対価は現金以外に、存続会社の株式や社債、新株予約権などさまざまです。

存続会社の株式を合併対価とすれば、手元資金を減らさずに吸収合併が行えます。特に、存続会社の株価が高いときは、効果がある手法です。

吸収合併のデメリット

物事には表があれば、裏もあります。吸収合併にもメリットばかりではなく、デメリットも存在します。吸収合併の代表的なデメリットを見ていきましょう。

①煩雑な手続き

M&Aにおける会社の買収と吸収合併を比較すると、歴然とした差があります。それは、吸収合併における手続きの煩雑さ、多さです。吸収合併の場合、一方の会社は消滅するので、それに伴い法的に定められたさまざまな手続きが発生します。

②組織統合の難しさ

吸収合併のメリットとして上述した事業規模の拡大やシナジー効果の発現には、両社の組織や人員が円滑に機能しなければなりませんが、これは簡単ではありません。

今までは全く別のルール、社風、人事制度などで業務を行っており、特に消滅した会社側の従業員は、気持ちのゆとりもないでしょう。経営陣と同じ目線で事情を察するのは、従業員には難しい側面もあります。

したがって、吸収合併における基本合意のタイミングから、用意周到に組織統合の準備をしなければ、合併効果を発揮するまでに時間を要するでしょう。

③人材流出の危険性

経営陣の判断で行う会社の吸収合併に、反発心を抱く従業員もいます。特に、同業他社間の吸収合併は、それまでライバル企業同士だったので、心中穏やかではないケースもあります。吸収合併後の組織統合が円滑に進まず、不満を持つ従業員が出るかもしれません。

どちらの場合も、従業員の反発心や不満感が高じ過ぎると、退職を選択する人物が現れても不思議ではありません。従業員の退職を防ぐには、早い段階から経営陣が面談を行って気持ちの動揺をなくし、新しい環境にやりがいを持つようリードする心づかいが必要です。

④会計管理の肥大化

小規模事業者間での吸収合併を除き、一定規模同士の会社が吸収合併した場合は、突如肥大化した組織の会計管理は、当初パニック状態となる可能性があります。どのように事前対策を立てていても、止むを得ない事態と考えられます。

最初からスムーズに会計管理ができることを目標とするより、初動のパニックを想定し、いかに早期に落ち着かせるかという発想で対策を講じましょう。

⑤コスト増の可能性

吸収合併は組織の再編行為なので、本来は組織の統合によって無駄が省かれ、コストカットが見込めます。しかし、それはスムーズに組織統合が成し遂げられた後の話です。前項のように、当初は会計管理の混乱も予想されます。

吸収合併当初の一時的な現象で収まるはずですが、いろいろな場面でコスト増の発生が考えられます。吸収合併により会社の規模が大きくなり資本金が増資となれば、現状で納まっていた区分け額を超えて税負担が増すこともあるのです。

⑥取引先の重複により売上高が減少するおそれ

合併前に、消滅会社と存続会社と顧客取引があれば、合併後は存続1社の顧客取引になるので、取引が縮小され売上高が減るリスクが考えられます。

シナジーを狙って吸収合併を行いますが、顧客取引が減れば、シナジーのマイナスとなるのです。取引先へあいさつ回りなどを行い、全体の売上高が減少しないよう根回しすることが大切です。

⑦買収側株主の持株比率が下がる

合併対価を株式とすれば手元の現金なしで吸収合併ができますが、存続会社における株主の持株比率は下がります。

吸収合併を割高な合併比率で行うと、株主の経済へマイナスの影響を与えます。上場会社の場合は、株価が下落する可能性もあるのです。そのため、合併比率は、適切な企業価値で算定しましょう。

⑧不要な資産を承継するリスク

吸収合併を行う際、消滅会社に簿外負債や不要な資産があれば、存続会社へすべて承継されます。事業譲渡では、必要な資産のみ譲渡できるため、不要な資産を引き継ぐことはありません。

いろいろなM&Aスキームがあり、それぞれ一長一短です。どのM&Aスキームがベストなのか、前もって慎重に検討しましょう。

吸収合併の手続きの流れ

吸収合併に伴う法律上の手続きは、以下の順序で進められます。

  1. 吸収合併契約の締結・承認
  2. 債権者への異議申述公告・個別催告
  3. 事前開示書類の据置
  4. 株主に対する通知・公告
  5. 株主総会の招集手続き・決議
  6. 吸収合併の効力発生
  7. 事後開示書類の据置
  8. 変更登記申請

①吸収合併契約の締結・承認

吸収合併を行う両社が、合併契約を結びます。存続会社が消滅会社の株主へ対価として現金、株式、社債のどれを渡すのか、効力発生日、などを決めます。

効力発生日までに、株主から承認を得なければなりません。株主総会の招集通知を株主へ送り、株主総会決議で承認を得ます。条件によっては、株主総会における承認は要りません。

②債権者への異議申述公告・個別催告

債権者への異議申述公告・個別催告の実施は、合併効力発生日の1カ月前までに行います。公告の掲載枠が必要なので、注意しましょう。

合併では、各手続きの期限が決まっています。そのため、前もって全体のスケジュールを決めなければなりません。

③事前開示書類の据置

債権者に対する異議申述公告・個別催告の日までに、合併の情報が載った書類を置かなければなりません。効力発生日から6カ月を過ぎる日まで続けましょう。これは、債権者保護のために実施します。

④株主に対する通知・公告

株主への通知・公告は、効力が発生する日の20日前までに実施します。合併に賛成しない株主は、持っている株式を公正な価格で買い取るよう会社へ請求できるのです。

⑤株主総会の招集手続き・決議

株主総会招集通知の送付を、株主総会開催日の1週間前までに行います。また、合併の効力発生日までに株主総会決議を行います。組織再編行為は、重要な行為なので特別決議です。

⑥吸収合併の効力発生

吸収合併では、合併契約書にある効力発生日に効力が生じます。つまり、消滅会社の権利や義務がすべて存続会社へ承継され、消滅会社はなくなるのです。効力発生日に特別行うことはありません。しかし、両社にとって、重要な日となるでしょう。

⑦事後開示書類の据置

効力が発生したら遅れることなく事後開示書類の据置を実施します。事前開示書類と同じく事後開示書類も、効力が発生した日から6カ月を経過する日まで、据置を継続しなければなりません。

⑧変更登記申請

スケジュールがスムーズに進んで、効力が発生した後、2週間以内に吸収合併の変更登記を申請します。存続会社以外に、消滅会社の解散登記も申請します。

吸収合併のスケジュール・期間

一般的な吸収合併のスケジュールとして、4月上旬に吸収合併契約締結が承認され、手続きがスムーズに進んで6月に効力が生じる例を紹介します。

この場合は、4月上旬に吸収合併契約が承認されるので、3月は債権者への説明など準備期間です。そして、4月中旬に、合併契約の締結や官報公告の掲載申し込みを行います。

4月下旬は、債権者への催告や契約書などの準備です。そして、5月に株主総会のスケジュールを設定し、5月上旬に株主総会への招集通知を送り、5月下旬に株主総会を開催します。

スムーズに行けば、6月に登記申請へと至ります。ただし、スケジュールどおりに進行するとは限りません。そのため、スケジュールが変わったときの準備も行いましょう

吸収合併の登記方法と契約書

この章では、吸収合併の登記方法と契約書を見ていきましょう。

登記申請手続きの方法

スケジュールがスムーズに進行して吸収合併の効力が生じると、存続会社が登記申請の手続きを行います。なお、消滅会社に必要な手続きはありません。吸収合併の登記には、事前に提出する書類と状況により提出する書類があります。

登録免許税の支払い金額

登録免許税の支払いも発生します。存続会社における登録免許税の支払い金額は、増えた資本金に対する1,000分の1.5を乗じた額であり、この金額が3万円に満たなければ一律3万円です。

契約書の記載事項

契約書には以下3つの事項を記載します。
 

  • 法定記載事項
  • 任意的記載事項
  • 法定外契約

吸収合併は、会社法で吸収合併契約書に法定の記載事項が定められています。任意的記載事項は、法定記載事項ではありませんが、吸収合併の実務上、契約書によく載せるものです。

また、法定外契約は、吸収合併契約とは別の契約であり、例えば経営統合契約などがあります。

法定記載事項の内容

法定記載事項には、以下の5つの内容をいれることが定められています。

  • 当時会社の表示
  • 消滅会社の株主に交付する合併対価
  • 消滅会社の株主における割当の定め
  • 消滅会社の新株予約権者における対価と割当
  • 吸収合併の効力発生日

記載事項が1つでも漏れると吸収合併契約は無効となり、吸収合併の効力は生じないので注意しましょう。

任意的記載事項の内容

任意的記載事項は、法定記載事項ではありません。しかし、よく契約書に記載する事項であり、主なものには以下が挙げられます。

  • 合併契約が承認される株主総会期日
  • 存続会社の定款変更における内容
  • 存続会社の役員選任事項
  • 吸収合併により退任役員がいれば退職慰労金
  • 吸収合併の効力発生までの財産管理
  • 吸収合併の効力発生まで剰余金配当の禁止あるいは制限
  • 吸収合併後における従業員の処遇
  • 吸収合併契約の解除・変更事由
  • 効力発生の解除条件

上記内容の記載は、状況によっていろいろです。また、記載されていなくても、合併契約は無効になりません。

法定外契約

法定外契約は、合併や統合プロセスで行う内容を明確化する契約です。この契約は、吸収合併に関する法律で契約を結ぶことが定められているわけではないので、法定外契約と呼ばれます。

法定外契約に該当するものには、経営統合契約などがあります。経営統合契約の場合に記載する内容は、「経営統合の準備体制に関する記述」「合併契約後の経営体制・ガバナンス」などの事項です。

吸収合併時の各種実務

吸収合併時の各種実務は、法務、会計、税務です。実務内容は多岐に渡るため、確認しましょう。

吸収合併時の法務

前述のとおり、吸収合併は、効力発生日までにさまざまな手続きを要します。効力が発生してからも、合併の条件により、いろいろな書類を提出しなければなりません。

吸収合併の主な法務は、下記です。

  • 合併の手続き
  • 合併契約の承認決議
  • 債権者への保護手続き

合併の法務は、会社法で定められた項目を実施します。

吸収合併時の会計処理

吸収合併を実施する場合、該当会社同士の会計を統合させます。この場合、会計処理は企業結合会計という基準があり、それにのっとって会計処理を行わなければなりません。企業結合会計は、以下3つのケースに基準が分けられます。

  • 共通支配下の取引
  • 共同支配企業の形成
  • 取得

「共通支配下の取引」は、親会社による子会社の吸収合併や、子会社同士の吸収合併などグループ企業間で行われる吸収合併です。「共同支配企業の形成」は、独立した複数企業が、吸収合併で存続した会社を支配する状態です。

「取得」は、上記のいずれにも当てはまらない吸収合併で、単立の企業間において吸収合併が成立したケースが該当します。具体的な会計処理としては、「共通支配下の取引」「共同支配企業の形成」の場合、帳簿価格によって結合会計を実施します。

一方、「取得」では、吸収合併で消滅した企業の資産や負債を時価で換算し処理するパーチェス法が用いられ、同じ吸収合併でも、会計処理は異なる場合があるのです。

吸収合併時の税務

吸収合併では税務でも、個々の状況により対応の仕方が分かれます。法律上の大前提として、当該吸収合併が適格合併か非適格合併かの2つに選別されます。適格合併であれば、消滅会社の資産や負債は簿価で引き継がれるため、法人税の課税対象になりません

しかし、非適格合併と見なされると、消滅会社の資産や負債は時価で引き継がれるため、結果的に課税対象となり法人税が課されるのです。当該吸収合併が適格合併と認められるには、状況ごとに決められた要件を満たす必要があります。

適格要件が定められる各状況は、以下3つのケースに区分されます。

  • 企業グループ内の組織再編で、100%親会社がいる
  • 企業グループ内の組織再編だが、100%未満50%超の資本関係
  • 資本関係のない共同事業

上記3つの区分ごとに適格要件は異なるのです。資本関係が強い状況ほど要件は少なく、資本関係が弱い、またはない状況ほど要件は多く規定されています。ひと口に吸収合併といっても異なる対応をしなければならない点に注意しましょう。

吸収合併の通知内容・相手先

吸収合併を実施するときは、各関係者へ通知しなければなりません。通知する相手先は、取引先、金融機関、主要顧客、株主などの債権者です。

通知内容は、どの会社といつどのように合併するのか、合併後の経営ビジョン、どのようなシナジー効果があるのか、などです。詳細は、官報公告・書類の事前備置で知らせるため、要点が伝わることに重点を置きます。

下記に、通知の例を紹介します。

一般的な吸収合併を行うケース

まずは、基本的な通知の例です。

拝啓 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。 

平素は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。

この度、株式会社〇〇と〇〇株式会社は株式会社〇〇を吸収存続会社、弊社を吸収消滅会社として、令和〇〇年〇月〇日付で合併いたします。

本合併により、経営基盤の強化並びに品質のさらなる向上を図ることにより強固な経営基盤を構築し、お客様をはじめ、全ての皆様にこれまで以上のサービスを提供して参る所存でございますのでお取引先各位におかれましては引き続き変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

まずは、略儀ながら書中をもってご通知かたがた合併のご挨拶を申し上げます。 敬具

親会社に吸収合併されるケース

親会社に子会社が吸収合併されたときの通知例です。

謹啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

平素は格別のお引き立てを賜り心より御礼申し上げます。

弊社はこの度、令和〇〇年〇月〇日をもって親会社である株式会社〇〇〇〇に、全ての事業を引き継ぐことといたしましたので、お知らせいたします。

なお、本件合併は、株式会社〇〇〇〇を存続会社とする吸収合併であり、同日をもって、子会社である当社は解散いたします。

当社の事業は株式会社〇〇〇〇の一事業として継続し、より一層充実したサービスを提供してまいる所存でございます。

本件合併により、経営の効率化、技術力の向上、営業力の強化を図り、高品質なサービスの運営をさらに推し進めてまいります。

皆さまには、今後も一層のご愛顧お引き立てを賜りますよう、謹んでお願い申し上げます。

まずは、略儀ながら書中をもって、ご通知かたがた合併のご挨拶申し上げます。

謹白 
〇〇株式会社 代表取締役社長 〇〇〇〇

子会社の吸収合併

親会社が子会社を吸収合併する場合に限り、その合併を表する独特な4つの言葉があります。それらの概要を見ていきましょう。

①無対価合併

無対価合併とは、言葉そのままに、対価が発生しない吸収合併のことです。組織再編行為では通常、この対価は株式の交付を意味します。しかし、子会社の全株式を所有する立場の親会社が吸収合併するため、株式を交付する余地はありません。

②無増資合併

無増資合併は、意味合いは上記で述べた無対価合併とほぼ同義の言葉です。子会社の株式100%を有する親会社が存続会社となり吸収合併する場合、資本金の増加がありません。したがって、親会社が100%子会社を吸収合併する場合、無増資合併ともいわれます。

③簡易合併

簡易合併とは、株主総会招集などの必要がなく簡易的に実施できる合併のことです。株主総会の招集が免除されるのは、以下の条件下で行われる吸収合併が該当します。

  • 子会社の株主に交付する対価の金額が存続会社における純資産額の20%以下

④略式合併

略式合併は、親会社が子会社の議決権90%以上を保有するとき、子会社の株主総会における承認決議を必要とせず行える吸収合併のケースが該当します。親会社が子会社を吸収合併する際は、簡易合併であり略式合併でもあることが多いです。

吸収合併の注意点

吸収合併の手続きは、手順が多く時間がかかるものが多いです。各手順の漏れがないよう事務方は注意しましょう。また、吸収合併ではつい存続会社にばかり目が行きがちですが、消滅会社側も消滅の登記手続きが必要なので忘れないよう注意してください。

消滅会社における従業員の対応は、組織統合の観点からすでに述べましたが、それ以前に一人ずつに対し、合併後の具体的な待遇についてどのような労働契約になるのか、丁寧に説明し合意を取り付けることも必要です。

吸収合併を決めるまでも大変ですが、決まった後の諸手続きはより大変であると考えましょう。法務・財務・税務・労務それぞれ専門的知識は不可欠なので、場面に応じて専門家のサポートを受けることが大切です。

吸収合併のまとめ

吸収合併の手続や契約書は法律で定められている部分が多いので、事前によく確認しておき漏れのないように進めていくことが重要です。

また、各手続きには期限が決められているので、確実に実行するためにもスケジュールをしっかり立てておくようにしましょう。

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