2025年11月18日更新節税

M&Aの株式譲渡で確定申告は必要?不要なケースや節税メリット、申告方法をわかりやすく解説

M&Aの手法である株式譲渡で利益が出た場合、原則として確定申告が必要です。しかし、不要なケースや、あえて申告することで節税できるメリットも。本記事では、株式譲渡における確定申告の要否から具体的な手続きまで、専門家がわかりやすく解説します。

目次
  1. 株式譲渡と確定申告
  2. M&Aにおける株式譲渡と確定申告の基本
  3. 確定申告が不要でも申告した方が得?3つの節税メリット
  4. 株式譲渡にかかる税金の計算方法
  5. 株式譲渡時の確定申告方法
  6. まとめ
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株式譲渡と確定申告

自営業者ではない一般のサラリーマンにとって、確定申告は縁遠いものです。しかし、一般のサラリーマンでも、会社の給料以外で一定以上の所得が出た場合は確定申告を行う必要が出てきます。

その所得の中には当然、株式譲渡で発生した譲渡利益も含まれます。そこで今回は、株式譲渡と確定申告に関する事柄を紹介します。

なお、株式譲渡はM&Aスキームの一つでもあります。M&Aを目的に株式譲渡をスムーズに進めたい場合は、M&A仲介会社の利用を検討してみましょう。

M&A総合研究所では、知識・支援実績豊富なアドバイザーによる専任フルサポートを行っています。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。ご相談は無料となっていますので、株式譲渡やM&Aに関して疑問や不安を感じている方はお気軽にご相談ください。

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M&Aにおける株式譲渡と確定申告の基本

株式譲渡によって利益(譲渡所得)が発生した場合、原則として確定申告が必要です。特にM&Aの手法として株式譲渡を選択した場合、譲渡価額が大きくなり、納税額も高額になる可能性があります。スムーズに手続きを進めるため、まずは株式譲渡と確定申告の基本的な関係を理解しておきましょう。

株式譲渡で利益が出たら確定申告が必要

株式譲渡とは、株主が保有する株式を第三者に売却する行為を指します。上場株式の売買だけでなく、M&Aでよく用いられる非上場株式の譲渡もこれに含まれます。

給与所得の所得税は会社が年末調整で計算してくれますが、株式譲渡で得た利益(譲渡所得)については、原則として個人で確定申告を行わなければなりません。申告を忘れると、無申告加算税や延滞税といった追徴課税が発生する可能性があるため注意が必要です。

株式譲渡で利益が出ても確定申告が不要な3つのケース

原則的には株式譲渡などで所得が出れば確定申告が必要となります。  

しかし、以下のケースに当てはまる際は、確定申告をしなくても問題ありません。 

  • 給与所得が2,000万円以下かつその他所得が20万円以下
  • 源泉徴収ありの特定口座で株式譲渡
  • NISA口座での株式譲渡

それぞれのケースについて、一つずつ見ていきましょう。

給与所得が2,000万円以下かつその他所得が20万円以下

給与所得が2,000万に満たず、さらに株式譲渡などで20万円以上の利益が出ていない場合は確定申告が不要です。ここで注意しなければならないのは、この20万円以上の利益とは株式譲渡のみの利益をさすのではなく、その他の給与外利益も含む点です。  

つまり、株式譲渡による利益が10万円でも別の副業で10万円稼いでいれば、確定申告は必要になります。また給与所得が2,000万以上の場合も、その時点で確定申告が必要となります。

源泉徴収ありの特定口座で株式譲渡

「源泉徴収ありの特定口座」を使用して株式譲渡を実施していれば、証券会社が代わりに納税してくれるので、確定申告は不要です。しかし、特定口座には源泉徴収が「あり」の口座と、「なし」の口座がある点には注意が必要です。  

源泉徴収がない特定口座での株式譲渡では、証券会社が作成してくれる「特定口座年間取引報告書」をもとに自分で確定申告をしなければなりません。

NISA口座での株式譲渡

2024年から新しいNISA制度がスタートし、非課税で投資できる金額が大幅に拡大しました。NISA口座(成長投資枠では年間240万円まで)を利用して買い付けた株式を売却して利益が出た場合、その利益は非課税となるため確定申告は不要です。

例えば、NISA口座内で株式を売却して100万円の利益が出たとしても、この利益には税金がかからず、確定申告の必要もありません。
 

利益が配当所得のみの場合

株式譲渡による利益(譲渡所得)はなく、受け取った利益が配当所得のみの場合、確定申告は原則不要です。配当金は支払い時に20.315%の税金が源泉徴収(天引き)されているため、納税が完了しているからです。
 

※関連記事
株式譲渡時の税金

確定申告が不要でも申告した方が得?3つの節税メリット

株式譲渡による利益があっても確定申告が必要のないケースもありますが、その場合にも確定申告を実施するメリットもあります。株式譲渡の際に確定申告を実施するメリットは、以下の3つです。

  1. 損益通算で節税ができる
  2. 繰越控除による節税が可能
  3. 配当金の確定申告で節税の可能性も

それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。

①損益通算で節税ができる

損益通算とは、同一年内に発生した株式譲渡の利益と損失を相殺できる制度です。この制度を利用するには確定申告が必須です。

例えば、A証券の口座で100万円の利益が出た一方、B証券の口座で40万円の損失が出たとします。確定申告をしない場合、100万円の利益に対して税金が課されます。

しかし、確定申告で損益通算を行えば、利益と損失を相殺した後の60万円(100万円 - 40万円)が課税対象となります。これにより課税額を抑えられ、すでに源泉徴収されている場合は税金の還付を受けられる可能性があります。
 

②繰越控除による節税が可能

先述の損益通算を遂行してもなお、損失が株式譲渡の利益を上回る場合、その損失を翌年以降3年間、確定申告により繰り越せる制度があります。それを繰越控除といいます。

例えば、最初の確定申告で損益通算をしても株式譲渡の利益より損失が100万円上回っていたとします。すると、この100万円の損失は翌年まで繰り越せます。その翌年の利益が例えば20万円であれば、その20万円と前年の損失100万円を損益通算できます。 

それでもまだ余っている損失80万円に関して、さらに確定申告を実施すれば、次年度の利益との損益通算を実施できます。  

これにより、利益が前年繰り越した損失を上回らなかった場合は毎年、株式譲渡の所得に対する税金が0円になります。

③配当金の確定申告で節税の可能性も

先述のとおり、配当金は源泉徴収されます。それゆえ、基本的に配当金を確定申告する必要はありません。しかし、配当金の確定申告を実行した方が、税金が安くなるケースが存在します。

まず配当金を確定申告する方法には、総合課税と分離課税の計二つのパターンがあります。この二つの課税方法のうち、特に総合課税による確定申告では大きな節税効果が望めるケースがあるのです。

総合課税による確定申告で節税できるケース

総合課税とは、所得を合算して確定申告する方法です。ですから、配当金を総合課税で確定申告する際は、給与等と合算した所得の総額に税が課されます。

その税率は、所得額により7.2~48.6%(配当控除などを含む)の間で変動します。つまり、所得金額が低ければ税率も低く済みます。

源泉徴収では20.315%の税金が配当金の利益から天引きされます。ですから、所得が低い場合には通常の税率を下回ることとなります。具体的な金額でいえば、給与などと合わせた所得の総額が695万以下なら確定申告を実施した方が節税できます。

 総合課税の税率

総合課税の税率は以下のとおりです。自分の収入に照らし合わせて、確定申告を実施するべきか否かを判断しましょう。

  • 195万円以下→7.2%
  • 195万円~330万円以下→7.2%
  • 330万円~695万円以下→17.2%
  • 695万円~900万円以下→20.2%
  • 900万円~1,000万円以下→30.2%
  • 1,000万円~1,800万円以下→36.6%
  • 1,800万円~4,000万円以下→43.6%
  • 4,000万円~→48.6%

株式譲渡にかかる税金の計算方法

株式譲渡の確定申告を行うには、まず譲渡所得と税額を正しく計算する必要があります。ここでは、税金計算の基本的な流れを解説します。
 

株式譲渡益(譲渡所得)の計算式

株式譲渡における利益は「譲渡所得」と呼ばれ、以下の計算式で算出します。

  • 譲渡所得 = 総収入金額(譲渡価額) - 必要経費(取得費 + 委託手数料など)
  • 総収入金額(譲渡価額):株式を売却して得た金額です。
  • 取得費:売却した株式を購入したときの金額です。購入時の価格が不明な場合は、譲渡価額の5%を概算取得費とすることができます。
  • 委託手数料など:株式を売買した際に証券会社などに支払った手数料です。

この計算で譲渡所得がプラスになれば、その金額が課税対象となります。

株式譲渡にかかる税率

株式譲渡で得た譲渡所得には、他の所得とは分離して課税される「申告分離課税」が適用されます。税率は所得の金額にかかわらず一定です。
 

税の種類 税率
所得税 15%
復興特別所得税 0.315%
住民税 5%
合計 20.315%

例えば、譲渡所得が100万円の場合、納税額は203,150円となります。
 

M&Aにおける非上場株式の価額算定

M&Aで非上場株式を譲渡する場合、上場株式のように市場価格が存在しません。そのため、当事者間の合意に基づき、企業価値評価(バリュエーション)を行って譲渡価額を決定します。

企業価値評価には、DCF法、類似会社比較法、純資産法など専門的な手法が用いられます。適正な価額で株式譲渡を行うためには、M&Aの専門家である仲介会社やアドバイザーに相談することが不可欠です。
 

株式譲渡時の確定申告方法

実際に株式譲渡で得た利益の確定申告を行う方法を解説していきます。株取引での利益の確定申告を行う場合ならではの必要書類などもあるので、事前に確認しておきましょう。

確定申告に必要な書類

株式譲渡による確定申告を実行する際は、以下のものを準備しましょう。

  • 確定申告書B 
  • 分離課税用の申告書(第三表)
  • 年間取引報告書 
  • 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
  • 特定口座以外で取引した株式譲渡収入や取得費などの計算資料
  • 還付の際に使う本人名義の金融機関の口座番号
  • 認印

株式譲渡の確定申告は確定申告Bを使用

確定申告を行う際に使用する確定申告書には「確定申告書A」と「確定申告書B」の2種類があり、株式譲渡の確定申告には「確定申告書B」を使用します。また、「分離課税用の申告書(第三表)」も株式譲渡の確定申告を行う際の必要書類です。

また、源泉徴収なしの特別口座で株式取引を行っている方はその金融機関や証券会社から「年間取引報告書」が郵送されてきます。株式譲渡の確定申告を行う際に、その書類をそのまま提出してくだい。

株式譲渡の利益を確定申告する方法

確定申告の期間は、原則として利益が出た年の翌年2月16日から3月15日までです。例えば、2024年(令和6年)中の譲渡益については、2025年(令和7年)3月17日(月)が申告期限となります。期限は年によって変動するため、必ず国税庁の公式サイトで確認しましょう。

近年、確定申告の手続きは非常に簡便になっています。国税庁のウェブサイトにある「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、画面の案内に従って入力するだけで申告書が完成します。

完成した申告書は、印刷して税務署に郵送または持参する方法のほか、e-Tax(電子申告)を利用してオンラインで提出することも可能です。e-Taxを利用すれば、自宅から一歩も出ずに申告を完了でき、還付がある場合は処理がスピーディーに進むメリットもあります。マイナンバーカードと対応スマートフォンがあれば、より手軽に電子申告が行えますので、ご自身に合った方法を選びましょう。

※関連記事
株式の確定申告とは?節税のポイントや注意点を解説

まとめ

株式譲渡で利益が出た場合の確定申告は、一見すると面倒に感じるかもしれません。しかし、本記事で解説したように、確定申告が不要なケースがある一方で、あえて申告することで損益通算や繰越控除といった制度を活用し、大きな節税につながる可能性もあります。

特にM&Aにおける株式譲渡では取引額が大きくなるため、正しい知識を持って手続きを行うことが重要です。不明な点があれば、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

この記事のポイントは以下の通りです。

  • 株式譲渡で利益が出たら原則、確定申告が必要
  • 「年間の給与所得2,000万円以下かつ他の所得20万円以下」など、確定申告が不要なケースもある
  • 確定申告をすることで「損益通算」や「繰越控除」などの節税メリットを受けられる

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