2021年8月31日更新会社・事業を売る

新設分割とは?メリット・デメリット、手続き、M&Aでの活用方法を解説

会社分割手法の1つである新設分割とは、新しく会社を設立して既存事業の一部または全部を移転することです。合弁企業設立やグループ内再編など多面的用途があり、それに応じてやり方も変わります。新設分割の具体内容や手続き、税務などについて解説します。

目次
  1. 新設分割とは
  2. 新設分割を行うメリット・デメリット
  3. 新設分割の手続き・手順(会社法関連)
  4. 新設分割の手続き・手順(労働契約承継法関連)
  5. 新設分割の手続き・手順(情報開示・独禁法関連)
  6. 新設分割の税務
  7. 新設分割にかかる最短期間
  8. 新設分割の最新事例3選
  9. 新設分割のまとめ
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新設分割とは

新設分割とは

合併買収など、さまざまな種類があるM&Aスキーム(手法)の1つに会社分割があります。その会社分割は大きく2種類に分けられ、一方が吸収分割、もう一方が新設分割です。まず、会社分割とは、会社の中から事業部門を丸ごと切り離し、他社に移転させることをいいます。

この切り離した事業を承継する会社が、既存の会社の場合は吸収分割、新設会社であれば新設分割です。つまり、事業を引き継ぐ会社が既存の会社か新たに設立した会社かという観点で、会社分割はまず大きく分類されています。

もう1つ、会社分割ならではの特徴は、対価に選択肢があることです。通常、会社の買収といえば、その対価は現金であることがイメージされますが、会社分割では現金以外に、自社株式・新株予約権・社債などを対価とできることが会社法に規定されています。

そして、新設分割においては、事業を承継する会社が新規設立であるため、対価に現金は用いられません。

新設分割の種類

新設分割は、さらに以下の3種類に細分化されます。それぞれの概要を見てみましょう。

  • 分社型新設分割
  • 分割型新設分割
  • 共同新設分割

分社型新設分割

新設分割が実施されるとき、事業を切り離して相手に引き渡す方の会社を分割会社といいます。一方、事業が移転される新設会社の呼称は、承継会社です。新設分割が成約され実行がなされれば、承継会社から分割会社に対価が支払われます。

このとき、分割会社自身に対価を渡す場合と、分割会社の株主に対価を渡す場合と、2種類の支払い方があるのです。そして、分割会社に対して承継会社が株式を交付する場合を、分社型新設分割といいます。分割会社が承継会社の親会社になるイメージです。

分割型新設分割

新設分割実施の際に、承継会社が対価として、分割会社の株主に株式を交付する場合は分割型新設分割といいます。つまり、分割会社と承継会社の株主が同じことになりますから、分割会社と承継会社は兄弟会社・同一グループ企業というイメージです。

共同新設分割

分割会社が1社だけでなく、複数の会社が共同で新設分割を行う場合もあります。これを共同新設分割といいます。一例として、2社が共同で新設分割を行うケースを想定してみましょう。

  • 会社A:α事業、γ事業
  • 会社B:β事業、γ事業

会社Aと会社Bは、それぞれが行ってきた同一事業であるγ事業を、共同で新しく設立する新会社Zに移すことを決めました。従来の状態が上記であり、新会社設立後が下記のとおりです。

  • 会社A:α事業
  • 会社B:β事業
  • 新会社Z:γ事業

このケースでは、新会社Zの株式は会社Aと会社B、または会社Aの株主と会社Bの株主がそれぞれ取得することになります。つまり、これは複数の会社間において、資本提携と事業統合を行ったことを示しているのです。

なお、共同新設分割を行う際に、同一事業の統合である必要はありません。それぞれの会社の違う事業を切り離して行う新設分割も、実例は多数あります。

新設分割と吸収分割の相違点

すでに述べましたが、新設分割での対価は株式しか用いられません。吸収分割では、現金も対価にできます。また、会社分割は事業部門が丸ごと移転する包括承継ですから、関連する資産・権利義務・許認可・組織・人材などがそのまま移転されるのが特徴です。

しかしながら、そのうちの許認可は、新設分割の承継会社は新設会社である関係上、許認可を承継できません。つまり、新設分割では、許認可は新たに取得しなければならず、そのスケジュールと手続きを念頭に入れておく必要があります。

新設分割と事業譲渡の相違点

新設分割と類似して見えるM&Aスキームに事業譲渡があります。事業譲渡とは、売り手側企業の事業・関連資産・権利義務などを選別して売買できるM&Aスキームです。最大の違いは、新設分割は包括承継ですが、事業譲渡は譲渡対象ごとに個別対応しなければなりません。

具体的には、事業譲渡では、取引先との契約や従業員との労働契約などを包括承継できないため、それぞれ個別の同意を得たり、協議をしたりなどの手間が煩雑です。ただし、包括承継では簿外債務などの経営リスクも引き継いでしまう恐れがあります。

事業譲渡では譲渡内容を選別できるため、経営リスクを排除できることは利点です。また、新設分割での対価は株式のみですが、事業譲渡での対価は現金のみとなります。

新設分割の活用方法

新設分割がどのような目的で活用されているかに着目してみましょう。

  • M&Aを行う
  • グループ内再編を行う
  • 合弁会社の設立を行う
  • 第二会社方式により企業再生を行う

M&Aを行う

新設分割はM&Aスキームの1つですから当たり前の話なのですが、売り手としては事業の選択と集中をするためのM&Aとして、あるいは中小企業においては、後継者不在による事業承継をM&Aで解決する際の1つの手法として用いられています。

一方、買い手としては、事業規模の拡大、事業領域の拡張、市場シェア獲得、新規事業への進出、新たな顧客・取引先の獲得、技術や人材の獲得など、それぞれの経営上の思惑を実現するための戦略手段として、新設分割は活用されているのです。

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グループ内再編を行う

新設分割は、企業グループ内の組織再編手段としてもよく行われています。分社型新設分割は完全子会社の設立、分割型新設分割はグループ内企業の新設が目的です。

1つの会社の中で複数の事業を行うケースにおいて、あまりにもたくさんの業種が混在し組織も拡大し過ぎているような場合は、事業単位で新会社化することによって、経営のスリム化が実現できます。

また、1社の中に全くの異業種が存在する場合、そこにシナジーは期待できません。この場合、別事業を新会社として切り出離し専門会社化するほうが、はるかに経営は効率化され収益アップにもつながるでしょう。

合弁会社の設立を行う

複数の企業が事業を共同で行うための手段として、共同新設分割が用いられるケースもあります。この場合の事業を承継する新設会社は、共同事業(ジョイントベンチャー)のために関係する企業が起こした合弁会社という位置付けです。

第二会社方式により企業再生を行う

会社全体としては経営不振でも、複数の事業のうち1つでも有望・優良な事業がある場合には、新設分割で企業再生を目指す手段が取られることもあります。具体的には、優良事業を新設分割し、その新設会社(第二会社)は、通常どおり収益拡大を目指していきます。

そして、不良・不調事業だけが残った分割会社の方は、清算手続きを行って解散・廃業しますが、新設分割の対価として受け取っている第二会社の株式を現金化することで、債務弁済資金に活用できるのです。

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新設分割を行うメリット・デメリット

新設分割を行うメリット・デメリット

ここでは、新設分割のメリット・デメリットを論じます。

新設分割のメリット

新設分割の主なメリットは以下の4点です。

  • 会社の現金を準備する必要がない
  • 事業に関連する全てを丸ごと引き継ぎ
  • 事業単位で切り出せることの利便性
  • 税負担の軽さ

会社の現金を準備する必要がない

事業譲渡であれば、買い手は対価支払い用に多額の現金を用意しなければなりません。場合によっては、その負担のためにM&Aが断念されることもあります。しかし、新設分割での対価は株式交付ですみますから、現金は必要ありません。

事業に関連する全てを丸ごと引き継ぎ

新設分割では、移される事業にひもづく資産や契約、組織や従業員など全てワンセットとなり引き継がれます。ひもづいてくる資産の中には、設備や施設だけではなく、資本準備金・資本剰余金などを引き継がれるのです。ただし、許認可だけは新たに取得する必要があります。

事業単位で切り出せることの利便性

株式交換、株式移転も対価に株式が用いられるM&Aスキームです。しかし、株式交換・株式移転では、会社を丸ごと取得するしかないため、新設分割のように事業単位での承継はできません。特定の事業の取得が目的であれば、新設分割が有効なのです。

税負担の軽さ

新設分割において適格要件を満たせれば、課税優遇措置を受けられます。この点も事業譲渡などと比べれば大きな優位性といえるでしょう。なお、税務上の適格要件の詳細は後述します。

新設分割のデメリット

新設分割にも主に以下のようなデメリットがあります。

  • 事務コストの負担大
  • 簿外債務や不要な資産を受け継ぐリスク
  • 非上場株式の換金問題

事務コストの負担大

新設分割を行う場合には、原則として株主総会の特別決議が要ります。また、税務上の適格要件を満たそうとすれば、細かくいくつもある条件の確認と調整が必要です。このように、新設分割の事務手続き面は煩雑であり、その点はデメリットといわざるを得ません。

簿外債務や不要な資産を受け継ぐリスク

新設分割の包括承継はメリットであると同時にデメリットも持ちます。それは、簿外債務などの偶発債務や、不要資産など経営的なリスクとなるものを引き継いでしまうのを防ぐ手立てがないことです。

非上場株式の換金問題

新設分割の対価として渡される株式を現金化したい場合、新設分割後、新設会社が上場していなければ簡単に現金化ができません。現金化できるとしても相手が関係者などに限られ、また、売価も交渉して決める手間が生じます。

【関連】会社分割のメリット
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新設分割の手続き・手順(会社法関連)

新設分割の手続き・手順(会社法関連)

新設分割を実施する場合の会社法に基づいた手続き・手順は以下のとおりです。

  1. 新設分割計画の作成
  2. 必要書類の事前開示と備え置き
  3. 株主総会での特別決議の承認
  4. 反対株主への株式買い取り請求受付通知の送付
  5. 債権者保護の手続き
  6. 新設分割の登記
  7. 債権者による債務履行請求への対応
  8. 必要書類の事後開示と備え置き
  9. 新設分割無効の訴訟への対応

①新設分割計画の作成

新設分割計画には、新設分割に関する基本的な事項を記載します。具体的に必要とされる主な項目は、以下のとおりです。

  • 新設会社の目的や商号、本店所在地、発行可能な株式総数、その他定款の記載事項
  • 分割企業から引き継ぐ資産や権利、債務などに関する事項
  • 新設会社の役員に関する事項
  • 新株予約権に関する事項
  • 新設分割で交付する対価
  • 新設会社の資本金・準備金

②必要書類の事前開示と備え置き

新設分割を実行する前と実行後のそれぞれのタイミングで開示が義務付けられている書類があります。その開示と告知を行うとともに、その書類を会社本店住所にて備え置いておかなければなりません。備え置き期間は6ヶ月と規定されています。

③株主総会での特別決議の承認

株主総会にて、特別決議の承認を得なければなりません。特別決議の要件としては、議決権株式総数の過半数の株主が出席し、その中で3分の2以上の賛成が必要です。ただし、略式組織再編または簡易組織再編の条件を満たせば、株主総会での特別決議は不要となります。

④反対株主への株式買い取り請求受付通知の送付

株主総会で特別決議の承認が得られた場合でも、新設分割に反対する株主が現れた際には、その株主の株式を買い取らなくてはいけません。会社側は株主総会開催の通知日から、20日間の申し立て期間を設定し、通知する必要があります。

⑤債権者保護の手続き

新設分割では、既存の債権者に損失を生じさせる恐れがあります。そのため債権者保護手続きを行わなくてはいけません。債務履行に支障が及ぶ債権者に対して、官報による公告と個別催告を実施します。公告・催告には下記内容の記載が必須です。

  • 新設分割を実行する旨
  • 新しい会社の住所と商号
  • 分割会社の計算書類など
  • 新設分割に関して一定の期間内、異議を申し立てられる旨

債権者に対しては、最低1ヶ月間の異議申し立て期間を提供する必要があります。なお、新設分割の実施後、債権者の権利に特に変化は及ばないと認められる場合には、この債権者保護手続きは省略可能です。

⑥新設分割の登記

新設分割の際の登記手続きは、分割会社が変更登記、新設会社(承継会社)が設立登記を行う必要があります。このときに注意すべきことは、2社の登記を同時に実行する点です。そして、その登記申請には2とおりの方法があります。

同時申請

同時申請とは、分割会社と新設会社が同一登記所の管轄区域に存在する場合に用いる方法です。登記所に出向いたら、新設分割、および変更登記の手続きを申請します。

経由申請

経由申請とは、分割会社と新設会社が同一区域内に存在しない場合の登記申請方法です。この経由申請では、新設会社の管轄区域の登記所に出向き、そこで分割会社側の登記変更手続きも合わせて実行します。

登記申請時の必要書類

新設分割の登記で、一般的に添付が必要な書類には以下のようなものがあります。状況によって、このほかにも必要書類が求められることもあるので、事前に法務局や専門家に確認しましょう。

  • 新設分割契約書
  • 分割会社の登記事項証明書
  • 新設会社の設立に関する書面(定款など)
  • 新設分割契約の承認があったことを証する書面(株主総会議事録など)
  • 分割会社が合同会社である場合、総社員の同意を証する書面
  • 債権者異議手続き関係書類(公告・催告をしたことを証する書面など)
  • 代表取締役の印鑑証明書

⑦債権者による債務履行請求への対応

まず、債権者保護手続きにおいて、公告のみを行い債権者への個別催告を行っていないと、分割会社も新設会社も債権者からの債務履行請求に対応しなければなりません。また、企業再生目的の新設分割でよくあるケースとして、債権者に不都合が生じる問題があります。

これは、分割会社に残った不良事業に関する債権者は、新設分割の結果、債権全てを回収できなくなる可能性が高まる問題です。この場合、会社法では新設会社に債務履行請求できることになっており、新設会社はこれに対応しなければなりません。

⑧必要書類の事後開示と備え置き

新設分割実行前のときと同様に、実行後においても開示が義務付けられている書類があります。そして、この場合も6ヶ月以上の期間にわたって、会社本店住所にて備え置いておかなければなりません。また、書類への記載が必要な主な項目は以下のとおりです。

  • 新設分割の効力発生日
  • 新設会社に承継された重要な権利義務の内容
  • その他、新設分割に関する重要な事項
  • 債権者保護、差止請求、反対株主株式買取請求、新株予約権買取請求の各手続きの経過(分割会社のみ)

⑨新設分割無効の訴訟への対応

分割会社の株主や役員、新設分割を不承認とした債権者などの立場にある者は、新設分割無効の裁判を提起できることが会社法で認められています。ただし、新設分割が成立してから6ヶ月以内限定です。

仮に訴えが認められた場合、裁判所によって新設会社の解散と分割会社の登記変更(=新設分割前に戻す)が強制的に行われてしまいます。したがって、新設分割の手続きや手順、関係者への対応など、専門家に相談しながら注意深く慎重に行うべきです。

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新設分割の手続き・手順(労働契約承継法関連)

新設分割の手続き・手順(労働契約承継法関連)

会社分割が実際にされるときの労働者の権利を保護するために制定されたのが、「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(以下、労働契約承継法)」です。この労働契約承継法に基づいて行わなければならない手続き・手順は以下のようになっています。

  1. 労働組合・労働者代表との事前協議
  2. 労働協約の債務的部分における労使合意
  3. 従業員との事前協議
  4. 従業員・労働組合への十分な通知
  5. 従業員の異議申し出への対応

①労働組合・労働者代表との事前協議

分割会社は、従業員の過半数で組織される労働組合、または過半数の従業員の代表者と、以下の項目などについて事前協議を行わなければなりません。

  • 新設分割の目的・理由
  • 分割事業に従事する者(=移籍該当者)の判断基準
  • 労働協約の承継
  • 未払い賃金などがある場合、その債務が承継会社(新設会社)で履行される見込み
  • 新設分割について従業員側と係争になった場合の解決方法
なお、労働契約承継法では、この事前協議は新設分割計画書作成前が望ましいとしています。

②労働協約の債務的部分における労使合意

労働協約とは、労働組合と会社側が締結した契約や取り決めのことです。その中の債務的部分とは、組合運営や団体交渉、会社から組合への便宜供与などを定めた内容をさします。

この協約内容を、新設会社に承継させることで分割会社はその協約から外れるか、あるいは新設会社が承継してからも分割会社が協約対象にとどまるかについて、労働組合と分割会社は協議して取り決めなければなりません。

なお、労働契約承継法では、この労使合意も新設分割計画書作成前が望ましいとしています。

③従業員との事前協議

分割会社は、分割事業を担当している従業員および新設会社に移籍予定の従業員全員と個別に事前協議を行わなければなりません。なお、労働契約承継法では、各自と十分な内容の協議が行えるように、時間的余裕を持って実施するのが望ましいとしています。

④従業員・労働組合への十分な通知

分割会社は、分割事業を担当している従業員および新設会社に移籍予定の従業員に対し、以下の内容の通知を行わなければなりません。

  • 移籍後の待遇・労働条件・業務内容など
  • 労働契約が新設会社に承継されるかどうか
  • 債務がある場合の履行見込み
  • 異議がある場合に申し出る方法や期間

また、労働組合に対しては、以下の内容を通知しなければなりません。

  • 労働協約が承継されるかどうか
  • 労働承継が一部承継の場合は、その範囲・内容
  • 新設会社に移籍する従業員リスト

そして、この手続きについて労働契約承継法では、株主総会開催日より2週間以上前に行うことと定めています(株主総会が開催されない簡易新設分割では新設分割計画書作成から2週間以内)。

さらに、望ましい日程としては、事前開示書類備え置き開始日と株主総会招集通知発送日のどちらか早い方(簡易新設分割では事前開示書類備え置き開始日)と添えられています。

⑤従業員の異議申し出への対応

この場合の異議とは、分割事業の担当ながら分割会社に残留扱いとなっている従業員と、分割事業の担当外なのに新設会社に移籍予定となっている従業員が、その措置を事実上、拒否することです。従業員から異議が出されれば、その措置は撤回となります。

なお、この異議申し出は、前項の「従業員・労働組合への十分な通知」の翌日以降から最低13日間として、期間は会社が決められますが、株主総会開催日より前に設定しなければなりません(簡易新設分割では新設分割成立日より前)。

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新設分割の手続き・手順(情報開示・独禁法関連)

新設分割の手続き・手順(情報開示・独禁法関連)

証券取引所に上場している企業に対しては、規定により情報開示義務があります。新設分割の実施も、その情報に該当しますから、取締役会などで新設分割実施を決定後、速やかに情報開示を行わなければなりません。

また、独占禁止法では、共同新設分割に関する届け出が定められています。以下のいずれかに該当する場合は、公正取引委員会に届け出を行い、その審査を受けなければなりません。ただし、共同新設分割に関わる会社全てが同一企業グループの場合は届け出不要です。

  • 国内連結売上高200億円超の会社がその事業全てを分割予定で、なおかつ国内連結売上高50億円超の会社がその事業全てを分割予定である場合。
  • 国内連結売上高200億円超の会社がその事業全てを分割予定で、なおかつ別の1社が国内売上高30億円超の重要な事業を分割予定である場合。
  • 国内連結売上高50億円超の会社がその事業全てを分割予定で、なおかつ別の1社が国内売上高100億円超の重要な事業を分割予定である場合。
  • 1社が国内売上高100億円超の重要な事業を分割予定で、なおかつ別の1社が国内売上高30億円超の事業を分割予定である場合。

さらに、金融商品取引法でも、新設分割実施の際には情報開示が定められています。開示方法は、条件によって、臨時報告書・有価証券届出書・有価証券通知書に分かれるため、どれに当てはまるのか確認が必要です。

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新設分割の税務

新設分割の税務

ここでは、新設分割の際に生じる基本的な税務と、要件を満たした場合に認められる税法上の優遇措置=適格組織再編税制の概要を掲示します。

税務の原則的な取扱い

資産・負債の譲渡損益に課される税金

新設分割が実施されると、分割会社から承継した事業には資産や負債が含まれています。このとき、承継会社での会計処理として、それらの資産や負債は時価での計上です。したがって、該当資産・負債の分割会社における簿価との差額が、譲渡益または譲渡損となります。

この新設分割によって発生した譲渡損益は、その年度の承継会社の課税所得に通算されて法人税が課されるのです。

株主のみなし配当に課される税金

新設分割で分割会社側が対価として受け取る承継会社の株式には、税法上、出資=資本金とみなされる部分と、利益積立金としてみなされる部分の2つの意味合いがあります。そして、後者の利益積立金とみなされる部分は、いわゆる配当所得です。

その結果、このみなし配当について課税を受けることになります。

不動産承継に課される税金

承継会社が、分割会社から不動産を取得した場合には、不動産取得税の納付が必要です。ただし、分社型新設分割・分割型新設分割それぞれで要件を満たすと、不動産取得税は非課税になります。まず、分社型新設分割の要件は、以下の全てを満たした場合です。

  • 対価が株式交付のみ。
  • 分割された事業の主要な資産と負債が新設会社に承継されている。
  • 分割された事業が新設会社で今後も継続される見込みである。
  • 分割された事業の担当者のうち約80%以上が新設会社に移籍する予定。

次に、分割型新設分割で不動産取得税が非課税となるのは、以下の要件、全てを満たした場合です。

  • 対価が株式交付のみ。
  • 対価である株式の交付比率が、分割会社株主が有する分割会社株式所有比率と同等である。
  • 分割された事業の主要な資産と負債が新設会社に承継されている。
  • 分割された事業が新設会社で今後も継続される見込みである。
  • 分割された事業の担当者のうち約80%以上が新設会社に移籍する予定。

組織再編税制の適格要件を満たす際の取扱い

新設分割を実施した際、状況に応じた適格要件を満たすことによって課税上の優遇措置を受けることが可能です。具体的には、分割会社から新設会社へ引き継がれる資産や負債が簿価で計上できるようになるため、法人税の課税対象となりません

この適格要件の内容は、分割会社と新設会社の資本関係の状態により異なり、以下の3つのケースに分かれます。

  • 完全支配関係=分割会社が新設会社の100%親会社
  • 支配関係=親会社である分割会社の支配率(株式の持ち分)が50%超~100%未満
  • グループ外企業(資本関係がない企業)との共同事業

完全支配関係の場合の適格要件

完全支配関係において、適格新設分割となるための要件は以下のとおりです。

  • 新設会社から分割会社への対価の支払いが株式以外の資産で行われていないこと。

支配関係の場合の適格要件

支配関係において適格新設分割となるためには、以下の要件、全てを満たす必要があります。

  • 新設会社から分割会社への対価の支払いが株式以外の資産で行われていないこと。
  • 移転事業の資産、および負債を引き継ぐこと。
  • 移転事業に従事する従業員の80%以上を引き継ぐこと。
  • 事業を継続して行うこと。

共同事業の場合の適格要件

共同事業において適格新設分割となるためには、以下の要件、全てを満たす必要があります。

  • 新設会社から分割会社への対価の支払いが株式以外の資産で行われていないこと。
  • 移転事業の資産、および負債を引き継ぐこと。
  • 移転事業に従事する従業員の80%以上を引き継ぐこと。
  • 事業を継続して行うこと。
  • 分割する事業が分割会社において関連事業であること。
  • 事業規模が同等~5倍の範囲であること。
  • 双方の役員が経営陣に加わること。
  • 対価として交付された株式が継続して保有されること。

【関連】会社分割における不動産取得税
【関連】会社分割における適格要件

新設分割にかかる最短期間

新設分割にかかる最短期間

本記事で既述したとおり、新設分割を実施するには、会社法・労働契約承継法・独占禁止法・金融商品取引法などの各規定にのっとり、定められた手順で手続きを進めなければなりません。それに照らし合わせて考えると、新設分割の手続きに要する時間は通常2~3ヶ月程度です。

しかし、以下のような状況・条件がそろっていれば手続き期間を短縮できる場合があります。

  • 手続きの担当者全員が新設分割に精通している、または十分な知識を得ている。
  • 分割会社の株主から事前合意を得ていて株主総会で特別決議の即時議決が可能である。
  • 債権者保護手続きで債権者から異議が発生しない状況である。

以上のような状況・条件がそろうと、2週間程度で手続きが完了した例もあります。いずれにしても、効率よくスムーズに新設分割の手続きを進めるには、専門家のアドバイス・サポートも欠かせないでしょう。

【関連】会社分割と株主総会
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新設分割の最新事例3選

新設分割の最新事例3選

最後に、上場企業において新設分割を含めて実施された最新のM&A事例を紹介します。新設分割の場合、それのみを目的に単独で新設分割を実施するよりも、最終的な目的のために新設分割を交えて複合的にM&Aを実施するケースが多いのが特徴です。

  1. 信越ポリマーのM&Aで実施された新設分割
  2. アルヘイムのM&Aで実施された新設分割
  3. SHIFTのM&Aで実施された新設分割

①信越ポリマーのM&Aで実施された新設分割

信越ポリマー

信越ポリマー

出典:https://www.shinpoly.co.jp/ja/index.html

2021(令和3)年8月、信越ポリマーと昭和電工マテリアルズの間で実施されたM&Aで新設分割が用いられました。

具体的には、昭和電工マテリアルズが食品包装用ラッピングフィルム事業を新設分割し、その新設会社キッチニスタの全ての株式を信越ポリマーが取得し完全子会社化しています。信越ポリマーの株式取得価額は36億6,600万円です。

②アルヘイムのM&Aで実施された新設分割

アルヘイムフードサービス

アルヘイムフードサービス

出典:http://www.alf-heim.com/company/

2021年2月、ハークスレイの子会社アルヘイムの行ったM&Aで新設分割が用いられました。具体的には、アルヘイムが行う全ての事業を新設分割し、その新設会社アルヘイムフードサービスの全ての株式を万代に譲渡しています。なお、株式譲渡価額は公表されていません。

③SHIFTのM&Aで実施された新設分割

SHIFT

SHIFT

出典:https://www.shiftinc.jp/

2020(令和2)年9月、SHIFTとクラッチの間で実施されたM&Aで新設分割が用いられました。

具体的には、クラッチがウェブマーケティング事業を新設分割し、その新設会社CLUTCHの全ての株式をSHIFTが取得し完全子会社化しています。SHIFTの株式取得価額は8億5,400万円(デューデリジェンス費用などを含む)です。

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新設分割のまとめ

新設分割のまとめ

会社の新設分割にはさまざまな手続きを伴います。しかし、その手間とコストをかけてでも新設分割を行うのは、今の会社の状況にあって享受できるメリットが大きいからにほかなりません。長期的視点で経営を考える場合の戦略手段として、新設分割を選択肢に入れておきましょう。

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