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2019年11月19日更新
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時価純資産法とは?計算方法や企業価値評価における活用、DCF法との違いを解説

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

企業価値の評価手法の一つに、「時価純資産法」があります。時価純資産法とは、企業の保有する資産の時価総額から負債の時価総額を差し引いた金額を企業価値とする手法です。時価純資産法のメリット・デメリット、計算式、DCF法との違いを解説します。

目次
  1. 時価純資産法
  2. 時価純資産法とは?時価純資産法の意味
  3. 時価純資産法のメリットとデメリット
  4. 時価純資産法の計算方法
  5. 営業権を含む時価純資産法
  6. 時価純資産法におけるのれん
  7. 時価純資産法とDCF法の違い
  8. 時価純資産法以外の企業価値評価手法
  9. まとめ

時価純資産法

M&Aを検討する方にとって、M&Aの取引価格は重要な要素です。

売り手は高値で売却したいと考える一方、買い手側は安値で買収したいと考えます。

利益が相反する為、公正な方法により企業価値を算出し、買収価格算出の参考とする必要があります。

企業価値の計算手法の一つに「時価純資産法」があります。

この記事では、時価純資産法について分かりやすくお伝えします。

時価純資産法とは?時価純資産法の意味

時価純資産法の意味

まず最初に、時価純資産法とはどの様な手法であるかを解説します。

時価純資産法とは、企業の保有する資産の時価総額から、負債の時価総額を差し引いた金額を企業価値とする手法です。

時価純資産法では、有形資産のみならず無形資産も時価評価し直します。

時価資産から時価負債を引いた部分を「時価純資産」と呼ぶ事から、「時価純資産法」と呼ばれています。

企業価値評価における時価純資産法の活用

コストアプローチに分類される時価純資産法は、保有する資産を全て売却・負債を全額支払って、企業を清算した場合の企業価値を表します。

時価純資産法は、主に成熟期から衰退期にある中小企業の企業価値評価に用いられています。

過去生み出した利益の蓄積である「純資産」に着目している為、社歴の長い企業に適しているとも言えます。

純資産に「時価」ではなく、「簿価」をそのまま用いる「簿価純資産法」も存在します。

簿価をそのまま用いるので計算は簡便ですが、含み益や引当金等を考慮していない為、「時価純資産法」と比べると正確性に欠けます。

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時価純資産法のメリットとデメリット

時価純資産法には、メリットとデメリットがそれぞれ存在します。

この項では、時価純資産法のメリットとデメリットをお伝えします。

①時価純資産法のメリット

時価純資産法最大のメリットは、計算の簡便さに尽きます。

他のバリュエーション手法の活用には、ファイナンスの専門知識や膨大なデータが必要となります。

一方で時価純資産法の場合、貸借対照表さえあれば企業価値を計算可能です。

簡単なバリュエーション手法である為、中小企業がM&Aを実施する時も活用しやすいです。

計算のしやすさに加えて、計算される企業価値の正確性の高さもメリットです。

貸借対照表のデータを参考とする為、個人の主観や恣意が入りにくく、現実的な価値を反映できます。

計算の簡便性と企業価値の信頼性の面から、中小企業のM&Aでは多用されています。

②時価純資産法のデメリット

時価純資産法では、過去生み出された利益の蓄積である純資産を基準とする為、将来の収益性を企業価値に反映できないデメリットがあります。

一般的なM&Aは、将来的な収益力を期待して実行される為、その点ではM&Aには不向きなバリュエーション手法と言えます。

成長中の企業や大企業のM&Aでは、活用しにくいバリュエーション手法です。

時価純資産法には、貸借対照表に含まれない資産の価値も反映できないデメリットもあります。

M&Aでは優秀な人材や販路、ブランド力、独自のスキル・ノウハウ等、貸借対照表に含まれない無形資産の価値も考慮して買収します。

時価純資産法は上記の様な無形資産の価値を反映出来ないので、十分な純資産はないものの価値のある無形資産を持つベンチャー企業等のバリュエーションには不向きです。

使用場面や適用対象が限定される点は、時価純資産法の大きなデメリットです。

また、時価純資産法は対象の会社、つまり売り手の会社の内情に大きく影響されます。
そのため、理想的な価格を算定したいのであればあらかじめニーズに合致した会社を選び出すことが必要です。
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時価純資産法の計算方法

次に時価純資産法の計算式をご紹介します。

時価純資産法の計算式

時価純資産法では、時価換算した資産から時価負債を差し引いた金額が企業価値となります。

つまり下記計算式により、時価純資産法による企業価値を計算できます。

  • 企業価値=時価資産−時価負債

ちなみに企業価値を株式総数で割れば、一株あたりの価値を算出できます。

計算式自体は非常に簡便ですが、資産の時価評価がやや面倒です。

 

資産の時価評価

時価純資産法を用いる際は、各資産・負債を時価評価し直す必要があります。

今回は、主な資産・負債の時価評価方法をご紹介します。

①売掛金・受取手形

売掛金や受取手形は、簿価から回収不能価額を減額します。

②棚卸資産

棚卸資産に関しては、不良在庫分だけ簿価から差し引きます。

③有価証券

有価証券については、証券の種類により時価換算の方法が異なります。

上場株式は市場価格に修正する一方で、非上場株式は簿価をそのまま用います。

子会社株式は時価純資産価額、倒産企業の株式はゼロとしてそれぞれ評価します。

④賞与引当金

賞与引当金は、引当不足分を時価に含めます。

⑤役員退職引当金

役員退職引当金に関しては、確定している金額のみ時価換算します。

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営業権を含む時価純資産法

この項では、営業権を用いた時価純資産法に関して解説します。

前述した時価純資産法は、将来的な収益力を含んでいない為、M&Aの実務には不向きな手法です。

M&Aの現場では、営業権を用いた時価純資産法が活用されています。

時価純資産の金額に営業権の金額を加える事で、将来的な収益力をある程度加味できます。

営業権の設定方法には様々ありますが、一般的には「過去3~5年の平均経常利益(もしくは営業利益)×3〜5」が使用されます。

業績が上昇傾向にある場合には、間近の利益を重視する形で平均利益を算出します。

つまり営業権を用いる際は、下記の計算式で時価純資産法に基づく企業価値を算出します。

  • 企業価値=時価純資産+営業権(過去3~5年の平均利益×3〜5)

営業権を時価純資産に加算する事で、時価純資産法の持つデメリットを軽減できます。

ただ、営業権の扱いには専門的な知識が必要であり、専門家の協力が欠かせません。
そのため、実際に営業権を踏まえて時価純資産法を使いたいならM&A総合研究所にご相談ください。
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時価純資産法におけるのれん

この項では、時価純資産法におけるのれんについて解説します。

M&Aにおける「のれん」とは、買収金額のうち売り手企業の純資産額を上回る金額であり、超過収益力とも呼ばれています。

前述した貸借対照表に記載されない無形固定資産(ブランド力やノウハウ等)が、のれんを構成しています。

M&Aではのれんの価値を買収価格に含めるケースが大半ですが、時価純資産法ではのれんの価値を考慮していません。

営業権として利益の数年分を加味するものの、正確なのれんの価値を加味している訳ではありません。

理論上はM&Aにあまり適していない手法と言われており、売り手企業にとっては割安な企業価値が算出される傾向があります。

のれんの価値を考慮しない時価純資産法の代わりに、M&Aでは「DCF法」と呼ばれる手法が多用されています。

DCF法については次項で詳しく解説します。

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時価純資産法とDCF法の違い

この項では、時価純資産法と対極的なバリュエーション手法である「DCF法」について解説します。

⑴DCF法とは

DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)とは、ある企業の将来得られるフリーキャッシュフロー(FCF)を基に、企業価値を計算する手法です。

DCF法では、将来数年間のFCFと永続的な価値の合計(ターミナルバリュー)をそれぞれ現在価値に割り引き、合計する事で企業価値を算出します。

現在価値に割り引く際は、WACC(加重平均資本コスト)と呼ばれる、株主資本と負債の双方を考慮した資本コストを用います。

DCF法は将来的な収益力を基準とする点で、最も合理的なバリュエーション手法と言われています。

⑵時価純資産法と比較したDCF法のメリット

時価純資産法と比較したDCF法のメリットは、「将来性を加味できる点」に尽きます。

将来性を期待して行うM&Aには適しており、あらゆる企業のM&Aで活用されています。

M&A以外にも、設備投資や事業投資等様々な場面で活用できる点もDCF法のメリットです。

⑶時価純資産法と比較したDCF法のデメリット

DCF法には時価純資産法とは異なり、企業価値に主観や恣意が含まれやすいデメリットもあります。

企業価値算定に用いるFCFは、あくまで予測に過ぎません。

FCFの予測次第では、現実とかけ離れた企業価値が算出される恐れもあります。

DCF法を用いる際には、極力根拠のある将来予測を用いる事が重要です。

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時価純資産法以外の企業価値評価手法

最後に、時価純資産法以外の企業価値評価手法をいくつかご紹介します。

⑴類似会社比準法

類似会社比準法とは、評価対象と事業内容等が類似する上場企業の株式指標を基に、企業価値を計算する方法です。

上場会社のPERやEBITDAを用いるケースが一般的であり、客観性の高さを担保できるメリットや十分な利益が出ていない未上場企業にも適用できるメリットがあります。

メリットの多い手法ですが、類似性の高い上場企業を比較対象としなければ、バリュエーションの精度が下がります。

⑵市場株価法

市場株価法とは、過去1〜3ヶ月の平均株価を基に、企業価値を計算する方法です。

市場の平均株価を用いる為、他のバリュエーション手法と比べても客観性が非常に高いです。

短期的な市場変動の影響も抑える事が可能です。

市場株価法の性質上、上場企業のみ活用できるバリュエーション手法です。

⑶配当還元法

配当還元法とは、その名の通り配当金を基に企業価値を計算する方法です。

これまでご紹介した方法とは異なり、非上場株式の相続で用いられる手法であり、M&Aで活用されるケースは稀です。

配当還元法の使用対象は、配当金額が変動しにくい企業でなくてはいけません。

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企業価値の算定方法

まとめ

時価純資産法は、成熟期から衰退期にある中小企業の企業価値評価に用いられています。

時価純資産法のメリットとデメリットをしっかり把握することが重要です。

類似会社比準法や、市場株価法といった時価純資産法以外の企業価値評価手法もあるため、専門家の協力を仰ぎながら活用しましょう。

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