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2019年12月24日更新
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時価純資産法とは?計算方法や企業価値評価における活用、DCF法との違いを解説

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

企業価値の評価手法の1つに、「時価純資産法」があります。時価純資産法とは、企業の保有する資産の時価総額から負債の時価総額を差し引いた金額を企業価値とする手法です。時価純資産法のメリット・デメリット、計算式、DCF法との違いを解説します。

目次
  1. 時価純資産法とは?時価純資産法の意味
  2. 時価純資産法のメリットとデメリット
  3. 時価純資産法の計算方法
  4. 営業権を含む時価純資産法
  5. 時価純資産法におけるのれん
  6. 時価純資産法以外の企業価値評価手法
  7. まとめ

時価純資産法とは?時価純資産法の意味

M&Aを検討する方にとって、M&Aの取引価格は重要な要素と言えます。売り手は高値で売却したいと考える一方、買い手側は安値で買収したいと考えます。利益が相反するため、公正な方法により企業価値を算出し、買収価格算出の参考とする必要があります。

企業価値の計算手法の1つに「時価純資産法」があります。

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アプローチ方法の種類

最初に、企業価値を算出するためのアプローチ方法の種類について、見ておきましょう。

  • コストアプローチ:純資産価値に基づいて算出する
  • マーケットアプローチ:株式やM&Aの市場における取引価格に基づき算出する
  • インカムアプローチ:譲渡企業の収益力に基づき算出する

コストアプローチには、時価純資産法や、時価純資産+営業権、薄価純資産法などがあります。ネットアセットアプローチと呼ばれることもあります。

また、マーケットアプローチには、類似企業比較法や類似取引比較法などがあります。インカムアプローチは、DCF法や配当還元法などを含みます。

薄価純資産法とは?

時価純資産法と同じコストアプローチに分類される薄価純資産法について、ご紹介しておきます。他の方法については、後述します。

簿価純資産法(Book value per share method)は、会計上の帳簿価格をもとに算出する方法です。

  • 純資産額=株式価値=会計上の資産額ー負債額
帳簿の数値をもとに算出するため、客観性を保もつことが可能です。一方で、既存の帳簿と時価に差が生まれている場合は、算出した値が実際の純資産額と大きく異なる可能性もあります。デメリットも知っておくことが重要です。

時価純資産法の意味

時価純資産法(Net asset method)とは、企業の保有する資産の時価総額と、負債の時価総額から企業価値を算出する手法です。

  • 企業価値=企業の保有する資産の時価総額-負債の時価総額

算出する際には有形資産だけでなく、無形資産も時価評価し直されます。また、時価資産から時価負債を引いた部分を「時価純資産」と呼ぶことから、「時価純資産法」と呼ばれています。

企業価値評価における時価純資産法の活用

時価純資産法は、企業評価においてコストアプローチに分類されます。企業が保有する資産を全て売却し、負債を全額支払って清算した場合の企業価値を表します。

時価純資産法は、主に成熟期から衰退期にある中小企業の企業価値評価に用いられています。過去に生み出した利益の蓄積である「純資産」に着目しているため、社歴の長い企業に適しているとも言えます。

純資産に「時価」ではなく、「簿価」をそのまま用いる「簿価純資産法」も存在します。簿価純資産法は、簿価をそのまま用いるので計算は簡便です。しかし、含み益や引当金などを考慮していないので、「時価純資産法」よりも正確性に欠けます。

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時価純資産法のメリットとデメリット

時価純資産法には、メリットとデメリットがそれぞれ存在します。ここでは、時価純資産法のメリットとデメリットをお伝えします。

①時価純資産法のメリット

時価純資産法は、2つのメリットが挙げられます。

  • 計算が簡便である
  • 計算される企業価値の正確性が高い

他のバリュエーション手法を活用する際には、ファイナンスの専門知識や膨大なデータが必要となります。一方で時価純資産法は、貸借対照表があれば企業価値を計算することが可能です。

また、貸借対照表のデータを参考とするため、個人の主観や恣意が入りにくいという特徴があります。そのため、現実的な価値を反映できます。

計算の簡便性と企業価値の信頼性の2つの面から、中小企業のM&Aでは多用されています。

②時価純資産法のデメリット

時価純資産法において、3つのデメリットがあります。

  • 将来の収益性を企業価値に反映できない
  • 貸借対照表に含まれない資産の価値も反映できない
  • 使用場面や適用対象が限定される

一般的なM&Aは、将来的な収益力を期待して実行されます。一方、時価純資産法は過去生み出された利益の蓄積である純資産を基準としています。

そのため、M&Aには不向きなバリュエーション手法と言われています。成長中の企業や大企業のM&Aでは、活用しにくいバリュエーション手法です。

また、M&Aでは貸借対照表に含まれない無形資産の価値も考慮して買収を行います。

  1. 優秀な人材や販路
  2. ブランド力
  3. 独自のスキル・ノウハウ

時価純資産法は、これらの無形資産の価値を反映できないため、十分な純資産はないものの価値のある無形資産を持つベンチャー企業などのバリュエーションには不向きです。

さらに、時価純資産法は対象の会社、つまり売り手の会社の内情に大きく影響されます。理想的な価格を算定したいという場合には、あらかじめニーズに合致した会社を選び出すことが必要です。

その際にはぜひ、M&A総合研究所のM&Aプラットフォームを活用してみてください。独自のAIを採用したM&A総合研究所のM&Aプラットフォームは、買収ニーズを登録するだけで条件の合う売り手をマッチングいたします。

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時価純資産法の計算方法

次に時価純資産法の計算式と、資産の時価評価方法について、ご紹介します。

時価純資産法の計算式

時価純資産法では、時価換算した資産から時価負債を差し引いた金額が企業価値となります。つまり、下記の計算式によって企業価値を計算できます。

  • 企業価値=時価資産−時価負債

企業価値を株式総数で割ることで、一株あたりの価値を算出できます。

 

資産の時価評価

時価純資産法を用いる際は、資産や負債を時価評価し直す必要があります

  1. 売掛金・受取手形
  2. 棚卸資産
  3. 有価証券
  4. 賞与引当金
  5. 退職給与引当金

今回は、5つの項目の時価評価方法をご紹介します。

①売掛金・受取手形

売掛金や受取手形は、簿価から回収不能価額を減額します。

非公開会社における回収不能見込み額は、法人税法に則り算出した貸倒引当金が一般的に用いられます。この引当金の額が実際と異なる場合が多いです。そのため、債券回収の可能性については、債務者の財政状況や経営状況を考慮して検討されます。

②棚卸資産

棚卸資産に関しては、長期に滞留している在庫や販売見込みのない在庫分が簿価から差し引きされます。具体的には、以下のようなものになります。

  • 販売中止を予定している商品
  • ブームが終わった商品
  • 滞留品
  • 赤字での販売が見込まれる商品

③有価証券

有価証券については、証券の種類によって時価換算の方法が異なります

  • 上場会社の有価証券:評価時、証券取引所によって公開された取引額で評価される
  • 非公開会社の株式など:投資先の財政・経営状況によって評価される
  • 非公開会社の社債など:営業債権によって回収可能性を検討して評価される

上場株式は市場価格に修正する一方で、非上場株式は簿価をそのまま利用します。子会社株式の場合、時価純資産価額や倒産企業の株式は、ゼロとしてそれぞれ評価します。

④賞与引当金

賞与引当金は、評価時の賞与支給見込み額によって評価され、引当不足分を時価に含めます。非公開会社の場合、賞与引当金は法人税法に則って計上されています。

⑤退職給与引当金

退職給与引当金は、確定している金額のみ時価換算します。継続起業か清算企業かによっても、異なります。

  • 継続企業:評価時の自己都合要支給額によって評価
  • 清算企業:評価時の会社都合要支給額によって評価
非公開会社であれば、退職給与引当金は法人税に則って評価されます。

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営業権を含む時価純資産法

時価純資産法は、将来的な収益力を含んでいない点から、M&Aの実務には不向きな手法と言われてます。そこで実際のM&Aの現場では、営業権を用いた時価純資産法が活用されています。

時価純資産の金額に営業権の金額を加えることで、将来的な収益力をある程度加味することが可能です。営業権を用いる際は、下記の計算式で時価純資産法に基づく企業価値と営業権が設定されます。

  • 企業価値=時価純資産+営業権
  • 営業権=過去3~5年の平均経常利益(もしくは営業利益)×3〜5

業績が上昇傾向にある場合には、間近の利益を重視する形で平均利益を算出します。営業権を時価純資産に加算することによって、時価純資産法の持つデメリットを軽減できます

ただ、営業権の扱いには専門的な知識が必要であり、専門家の協力が欠かせません。実際に営業権を踏まえて時価純資産法を活用する際には、M&A総合研究所にご相談ください。

M&A総合研究所では、M&Aに関する豊富な知識と経験を持つプロがM&Aをフルサポートいたします。相談は無料で、国内最安値水準の費用となっています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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時価純資産法におけるのれん

M&Aにおける「のれん」とは、買収金額のうち売り手企業の純資産額を上回る金額を指します。「超過収益力」とも呼ばれています。

のれんは、先ほど紹介した貸借対照表に記載されない無形固定資産(ブランド力やノウハウなど)から構成されます。M&Aでは、のれんの価値を買収価格に含めるケースが大半となります。しかし、時価純資産法では、のれんの価値が考慮されていません

営業権として利益の数年分を加味するものの、正確なのれんの価値を加味している訳ではないのです。理論上、時価純資産法はM&Aにあまり適していない手法と言われており、売り手企業にとっては割安な企業価値が算出される傾向があります。

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時価純資産法以外の企業価値評価手法

最後に、時価純資産法以外の企業価値評価手法を3つご紹介します。

  1. 類似会社比準法
  2. 市場株価法
  3. DCF法
  4. 配当還元法
それぞれの手法について、詳しく見ていきましょう。

①類似会社比準法

類似会社比準法とは、評価対象と事業内容などが類似する上場企業の株式指標をもとに、企業価値を計算する方法です。上場会社のPERやEBITDAを用いるケースが一般的で、2つのメリットが挙げられます。

  • 客観性の高さを担保できる
  • 十分な利益が出ていない未上場企業にも適用できる

メリットの多い手法ですが、類似性の高い上場企業を比較対象としなければ、バリュエーションの精度が下がるリスクもあります。

②市場株価法

市場株価法とは、過去1〜3ヶ月の平均株価をもとに、企業価値を計算する方法です。市場の平均株価を用いるため、他のバリュエーション手法と比べても、客観性が非常に高いと言われています。短期的な市場変動の影響も抑えることが可能です。

市場株価法の性質上、上場企業のみ活用できるバリュエーション手法になります。

③DCF法

DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)とは、ある企業の将来得られるフリーキャッシュフロー(FCF)をもとに、企業価値を計算する手法です。

時価純資産法とDCF法には、大きな違いがあります。

  • 時価純資産法:将来性がほとんど加味されない
  • DCF法:将来性を加味できる

DCF法では、将来数年間のFCFと永続的な価値の合計(ターミナルバリュー)を、それぞれ現在価値に割り引きます。そして、それらを合計することによって、企業価値を算出します。

現在価値に割り引く際は、WACC(加重平均資本コスト)と呼ばれる株主資本と、負債の双方を考慮した資本コストを利用します。DCF法は将来的な収益力を基準とする点で、最も合理的なバリュエーション手法と言われています。

DCF法のメリット

時価純資産法と比較したDCF法のメリットは、2つです。

  • 将来性を加味できる
  • 設備投資や事業投資など、さまざまな場面で活用できる

将来性を期待して行うM&Aに適しており、あらゆる企業のM&Aで活用されています。

DCF法のデメリット

DCF法には、メリットがある一方で、デメリットもあります。

  • 企業価値に主観や恣意が含まれやすい

企業価値算定に用いるFCFは、あくまで予測となります。そのため、FCFの予測次第では、現実とかけ離れた企業価値が算出される可能性もあります。DCF法を用いる際には、極力根拠のある将来予測を用いることが重要です。

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④配当還元法

配当還元法とは、その名の通り、配当金をもとに企業価値を計算する方法です。これまでご紹介した2つの方法とは異なり、非上場株式の相続で用いられる手法となります。そのため、M&Aで活用されるケースは稀です。配当還元法は、配当金額が変動しにくい企業が対象でなくてはいけません。

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まとめ

時価純資産法は、成熟期から衰退期にある中小企業の企業価値評価に用いられています。時価純資産法のメリットとデメリットをしっかり把握し、活用することが重要です。

類似会社比準法や、市場株価法といった時価純資産法以外の企業価値評価手法もあります。ケースに合った手法を活用できるよう、専門家の協力を仰ぐことも必要です。

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