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2020年1月14日更新事業承継
廃業率の推移とランキング
日本国内において会社が消滅する廃業率の推移を、国が発表しているデータを基に分析します。かつての廃業は業績不振が主たる原因でしたが、昨今は出入りの激しい業種内の過当競争や後継者難による廃業など、廃業率の中身の様相が複雑さを増してきているようです。
廃業とは
企業の倒産・破産・経営破綻と廃業は厳密な意味では似て非なるものです。倒産・破産・経営破綻とは、業績不振・営業不振・販売不振などが続いて会社経営が悪化する事態を受け、進退窮まって追いつめられた結果、会社が立ち行かなくなって訪れる状態のことになります。
一方、廃業とは、経営者が自主的に計画をして会社をたたむのが基本的な意味です。このように、倒産・破産・経営破綻と廃業では、そのプロセスに違いがあるのですが、ともに会社が消滅するという結果としては同じ状況になります。
また、自主的な廃業であったとしても、廃業を選択する理由としては、倒産・破産・経営破綻と類似する、経営不振が主たる原因である場合が多いのも実状です。
廃業率とは
前項で述べたとおり、言葉の意味としては、倒産・破産・経営破綻と廃業は異なるものなのですが、本記事でこれから述べていく廃業率というワードの場合、その言葉の解釈が少し違ってきます。
端的に言えば、廃業率とは開業して存在していた会社が消滅してしまった率のことです。この場合、消滅してしまった会社数にフォーカスして廃業率を算出することになるので、会社が消滅するプロセスについて区別はしません。
つまり、倒産・破産・経営破綻した会社数と自主的な廃業を行った会社数の両方を合わせた数値で廃業率は導き出されています。そして、一般に廃業率を計算する時、その基準とする期間は1年間です。具体的には以下の計算式となります。
- 廃業率(%)=1年間の消滅会社数÷年間当初の会社数×100
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廃業率の推移
それでは、具体的な廃業率の実態について見ていきましょう。廃業というネガティブな調査対象のため、各種調査資料でも真実全てがあらわにはなっていない部分もありますが、この項では、廃業率の推移を観察し、それを取り巻く状況の分析を試みます。
⑴廃業率の推移状況
中小企業庁発表資料である中小企業白書の2017(平成29)年版、2018(平成30)年版、2019(令和元)年版のデータを基に日本の廃業率の推移について述べます。なお、廃業率に関する中小企業白書のデータは、各年版の2年度前の情報が最新情報として掲載されています。
日本における企業の廃業率は、2001(平成13)年から2009(平成21)年にかけてはずっと4.5%前後で推移していました。2010(平成22)年以降、廃業率の水準はさらに低くなり、それ以降4%前後で推移しながら少しずつ下落傾向となっています。
そして、2016(平成28)年と2017(平成29)年には、廃業率は3.5%まで下がったというのが、現時点で公的に示されている最新情報です。国内で賛否は分かれるものの、これもアベノミクスによる好影響の表出なのかもしれません。
また、廃業率について海外にも目を向け、日本の廃業率と比べてみると、日本の廃業率はとても低い基準にあることがわかります。ただし、それと同時に、日本の場合は開業率も低いことが示されており、一概に手放しでは喜べない状況のようです。
参考のため、欧米諸国と日本の開業率と廃業率の3年間のデータを以下に掲載します。なお、アメリカのデータは2011(平成23)年のもので、それ以降のデータがありません。ドイツの2017(平成29)年のデータはまだ公表されていません。
開業率 | 日本 | アメリカ | イギリス | ドイツ | フランス |
---|---|---|---|---|---|
2015(平成27)年 | 5.2% | 9.3% | 14.3% | 7.1% | 12.4% |
2016(平成28)年 | 5.6% | ― | 14.6% | 6.7% | 12.7% |
2017(平成29)年 | 5.6% | ― | 13.1% | ― | 13.2% |
廃業率 | 日本 | アメリカ | イギリス | ドイツ | フランス |
---|---|---|---|---|---|
2015(平成27)年 | 3.8% | 10% | 9.4% | 7.5% | 5.4% |
2016(平成28)年 | 3.5% | ― | 11.6% | 7.5% | 9.5% |
2017(平成29)年 | 3.5% | ― | 12.2% | ― | 10.3% |
⑵廃業に関する現状
前項で述べたとおり、日本の廃業率は低下傾向の一途にあり喜ばしい状況と言えるでしょう。東京商工リサーチの調査でも、2010(平成22)年以降、年間倒産企業数は減少しているというデータもあり、廃業率の数値を裏づけています。
しかし、その反面、経営状況は良好であるにも関わらず、事業をやめる企業が増加しているという不可思議な現象が起きています。これは、現代日本の少子高齢化現象がもたらした、中小企業における後継者不足問題が原因です。
中小企業の経営者が高齢となり事業承継の時期を迎えても、身内や社内で後継者がいないという事態に直面し、やむなく会社を解散・廃業するというケースが起こってしまっています。もし、この事態を打開することができれば、日本の廃業率はもっと良化することでしょう。
そして、後継者難に対して有効な策となり得るのは、M&Aによる第三者への事業承継です。第三者に会社を譲渡することに抵抗がある経営者もいるかもしれませんが、廃業することと比較すれば、会社を存続させることができ、さらに売却によって老後資金を得ることもできます。
具体的にM&Aで会社を売却するには、M&A仲介会社に相談するのが一番の早道です。どのM&A仲介会社にすればよいかお悩みの際は、ぜひ一度、M&A総合研究所にご連絡ください。M&A総合研究所では、豊富な知識と経験を持つ公認会計士がM&Aをフルサポートいたします。
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業種別の廃業率ランキング
本項では、日本国内の廃業率について業種別に見てみましょう。データは中小企業庁が発表した2019(令和元)年版の中小企業白書からの抜粋ですが、統計年度は2017(平成29)年度のものになります。
業種は全部で14業種に分けられており、廃業率の高いワースト5業種は以下のとおりです。なお、最も廃業率の低い業種は医療・福祉業で2.4%となっています。
- 宿泊業・飲食サービス業:6.2%
- 生活関連サービス業・娯楽業:4.5%
- 小売業:4.4%
- 情報通信業:4.3%
- 学術研究・専門・技術サービス業:3.8%
- 建設業:10.6%
- 宿泊業・飲食サービス業:9.7%
- 生活関連サービス業・娯楽業:7.1%
- 情報通信業:6.5%
- 不動産業・物品賃貸業:6.3%
このように、廃業率の高い業種である宿泊業・飲食サービス業と生活関連サービス業・娯楽業、情報通信業は開業率も高いことがわかります。このことからわかるのは、その業種にビジネスチャンスがあると踏んで新規参入する会社が多いものの、継続に失敗しているということでしょう。
言い換えれば、開業率が高いということは競争も激しいということです。ビジネスとしては、他社との差別化や自社ならではの強みを発揮しないと、生き残っていくのは容易ではないということがわかります。
業種別廃業率と開業率との相関関係
前項で触れた業種別の開業率の数値と、廃業率との相関関係について、もう少し分析してみることにします。宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、情報通信業は、廃業率と開業率のいずれもが高い状態でしたが、それとは別の2つの傾向も見られます。
⑴開業率が高く廃業率が低い業種
開業率が1位で唯一10%の大台に到達している建設業の廃業率は、3.2%であり平均の3.5%を下回っています。自然災害からの復興・復旧工事や、東京オリンピックに向けた各種工事など、業種への需要が高いことが、如実に数字となって表れている結果だと言えるでしょう。
⑵開業率と廃業率がともに低い業種
廃業率が最も低い医療・福祉業の開業率は4.4%と、平均の5.6%を下回っています。このことからわかるのは、医療・福祉業は公共性が強く許認可の厳しさがあることと、高齢化社会で需要が高いことから廃業率上昇に繋がるような状況には縁遠いということです。
また、開業率が最も低いのは2.0%の製造業です。製造業の場合、廃業率は平均より低い3.0%となっています。製造業においては、設立当初に相応の設備投資が必要であること、市場としてすでに飽和状態に近いことなどが、開業率と廃業率から浮かび上がってくる実状です。
都道府県別廃業率ランキング
最後に、都道府県別の廃業率ランキングをご覧ください。基本的には都道府県別で廃業率に大きな開きはないのですが、全国平均の廃業率3.5%に対してワースト5の5府県はいずれも4%を超える結果が出ています。統計年度2017(平成29)年度のワースト5は以下のとおりです。
- 富山県:4.3%
- 大阪府:4.2%
- 茨城県:4.1%
- 岐阜県:4.0%
- 沖縄県:4.0%
岐阜県と沖縄県の廃業率は同じ4.0%なので、同率4位です。なお、沖縄県の開業率は全国平均の5.6%を大きく上回る断然1位の9.3%となっています。沖縄県は主産業が観光であり、それに伴い宿泊業・飲食サービス業への新規参入が多いためと思われます。
都道府県別廃業率ランキングの興味深いデータとしては、2年前の統計と比較すると、当時のワースト5道府県はいずれも廃業率を低下させ圏外に去っていることです。それらの道府県は、突きつけられたデータを見て、官民一丸で廃業率改善に取り組んだ結果なのでしょう。
なお、2017(平成29)年度に最も廃業率が低かった県は、2.7%の和歌山県でした。
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まとめ
廃業率を分析することは後ろ向きな行為のように感じる人もいるかもしれません。しかし実は、これから開業・起業しようという立場の人にとっては、廃業率の分析から様々なヒントや指針が得られる可能性があります。
中小企業庁の資料はインターネット上で公開されており、誰でもいつでも見ることができます。廃業率が気になった方は、より詳細な情報をご覧になってみてください。経営者にとって知識や情報は武器となるはずです。本記事の要点は以下のようになります。
【廃業とは】
- 厳密には倒産・破産・経営破綻とは違うものである
- 1年間で消滅に至った会社数の比率
- 日本は開業率、廃業率ともに先進国の中で低い
- 宿泊業・飲食サービス業
- 生活関連サービス業・娯楽業
- 小売業
- 情報通信業
- 学術研究・専門・技術サービス業
- 開業率が高く廃業率が低い業種:建設業
- 開業率と廃業率がともに低い業種:医療・福祉業、製造業
- 富山県
- 大阪府
- 茨城県
- 岐阜県
- 沖縄県
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。