2021年8月18日更新会社・事業を売る

株式交換とは?手法の概要、メリット・デメリット、手続きの流れ、最新事例も解説

株式交換とは、対象会社の発行済株式すべてを株式の交換によって取得し、完全親会社となるための手法であり、会社の組織再編の際に活用されています。この記事では、株式交換を活用するメリット・デメリット、株式交換の手続き方法、株式交換と株式移転の違いなどを解説します。

目次
  1. 株式交換とは?手法の概要・意味
  2. 株式交換を活用するメリット
  3. 株式交換を活用するデメリット
  4. 株式交換を行う手続きの流れ
  5. 株式交換を円滑に成功させるポイント
  6. 株式交換の税務と会計処理
  7. 株式交換における自己株式の消却
  8. 株式交換の最新事例
  9. 株式交換のまとめ
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株式交換とは?手法の概要・意味

株式交換とは?手法の概要・意味

経営上、別法人を100%完全子会社化したいというニーズが生じる可能性があります。そのようなニーズをかなえる方法として、株式交換があります。そこで今回は、株式交換に関して幅広く解説します。はじめにM&Aにおける株式交換について、以下の2項目を見ておきます。

  1. 株式交換の意味とM&Aでの活用
  2. 株式交換によるM&A対価
これら2項目について押さえておけば、M&Aにおける株式交換の意義を把握できます。それでは、それぞれの項目を順番に見ていきましょう。

株式交換の意味とM&Aでの活用

株式交換と聞くと、持っている株式を会社や人と単にトレードする手法と勘違いしがちですが、実は若干異なります。株式交換とは、2社間での株式の交換によって、一方の株式会社または合同会社に、他方の発行済株式を100%取得させるM&A手法です。

平成11年の旧商法改正によって、株式交換によるM&Aが実施可能となりました。株式交換により株を取得した会社は株を渡した会社を完全子会社化でき、このときに株を取得した会社は完全親会社と呼ばれます。

ニュースで「〇〇が〇〇の完全子会社化をしました」などと耳にした方もいらっしゃるかもしれませんが、完全子会社化するときに活用されるM&A手法の一つです。少し前には、GoogleがYouTubeの完全子会社化をしたときにも株式交換によるM&Aが実施されました。

以上のことから、株式交換とは企業買収も含めた、会社の組織再編の際に使われるM&A手法の一つといえます。

株式交換によるM&A対価

株式交換以外の一般的なM&Aでは、買い手が売り手に支払う対価(株式をすべて取得するために買い手が支払うもの)として、現金が活用されるケースが多いです。

ところが株式交換では、株式交換で支払う対価として、有価証券(社債、新株予約権、新株予約権付社債等)や他社株式など、現金以外の資産を用います。なお完全親会社の親会社株式の交付(三角株式交換)も認められています。

以上が、株式交換の概要です。ただし株式交換のプロセスは煩雑であるため、円滑に済ませるにはM&Aの専門家の協力が必要になるでしょう。

M&A総合研究所では、M&Aに豊富な知識と経験を持つアドバイザーがM&Aをフルサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。相談料は無料となっていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

株式交換の仕組み

株式交換とは売却側企業の発行済みの全株式を買収側企業に取得させることで、親子化関係を作る完全子会社化の方法です。売却側の株主はA企業の株式を買収側の株式と交換し、買収側の株式を取得し、買収側B社はA社の支配権を持つ親会社となりA社が完全子会社として効力が発生します。

売却側の株主は買収側の株式の取得する際は所定の交換率により株数を割り当てが行われ、買収側は巨額の資金を用意する必要がないため資金が少ない企業でも子会社化が可能です。

また他の株式交換の対価を支払う方法として買収側の株式の他、社債や現金、買収側企業の新株予約権、買収側会社の親会社株式などを交付も可能ですが、余分な手続きなどが必要で税金が課せられる可能性もあるでしょう。

三角株式交換とは

先ほども記述したように、株式交換の対価の交付方法となる買収側のB社株式だけではなく、買収側B社の親会社C社の株式をA社の株主に株式交換の方法の一つになります

買収側企業B社の100%支配権がある親法人のC社株式が適格株式交換として認められるのは2つの要件を満たす必要があります。

  • 株式交換前にC社がB社完全子会社として全株式を保有
  • 完全子法人と完全親法人との間に特定支配関係があること。
  • 株式交換後にも、買収側の親会社ではなく株式交換する買収側の企業による支配関係が継続

株式交換と売却側の新株予約権の取扱い

株式交換における売り手(売却)A社の発行した新株予約権が残ってしまうと100%の株式保有率が100%ではなくなり、株式予約権について「取得条件」を定めます。株式交換を実行する際はB会社が買収するA社の新株予約権を取得して消却し、対価として新株予約権者へ親会社A社の株式の新株予約権を交付が一般的です。

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株式交換と株式移転の違い

株式交換とよく似たM&A手法に、株式移転があります。株式移転も、発行済の株式を100%他の会社に取得させるM&A手法です。しかし両者には明確な違いがあります。最も異なるのは、株式を100%取得する会社の特徴です。

前述のとおり株式交換とは、他の会社に株式を取得させる行為で、株式を取得する会社は「すでに存在している会社、もしくは合同会社」となります。他方、株式移転で株式を取得するのは「新しくできた会社」です。

ホールディングスカンパニー、持株会社設立などの際に活用されるM&A手法が株式移転です。企業買収を含めた組織再編である株式交換とは異なり、株式移転は単なる会社内の組織編成の意味合いを持ちます。M&Aの目的に応じて、用いる手法を選択しましょう。

株式交換と吸収合併の違い

吸収合併とは、複数の法人を統合させることによって一つの法人とする手法です。吸収合併では、吸収される側の法人格を消滅させます。

これに対して株式交換は、一方の企業を完全子会社化する手法ではあるものの、子会社側の法人格を消滅させません。法人格が残すのかどうかが手法として大きく異なっています。

株式交換と簡易株式交換の違い

簡易株式交換とは、特定の要件を満たすことで株式交換に必要な手続きを簡略化できるという簡易組織再編行為の一つです。簡易株式交換では、株主総会など手間のかかる手続きを省略できるため、スピーディーに組織再編を進められるようになります。

簡易株式交換の要件は「完全子会社の株主に交付する完全親会社の株式の数に、1株当たり純資産額をかけた価額と完全親会社の株式など以外の財産の帳簿価額等の合計額が、完全親会社の純資産額の20%を超えないこと」です。

つまり、完全親会社の純資産があまり動いていない、小規模な株式交換であるのが要件になっています。要件の20%という割合は、それより下回る割合であれば定款で変更できますが、20%より大きい割合にはできないので注意してください。

株式交換以外の合併・事業譲渡・会社分割といった手法も、要件を満たせば簡易組織再編行為に該当されます。この際の要件は、簡易株式交換とは若干異なるものの、20%の割合より下の組織再編行為であれば簡易組織再編行為の要件を満たせます。

株式交換と略式株式交換の違い

略式株式交換は、簡易株式交換と同じように組織再編の手続き(株主総会など)を簡略化するものですが、要件が異なっています。略式株式交換は、完全支配関係にある会社同士の組織再編行為が該当します。つまり親子会社間の株式交換に限定されるのです。

つまり、親会社が子会社について、90%以上の議決権を保有するケースであれば、子会社側の株主総会決議を省略ができます。ちなみに略式株式交換をはじめとする略式組織再編行為には、簡易組織再編行為ができる新設分割が含まれていません。

新設分割は新しく会社を設立したうえで事業を承継させる手法であり、そもそも完全支配関係にある会社同士の組織再編ではないからです。同様の理由で株式移転や新設合併も略式組織再編行為には含まれません。

簡易組織再編行為と略式組織再編行為はそれぞれ要件を満たせば併用可能です。同じグループ傘下にある会社同士の組織再編であれば有効的に活用できます。

【関連】株式移転とは?手続きやメリット・デメリット、M&Aにおける活用や事例を解説
【関連】吸収合併とは?M&Aにおける吸収合併や子会社の吸収合併を解説
【関連】簡易株式交換とは?略式株式交換との違いについても解説します

株式交換を活用するメリット

株式交換を活用するメリット

株式交換には、メリットとデメリットの双方が存在すると把握しておくと良いでしょう。ここでは株式交換を活用するメリットとして、以下の5つを紹介します。

  1. 株主総会での特別決議により手続きを進められる
  2. 現金を支払わなくても済む
  3. 子会社の独立性が担保される
  4. 少数株主を強制的に排除できる
  5. 売却側株主は買収側株式を獲得できる
これら5つのメリットを押さえておけば、株式交換の活用が自社にとってどれほどの利益となるのか把握できます。それでは、それぞれのメリットを順番に見ていきましょう。

①株主総会での特別決議により手続きを進められる

単なる株式譲渡を用いて完全親会社と完全子会社を作ろうとすると、個々の株主と譲渡に関する契約を結ばなくてはなりません。ところが株式交換を活用すれば、株主総会での特別決議で承認を得れば手続きを進行できます。

つまりたとえ株主総会で反対があっても3分の2以上の賛成を得れば、完全子会社化を実現できるメリットがあります。このように株式交換とは、ある意味小規模株主から強制的に株式を吸い上げる仕組みとしても機能します。

②現金を支払わなくても済む

前述のとおり、株式交換の対価は、ある程度の柔軟性が認められています。その一方で、もしも株式譲渡で株主と譲渡手続きを結び、会社を完全子会社化しようとした場合には、多額の現金を支払わなければなりません。

その一方で株式交換を活用すれば、親会社は自社の株式を渡すことで現金を支払わなくても済むメリットがあります。そのため多くのケースでは、株式交換の対価は親会社の株式で支払われています。

なお企業を買収するケースでは追加でメリットが挙げられます。つまり親会社の株価が高いケースでは、子会社となる企業を有利な条件で買収可能です。 

③子会社の独立性が担保される

株式交換を活用して完全子会社になったとしても、法律上は親会社とは別法人です。そのため企業を買収する目的で株式交換を活用しても、既存の会社名を継続できます。これによって企業買収の際に、取引先や従業員から生じる抵抗を最小限に軽減できます。

また株式交換後も、会社組織そのものに大きな変更は与えません。したがって株式交換とは、子会社の独立性が担保されているM&A手法といえます。

④少数株主を強制的に排除できる

株式譲渡や売り手A社の全株式を取得する際に株主から譲渡する合意が必要になります。株式譲渡の場合は買い手B社が他の少数株主の有する株式の全部を、譲渡に応じなかった敵対的株主の排除(スクイーズアウト)が可能になります。

株式交換の場合、株主総会での特別決議での承認のみで反対している株主の株式も強制的に買い手B社に移動ができます

特別決議に必要な条件は2つあります。
●株主総会に出席した株主における議決権が議決権全体の半数を超える
●株主総会に出席した株主における議決権の3分の2以上の賛成

⑤売却側株主は買収側株式を獲得できる

株式交換をする場合は売却側A社株主が保有している株を買収側B社の株主となり、B社株主となったため、完全子会社になったA社、B社の経営に継続して関与が可能です。

統合や完全子会社に株式交換に反対する少数株主を説得する材料にもなります。

【関連】株式譲渡とは?メリット・デメリットや手続き、税務、家族間での譲渡も解説

株式交換を活用するデメリット

株式交換を活用するデメリット

ここまでが株式交換を活用するメリットでした。反対にここからは、株式交換を活用することで生じるデメリットとして、以下の5つを紹介します。

  1. 部分的に買収ができない
  2. 子会社化される会社に現金が入ってこない
  3. 株主の持分比率が下がる
  4. 買収企業の株主構成が変化する
  5. 専門的な知識がなければならない
これら5つのデメリットを押さえておけば、自社において株式交換を慎重に検討でき、後々のトラブルを回避できます。それでは、それぞれのデメリットを順番に見ていきましょう。

①部分的に買収できない

株式交換で完全子会社を作ろうとすると、会社の良い部分だけではなく債務を含めた悪い部分もすべて引き継がなければなりません。そのため株式交換を用いて企業買収を実施する場合は、引き継ぐ債務について十分に注意する必要があります。

②子会社化される会社に現金が入ってこない

株式交換を活用すれば、現金を使用しないで済む反面、子会社化される会社に現金が入ってこないデメリットとしていい換えられます。その結果、いかなる不利益を被るおそれがあるのか、具体的な事例で見ていきましょう。

たとえば、非公開企業に株式交換で企業買収されるケースでは、子会社化された企業は対価として得た株式を現金化するのが困難となってしまい、経営に支障をきたしてしまうおそれがあります。したがって買収される企業の種類について注意が大切です。

③株主の持分比率が下がる

売却側株主が買収側の株主となるため、買収側の株主構成に影響が出てきます。交換比率や買収側の規模によって、株主総会での議決権割合が低下、または価値も下がる可能性があります。

④買収企業の株主構成が変化する

売却側の株主にとって買収側の株式を取得できるのはメリットになります。既述したように買収側の株式と交換することにより、経営に関与する状態が継続され、買収企業や既存株主、経営陣にとっては不安要素になるかもしれません。

株式対価における株式交換を行う際には株主構成も考慮する必要があります。

⑤専門的な知識がなければならない

前述のとおり、株式交換を活用して子会社化を狙うとなると、書類作成や開示など複雑な手続きが存在しています。これを円滑に実行するには、株式譲渡や事業譲渡などのM&A手法以上に専門知識が必要です。

株式交換で必要となる株価算定は、財務の知識がないと円滑に済ませられません。なぜなら会社の経営状態や将来的なキャッシュフローなどを多角的に分析する上に複雑な計算式を用いるためです。専門的知識がない経営者や役員だけでは困難な作業といえます。

また株式交換は、手続き上の問題で後々裁判になるケースもある手法でもあり注意しなければなりません。以上のことから株式交換手続きを円滑に済ませるには、M&A専門家のサポートがおすすめです。

M&A総合研究所では、アドバイザーによる専任フルサポートを行っています。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。

相談料は無料ですので、M&Aをご検討される際には、まずお気軽にご相談ください。

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株式交換を行う手続きの流れ

株式交換を行う手続きの流れ

ここまで読んで株式交換を活用するメリット・デメリットを把握できたはずです。ここからは、株式交換の具体的な手続き方法について、以下の10項目に分けて解説します。

  1. 株式交換契約の締結
  2. 適時開示(上場企業に限る)
  3. 事前届出
  4. 有価証券届出書の提出
  5. 事前開示事後開示
  6. 株主総会での承認
  7. 反対株主などから株式の買取り・債権者保護手続き
  8. 効力の発生と登記
  9. 事後開示
  10. 株式交換無効の訴訟への対応
これら10項目を押さえておけば、株式交換の手続きの全体像を把握できます。それでは、それぞれの項目を順番に見ていきましょう。

①株式交換契約の締結

はじめに当事会社において、株式交換に関する契約を締結しなければなりません。もしも取締役会のある会社である場合には、取締役会において承認を得る必要があります。なぜなら、株式交換は、重要な業務の執行にあたると判断されるためです。

②適時開示(上場企業に限る)

上場企業に限られますが、株式投資家の判断に影響を与える要素として取締役会での決定した時点で公表を求められています。

株式交換契約締結の決定時も同様に適時開示の対象です。株式交換をするのが完全子会社での場合においても同様に開示が必要です。
※交渉段階での取り決めなどであれば破談する可能性もあるため、開示する必要はないとされています。

③事前届出

独占禁止法に基づき(株式取得、合併・分割、株式移転、事業譲渡)、M&Aを行う際には公正取引委員会への事前届出と審査が必要な場合があります。株式交換の場合は株式取得に該当します。買い手・売り手の売上高の基準を満たすと事前届け出が必要です。

  • 買収側企業のグループ全体の国内売上合計が200億円を上回る
  • 売却企業とその子会社の国内売上合計が50億円を上回る

事前届出のルールとして、届け出受理後の30日間は株式取得禁止期間です。株式交換を実施できないため、これらを加味してスケジュールを事前に組む必要があります。

独占禁止法に触れる問題がない場合は、届け出企業の申出と公正取引委員会の判断により取得禁止期間を短縮が可能です。問題点がある場合、追加の報告などが必要となり、届け出受理後120日まで審査が延長されます。事前相談制度を利用することによりスムーズに行えます。

④有価証券届出書の提出

金融商品取引法により株式の発行・交付に関する開示義務があり、一定の条件に該当する場合は財務局に有価証券届出書を提出しないといけません。

届出が不要な場合もあり、売却側企業が非上場企業や非公開会社である場合や交換予定の株式の情報が一般に公開されている場合は不要です。株式交換における有価証券届出書は、⑤事前開示を行う前に必要になります。提出後は15日間は株式交換の実行できません。

⑤事前開示

次に株式交換を実行する当事会社は、契約内容などの法令で定められた事項を事前に開示します。このとき、最低でも株主総会の2週間前までに、それぞれの株主や債権者に開示しなければなりません。なお開示する際には、公告通知や催告の手段が取られます。

公告通知と催告のいずれか早い日から、契約内容などの法令で定められた事項を記した書類を備え置かなければなりません。

⑥株主総会での承認

次に株式交換を実行する当事会社は、株主総会の特別決議によって承認を受けなければなりません。このときに効力発生の前日までに株主総会で承認を受ける必要があり、株式交換に反対する株主や債権者には、会社に対する株式買取請求権が与えられます。

なお、簡易株式交換や略式株式交換に該当する場合には、株主総会での承認手続きを簡略化・省略化可能です。

⑦反対株主などから株式の買取り・債権者保護手続き

次に当事会社では、株式交換の旨を株主や債権者に通達します。反対する株主や債権者から、株式買取請求があった場合には応じる必要があります。請求期限は、効力が発生する日の20日前から前日までです。

なお、株式交換の対価として完全親会社の株式以外の金銭等を交付するケースでは、債権者保護手続きを取らなければなりません。

⑧効力の発生と登記

完全親会社では、株式交換契約書で定められた効力発生日に、完全子会社の全株式を取得します。なお、株式交換の手続きを取ったことで、資本金や発行可能株式総数などに変更があるならば、効力発生日かた2週間以内に登記手続きを取らなければなりません。

⑨事後開示

最後に当事会社では、株式交換の効力発生日から、法令で定められた事項の記載された書類を6ヶ月間、株主や債権者に開示しなければなりません。手段としては、株式交換の結果等を記載した事後開示書類を本店に備置する形が取られます。

株式交換の手続きに関しては、以下の記事でより詳細に解説しています。

⑩株式交換無効の訴訟への対応

株式交換の無効と主張できるのは株式交換の効力発生日から数え、6ヵ月以内であれば提訴できます。提訴できる関係者として、株主や取締役などや株式交換を承認しなかった債権者や必要とされる催告を受けなかった債権者となります。

株式交換が無効になる理由は、以下のものがあります。

  • 株式交換契約締結の法律違反
  • 備え置き資料の不足や不備
  • 株式や債権者による異議手続きの不履行
  • 子会社の株主に対する対価割り当ての違法性
無効になると株式の返還が行われ、株式交換前の状態に戻ります。

【関連】株式交換の手続き
【関連】株式交換のスケジュール
【関連】株式交換の登記

株式交換を円滑に成功させるポイント

株式交換を円滑に成功させるポイント

ここでは、株式交換を円滑に成功させるポイントとして、以下の2つを解説します。

  1. 株式交換比率は慎重に協議する
  2. 株式交換と増資の関係性について理解しておく
これら2つのポイントを押さえておけば、自社における株式交換の円滑な成功につながります。それでは、それぞれのポイントを順番に見ていきましょう。

①株式交換比率は慎重に協議する

株式交換において重要となるのは、株式交換比率です。株式交換比率とは、株式交換を行う際、完全親会社と完全子会社になる各会社の株式数の比率をいいます。当然ですが、株式は会社ごとに株価が異なっており、同じ比率で交換はできません。

そのため株式交換を行う際には、お互いの会社の株価に合わせて株式交換比率を変えます。このときに株式交換比率は、会社同士の協議により決定されるのです。株価評価の手法には、インカムアプローチ・コストアプローチ・マーケットアプローチなどがあります。

上記の手法を活用しつつ、当事者である会社同士の規模の違いや力関係などを加味した上で、株式交換比率が決定されます。なお上場して市場価値が出ている会社では、市場価値をそのまま反映せず、プレミアムを加えた上で株式交換比率を決定するケースが多いようです。

ただし株式交換比率は、算出される数字によっては株主に損害を与えてしまう可能性があります。そのため株式交換比率の決定は、公正な結果になるよう調整しなければなりません。もしも株主が内容に不満を持てば、反発されてしまうおそれがあります。

その結果、株式交換自体が成り立たなくなるおそれも存在するため、株式交換比率は慎重に協議が大切です。

株式交換後の株価変動リスクと対処法

株式交換後において売却側の株式を取得するまで数ヵ月ほど必要になり、買収側企業が株式交換契約が締結し開示される場合に株価が上下することで企業価値が変化する可能性への対処法をご紹介します。

  • 固定比率方法
  • 変動比率方法
固定比率方法:株価が上下した場合でも比率が変わらないため、売却側への利益は変動しません。開示した後に買収側企業の株価が上がると売却側が得られる株式は増えます。買収側では交付する株が多いほど比率が低くなるので、買収側にとってもメリットになります。

変動比率方法:株価が上下することで買収側の価値が上がると売却側の株価は下がり、売却側への株式対価は減少します。

株価の上下することで売却側の株式数への影響はありますが、対価(財産)に関しては変動することはありません。固定比率方法で紹介したように新しく株価を交付することで比率が低くなるメリットがありましたが、変動の場合は株価が下がると比率が高くなります。

株式交換比率における端数の処理

売却側の株主に交付する際に買収側の株式と交換比率の決定する際に端数が発生する可能性があります。この端数は切り捨ての対応はできません。

会社法で定められ、売却側の株主から交換比率で発生した端数を合計し、株式を現金化し株主に戻す方法と会社が買取らせれます。株式交換で単元株式数が端数となり議決権がなくなるため、売却側の株主では株式を会社に買取りを要求可能です。

②株式交換と増資の関係性について理解しておく

ここでは、株式交換で増資としての効果を期待する際の問題点について解説します。増資とは、新株発行により資本金を増やす行為のことで、株式会社の資金調達手段として行われます。

もしも新株発行により株式交換を実施すると、通常は増資と同様の効果(資本金の増加)をもたらすとされています。ところが新株発行により資本金を増加させると、1株当たりの利益減少によって既存株主に悪影響を及ぼすおそれがあるのです。

とはいえ、100%子会社化を目的に株式交換するケースでは、現金の流出を伴うおそれがあります。つまり、ここでは上記の事態を回避する目的で、増資の効果を発生させずに新株発行を伴う株式交換を実施できるのかが問題です。

明確に規定されていませんが、理論上は「可能」とされています。なぜなら株式交換の際、増加する資本金と資本準備金の額を0円として、全額を資本剰余金として会計処理することで、増資の効果を回避できるためです。

ただし上記の手法は明文化されてないため、実施を検討する際には税理士や公認会計士などの専門家に相談が大切です。

③子会社による親会社の株式取得に関する注意点

子会社が買収側の親会社の株式取得する際における注意点をご紹介です。会社法では「子会社は親会社の株式取得してはならない」とあります。

しかし、株式交換において親会社の株式所得を例外的に認め、売却側の企業が自社株を持っている場合は買収側の株式と交換し買収側の株式取得します。買収側(親)企業の株式を取得した場合は相当な時期に処分しないといけません(会社法第135条第3項)。

そうした事態が生じないために、株式交換前に取締役会議で自己株式を消却する方法も一つでしょう。

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株式交換の税務と会計処理

株式交換の税務と会計処理

株式交換をするときは、税務と会計処理についても知っておかなければなりません。「組織再編税制」の適格要件を満たすか否かによって、株式交換で必要となる税務・会計処理は異なるため、2項目に分けて紹介します。

①適格株式交換の税務・会計処理

法律で定められた適格要件を満たす(適格株式交換に該当する)場合、税務上は子会社株式を簿価によって譲渡としたものとみなされます。このケースでは簿価を用いて会計処理を行い、売却益に対する課税は発生しません。

上記のように税務上優遇される適格株式交換ですが、いくつかの要件を満たす必要があります。適格株式交換となるには、対価は親会社の株式でなければなりません。また株式交換後も、完全支配関係が継続が要件に含まれています。

完全支配関係にある会社間のM&Aによる株式交換では、上記が要件です。ところが支配関係(50%~100%未満)にある会社間の株式交換では、上記要件にくわえて従業員の雇用や事業の継続に関する要件も満たさなければなりません。

とはいえ、適格要件を満たせば税務上有利な条件で株式交換を行えるため、適格要件はできるだけ満たすのが理想です。適格株式交換に該当すれば、会計処理を比較的楽に済ませられます。

組織再編税制が適用される場合

組織再編税制が適用される場合は、株式交換の際には売却側企業の資産を時価評価する必要はありません。

適用されるためには、株式交換の対価として買収側企業の株式の交付が条件になります。上記加え、支配関係についても以下の条件が課せられます。

  • 従業員の引継ぎを80%以上の雇用継続
  • 主要事業の継続、両者の事業の関連性を明確にする
  • 事業規模が売却側企業より買収側企業が5倍以内である場合は売却側の特定役員の少なくとも1名が株式交換後も在任する
  • 売却側株主に交付される買収側の株式のすべてが株式交換後も売却側株主に継続して保有される

グループ法人税制が適用される場合

売却側と買収側の企業が株式交換前より完全支配関係がある場合は、グループ法人税制が適応されます。売却側の時価評価が不要となり、買収側の株式以外の資産が対価として交付されても問題ありません。

②非適格株式交換の税務・会計処理

的確要件を満たさない(非適格株式交換に該当する)場合、税務上は子会社の資産を時価評価する必要があります。時価により対価を受け取るため、子会社株主に譲渡益課税が発生します。

非適格株式交換では、子会社から移転された株式取得価額と増加する資本金の額の差額分を、資本金の増額分として会計処理するため、適格株式交換と比較して複雑な手続きが求められる点に注意が必要です。

株式譲渡の損益に対する課税

株式譲渡の損益は、個人の場合(所得税、住民税、復興特別所得税)、法人の場合(法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税)それぞれに課税されます。

譲渡損益は法人と個人株主で計算方法は、異なってきます。

  • 法人株主の場合:譲渡損益=株式の譲渡で通常得られる対価の額ー株式の簿価
  • 個人株主の場合:譲渡損益=譲渡価格ー株式取得時・譲渡時経費
株式交換での譲渡価格や対価の額は、株式交換前の買収企業における株式の時価となります。買収企業が上場企業の場合、株式交換前の市場株価となり、非上場の場合は国税庁の通達により決められた方法に従って、時価を確定させます。

資産評価の損益に対する課税

株式交換時の時価が株式交換前の簿価を上回ると利益が生じるため、その年の課税所得が増えます。下回ると損失が生まれるため課税所得が減少します。しかし、時価評価の対象の資産(固定資産、販売する土地、有価証券、金銭債権、繰延資産)が含まれます。

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【関連】M&Aの税務

株式交換における自己株式の消却

株式交換における自己株式の消却

自己株式は、自社で発行し発行後にその会社自身で取得し所有している株式をさします。金庫株と呼ばれる可能性もあるので覚えておくと良いです。

もしも子会社が自己株式を保有していると、当然その株式も株式交換の対象となります。そこで子会社においては、自己株式についての消却(実務処理)が求められるので注意が必要です。ここでは、株式交換における自己株式の消却で問題となる、以下の2項目を解説します。

  1. 自己株式の消却手続き
  2. 自己株式消却を伴う株式交換における会計処理
これら2項目を押さえておけば、子会社による自己株式の消却を伴う株式交換であっても円滑に手続きを済ませられます。それでは、それぞれの項目を順番に見ていきましょう。

①自己株式の消却手続き

大半の株式交換では、M&A実行前にあらかじめ子会社側で自己株式を消却します。子会社側では、以下の手順で自己株式を消却させるのが基本です。

  • 株式交換契約書への自己株式消却条項を入れる
  • 取締役会で自己株式の消却決議を行う
  • 自己株式の消却登記を実施する

上記の手続きを済ませると、自己株式の消却が無事に完了します。

②自己株式消却が伴う株式交換の会計処理

自己株式消却を伴う株式交換では、単体と連結で会計処理が大きく異なります。まず単体の会計処理では、子会社側で自己株式消却、親会社側で株式交換の仕訳を実施する形です。次に連結の会計処理では、投資と資本を合算した上で、消去する形を取って仕訳します。

以上のことから、株式交換を行うときは、自己株式消却の会計処理にも注意が必要です

株式交換の最新事例

株式交換の最新事例

これまでに数多くの企業が株式交換の手法を活用してきました。そこで最後に、代表的な株式交換の事例として、以下の7つを紹介します。

  1. ユーグレナとLIGUNA
  2. 日本電産と日本電産エレシス
  3. 村田製作所と東光
  4. 三菱ケミカルHDと日本化成
  5. パナソニックとパナソニックIS
  6. ゼンショーホールディングスとマルヤ
  7. セブン&アイHDとヨークベニマル

これら7つの事例のポイントを押さえておけば、自社における株式交換の成功につなげられます。それぞれの事例を順番に見ていきましょう。

①ユーグレナとLIGUNA

はじめにユーグレナとLIGUNAの簡易株式交換の手続きをご紹介します。ユーグレナは微細藻類を培養、活用し健康食品、化粧品、バイオ燃料などの生産している企業です。上場以来M&Aを積極的に進めており、株式交換によるM&Aにより生産・流通・販売の効率化と販売規模を拡大させてきました。

2021年3月にヘルスケア事業の拡大を図るため、ユーグレナの簡易株式交換によりスキンケア用品の企画・販売を手掛けるLIGUNAを株式交換で子会社化しました。

両者の哲学であるサステナビリティの強みを生かしながら協業でサステナビリティを作り上げ可能と判断して株式交換に至りました。

②日本電産と日本電産エレシス

日本電産が日本電産エレシスを簡易株式交換により完全子会社になった事例をご紹介します。2019年12月、日本電産は自動車・精密機器などを開発製造の会社で、2014年に子会社となった日本電産エレシスは自動車のステアリング・ブレーキングなどの電子制御うシステムを開発している会社です。

株式交換前に日本電産エレシスの議決権の95%を保持しており、残りの議決権はグループ企業である日本電産マシナリーが残り5%の株式保有していたため、完全子会社にするため、株式交換が行われました。

元から子会社であった日本電産エレシスを株式交換した背景としては、完全子会社にすることで両社のシナジーは強化されて、グループ全体の企業価値と戦略商品のトラクションモーター事業の開発促進を図るため、株式交換を行いました。

③村田製作所と東光

業務効率化や最適な経営資源分配の実現を図る企業は存在します。村田製作所の株式交換事例もその一つです。2016年5月、村田製作所と東光が株式交換を実施し、東光は村田製作所の完全子会社となりました。

その結果、販路や技術力といった経営資源を集約させて活用することで、相乗効果を十分に発揮しつつ、両社の主力事業の強化を狙っています。

④三菱ケミカルHDと日本化成

4つ目は三菱ケミカルHDによる株式交換事例を紹介します。2016年9月、三菱ケミカルHDの子会社である三菱化学は、株式交換によって当時子会社だった日本化成を完全子会社化することに成功しました。

上記の株式交換が実施されたのは、グループ内の相乗効果やインテグレーションを推し進める目的によるものです。また三菱化学と日本化成は、同年に、三菱ケミカルHD株式と日本化成株式を交換することで、三角株式交換による株式交換を実施しています。

なお株式交換比率は、三菱ケミカルHD株式1対日本化成株式0.21です。

⑤パナソニックとパナソニックIS

パナソニックによる株式交換M&Aを紹介します。2015年8月、両社はパナソニックを親会社、パナソニックISを子会社とする株式交換を実施しました。

この株式交換では、パナソニックISの1株に対して、パナソニックの株式が2.5株割り付けされました。上記の事例に加え、2017年には「パナソニック デバイスSUNX」を株式交換により完全子会社化しています。

上記のようにパナソニックは、株式交換を駆使して事業規模の拡大を次々と図っています。

⑥ゼンショーHDとマルヤ

ゼンショーHDによる株式交換事例です。2013年12月、外食事業と小売事業を行う企業を傘下に持つ持株会社ゼンショーHDは、株式交換によって小売業のマルヤを連結子会社化しました。

上記の株式交換が実施されたのは、展開する商品提供チャンネルの拡大という目的によるものです。ところがその後の2014年、経営状態が悪化したことと、事業戦略の共有化・経営資源の効率化などを図る目的により、マルヤを完全子会社化としました。

このときのゼンショーHDにおける手続きでは、前述した簡易株式交換が採用され、株主総会における承認手続きの省略可に成功しています。なおゼンショーHDは、マルヤの全発行済株式を取得する際、他の株主に現金交付を実施しました。

そのときの交付額は普通株式1株につき200円であり、約9.9%のプレミアムが付いていたため、当時大きな話題となった株式交換事例です。

⑦セブン&アイHDとヨークベニマル

最後に紹介するのは、セブン&アイHDによる株式交換事例です。2006年9月、コンビニやスーパーマーケットを展開するセブン&アイHDは、株式交換を活用して、当時は業務提携関係であったヨークベニマルを完全子会社化することに成功しています。

上記の株式交換は、スーパーマーケット部門のコアにヨークベニマルを据えつつ、経営を一元化した上での迅速化を狙う目的で実施されました。なおセブン&アイHDとヨークベニマルの株式交換比率は、セブン&アイHD株式1対ヨークベニマル株式0.88となっています。

株式交換のまとめ

株式交換のまとめ

株式交換を活用することで、多くのメリットが得られる反面、デメリットも少なくない手法です。そのため専門的な知識を有していなければ、株式交換を実行はできません。前述したとおり、株式交換自体が無効になるおそれもあります。

子会社化する会社の財務状況をしっかりと精査した上で実施しなければ、予期せぬ結果を招きかねません。したがって、株式交換手続きを円滑に済ませるには、M&A専門家の協力がおすすめといえます。

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