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生前贈与のメリットとデメリット

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

生前贈与は相続の際に相続税対策として使われます。事業承継の際には株式の承継に使われるなど、幅広く活用される手法の一つです。生前贈与のメリットやデメリットを踏まえ、相続全体をサポートする税理士や弁護士といった専門家をうまく活用しましょう。

目次

    生前贈与のメリットとデメリット

    生前贈与は相続の際に相続税対策として使われ、事業承継の際には株式の承継に使われるなど、幅広く活用される手法の一つです。

    生前贈与は贈与税の課税範囲を把握していれば、税務上メリットが大きいものだといえます。

    しかし生前贈与にもメリット・デメリットは存在しており、正確に把握しておくことが重要だといえるでしょう。

    今回は生前贈与のメリット・デメリットや実際に使用する際の注意点についてお伝えしていきます。

    生前贈与とは

    まずは生前贈与がどういうものかについてお伝えしていきます。

    生前贈与は主に相続税の節税対策として使われる方法であり、被相続人が存命中のうちに相続財産を贈与という形で相続人に承継させるというものです。

    時には事業承継で後継者が経営者になるうえで必要な株式を承継させたい際にも生前贈与は使われます。

    いずれにせよ、「相続対象となる財産を被相続人が生前の内に分配する」という形式が生前贈与の最大の特徴だといえるでしょう。

    生前贈与の目的

    生前贈与は被相続人が生前の内に分配することによって、相続財産それ自体を減らすことが目的です。

    それが生前贈与で得られる節税効果の最たるものだといえるでしょう。

    当然ながら生前贈与は贈与という行為である以上、そこには贈与税が発生する余地があります。

    ただ生前贈与には「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」があり、これを活用することで贈与税を非課税にしながら財産の贈与を完了させることができます。

    暦年贈与は生前贈与の中でもメジャーなものであり、俗にいう「年間110万円以内の贈与なら贈与税が非課税になる」というものです。

    厳密に言うと暦年贈与は暦年(その年の1月1日~12月31日)以内に行った110万円以下の贈与に対して贈与税が非課税になるというものです。

    この税制を活用すれば年間110万円以下、そして最大で2500万円までの生前贈与が贈与税非課税で実行することができます。

    対して相続時精算課税制度はあらかじめ2500万円分の非課税枠をまとめて持っておくことで、2500万円までの生前贈与をまとめて非課税にするというものです。

    暦年課税が1年ごとの生前贈与を110万円以下の範囲で非課税にするなら、相続時精算課税制度は2500万円分の非課税の範囲をあらかじめ持っておくといった方がイメージしやすいかと思います。

    いずれにせよ非課税となる範囲の限度が2500万円と共通していますが、どういうペースで贈与を進めておきたいかによって使い分けることになるでしょう。

    ただ、気を付けておきたいのが暦年贈与と相続時精算課税制度は併用することができないという点です。

    どちらか一方の税制を使用すると、どちらかの税制は使えなくなるので注意しておきましょう。

    生前贈与のメリット

    生前贈与を行うメリットは以下の通りです。

    ①相続財産を減らすことができる

    冒頭でもお伝えしたことですが、生前贈与は相続財産を減らすことで節税効果を期待することができます。

    そもそも相続税は累進税率を取っているため、課税対象となる相続財産が大きければ大きいほど相続税の負担は増えます。

    加えて平成25年度の税制改正によって相続税の控除が減らされ、結果として相続税が増税したため、生前贈与はますます節税対策として注目が集まっています。

    また生前贈与では有価証券や不動産などといった価値が変動しやすいものも贈与することができますが、こちらも価値が上がってしまう前に贈与してしまうことで、価値が上がった際に税の負担が増えてしまうことを防ぐことができます。

    あらかじめ生前贈与を活用しておくことは将来的な相続税を節税するうえにおいて有効的なやり方だといえるでしょう。

    ②特定の人物に確実に承継させることができる

    生前贈与は個人を相手に贈与する行為であるため、特定の人物に相続財産を確実に承継させることができます。

    基本的に相続において被相続人は遺言書などで財産を任意の相手に承継させるという意向を示すことはできます。

    しかし相続は被相続人が死亡した後に発生するものであるため、被相続人が相続を最後までコントロールすることは難しいものです。

    そのため、たとえ遺言書を作成していたとしても遺留分減殺請求などによって被相続人が想定していない相続人に遺産が承継されてしまう可能性はあります。

    また遺言書に不備があれば効力が弱まってしまう恐れがあり、相続人が被相続人の意向に不満があればトラブルの原因になってしまいます。

    しかし生前贈与をあらかじめしておくことで、被相続人が相続させたい財産を対象の相続人に確実に承継させることができます。

    それに被相続人が生きている内に実行できるため、相続をある程度コントロールでき、被相続人にとって理想的な相続が実現しやすくなるでしょう。

    また生前贈与であれば相続の資格がない人物に対しても財産を承継させるのが楽になります。

    生前贈与のデメリット

    生前贈与は相続税の節税対策や理想的な相続を実現するうえで有効的な方法ではありますが、デメリットも存在しています。

    生前贈与のデメリットに関してはしっかり理解しておかなければ、相続税の節税効果を得られないという事態になりかねないものなので注意してください。

    ①相続税の節税にならない相続時精算課税制度

    生前贈与のデメリットであり、最も注意しておかなければならない点があります。

    それは、生前贈与が相続税の節税にならないケースが存在するという点です。

    まず注意しておきたいのが生前贈与の一種である相続時精算課税制度です。

    こちらはさきほどお伝えしたように2500万円分の生前贈与の贈与税を非課税にするというものですが、こちらを使用したからといって生前贈与された財産が相続税の対象から外れるわけではありません。

    つまり相続時精算課税制度は相続税の節税にはならないというわけです。

    相続時精算課税制度はその名の通り相続の際に清算する課税制度であり、相続の際には生前贈与を行っていた2500万円分の財産は相続税の対象になります。

    そのため相続が発生した際には生前贈与を行った財産も相続税が課税されることになります。

    暦年贈与に関してはそのようなことはありませんが、暦年贈与でも注意しておきたい点があります。

    万が一暦年贈与の形式で生前贈与を行っていた被相続人が亡くなって相続が発生した場合、その相続が発生した3年前までの贈与は全て相続扱いとなり、相続税の対象となります。

    そのため暦年贈与を行う際には相続が発生する前までに生前贈与を完了させておく必要があるといえるでしょう。

    このように生前贈与はやり方や状況によっては相続税の節税効果が得られない可能性があります。

    この点は充分留意しておくべきです。

    ②不動産などの贈与の場合は別費用がかかる

    生前贈与は贈与税の非課税の範囲内で行うことができますが、贈与税以外にも費用がかかる可能性を考慮しておく必要があります。

    不動産を贈与する場合、名義変更などの登記を行う必要があります。

    この際、登録免許税や不動産取得税がかかってしまいますが、贈与と相続では発生する登録免許税・不動産取得税の税率が異なります。

    相続による名義変更の場合、登録免許税は0.4%の税率で課税され、不動産取得税は課税されないものです。

    しかし不動産の贈与になると登録免許税や不動産取得税は不動産の評価額の2~3%の税率で課税されるようになります。

    つまり生前贈与の方が不動産にかかる税金の税額が上がってしまうというわけです。

    だから不動産を生前贈与する際にはどれだけ登録免許税や不動産取得税が発生するかをあらかじめ把握しておいた方がいいでしょう。

    節税される相続税を考えるとさしたる税額にはならない可能性は高いですが、油断は禁物だといえるでしょう。

    ③生前贈与が認められないケース

    生前贈与が認められないケースもあることを踏まえておく必要があります。

    例えば高い税率がかかるようなものを生前贈与で何度も贈与していた場合、国税庁にマークされる可能性があります。

    こういったケースは決して多いわけではありませんが、会社を持っている経営者は事業承継の際にわざと株価を圧縮させて暦年贈与でまとめて送りやすいようにするなど、生前贈与は恣意的な財産の操作がしやすいものです。

    国税庁にマークされやすい可能性が高いでしょう。

    加えて生前贈与が最悪認められないというケースも想定しておかなければなりません。

    先ほどお伝えしました暦年贈与のデメリットにも通じるものですが、相続のタイミングで生前贈与が認められない可能性は決して低くありません。

    そのため贈与を行う際は贈与契約書のような贈与を行ったことを証明する書類を作っておくことがおすすめです。

    被相続人がある程度高齢化したうえで生前贈与を行う場合は贈与のタイミングがシビアになるため、確実に生前贈与を認めさせるうえでも証拠となる書類を作成しておいても損はないでしょう。

    生前贈与は専門家の協力を得よう

    生前贈与、あるいはそれに限らず理想的な相続を実現するためには税理士や弁護士といった専門家の協力を得ておくことが重要です。

    今回は生前贈与を中心にお伝えしていますが、実際に相続税の節税を行うとなると使える手段は生前贈与以外にも現金を不動産に変えるなどといった方法も挙げられます。

    相続する財産が多い場合は生前贈与だけでは節税対策が不十分になるため、他の方法を考慮することにもなるでしょう。

    もちろん税務や相続に関する知識を持っていれば素人でも対処できる可能性はありますが、相続に際して行う業務は決して少なくありません。

    故人が持っていたクレジットカードやNHK、保険などの契約関係の後処理だけでもかなり手間がかかるものですし、人によっては後処理のために1週間会社を休まなければならないといったケースも考えられます。

    また相続税の節税は被相続人と相続人の間でしっかり協議したうえで行わなければ効果を発揮しません。

    相続全体のプロセスを計画したうえで実行する必要もあります。

    そういった点を踏まえると相続や相続税の節税、そしてその一環として生前贈与に専門的な知識でアドバイスを提供できる専門家の存在は必要不可欠といっても過言ではないでしょう。

    実際に相続関連のサポートを得る際は税理士や弁護士と言った専門家の協力を得ることがおすすめです。

    ただ、当然ながら専門家であれば誰でもいいというわけではありません。

    とりわけ節税に関しては税理士や弁護士の力量が如実に現れる作業であり、節税効果が協力する専門家の腕一つで大きく変わることも珍しくありません。

    相続税の節税を念頭に置きたい場合、節税の実績を持っている専門家に依頼した方がいいでしょう。

    もちろんこういった専門家に依頼すると報酬が発生するものです。

    予算の範囲内でやりくりできるように活用しましょう。

    まとめ

    今回の記事をまとめると以下のようになります。

    • 生前贈与とは被相続人が生きている内からあらかじめ相続する財産を相続人に承継させるという行為。
    • 生前贈与は相続財産を減らすことで相続税の節税効果を得たい際に使われる。
    • 生前贈与は相続財産を減らすだけでなく特定の人物に確実に財産を相続させる際にも使える方法でもある。
    • 生前贈与のデメリットはやり方によっては相続税の節税にならない点や不動産などの贈与の際には余計に税金がかかる点、生前贈与が認められないケースがある点が挙げられる。
    • 生前贈与に限らず、相続税の節税などを行う際には税理士や弁護士といった専門家の協力を得ておくことがおすすめ。

    生前贈与は相続税を節税するうえで有効的な方法の一つであることは間違いありません。

    しかし生前贈与のメリットやデメリットを踏まえ、適切に実行しなければ相続税の節税につながらないことをしっかり理解しておく必要があります。

    せっかく相続税の節税のために行っているのに、思った効果が得られなければ本末転倒になってしまいます。

    そのような事態を避けるためにも相続全体をサポートしてくれる税理士や弁護士といった専門家の協力は得ておいて損はないでしょう。

    むしろ専門家からの適切なアドバイスが理想的な相続を実現させるうえで一番必要な要素だといえます。

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